うつ病の高校生と接して感じた体験談です
POINT例え、中学生・高校生であっても、うつ病を抱えることはおかしいことではありません。事実、うつ病を抱える多くの中学生・高校生が、当社のカウンセリングを利用してくれています。
心理カウンセラーの寺井です。
ここ最近、うつ病を抱える中学生・高校生が、当社のカウンセリングを利用してくれるケースが多くなっています。
例え、中学生・高校生であっても、大人と同じように、うつ病を抱えることがありますし、例え、中学生・高校生であっても、大人と同じように、カウンセリングを利用することもできます。
この記事は、カウンセリングの場で、うつ病を抱える高校生と接してきた私の体験談です。
思春期は「うつうつ」とする時期
高校生や中学生は、人の成長過程に照らし合わせると「思春期」呼ばれる時期です。
思春期とは、11~18歳頃まで続く、心身ともに不安定な時期をさします。
不安定というのは決してマイナスではなく、それだけ成長し変化し躍動している時期ということです。
思春期には、身体は一気に大人へと成長していくのですが、心理面は恐る恐る慎重に成長をしていくので、心身のバランスの変化に戸惑いを感じ不安定になり、不安やイライラを感じやすい時期でもあります。
大人であっても、全く新しい環境に引っ越したりすれば、心理的に慣れるまで時間が掛かるように、思春期の中学生・高校生たちも、自分自身の変化に、11~18歳頃まで時間を掛けて慣れていきます。
その間は、迷ったり、苦しんだり、背伸びをしたり、泣いたり、笑ったり、いろいろな感情を豊かに感じて表現し、初夏の草木のようにエネルギッシュに成長していきます。
うつ病の高校生A君
さて、先日、私のところにお越しくださった高校生A君は、「不登校」つまり学校への登校が困難になり、お家の自室に「引きこもり」がちになって、心療内科さんを受診したそうです。
そして、高校生A君は「うつ病」と診断されたそうです。
うつ病とは「言いたいことが言えない」「やりたいことがやれない」心理状態
うつ病とはどういった心理状態かというと、例えるなら「心という鍋の中に感情というスープがパンパンにたまってしまっている状態」です。
このとき、鍋の中にたまってしまっている感情というスープを「ストレス」と呼びます。
うつ病とは、日々自然に豊かに生まれてくる感情を、何かの理由で自由に表現したり発散できなくなってしまったため、自分自身の心に溜め込みがちとなり感情の循環が滞ってしまい、心が渋滞して重くなってしまっている状態です。
自分が悪いのではなく、周りの対応がいまいち
うつ病の高校生A君は、学校でも家庭でも、日頃の感情を表になかなか表現できず、1人でたくさん抱え込んで苦しんでいたのです。
家庭では、父親は仕事ばかりでほとんど顔を合わせることがなかったり、母親は過干渉でイライラしていたり、両親はたまに顔を合わせても喧嘩ばかりをしていて、「A君は、両親に言いたいことが言えなかった」そうです。
このとき、A君の家庭のように、子供が安心して過ごせない家庭を、心理学では「機能不全家族」と呼び、子供を否定する、子供を放置する、過干渉、過保護、暴言、暴力など、子供の人生に悪影響を及ぼす子育てを行う親を「毒親」と言ったりします。
家庭が不安定なら学校でも不安定
このように、うつ病の高校生A君は、家庭で言いたいことが言えなかったため、学校でも気分が晴れず、笑えなかったり、ボーっとしてしまったり、周りの友人たちとの間で「気分の温度差」が生まれていったそうです。
そして、学校では孤立気味となり、だんだんと、友人たちから「無視」をされたり「いじめ」を受けるようになっていったそうです。
このように、うつ病の高校生A君は、学校で嫌なことがあっても家庭で両親に話せず、家庭で嫌なことがあっても学校で友人に話せず、心に「たくさんのストレス」が溜まってしまいました。
このころのA君は、「眠れない、やる気が出ない、集中できない、不安が止まらない、自己嫌悪、無気力、自己否定」など、さまざまな「うつ症状」を感じて限界だったと思います。
とても苦しかったことだろうなと私は思いましたし、「よくお越しくださったなぁ…」と、私はとてもありがたかったです。
うつ症状は早期発見が重要です
このように、苦しいときは、両親、友人、先生以外にも、「心理カウンセラーといった協力者」もいます。
「心理カウンセリングとは秘密を厳守する機会」ですので、両親、友人、先生には話せないことでも、あなたのペースで話すことができます。
A君が感じたような「うつ病の初期症状」については、以下の記事で詳しく説明しています。
また、「うつ症状」は早期発見が重要です。
「うつ症状」は、以下の「うつ病の症状チェックリスト」でもチェックできますのであわせて紹介します。
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中学生・高校生はストレスをたくさん抱えている
さて、うつ病の高校生A君は、なにを気にして自分の感情=ストレスを抱え込んでしまったのでしょうか?
それは、ほとんどの場合、両親、先生、同級生など、周囲の人たちの反応です。
人は一度傷つくと「二度と傷つきたくない!」という防御心理が無意識に働きます
自分が感じたことを言葉や表情や動きで表現したのに、周囲の人たちにバカにされたり無視をされれば、ショックを受けて心が傷ついてしまいます。
このとき、周囲の人たちの心ない言動によって心が傷ついてしまうことを、心理学では「心的外傷=トラウマ」と言ったりします。
心的外傷(しんてきがいしょう、英語: psychological trauma、トラウマ)とは、外的内的要因による肉体的及び精神的な衝撃(外傷的出来事)を受けた事で、長い間それにとらわれてしまう状態で、また否定的な影響を持っていることを指す。心的外傷が突如として記憶によみがえり、フラッシュバックするなど特定の症状を呈し、持続的に著しい苦痛を伴えば、急性ストレス障害であり、一部は1か月以上の持続によって、心的外傷後ストレス障害(PTSD)ともなりえる。
引用元:心的外傷
そして、上記にも「心的外傷=トラウマが突如として記憶によみがえり、フラッシュバックするなど特定の症状を呈し…」とあるように、人は、一度、心が傷ついてしまった以上、同じ想いは二度としたくないので、それ以降、「感情を表現しようとすると無意識に躊躇する」ようになります。
このとき、「二度と傷つきたくない!」からこそ、無意識に働く防御心理を、心理学では「防衛機制」と言います。
防衛機制(ぼうえいきせい、英: defence mechanism)とは、受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。
引用元:防衛機制
「不登校」や「引きこもり」は「防衛機制」
つまり、人は、両親、先生、同級生など、周囲の人たちの心ない言動によって心が傷ついてしまうと、心に「心的外傷=トラウマ」を負ってしまいます。
そして、人は、心に「心的外傷=トラウマ」を負ってしまうと、「二度と傷つきたくない!」という防御心理=「防衛機制」が働き、「逃げたり、隠れたり、閉じこもったり、黙ったり…」と、これ以上傷つかないように、自分の言動を無意識に規制することで自分の身を守ろうとします。
すなわち、「不登校」や「引きこもり」とは、心に「心的外傷=トラウマ」を負った人が、これ以上傷つかないように無意識に取っている防御心理=「防衛機制」であると心理カウンセリングの現場では捉えていきます。
思春期は、ただでさえ、たくさんの感情を感じる
思春期は、ただでさえ豊かに感情を感じる時期です。
湧水のようにあふれ出る感情を豊かに表現して、心を循環させることでイキイキと成長していきます。
ですが、自分の置かれている環境や周囲の人たちの反応によっては、湧水のように豊かにあふれ出る感情を我慢して抑えなければならなかったり、傷つくことを恐れるあまり、「防衛機制」によって、無意識に心に抱え込んでしまう場合があります。
そして、ひとたび我慢し抱え込んでしまうようになると、日が過ぎるたびに徐々に心にストレスがたまっていき、心が重くなり、いつのまにか動けなくなってしまう場合があります。
つまり目には見えませんが、お父さんやお母さんと同じくらいに、「思春期である中学生・高校生も、心に重い荷物=ストレスをたくさん抱えている」わけです。
うつ病の高校生A君が、うつ症状を抱えることになったポイント
さて、先ほどもお話をさせて頂きましたが、うつ病の高校生A君が苦しい想いを抱えることになってしまったポイントを改めて確認してみましょう…
POINT
- そもそも思春期の中学生・高校生はたくさんの感情を豊かに感じる
- 豊かに感じる感情をスムーズに発散できなかったため心がストレスで満杯になってしまった
- 心がストレスで満杯だと、心に空きスペースがないため、新しい行動や感情が生まれにくくなってしまった
- その状態で高校生A君は医療機関を受診し、うつ病と診断された
以上が、うつ病の高校生A君が苦しい想いを抱えることになった流れです。
人は、周囲の人の言動に左右されやすい
さて、「ストレス」とは、自分の言いたいこと、自分のやりたいことなど、自分の感情を我慢することで生まれ、徐々に心に溜まっていきます。
なので、そもそも、高校生A君が感情をスムーズに発散できていれば、心にストレスを溜めることもなかったということです。
では、なぜ?高校生A君は感情をスムーズに発散できなかったのでしょうか?
それは、父親が子供と向き合おうとしなかったり、母親がイライラして過干渉だったり、家族や友人など、周囲の人たちの反応がイマイチであったため、高校生A君の心には「防衛機制」が無意識に働き、ますます感情を表現しづらくなってしまい、だんだんとストレスを溜めこんでいってしまった…というのが重要なポイントです。
心の容量にも限界があり、ストレスを無限に溜め込むことはできない
家庭や学校では、誰かをいじめたり、誰かを無視したり、といったことがたびたび起きています。
学校で、友人から「意地悪」をされたり、「無視」をされれば、心が傷つき、心に「心的外傷=トラウマ」を負ってしまい、それ以来、無意識に「防衛機制」が働き何も言い返せなくなってしまい、グッと我慢して黙って現状を耐え続けるしかなくなってしまいます。
くわえて、学校で苦しい感情を抱えて家庭に帰っても、親に「粗略」に扱われたり、親に「叱られてばかり」であれば、ストレスを発散する場所がなくなってしまい、家庭でも学校でも八方塞がりとなり、心がストレスで満杯になってしまいます。
とはいえ、心は鍋のようなもので、溜め込むストレスの容量にも限界があります。
そして、心の容量に対して溜め込んでいるストレスの量が限界に近づくと、「危険を知らせるサイン」として「うつ症状」を感じることになります。
このようないきさつで、高校生A君はうつ病を抱えることになってしまったわけです。
「いじめ」や「無視」をすることは、相手の一生を狂わしてしまうほどの傷を負わせてしまう…
このように、当社メンタル心理そらくもには、「家庭や学校で、自分の言いたいこと、自分のやりたいことを我慢してしまい、ストレスで苦しくなってきてくれる中学生・高校生」がたくさんいらっしゃいます。
そして、実は、それと同じくらいに、「学校でいじめをしてしまったことを後悔してきてくれる中学生・高校生」や、「家庭で子供にキツく当たってしまうことを後悔してきてくれるお父さん・お母さん」もたくさんいます。
そして、皆さんのお話をよく聞くと、学校でいじめをしてしまう中学生・高校生自身も、「過去にいじめられた経験」があったり、「家庭に帰れば、親に粗略に扱われたり、親に叱られてばかり」だったりする場合があります。
同じように、子供にキツく当たってしまうお父さん・お母さん自身にも、「過去にいじめられた経験」があったり、「子供時代、親に粗略に扱われたり、親に叱られてばかり」であった経験を持つ場合が多いです。
このように、誰かを「いじめ」たり「無視」をした影響は、大人になっても影響し続ける場合があり、相手の一生を狂わしてしまうほどの傷を負わしてしまう場合があります。
いじめ、無視、粗略な子育て、厳しい子育ての裏には「寂しさ・孤独感」が隠れている
このように、誰かを「いじめ」たり「無視」をしてしまう中学生・高校生、「粗略・厳しい子育て」をしてしまう親は、心の中で、「自分のことなんで、どうせ誰もわかってくれない…」という寂しさ・孤独感を感じている場合があります。
誰かを「いじめ」たり「無視」をしてしまう要因となる「どうせ誰もわかってくれないと感じる心理」については、以下の記事で詳しく説明しています。
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うつ病の高校生…それは平和を願っている
さて、みなさんは、「うつ病」という言葉を聞いてなにを感じますか?
怠け者?弱虫?おかしい?恥ずかしい?
確かに、人の心は、自分自身が体験したことがないことを「おかしい」「変だ」と感じるようにできています。
ですが、高校生がうつ病を抱えるということは、それだけ、周囲の甘えを受けとめて耐えてくれているともいえるのかもしれません。
うつ病とは「優しさ」の結果
例えば、「A君は、友人の我儘に振り回されても何も言い返せない人だ」とも言えますが、「A君は、友人の我儘に優しく付き合ってくれている人だ」とも言えます。
例えば、「A君は、親や家族に理不尽な押し付けに何も言い返せない人だ」とも言えますが、「A君は、親や家族の期待に懸命に応えてくれている人だ」とも言えます。
友人を我儘に振り回したり、親や家族に理不尽に押し付けたり、自分の感情を、友人や家族に平気で八つ当たりをしたり無責任に発散できていれば、A君はストレスを溜めることなく、うつ病の高校生とはならなかったでしょう…
でも、友人を我儘に振り回したり、親や家族に理不尽に押し付けることに対して「心が痛む優しさ」を持ち合わせていたからこそ、A君はぐっと堪えてくれたのだと私は思います。
うつ病とは「平和的な人間関係」を望んでいる証
「人は、人から嫌なことをされたとき、どのように考えるか?」について、大きくわけて以下のふたつの種類の人間がいると言われています。
POINT
- 自分が人されて嫌だったことを、自分もほかの人にしようと考える人
- 自分が人にされて嫌だったのだから、自分はほかの人にはしないと考える人
そして、うつ病の高校生A君は、「自分が親や友人にされて嫌だったことを、自分はほかの人にしたくはない…」と、周囲との穏やかな関係を築こうとしていたのかもしれません。
だとしたら、自分の感情を相手に押し付けたり八つ当たりするのを避けるために、A君はぐっと堪えてくれたわけですから、「うつ病の高校生A君は、苦しさのぶんだけ、周囲との平和的な関係を願ってくれていた」と私は感じました。
また、うつ病の高校生A君のように、「人との争いを避け平和的な人間関係を望む個性」を、心理学では「アダルトチルドレン:ロストワンタイプ」と捉えます。
平和的な人間関係を望む人=「アダルトチルドレン:ロストワンタイプ」については、以下の記事で詳しく説明しています。
うつ病の高校生との接し方
さて、さいごに、「うつ病の高校生との接し方」について、私なりの接し方を書き留めていきます。
「○○してあげる」ではなく、「○○してくれると嬉しい」
前述の通り、思春期の中学生・高校生は、ひとりの大人として「精神的自立」をしている最中です。
なので、上から目線で「話しを聞いてあげるよ…なんでも話してごらん…」という態度では、中学生・高校生は「見下されている…」と感じて、かえって心を閉ざしてしまうでしょう…
よって、対等な目線で「教えてくれると嬉しいな…教えてくれてありがとう…」という態度で接すると、中学生・高校生は「尊重してくれている…」と感じて、自分の意思でいろいろと教えるでしょう…
「子供を何とかしてあげなきゃ!」から「子供を信じて見守ろう…」
親から見れば、思春期とは「親離れ・子離れ」の始まりであり、「子供を何とかしてあげる子育て」から「子供を信じて見守る子育て」への転換期です。
もしかしたら、親がいろいろしてあげてしまうこと自体が、中学生・高校生にとっては余計なお世話であり、自尊心を傷つけてしまっているのかもしれません。
このように、「親に助けてほしい…甘えさせてほしい…」という雰囲気から、「親に邪魔されたくない…見守ってほしい!」という雰囲気への転換期が、中学生・高校生の心理=「思春期」なのですよね。
「見守る」ことは「見捨てる」ではなく、「信じる」こと
とはいえ、苦しんでいる我が子を目の前にして、ただただ、そっと見守ることは、親にとって「試練」と言えます。
ですが、だからといって、苦しんでいる我が子をそっと見守ることは、決して、我が子を見捨てることにはなりません。
「その子のことは、その子に任せ、信じて見守る…」
「かわいい子には旅よさせよ」のことわざのように、苦しんでいる我が子を「見守る」ことは、苦しんでいる我が子を「見捨てる」ことではなく、子供を「信じる」ことになります。
子供は信じてもらえると成長し、心理的に自立する
そうやって、親に信じてもらえた子供は「承認欲求」が満たされ、親に信じてもらえたことが嬉しくて自信がつき、いつの間にか、いろいろな悩みを自分で解決できるようになっていく=「精神的自立」を果たしているのかもしれません。
なので、私は心理カウンセラーとしても、高校生A君を信じてふわふわと見守らせて頂きました。
そして、高校生A君自身の意思と納得でもって、今まで、心にたくさん溜めこんだストレスを、自分の納得のペースで感情表現し、傷ついた自分の心を自分で癒してくれました。
結果、高校生A君は、心の中が空っぽになるくらいスッキリして、軽くなった心とともに、軽やかな気分になっていきました。
まとめ
さいごに、うつ病の高校生A君と接して感じた体験談について重要ポイントをまとめます。
- POINT中学生・高校生は「思春期」であり、心身ともに不安定な時期
- 「うつ病」とは、心にストレスが溜まってしまっている状態
- 子供が安心して過ごせない親を「毒親」と呼び、その家族を「機能不全家族」と呼ぶ
- 人間関係によって心が傷ついてしまうことを「心的外傷=トラウマ」と呼ぶ
- 「二度と傷つきたくない!」からこそ、無意識に働く防御心理を「防衛機制」と呼ぶ
- 「不登校」や「引きこもり」は「防衛機制」による行動
- 「うつ症状」は、ストレスが限界に近づいている「危険を知らせるサイン」
- 「いじめ」や「無視」は、相手の一生を狂わしてしまう場合もある
- 「いじめ」や「無視」をする人は、心に「寂しさ・孤独」を抱えている人が多い
- 「うつ病」とは、「心の優しさの表れ」「平和的な人間関係を望んでいる証」
- 中学生・高校生は「対等な目線」で接することで信用してくれる
- 「見守る」ことは「見捨てる」ではなく「信じる」こと
- 子供は信じてもらえると癒され「心理的に自立」する
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以上、「うつ病の高校生と接して感じた体験談」という記事でした。