POINT回避依存症の原因になる「親の子育て」の問題点は、①身体的暴力を振るう、②精神的暴力を振るう、③過干渉、④過保護、⑤子育てに消極的、などが考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「回避依存症の原因」には「親から受けた子育ての影響」が密接に関わっており、「身体的暴力を受けた」「精神的暴力を受けた」「過干渉を受けた」「過保護に育てられた」「親との関りが少なかった」など、子どもの頃に親から受けた子育てに何らかの問題があった場合、その影響により「回避依存症」になる可能性が高いと考えられています。
また、「身体的暴力・精神的暴力・過干渉・過保護・ネグレクト」など、回避依存症の原因になるような子育てを行う親を「毒親」と呼ぶ場合があります。
ちなみに、この記事は「回避依存症の原因になる『親の子育て』の問題点」についての解説です。
なお、「回避依存症の原因になる『家庭環境』の問題点」ついては、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、回避依存症の原因になる「親の子育て」の問題点について解説していきます。
回避依存症の原因になる「親の子育て」5つの問題点
子どもが生まれて初めて関わる人間は「親」であり、子どもは「親との関り」のなかで「他者との関わり方(人間関係の築き方)」を学んでいきます。
小さいうちは両親との関わりを通して社会性の土台を作る…(中略)…子どもは潜在的に両親と仲良くしたい、優しくされたいという気持ちを持っています。その気持ちが社会性が発達する原動力になるのです。…(中略)…小さいうちは、同年代の子どもと遊ばせるよりも親と遊ぶ子どもの方が社会性のスキルが高められると言われています。
このように、大人になって必要となる「親子・家族・友人・恋愛・結婚・職場」などの「人間関係の築き方(社会性のスキル)」は、「子どもの頃の親との関り方」が「土台」となっているため、そのぶん「子どもの頃の親との関り方」は「回避依存症の原因」にも大きな影響を与えていると言えます。
回避依存症の原因…(中略)…過干渉な親、過保護な親、親と子の役割が逆転した親子など、情緒的な束縛が原因にあげられます。親子関係や周囲の大人との間で、消耗し枯渇する感覚や、飲み込まれそうな感覚を体験してきました。精神的に親の面倒を見てきた回避依存症者は、どこか自分は特別な存在だと思うようになるようです。
引用元:回避依存症
このように、「親の子育て」に何らかの問題があった場合、子どもは「他者との関わり方(人間関係の築き方)」を十分に学べないまま大人へと成長していくことになり、その影響により「回避依存症」になる可能性があると考えられます。
なお、「回避依存症の原因になる『親の子育て』の問題点」は、主に以下の「5つ」があげられます。
POINT
- 身体的暴力を振るう親
- 精神的暴力を振るう親
- 過干渉な親
- 過保護な親
- 子育てに消極的な親
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①身体的暴力を振るう親
日本には「躾(しつけ)」という言葉があり、親が子どもを育てるにあたり、しばしば「体罰」と呼ばれる「身体的虐待」が行われてしまう場合があります。
また、日本においては「殴る・蹴る・突き飛ばす」など、「子どもの命に関わる行為のみが体罰(身体的虐待)に当たる」と誤解をして認識している親が多いため、親が自覚できないまま「体罰(身体的虐待)」が繰り返されてしまう場合があります。
なお、「厚生労働省が定義する体罰(身体的虐待)」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
- 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
- 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
- 他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた
- 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
引用元:家庭における体罰の定義とは?
本来であれば、子どもにとって「親」とは「最も信頼したい擁護者」であるはずなのですが、このような場合、子どもは最も信頼したい存在である「親」から一方的に「身体的暴力」を受けることになってしまい、そのぶん「体の傷」に加えて、深い「心の傷(幼少期のトラウマ)」を負ってしまうことになります。
幼少期のトラウマは人格形成に決定的影響を与え、大人になっても悪影響をもたらします。…(中略)…仮に幼少期のトラウマを思い出せない人でも、無意識情動領域では生きづらさを強いる『不安感、恐怖感、抑うつ、希死念慮、焦り、怒りやイライラ』が渦巻いています
引用元:【幼少期のトラウマ克服方法】
また、「心の傷(幼少期のトラウマ)」が原因で、対人関係に困難が生じることを「複雑性PTSD」と言います。
複雑性PTSDは、持続的な虐待やドメスティック・バイオレンスなどのトラウマ体験をきっかけとして発症し、PTSDの主要症状(フラッシュバックや悪夢、過剰な警戒心など)に加えて、感情の調整や対人関係に困難がある等の症状を伴います。こうした症状により日常生活や社会生活上に大きな支障をきたす精神疾患です。
引用元:複雑性PTSD治療前進へ
このように、親の「身体的暴力」によって負った「心の傷(幼少期のトラウマ)」は、子どもの人格形成に大きな影響を与え、大人になったとき、人間関係において「不安・恐怖・落ち込み・希死念慮・焦り・怒り・イライラ」を敏感に感じやすくなると考えられています。
そして、親から「身体的暴力」を受けて育った子どもは、大人になったとき、人間関係において「情緒不安定」になりやすくなり、そのぶん「他者と関わることに過剰な警戒心を感じやすくなる」と考えられています。
以上のことから、「身体的暴力を行う親」は、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
精神的暴力を振るう親
日本では「躾(しつけ)」の一環として、親が子どもを「怒鳴る・無視する」など「精神的虐待(モラハラ・受動攻撃)」が行なわれてしまう場合が多いという傾向があります。
なお、「親が子どもに行う精神的暴力」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「威圧」による精神的暴力(モラハラ)
「怒鳴る・貶す・人格否定・男女差別・きょうだい差別・あらさがし・ダメ出し・全否定」など - 「無言」による精神的暴力(受動攻撃)
「存在を無視・頼みごとを無視・無言で不機嫌・無言でため息・無言で大きな物音を立てる・置き去りにする」など
子どもが生まれて初めて関わる人間は「親」であり、子どもの頃に育まれた「親への信頼感」を「基本的信頼感」と呼び、「基本的信頼感」は生涯にわたり、「自分自身への信頼感(自己肯定感)」と「他者への信頼感」に大きな影響を与え続けると考えられています。
基本的信頼(basic trust)とは、エリクソンの提唱した概念。育ててくれる親への、人格的な信頼感を通し、自分がこの世に存在することを肯定的に捉え、人生には生きる意味や生存する価値があり、世界は信頼するに足るものだという感覚を持つこと。…(中略)…青年期に向け、あるいは生涯に渡り、自分自身への信頼と他者との関わりに大きな影響を与えると考えられる。
引用元:基本的信頼
ですが、このような「精神的暴力」を親から受けた場合、子どもは「親への信頼感(基本的信頼感)」を高めることができず、「自己肯定感が低い」あるいは「他者を信頼できない」という問題を抱えたまま、大人へと成長していくことになります。
自己肯定感の低い子どもは、常に自分に自信がなく、積極性に欠けたり、チャレンジ精神が持てなかったりする傾向に陥りがちとなります。結果として、生きていく上でさまざまなトラブルに巻き込まれやすく、生きづらさを感じやすくなってしまう場合もあるでしょう。
このように、親から「精神的暴力」を受けて育った子どもは、大人にになったとき、人間関係において「自信がない」あるいは「相手を信頼できない」と感じやすくなり、そのぶん「他者と深く関わることを避けるようになる」と考えられています。
以上のことから、「精神的暴力を行う親」は、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
過干渉な親
「過干渉な親」とは、子どもの主張を無視して親の考えを子どもに押し付ける親を指し、子どもを過剰にコントロールする親と言えます。
過干渉は、親の意向を押し付けてしまうので、子どもの主張が無視されることが頻繁に起こります。
このように、「過干渉な親」は子どもの成長を見守ることができず、子どもの気持ちを無視して過剰に関わりすぎてしまうため、子どもの心を傷つけてしまったり、子どもの精神的な自立を阻害してしまうという傾向があります。
ですので、「過干渉な親」に育てられた場合、子どもは「親の過剰なコントロール」を常に受けながら、「息苦しさ」や「自由のなさ」を常に感じながら大人へと成長していくことになり、大人になったとき、人間関係における「息苦しさ」や「自由のなさ」に対して、過剰なまでの「防衛心理」を示すようになると考えられています。
なお、面倒なことや困難なことに関わることを避けることで、自分が苦しまないよう防衛することを「防衛機制(逃避・回避)」と言います。
面倒に感じることや向き合うことが困難な現実から目をそらし、別の現実や空想へ目を向けることを防衛機制では逃避と呼んでいます。…(中略)…また、防衛機制の「抑圧・否認・隔離」の総称を回避・逃避と表現することもある。
引用元:回避・逃避とは|解説と具体例
「逃避」は、避けるべきものに直面したときに、選択される行動です。一方「回避」は、避けるべきものがやってくると察知し、それを最悪の事態にならないよう事前に対策する行為です。…(中略)…「逃避」は空間的に「逃げる」ことで距離を稼ぎます。一方「回避」は、回り道をすることで、避けるべきものに近づかないという選択になるのです。
このように、子どもの頃から「親の過剰なコントロール(過干渉)」を受けて育った子どもは、大人になったとき、そのぶん「他者にコントロールされることを極端に恐れるようになる」と考えられています。
以上のことから、「過干渉な親」に育てられたことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
過保護な親
「過保護な親」とは、子どもが望むものを何でも与えてしまったり、子どもが嫌がることをすべで代わりにやってしてしまう親を指し、子どもが「苦労・困難・挫折」を感じないように世話を焼きすぎてしまう親と言えます。
「過保護」とは、子どもが望むことを何でも好き放題にさせること、子どもが不快感を示したり困難を感じることに対し、親が先回りして回避する行為を指して言われることが多いでしょう。その結果、わがままに育ち、独立心が弱く、依頼心が強かったり、また集団生活に不適応な性格になりやすいと考えられます。
このように、「過保護な親」は子どもの成長を見守ることができず、子どもが「苦労・困難・挫折」を経験する機会を先回りして奪ってしまうため、子どもの生活能力を低下させてしまったり、子どもの精神的な自立を阻害してしまうという傾向があります。
ですので、「過保護な親」に育てられた場合、子どもは「自分は何もしなくても、誰かがなんとかするだろう…」あるいは「自分が困っていたら、誰かが助けてくれるだろう…」という「依存心」を強く残したまま大人へと成長していくことになり、大人になったとき、相手に一方的に依存しやすく、そのぶん「他者と対等な信頼関係を築くことが困難になる」と考えられています。
あるいは、「過保護な親」に育てられた場合、子どもは「失敗」や「挫折」を経験できず、そのぶん「自分はすごいんだ!」という「子どもっぽい自信」を強く感じたまま大人へと成長していくことになります。
なお、「自分はすごいんだ!」という「子どもっぽい自信」を「幼児的万能感」と言います。
幼児的万能感とは?文字通り、幼児的で(精神的に未熟で)万能である(自分は何でもできるすごい奴だ)と信じる心のことです。…(中略)…また、この頃に身につけておきたい「根拠のない自信」にも通ずるものがあり、幼いころに幼児的万能感を持つことはとても大切なことです。
引用元:厄介な幼児的万能感
本来であれば、子どもは「幼児的万能感」を感じながら、だんだんと「他者との関り方」を身に付けていき、ときに「失敗」や「挫折」を経験することで「幼児的万能感」が自然と打ち砕かれ、代わりに、他者との「協調性」を身に付けていきます。
ですが、「過保護な親」に育てられた子どもは、「幼児的万能感」を強く残したまま大人へと成長していくことになり、大人になったとき、「プライドが高い・わがまま・傲慢」になりやすく、そのぶん「他者に自分の心を開くことが困難になる」と考えられています。
以上のことから、「過保護な親」に育てられたことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
子育てに消極的な親
子どもは「親との関り」のなかで「他者との関り方」を学んでいき、頭を撫でてもらったり、抱きしめてもらったり、一緒にお風呂に入ったり、一緒に眠ったり、一緒に遊んだり、親との「肌の触れ合い(スキンシップ)」によって「人の温かさ」を感じていきます。
なお、子どもが「親との関り」のなかで「他者との関り方」や「人の温かさ」を感じていくことを「愛着の形成」と言います。
【愛着形成】は、…(中略)…端的にいうと「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことです。…(中略)…愛着の形成は、子どもの人に対する基本的信頼感をはぐくみ、その後の心の発達や人間関係に大きく影響します。乳幼児期に愛着にもとづいた人間関係を経験することが、その後の子どもの社会性の発達に重要な役割をもちます。
ですが、仕事が忙しいなどの理由で「親が家庭に不在がち」であったり、子育てに自信がないなどの理由で「親が子育てに消極的」であると、子どもは「親との関り(愛着の形成)」を十分に持つことができず、そのぶん「他者との関り方」を十分に学べないまま大人へと成長していくことになり、大人になったとき、「対人関係に問題を抱えやすくなる」と考えられています。
なお、「親との関り(愛着の形成)」を十分に持つことができなかったことが原因で、親子・家族・友人・恋愛・結婚・職場などの対人関係に問題が生じることを「愛着障害」と言います。
愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。…(中略)…母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。乳幼児期に養育者ときちんと愛着を築くことが出来ないと、「過度に人を恐れる」または「誰に対してもなれなれしい」といった症状が現れることがあります。
引用元:愛着障害(アタッチメント障害)
このように、親との「愛着(情緒的な絆)」がうまく形成されなかった子どもは、大人になったとき、「人との関り方がわからない」あるいは「人の温かさがわからない」など、対人関係への苦手意識を感じやすくなり、そのぶん「他者とのあいだで、友情・愛情・信頼(情緒的な絆)を育むことが難しくなる」と考えられています。
以上のことから、「子育てに消極的な親」に育てられたことは、「回避依存症」の原因のひとつと考えられます。
回避依存症の原因:「毒親」
このように、「身体的暴力・精神的暴力・過干渉・過保護・ネグレクト」などを行う親は「回避依存症の原因」になると考えられます。
また、「身体的暴力・精神的暴力・過干渉・過保護・ネグレクト」など、子どもの人生に悪影響を及ぼす子育てを行う親を「毒親」と呼ぶ場合があります。
「毒親」というものに明確な定義はありませんが、一般的には、子どもを支配したり、傷つけたりして、子どもにとって「毒」になる親のこと。…(中略)…毒親の特徴は、主に過干渉、過度な管理、支配、価値観の押し付けなど。子どもにとってストレスとなるような言動から、ひどい虐待行為まで「毒」であると指摘される親の行動の範囲はさまざまです。
以上のことから、「毒親」とは「回避依存症の原因になる親」と言い換えることができます。
なお、「毒親」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「回避依存症の原因になる『親の子育て』の問題点」としては、以下の点があげられます。
- POINT親から「身体的暴力」を受けた場合、「心の傷(幼少期トラウマ)」負い、その影響で「他者と関わることに過剰な警戒心を感じやすくなる」
- 親から「精神的暴力」を受けた場合、「基本的信頼感」を高められず、その影響で「他者と深く関わることを避けるようになる」
- 「親の過剰なコントロール(過干渉)」を受けた場合、「他者にコントロールされることを極端に恐れるようになる」
- 「過保護な親」に育てられた場合、「プライドが高く」になりやすく、「他者と対等な信頼関係を築くこと・他者に自分の心を開くことが困難になる」
- 「子育てに消極的な親」に育てられた場合、「他者とのあいだで、友情・愛情・信頼(情緒的な絆)を育むことが難しくなる」
- 「回避依存症の原因になる親」を「毒親」と呼ぶ場合がある
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページにまとめていますので紹介します。
以上、「回避依存症の原因になる『親の子育て』5つの問題点」という記事でした。