POINT「未完の感情」を「未完の完結」へと導くことは、心の問題の解決を意味し、自分の人生に大きな好影響をもたらします。
心理カウンセラーの寺井です。
「未完の感情」とは、「ストレス」「未練」「気がかり」「後悔」「トラウマ」などとも呼ばれ、心の負担となる「ネガティブ感情」のことを指します。
なので、未完の感情が心に残っていると、心に負担を抱えやすくなり、「うつ病」「パニック障害」「対人緊張」など、さまざまな心の問題の原因になると、心理カウンセリングの現場では考えています。
反対に言えば、自分の人生に大きな影響を及ぼしている「未完の感情」を、今からでも「未完の完結」へと導くことで、長年、抱え続けてきた心の問題を根本的に解決することも可能になると、心理カウンセリングの現場では考えています。
この記事は、「未完の感情」を「未完の完結」へと導く流れを、心理カウンセリングの事例に沿って説明しています。
「未完の感情」を「未完の完結」へと導く流れ
未完の感情とは、自分の人生に大きな影響を与えていると言えます。
ただ、未完の感情とは、文字通り、遠い過去の感情である場合が多いため、例え、自分のことであっても、自分一人では気づきづらい場合があります。
そんなとき、未完の感情に気づいていくお手伝いをしてくれる人が「心理カウンセラー」であり、心理カウンセラーの協力を得ながら、未完の感情に気づいていく作業が「心理カウンセリング」です。
それでは、「『未完の感情』を『未完の完結』へと導いていく流れ」について、クライアントAさんとの心理カウンセリングの事例に基づいて説明していきます。
仕事を任されたのに、なぜか?やる気がでない
クライアントAさんは、20代男性の社会人1年生、新入社員さんです。
新入社員Aさんは、入社後、はじめの1~2か月は、仕事について、上司さんから具体的な指示をもらい、その指示通りに仕事をこなしていました。
そして、入社して3か月くらい経った頃から、Aさんは、「そろそろ、A君なりに自分で考えて仕事に取り組んでほしい…」と上司さんから言われるようになりました。
これは、Aさんの仕事ぶりが上司さんに評価され、Aさんは上司さんから仕事を任されるようになったことを意味するのですが、なぜか、Aさんは自分なりの考えがまったく浮かばず、それによって仕事が滞ってしまい、仕事に対するやる気がなくなってしまいました。
そして、このような苦しい状況をなんとかしようと、カウンセリングに訪れてくださいました。
自分の意見がわからない
カウンセリングを進めていくと、Aさんは、「自分は○○したい!」「自分は○○と思う!」など、自分の意見を考えれば考えるほど、なぜか?モヤモヤ・グルグルと焦りと不安が募り混乱してしまうことに気づいていきました。
つまり、Aさんは、「自分の意見を考えれば考えるほど、自分の意見がわからなくなってしまう…」という心理的な特徴を持っていることに気づいていきました。
自分の意見を主張しない方が安全…という思考癖
自分の意見がわからなくなってしまう理由について、さらにカウンセリングを進めていくと、Aさんには、「自分の意見を主張しない方が安全だ…」と、自分の意見を主張することを回避していまう思考癖があることがわかってきました。
この思考癖についてさらにカウンセリングを進めていくと、「自分の意見を持ち、自分の意見を主張したとしても、どうせ誰かに否定されるに決まっている…」という、「自分の意見を否定されることに対する恐れ」の気持ちが存在することに気づいていきました。
自分の意見を主張したことで負った「トラウマ」と、その影響「PTSD」
では、Aさんは、いつから、「自分の意見を持ち、自分の意見を主張したとしても、どうせ誰かに否定されるに決まっている…」と考えがちになってしまったのかについて、さらにカウンセリングを進めていくと、子ども時代の親との関係に関わりがあることがわかってきました。
Aさんは、子ども時代、テレビでサッカーの試合を見て感動したことがきっかけで、「サッカー選手になりたい!」という夢を持つようになったそうです。
とはいえ、そのとき、Aさんはサッカー未経験だったので、サッカー教室に通いたくて、「自分はサッカー選手になりたい!だから、サッカー教室に通わせてほしい!」と勇気をもって母親にお願いをしたそうです。
ですが、Aさんの母親からは、「あなたがサッカー選手になれるわけでしょ!そんなのダメです!」と言われ、Aさんは勇気をもって母親に意見をしたのに、自分の意見を母親に全否定されてしまい、とても大きなショックを受けたという、「トラウマ体験」があったことを思い出し、今回の症状は、トラウマ体験による「PTSD」であると気づいていきました。
PTSDとは、衝撃的な出来事を経験した後に起こる心の障害です。PTSDの症状によって、日常生活に使用をきたす。現実感がなくなるなるという解離症状が表れて、生き生きと生活できなくなる。こういう人もたくさんいます。人生のなかで、積極的にチャレンジしたり、楽しんだりすることができなくなってしまいます。
引用元:PTSD 心的外傷後ストレス障害
未完の感情が生まれる理由「防衛機制」
そして、このトラウマを体験して以来、Aさんは自分の意見を主張しようとすればするほど、「また、否定されたらどうしよう…」「また、傷つけられたらどうしよう…」と、グルグル・モヤモヤと「自分の意見を否定されることに対する恐れ」の気持ちを強く感じるようになり、結果、「自分の意見を主張しない方が安全だ…」という思考癖を持つようになっていきました。
このように、ひとたび傷ついた心が二度と傷つかないで済むように無意識に働く防衛心理を、心理学では「防衛機制」と言います。
防衛機制(ぼうえいきせい、英: defence mechanism)とは、受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。
引用元:防衛機制
反対に言えば、Aさんのように、ひとたび心が傷ついたのなら、「二度と傷つきたくない!」と感じるほうが人間として自然です。
なので、「未完の感情」の存在とは、ある意味、「自分の心に、心の傷が存在することを示すサイン」でもあると言い換えることができます。
Aさんが抱える「未完の感情」とその影響
このとき、Aさんの心に残っている「未完の感情」とは、以下のような気持ちです。
POINT
- 「サッカー選手になりたい!」をはじめとする、「『自分は○○したい!』『自分は○○と思う!』」という自分の意見を母親に認めてもらいたい!」という感情が、Aさんの未完の感情に当たります。
このように、Aさんの心には、「自分の意見を母親に認めてもらいたい!」という「未完の感情」が、子ども時代からずっと、グルグル・モヤモヤと心に残っていたため、そのぶん、「自分の一番の味方であるはずの母親ですら自分の意見を認めてくれないのだから、親ではない上司さんが自分意見を認めてくれるはずがない…」「もう、二度と傷つきたくない!」という「防衛機制」が強く働いてしまい、結果、「自分の意見を考えれば考えるほど、自分の意見がわからなくなってしまう…」という心理的な特徴を持つようになったのです。
Aさんが自ら実現した「未完の完結」
心理カウンセリングを利用することで、Aさんは、「自分の意見を母親に認めてもらいたかった…」という、自らの「未完の感情」に気づくことができました。
とはいえ、長年、母親に話せなかった「未完の感情」を、いまさら母親に話すことに対して、Aさんは、強い抵抗感を感じました。
なので、Aさんは、長年、母親に話せなかった「未完の感情」を母親に話すのではなく、まずは、インナーチャイルドセラピーによって存分に発散することで、母親を巻き込むことなく、自分1人で「未完の完結」を果たしていきました。
Aさんの悩みの解決「統合」
また、Aさんは、インナーチャイルドセラピーによって「未完の完結」を果たすことできたことで、心に余裕と自信が生まれました。
そして、しばらくしてから、「自分の意見を母親に認めてもらいたかった…」という、長年、母親に話せなかった気持ちを、自分の言葉で母親に伝えることができました。
母親からも、「当時は、お母さんも子育てに自信がなくてイライラして八つ当たりしてしまったのね…ごめんなさい…」「あなたが自分の意見や夢に沿って生きてくれれば、お母さんも嬉しいわ…」と言ってもらえたことで、「自分の意見を母親に認めてもらいたい!」という、Aさんの「未完の感情」はようやく完全に満たされたのです。
こうして、「未完の感情」を「未完の完結」へと導くことができたことで、Aさんは、だんだんと、「自分の意見を持ってもいいんだ!」「自分の意見を主張してもいいんだ!」と感じられるようになり、仕事についても自分の意見を主張できるようになっていきました。
また、「未完の感情とは何か?」「未完の完結とは何か?」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
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インナーチャイルドセラピーの効果
Aさんのように、インナーチャイルドセラピーによって「未完の感情」を「未完の完結」へと導くことは、自分の人生に大きな好影響をもたらします。
そして、長年、自分の人生に大きな影響を及ぼしていた未完の感情を、インナーチャイルドセラピーによって未完の完結へと導くと、主に以下のような効果が生まれます。
POINT
- 親からの自立できるようになる
- 自己肯定感が高まる
- 適切な人間関係を築けるようになる
- やりがいや生きがいを感じられるようになる
- 恋愛や結婚や子育てに自信が生まれる
このように、「自分が抱えている未完の感情に気づき、未完の感情を解放することによって、心の問題を解決し、生きづらさを解消できる」と、心理カウンセリングの現場では考えています。
また、Aさんのように、親を責めることなく、自分の心の問題を自分で解決をする技法=「インナーチャイルドセラピーの効果についてまとめた体験談」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
未完の感情は、心理カウンセリングで確実に完結できる
このように、人間は、親をはじめ、自分の感情を誰かに否定されたり無視されたりすると心が傷つき、心に負った傷が大きければ大きいほど、「もう、二度と傷つきたくない!」という「防衛機制」が強くなり、防衛機制が強ければ強いほど、「未完の感情」も大きくなると言えます。
なので、Aさんのように、「トラウマ体験」による、とても大きな「未完の感情」が残っていると、頭ではわかっていても、気持ちが落ち着かず、結果、自分の人生に悪影響を与えてしまう場合があります。
ですので、「自分にも、未完の感情がありそうだなぁ…」と心当たりがあるのだけれど、自分1人では混乱してしまうと感じる方は、Aさんのように、心理カウンセリングを利用することで、心理カウンセラーの協力を得ながら、「未完の感情」を「未完の完結」へと確実に導いていくことも、ひとつの方法です。
ちなみに、当社メンタル心理そらくもが提供している「解決志向(短期療法)による心理カウンセリング」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にして下さい。
まとめ
さいごに、「未完の感情」を「未完の完結」へと導く流れについて重要ポイントをまとめます。
POINT
- 自分の意見に自信が持てないと感じる人は、「自分の意見を否定されることに対する恐れ」を強く持っている
- 自分の意見に自信が持てないと感じる人は、子ども時代、自分の意見を親に否定され、心に「トラウマ」を抱えている場合がある
- 自分の心が傷つかないで済むように無意識に働く防衛心理を「防衛機制」と言う
- 「未完の感情」とは、「心の傷が存在することを示すサイン」であるとも言える
- Aさんは、「未完の感情」を母親に話すことに抵抗感を感じたため、インナーチャイルドセラピーで「未完の完結」を果たし、仕事で自分の意見を主張できるようになった
- 「未完の感情」を「未完の完結」へと導くことは、自分の人生に大きな好影響をもたらす
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
以上、「『未完の感情』を『未完の完結』へと導く流れ」という記事でした。