映画「英国王のスピーチ」話すことへの苦手意識の克服
英国王のスピーチという映画を知っていますか?
話すことが極端に苦手で、ついついスピーチを避けてしまうイギリスの王様が、セラピストや家族の協力もあって苦手意識を克服し、見事なスピーチでイギリス全国民に勇気を与える感動の物語です。
話すこと、特に大勢の人の前で話しをするのはとても緊張しますね。
会社のプレゼンテーションが苦手、結婚式のスピーチが苦手、更には、会社の飲み会、会議、お母様同士の食事会、異性と向き合うこと、電話の対応、営業活動、人が数人集まる集団が苦手だという方もいらっしゃいますね。
どうして?話すことに苦手意識を持ってしまうのか?
その理由がとてもわかりやすく感じ取ることができました。
クライアント…ジョージ6世の苦悩
まず、英国王のスピーチという映画のあらすじも兼ねて、主人公のジョージ6世について少し触れましょう。
実は、ジョージ6世が話すことの苦手意識=吃音の克服をしようと思った時、ジョージ6世はまだ王様ではありませんでした。
ジョージ6世のお父さんが王様で、ジョージ6世にはお兄さんもいたので、ジョージ6世は、順当に行けば王様にはならずに済んだわけです。
お父さんであるジョージ5世は、とても先見性のある名君として知られています。
イギリス王室が徐々に存在価値が薄れてきていることを敏感に感じ取っていたわけです。
このまま時代が流れると王様が王様じゃなくなってしまうということを感じ取っていたんですね。
そこで考え出したのがスピーチです。
ラジオやいろいろな行事で王様やその家族が魅力的なスピーチをすることで、王様と王室の存在価値を高めようとしていたんですね。
なので、今まではあまり重要でなかったスピーチを、仕事として宣伝として、魅力的に精力的に日々こなさなければならなくなったという時代背景があります。
お父さんのジョージ5世は、人前でうまく話す=これからの王様の条件…と考えていたのですね。
それと、ジョージ6世の時代に、ジョージ6世とは正反対に天才的にスピーチがうまくその才能を活かして世界を支配しようとしていた人物がいます。
その人名はアドルフ・ヒトラーです。
ヒトラーのスピーチは人々の心を鷲掴みにして、ナチスドイツによる世界制覇を可能なものだと思わせるぐらいの天才的スピーチだったわけです。
なので、息子であるジョージ6世にとって、話すことが苦手=死活問題…となってしまったわけですね。
自分が王様になれば、話すことが苦手=個人の問題ではなく、イギリス全土の存亡にかかわる…という価値観が出来上がってしまったわです。
そして幸か不幸か、ジョージ6世はお兄さんがいるにも関わらず、王様になることになってしまい、天才的な演説者ヒトラーに魅力的なスピーチで対抗しなければならないというなんとも過酷な状況に陥ってしまうのです。
悩みのツボ=実は話すのは上手!自分の声が嫌いなだけ!
私のところにも話すことの苦手意識=吃音を克服したいと相談してくださる方がいらっしゃいます。
お会いするといつも感じるのは、「とても誠実な方だなぁ」という印象です。
人それぞれ感じ方はありますが、少なくとも私は、スラスラ早口でお話しされる方より、つかえながらもゆっくりお話をしてくれるかたの方が好感がもてたりします。
でも、本人はそう思えないから苦しいんですよね。
さて、話すことが苦手だ!という方のお話をお聞きすると必ずといっていいほどひとつの誤解を発見します。
それは、「自分は生まれつき話が下手な欠陥人間なんだ!」という苦しい思い込みです。
これはまず間違いなく言えますが、その思い込みは100%誤解です。
大丈夫、あなたは生まれつきうまく話せない欠陥人間じゃないですよ。
自分は欠陥人間なんだ!と思いこんでいるクライアントさんにこんなお話をしていきます。
もし、あなたが生まれつきうまく話せないのだとしたら、そもそもあなたは悩んじゃいませんよ。
あなたが悩むのは本当は話すのが上手なのにそれを発揮できないからじゃないのかな?
そして発揮できないのは今までに懸命に話しても、ろくなことにならなかったという体験があったからだと思いますよ。
こんなお話をさせていただきます。
するとそうかもしれません。と、ひとつ誤解を解くことが出来ますね。
次にこんな問いかけをさせていただきます。
あなたは自分の声が好きですか?嫌いですか?と問いかけします。
するとほとんどの方が嫌いですと答えてくださいます。
あなたは、嫌いな自分の声を聴き続けたらどんな気分ですか?
あなたが話そうとすると嫌いな声が聞こえてきてしまうんですから、嫌いな声を聞きたくない!嫌いな声を発したくない!と感じて当然だと思いませんか?
話したくないんですもの…つかえてしまって当然だと思いませんか?
でも、ここまでお話ししても、じゃあどうれば?ってなりますよね。
私自身も利用して痛感したことですが、苦手意識の克服は、対話のみのカウンセリングのみでは改善が難しいかもしれません。
じゃあ全部受入れよう!って言われても、嫌いな料理をいいから食べろって言われているのと同じですよね。
なので、私は対話を中心としたカウンセリングに加えて、心理療法を用いることで改善を手助けしています。
そうすると嫌いなものが嫌いじゃなくなって心が広くなるんですよね。
じゃあどうすればいいか!まずスムーズに話してみちゃおう!
映画でもとても素晴らしい方法でうまく話せない本当の原因を証明していますね。
セラピスト=ライオネルは大音量の流れるヘッドホンをジョージ6世につけさせて本を朗読してもらい、その内容を録音します。
すると驚くことに、ジョージ6世はスラスラと本を読むことが出来たのです!
つまり自分の声が嫌い=聞きたくない=話さないほうがいい=つかえてしまう…という無意識のパターンがジョージ6世の心にあったわけですね。
なので、嫌いな自分の声さえ聞こえなければスラスラ話せる=生まれつき話が下手な欠陥人間ではない=全然、改善ができるってことがわかったわけですね(^^)
私もつい先日、似たような方法でクライアントさんの悩みを改善したことがあります。
女性のクライアントさんで男性と向き合うと何も話せなくなるという方でした。
根本的には別の方法で改善したのですが、まず改善できるということを感じてほしかったので、ウォークマンで音楽を聴いていただきながら何でも話してもらったんです。
何でも良いですよ(^^)
わかりづらいほうがいいですよ(^^)と
お話をしていただきました。
それに対して私はNLPの心理テクニックを使って、彼女の耳ではなく、彼女の目に向けて充分話が伝わっているよ!という反応を、うなづきや表情の変化で届けていきました。
私も一応男性なので、最初は彼女も戸惑って目をそらしてぐっと口をつぐんでいましたが、朝起きてから感じたことを話し始めてくれ、耳の感覚に変わって目の感覚でピュアに聞いてくれているだなと感じ取れたことで、脳=心は自分の話が伝わった安心感を感じて心が癒されるんですね。
(関連:NLP心理学についての説明)
ひとしきり続けてウォークマンを外すと、とてもニッコリしてくださいました。
そして、次は片耳だけでウォークマンを聞いていただいて、同じことを繰り返し、その次は片耳の穴を塞いでいただいて聞こえてくる自分の声を変化させたりして同じことを繰り返しました。
実は、自分が聞く自分の声というのは、ふたつの音が混ざって出来上がっているんです。
ひとつは振動音、もうひとつ骨導音です。
自分で自分の声を聞いている時は、空気を伝って耳に届く振動音と体の中の骨を伝って聞こえる骨導音が混ざっているんですね。
でも、他人が聞く自分の声は空気を伝わる振動音だけなんです。
ボイスレコーダーで録音した声が自分の声じゃないような気がすることがありませんか?
それは空気を伝って聞こえる振動音のみしか録音されていないからです。
逆に言えば、自分の声が嫌いなら、振動音と骨導音のバランスを変えて自分の声を変化させれば、脳=心の反応も変わってしまい、結果も変わってきます。
聞こえ方を変化させることで、すんなり話せるようになることもあるということですね(^^)
話しが苦手になった理由…自分の声が嫌いになった理由
そもそも生まれてからずっと「あなたの声は素敵だね。あなたの話は上手だわ」って言われ続けていれば、自分の声を嫌いにならないし、話すことも苦手にはならないでしょう。
生まれながらに変な声で話が下手だったから褒めてもらえなかったんじゃなくて、褒めてもらえなかったから自分の声が嫌いになって話すのが苦手になったということです。
まぁ自分の声が嫌いになってしまったきっかけや、話すことが嫌になってしまったきっかけが必ずあるということですね。
(関連:アダルトチルドレン(ac)チェックリスト)
ジョージ6世の場合、ポイントは少年期にあったようです。
少年期に、長い間、乳母(お母さんに変わって世話をする人)からの理不尽な意地悪を受け続けていたんですね。
でも、その理不尽な意地悪を誰にも相談できずに心にしまい込むしかなかった。
話したいことがあるのに、忙しい両親=王様夫婦には聞いてもらえない。
そして、悶々とした気持ちを抱えながら会話するので、まとまりを欠いてしまう。
父ジョージ5世は王様ですから厳格ですし、先ほど書いた時代背景からスピーチ=話すことを重要視していたので、「しっかりしろ!何も話しているかわからない!ちゃんと話せ!」と、日々言われてしまったことでしょう。
つらかっと思います。一般的に言う心の傷=トラウマですね。
話してもわかってもらえない⇒話すと怒られイヤな気分になる⇒イヤな気分を呼び込む自分の声は嫌いだ!⇒話す⇒怒られる⇒馬鹿にされる⇒話すとろくなことがおきない⇒だから話さないほうはいい!…潜在意識に深く刻まれたこの苦しい思い込み=防衛機制と呼ばれる心理的ブロックがジョージ6世の吃音の原因だと私は思います。
具体的にはどうするか?そらくもだったらどうするか?
映画では、セラピスト=ライオネルは言語療法士です。
なので、トラウマの影響を和らげるというより、呼吸法やストレッチといった発声に関するトレーニングと心理的成功体験を重視していますね。
映画の中で一番素晴らしいシーンがあります。
ライオネルは重要なスピーチを控えて消極的なジョージ6世に対して、ジョージ6世のプライドを逆用し激怒させることで素晴らしいスピーチを引き出すという巧みな方法も用いています。
激怒したジョージ6世は内なる思いを情熱的に爆発させます。
見事なスピーチです。
こんなに情熱的で感動的なスピーチが自分にもできるんだと大きな成功体験を重ねます。
つまりジョージ6世…あなたは必要となれば、防衛機制という心理的ブロックを突き破って、いつでもとても素晴らしいスピーチができるんですよ。ということを、成功体験を引き出すことで気づかせようとしていたんですね。
ですが、ライオネルは仮にも王様を激怒させたのです。
常識なら厳罰に処されるでしょう。
でも自分の身を危険にさらしてまで、クライアントジョージ6世に成功体験を積んでほしかったんですね。
映画全般でも描かれていますが、ライオネルはジョージ6世と対等の立場を貫いています。
先生でも家臣でもない一対一の関係を貫いていますね。
私もどちらかというと先生と呼ばれるのは苦手だったりします(^^)
さて、ライオネルにはライオネルの方法があります。
そして、私には私の方法があります。
私なら、まずトラウマの影響を和らげると思います。
それと並行して成功体験を重ねさせていただきます。
詳しいことは文字では書ききれませんが、催眠療法(ヒプノセラピー)を用いてトラウマの影響を和らげて、過去は確かに話したくなかった…でも今はボチボチ話してみてもいいね…こんなニュアンスで、防衛機制という心理的ブロックを緩めていきます。
それと並行して、耳の感覚を和らげて、聞こえる自分の声を変化させたり、まず話せる状況を見つけてどんどん話して、話せるんだという安心感を大きくしていきます。
(関連:ヒプノセラピー(催眠療法)の効果と説明)
家ではビデオを使ったセラピーを勧めます。
音声を除いたドラマなどの映像に向かって、自由に話しかけてもらいます。
または、笑顔を心がけて鏡の前に座ってもらい、鏡の中の笑顔の自分に向かって自由に話しかけてもらいます。
脳=心に聞いてもらえている安心感を感じさせる一種のイメージトレニングです。
人は、できるわけない思い込んでいたことが、ひょっとしてできるかも?と感じる成功体験を重ねると、加速度的に進化していきますよね(^^)
どんなことでも自分の思い通りにいかなくて悩んでしまうのには、防衛機制という心理的ブロック=苦しい思い込みが影響していることが多いんです。
メンタル心理そらくもでは、クライアントさんと一緒になって、防衛機制=心理的ブロックを見つけて安全に緩めていきます。
お宅でもクライアントさんが安心して改善に取り組めるように、セルフセラピーもお伝えしています。
メールとお電話でのアフタフォローは無料ですので、クライアントさんがクライアントさんのペースで悩みの改善に取り組んでおられます。
(関連:対面カウンセリングの当日の流れ)