POINT回避依存症の原因になる「家庭環境」の問題点は、①拡大家族、②父親不在、③苦労の多い家庭、④親子役割逆転、などが考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「回避依存症の原因」には「子どもの頃の家庭環境」が密接に関わっており、「祖父母の影響が強い」「父親不在」「貧困・苦労が多い」「子どもが親を支えている」など、子どもの頃の家庭環境に何らかの問題があった場合、その影響により「回避依存症」になる可能性が高いと考えられています。
また、「拡大家族・父親が不在・苦労が多い・親子役割逆転」など、回避依存症の原因になるような家庭を「機能不全家族」と言います。
ちなみに、この記事は「回避依存症の原因になる『家庭環境』の問題点」についての解説です。
なお、「回避依存症の原因になる『親の子育て』の問題点」ついては、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、回避依存症の原因になる「家庭環境」の問題点について解説していきます。
回避依存症の原因になる「家庭環境」4つの問題点
子どもが心身ともに健全に成長していくためには、「衣・食・住・医療」などの生活環境が整った「安全な居場所」や、さまざまな悩みを相談できる「心の拠り所」が必要不可欠です。
このように「家庭の役割」とは、子どもが安心して生活ができる場所であること、すなわち、子どもにとって「心の安全基地」であることと言えます。
安全基地とは、アメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した人間の愛着行動に関する概念である。子供は親との信頼関係によって育まれる『心の安全基地』の存在によって外の世界を探索でき、戻ってきたときには喜んで迎えられると確信することで帰還することができる。
引用元:安全基地
とくに、「父親」と「母親」にはそれぞれ大切な「役割」があり、子どもは「父親」から認められたり「母親」から褒められることで「嬉しさ」や「安心」や「自信」を感じながら、大人へと成長していくことができます。
なお、「父親に認めてもらえた」「母親に褒めてもらえた」など、親に自分の存在を認めてもらえたときに感じる「嬉しさ」や「安心」や「自信」を「交流分析」という心理学では「ストローク(心の栄養)」と言います。
交流分析の創始者であるエリック・バーンは、人の存在や価値を認める刺激(言動や働きかけ)のことをストロークと名付けました。ストロークは「心の栄養」とも呼ばれ、人が生存するためには不可欠なものとされています。
反対に言えば、「子どもの健全な成長に必要な生活環境が十分に整っていない」あるいは「父親・母親の役割がうまく機能していない」など、「家庭の役割」がうまく機能していなかった場合、子どもは日常的に「心の栄養不足」を感じながら成長することになり、その影響により「回避依存症」になる可能性があると考えられます。
なお、「回避依存症の原因になる『家庭環境』の問題点」は、主に以下の「4つ」があげられます。
POINT
- 拡大家族
- 父親不在
- 苦労の多い家庭
- 親子役割逆転
それでは、以下に詳しく解説していきます。
拡大家族
「拡大家族」とは、祖父・祖母・叔父・叔母など、子どもから見て「父親・母親」以外の大人が同居している家族のことを指し、「核家族」の反対を意味します。
「拡大家族」の場合、「祖父・祖母」が最年長者という立場になり、父親は「息子・婿」という立場、母親は「娘・嫁」という立場になります。
拡大家族:「核家族」以外の家族の形態を総称したものです。子どもたちが結婚後も親と同居する大家族の形をいい、直系家族によるものと複合家族によるものがあります。
引用元:拡大家族とは – 介護110番
このような「家庭環境」の場合、「父親・母親」は子育てについて「祖父・祖母」からの干渉を受けやすく、その結果、「父親・母親」は子育てに自信を失ってしまったり、子育てに消極的になってしまう場合があります。
とくに「母親」が「嫁」という立場であった場合、「家事」に時間と労力を奪われたり、「祖父(舅)・祖母(姑)との価値観の違い」が苦痛となって「子育てに必要なエネルギー」が不足してしまい、「子どもとの関り」が疎かになってしまうという傾向があります。
義両親と暮らしていて、たいていのことには耐えている嫁でも、子どもの未来がかかっているとなると話は別です。子どもと遊んでもらったり面倒を見てもらったりと良いこともある一方で、干渉されすぎると苦痛を感じます。孫に対して厳しい態度で接することができない祖父母の場合、必要以上に甘やかしてしまい、子どもの躾に悪影響となる場合が少なくありません。
このように、「拡大家族」で育った子どもは「親との関り」を十分に持つことができず、そのぶん「他者との関り方」を十分に学べないまま大人へと成長していくことになり、大人になったとき、「対人関係に問題を抱えやすくなる」と考えられています。
以上のことから、「拡大家族」で育ったことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
父親不在
日本では、「夫(男性)は外で働き、妻(女性)は家庭を守るべきである」という考え方があり、その影響で「父親が不在がちの家庭」が多くなりやすいという傾向があります。
近年においても「ワンオペ育児」などと言われるように、日本では、主に「母親」が1人で子育てをしている家庭が多いと言えます。
このような「家庭環境」の場合、当然のことながら「父親との関わりが不足・母親との関わり過剰」という「偏った親子関係」に陥りやすいため、父親不在の親子関係は、子どもの人格形成にさまざまな影響を与えると考えられています。
なお、「父親が不在がちな家庭環境が子どもに与える影響」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 母子融合
父親不在により、母親への「強い依存心」が残ってしまい、大人になって「女性に対して依存的・支配的・攻撃的」になる - 誇大な万能感と自己顕示性
父親に叱られた経験が少ないことから、「何でも許される!」という「幼児的万能感」が強く残ってしまい、大人になって「社会への適応」が難しくなる - 不安やストレスへの弱さ
父親不在による「強い不安」が残ってしまい、大人になって「情緒不安定」になる - 三者関係の困難
父親不在により、母親との「一対一の二者関係」ばかりが強まってしまい、大人になって「三者関係(グループ・集団・組織)への適応」が難しくなる - 向上心の阻害
父親不在により、思春期以降の「自我の発達」が妨げられてしまい、大人になって「投げやり・無気力」になる - 性的アイデンティティの混乱
男子の場合は、父親の不在により「男性として自分」を「父親」に認めてもらえず、大人になって「自分は何者か?(アイデンティティ)」に混乱を感じやすくなる
女子の場合は、父親の不在により「苦労する母親」を不憫に思い、大人になって「男性への不信感」や「女性であること、母親となることへの違和感」を感じやすくなる - 親になることへの困難
男子の場合は、父親不在により「父親の振る舞い方」を学べないまま大人になり、「父親の振る舞い方」がわからないことから、子どもを持つことを躊躇したり、子育てから逃げやすくなる
女性の場合は、父親不在により「父親からの愛情」が不足したまま大人になり、「父親からの愛情不足」を補おうとすることから、夫・子どもに対して「過度な理想」を求めるようになり、「理想」と「現実」のギャップに「強い失望・怒り」を感じやすくなる
このように、「父親が不在がちの家庭」で育った子どもは、「父親から受け継ぐべきことが不足・母親から受け継ぐべきことが過剰」という「偏った関係性」のなかで大人へと成長していくことになり、大人になったとき、「対人関係に問題を抱えやすくなる」と考えられています。
以上のことから、「父親が不在がちの家庭」で育ったことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
苦労の多い家庭
このように、子どもの頃に生まれ育った「家庭環境」は、その後の「人格形成」に大きな影響を与えます。
そして、子どもの頃、「母子家庭」「父子家庭」「兄弟姉妹の多い大家族」「重病・難病を抱える兄弟姉妹のケアや、祖父母の介護を要する家庭」「貧困家庭」など、「苦労が多い家庭環境」で育った場合、「親が苦労している様子」や「兄弟姉妹が苦労している様子」を間近で見ながら、大人へと成長していったことになります。
そうすると、大人になって恋愛や結婚など「自分の幸せ」を考え始めたとき、「幸せになりたい気持ち」と同時に「幸せになることへの罪悪感」を感じ始める場合があります。
なお、「苦労の多い家庭」で育った影響で感じる「幸せになることへの罪悪感」は、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 女手ひとつで育ててくれた「母親」の苦労を想うと、自分だけ幸せになるわけにはいかない
- 男手ひとつで育ててくれた「父親」の苦労を想うと、自分だけ幸せになるわけにはいかない
- 「幼い弟や妹」の将来を考えると、自分だけ幸せになるわけにはいかない
- 献身的に家族の世話をしている「親」の苦労を想うと、自分だけ幸せになるわけにはいかない
- お金に苦労している「家庭状況」を考えると、自分だけ幸せになるわけにはいかない
また、このような「幸せになることへの恐れ」や「幸せになることへの罪悪感」を感じることを「幸せ恐怖症」と呼ぶ場合があります。
幸せ恐怖症は一般的に「幸せに対する、もしくは幸せになることに対する不合理な強い恐怖感」と言われているよ。たとえば「自分は幸せになる資格はない」とか「幸せは不幸の前触れのように感じる」など想像してしまい、幸せになる状況を回避しようとする状態を指す
このように、「苦労の多い家庭」で育った子どもは、親・兄弟姉妹への心配・気がかりを子どもの頃から強く感じ続けている場合が多く、そのぶん、親・兄弟姉妹を差し置いて「自分だけ幸せになることへの抵抗感」を感じやすくなり、大人になったとき、「恋愛・結婚など、幸せを追い求めることを避けるようになる」と考えられています。
以上のことから、「苦労の多い家庭」で育ったことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
親子役割逆転
本来「家庭の役割」とは、子どもが安心して生活ができる場所であること、すなわち、子どもにとって「心の安全基地」であることと言えます。
ですので、子どもが親に甘え、親が子どもの甘えを満たしてあげることが「自然な親子関係」ということになります。
ですが、本来であれば、子どもが親に甘えるのが自然であるところ、親が子どもに甘え、子どもが親の甘えを満たしている「不自然な親子関係」を「親子役割逆転」と言います。
「親子の役割逆転」とは通常の親子関係とは真逆の役割が成立している状態です。親は子供の甘えの欲求を満たしてあげることが自然なことですが、「親子の役割逆転」では親が子供に甘え、子供が親の欲求を満たす役割を担わされています。
例えば、娘に対して「○○しなさい!」「○○はダメ!」とやることなすこと文句をつける「過干渉な母親」は、まるで「駄々をこねるイヤイヤ期の女児」のようであると言え、「駄々をこねる母親」の「わがまま・甘え」を懸命に受け止め続ける娘は、まるで「イヤイヤ期の女児に振り回される母親の役割」を担わされていると言えます。
このように「親子役割逆転」とは、表面的には「世話焼きな親」と「従順な子ども」の関係性に見える場合が多いのですが、内面的には「子どもに甘える親」と「親の甘えを満たしている子ども」の関係性であり、「親が子どもに精神的依存をしている関係性」と言い換えることができます。
また「親子役割逆転」とは、本来であれば「親」が担うべき「家事・祖父母の介護・幼児の世話」などを、「親」に代わって子どもが日常的に担わされている場合も含みます。
なお、本来であれば「親」が担うべき「家事・祖父母の介護・幼児の世話」などを、「親」に代わって日常的に担っている子どもを「ヤングケアラー」と言います。
「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがあります。
引用元:ヤングケアラーについて
このように、「親子役割逆転の家庭」で育った子どもは、家族を支える責任と負担から、学業や友人関係が後回しになってしまう傾向があり、その影響で「夢を追うこと・楽しむこと・自分の人生を豊かにすることを避けるようになる」と考えられています。
以上のことから、「親子役割逆転の家庭」で育ったことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
回避依存症の原因:「機能不全家族」
このように、「拡大家族・父親が不在・苦労が多い・親子役割逆転」などの「家庭環境」は「回避依存症の原因」になると考えられます。
また、「拡大家族・父親が不在・苦労が多い・親子役割逆転」など、「家庭の役割」がうまく機能していない家族を「機能不全家族」と言います。
機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。
以上のことから、「機能不全家族」とは「回避依存症の原因になる家庭」と言い換えることができます。
なお、「機能不全家族」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「回避依存症の原因になる『家庭環境』の問題点」としては、以下の点があげられます。
- POINT「拡大家族」で育った場合、「親との関り」を十分に持つことができず、その影響で「対人関係に問題を抱えやすくなる」
- 「父親不在の家庭」で育った場合、「父親・母親・自分の三者関係の経験」を十分に積むことができず、その影響で「対人関係に問題を抱えやすくなる」
- 「苦労が多い家庭」で育った場合、「自分だけ幸せになることへの抵抗感」を感じやすくなり、その影響で「恋愛・結婚など、幸せを追い求めることを避けるようになる」
- 「親子役割逆転の家庭」で育った場合、学業や友人関係が後回しになってしまい、その影響で「夢を追うこと・楽しむこと・自分の人生を豊かにすることを避けるようになる」
- 「回避依存症の原因になる家庭」を「機能不全家族」と言う
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページにまとめていますので紹介します。
以上、「回避依存症の原因になる『家庭環境』4つの問題点」という記事でした。