POINT落ち込みやすい性格の原因は、「①自己肯定感を低めてしまう考え方のクセ」と「②セロトニンが不足してしまう生活習慣」の2つが考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「落ち込みやすい性格は、生まれながらの性格だから変えられない…」と、このように感じている方がいらっしゃるかもしれません。
確かに「性格」と聞くと、生まれ持った遺伝的な特徴だから変えられないと感じるのは自然ですが、心理学では、落ち込みやすい性格を「生まれ持った遺伝的な特徴」とは捉えず、あくまで「生まれた後に身につけた習慣」と捉えます。
なので、落ち込みやすい性格の人とは、「落ち込みやすい考え方をする習慣を持っている人」あるいは「落ち込みやすい生活習慣を持っている人」と言い換えることができます。
よって、落ち込みやすい性格の原因となっている「考え方の習慣」や「生活習慣」を改善することで、落ち込みやすい性格の改善が可能になると、心理学では考えます。
この記事は、落ち込みやすい性格の原因について、「心理面の原因」と「行動面の原因」の2つにわけて説明しています。
落ち込みやすい性格:2つの原因
落ち込みやすい性格の人は、ある意味、「ネガティブ思考な人」「悩みやすい人」「考えすぎな人」「心が落ち着かない人」「感情が不安定な人」などに言い換えることができます。
これら落ち込みやすい性格の原因は、大きくわけて以下の2点が考えられます。
POINT
- 考え方のクセなど、心理面の原因
- 生活習慣など、行動面の原因
①:心理面の原因とは?
「心理面の原因」とは、自分の内面にあることから「内因性の原因」とも言われ、子供時代から今までの人生経験における何らかの体験が原因で身につけた考え方のクセなどが考えられます。
②:行動面の原因とは?
「行動面の原因」とは、自分の外側にあることから「外因性の原因」とも言われ、仕事・職場・学校・家族・友人・恋愛などの人間関係、生活習慣、生活環境などが考えられます。
それでは、「落ち込みやすい性格の原因」について、「心理面の原因」と「行動面の原因」の2つにわけて詳しく説明していきます。
落ち込みやすい性格の原因①:心理面の原因
人は、子供時代から今までの人生経験において、親から否定された経験があったり、いじめなどの辛い体験をしていると、「自己肯定感が低い状態」となり、「どうせ自分なんて…」「自分はなんてダメなんだ…」など、自分を否定しがちとなったり、ネガティブな考え方になったり、落ち込みやすい性格となります。
自己肯定感とは、簡単に言うと、自分の存在を肯定的に受け止められる感覚のこと。自己肯定感が高い人は感情が安定し、人生で起きるさまざまなことをポジティブにとらえられます。反対に、自己肯定感の低い人は「自分なんてダメだ」という感覚にとらわれ、ネガティブになりがちです。
なので、落ち込みやすい性格の人とは、子供時代から今までの人生経験など、「心理面のなんらかの原因によって、自己肯定感が低くなってしまっている人」と言い換えることができます。
また、落ち込みやすい性格の人は、自己肯定感が低いことが原因で、「気持ち・想い・望み・願い」など、自分の感情を素直に表現することへの強い苦手意識を持っており、自分を否定しがちであるため、自分の感情を無意識に抑えてしまい、ストレスを抱えやすいという特徴があります。
そして、ストレスを抱えれば抱えるほど、心の負担が大きくなり、そのぶん気分が落ち込んでしまいます。
このように、気分が落ち込みやすい性格の原因とは、「自己肯定感の低さからくる、自分の感情を表現することへの苦手意識」にあります。
また、これら感情を表現することへの苦手意識は、大きくわけて以下の4点があげられます。
POINT
- 他人の目線が気になりすぎてしまう
- 理想の自分を追い求めてしまう
- 過去の失敗・未来の不安が気になりすぎてしまう
- 完璧主義・白黒思考
それでは、以下に詳しく説明していきます。
原因①-1:他人の目線が気になりすぎてしまう
人は、「自分は他人にどう思われているのか?」と、誰であっても、すくなからず、他人の目線が気になるものです。
ましてや、自分から積極的に他人の目線を気にしようとしているわけではなく、頭ではわかっていても、気が付くと、無意識に他人の目線が気になってしまうものですので、他人の目線が気になってしまうのは、決して病気や障害と言ったことではありません。
むしろ、「他人にどう思われてしまうか?」を気にすることができるからこそ、人は身だしなみを整えたり、お化粧をしたり、ルールを守ったり、社会生活を維持することができると言えます。
特に、常識、建前、世間体、規律を重視しがちな日本人はこの傾向が強いと言われています。
このように、他人の目線が気になりすぎてしまうのは、決して悪いことではないのですが、ある意味、「自分の感情を相手に否定されることを恐れている…」「自分の感情を伝えたことで相手に嫌われていることを恐れている…」とも言え、自分の感情を表現することに対して過剰な「防衛心理」が働いている状態とも言い換えることもできます。
よって、落ち込みやすい性格の人は、まるで鎧をまとうかのように、自分が傷つかないで済むよう、頑なに身を守り続けてしまう特徴があります。
自分の身を守ることは、決して悪いことではありません。
ですが、自分の身を守ろうとすればするほど、自分の感情を隠すことにもなってしまい、結果、ストレスを抱えてしまい、落ち込みやすくなってしまいます。
原因①-2:理想の自分を追い求めてしまう
「完璧主義」という言葉に表されるように、自分に対して厳しいことは、自分を成長させるために必要な考え方ではあります。
ですが、自分に対してあまりにも高い理想を求めてしまうと、「現実の自分」と「理想の自分」とのあいだに大きなギャップが生まれてしまいます。
そして、「現実の自分は自分ではなく、理想の自分こそが自分なのだ!」といった誤解を感じやすくなり、「現実の自分」に物足りなさを感じたり、「現実の自分」が情けなく感じ、自分で自分を否定するようになります。
そうなると、トイレにいっても、お風呂に入っても、「現実の自分」は「理想の自分」に常に否定され続けていることになり、そのぶん、常にストレスを感じ続けることになり、常に落ち込みやすい状態になってしまいます。
このように、理想の自分を追い求めることは、「どうせ周りの人は、ありのままの自分を受け入れてくれるわけがない…」「どうせ周りの人は、ありのままの自分を否定するに決まっている…」という「周囲の人間への不信感の現れ」ともいえます。
反対に言えば、理想の自分を追い求める人は、「現実の自分」すなわち「ありのままの自分を受け入れられない人」とも言え、自分で自分を苦しめていることになり、自分で自分のストレスを増やしていることになり、自分で自分を落ち込ませてしまっているとも言えます。
原因①-3:過去の失敗・未来の不安が気になりすぎてしまう
落ち込みやすい性格の人の特徴として、「あの時、ああしておけばよかった…こうしておけばよかった…」と、過去の失敗をいつまでも気にしているという点があげられます。
とはいえ、前述の通り、落ち込みやすい性格とは、決してデメリットばかりではなく、物事を慎重に深く考えることができているとも言い換えることができます。
しかしながら、過去の失敗に対してグルグルと慎重に深く考え続けても、残念ながら過去を変えることは叶わず、過去の失敗をいつまでも気にしてしまうことになります。
また、落ち込みやすい性格の人は、「○○になったら、どうしよう…どうしよう…」と、未来のことを気にしすぎてしまう特徴もあります。
過去と同じく、未来のことをグルグルと慎重に深く考え続けても、残念ながら未来のことはわかりようがなく、いつまでも、未来の心配をし続けることになります。
反対に言えば、過去の失敗・未来の不安が気になりすぎてしまう人とは、「失敗を犯した過去の自分を未だに受け入れられていない人」「未来の自分をまったく信用できていない人」とも言え、変えようがない過去の失敗や、わかりようがない未来の不安を、いつまでもグルグルと深く考え続けているわけですから、考えれば考えるほど、ストレスを抱えてしまい、気分が落ち込んでしまいます。
原因①-4:完璧主義・ゼロか100かの「白黒思考」
理想が高い人とも関連しますが、完璧主義の人も落ち込みやすいと言えます。
完璧主義の人は、「理想通りにできた(100点)」か「理想通りにできなかった(0点)」の極端な考え方をしてしまいます。
このように、完璧主義の人は、自分自身のミス・失敗が許せず、完璧に理想通り(100点)にできないと、やる気を失って落ち込み、自分を責めたりもするのです。
また、完璧主義の人は、「もっともっと、○○しなければ!」と現状に満足せず、「向上心に満ちあふれた人」とも言えますし、「自分に厳しいストイックな人」とも言えます。
なので、完璧主義が良い結果に結びつけば素晴らしいのですが、理想通りの結果が得られないと満足できず、「もっともっと、○○しなければ!」と、自分に厳しく頑張りすぎる特徴があります。
そうすると、自分自身のミス・失敗が許せず、自分の不甲斐なさに激しく落ち込んだり、不甲斐ない自分を激しく責めたり、完璧で理想通りの結果が出るまで頑張り続けることになり、限界が来ると、急激な体の不調を抱えることになったり、長期にわたって心の問題を抱えることになってしまいます。
このように、ゼロか100かの極端な考え方を、心理学では「白黒思考」と言います。
「落ち込みやすい性格の原因」のひとつである「白黒思考」については、以下の記事で詳しく紹介しています。
落ち込みやすい性格の原因②:行動面の原因
人は、「セロトニンが不足している状態」だと、自律神経の働きが乱れ、心のバランスが崩れ、落ち込みやすくなります。
セロトニンとは、脳内で働く神経伝達物質のひとつで、感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わっています。セロトニンが不足すると脳の機能の低下が見られたり、心のバランスを保つことが難しくなります。
引用元:セロトニン
なので、落ち込みやすい性格の人とは、生活習慣の乱れなど、「行動面のなんらかの原因によって、セロトニンが不足してしまっている人」と言い換えることができます。
また、セロトニン不足は、「うつ病」や「パニック障害」などの一因となるとさえ言われています。
このように、気分が落ち込みやすい性格の原因とは、セロトニンと密接に関係しており、セロトニンは、睡眠・運動・食事などの生活習慣と密接に関わっています。
また、セロトニンが不足する原因は、大きくわけて以下の4点があげられます。
POINT
- 日光を浴びる機会が少ない
- 運動不足
- 食生活の乱れ
- スマホ・テレビ・パソコンの見過ぎによる脳疲労
それでは、以下に詳しく説明していきます。
原因②-1:日光を浴びる機会が少ない
現代人は、仕事が忙しい、ストレスを抱えがち、人付き合いなどの理由や、スマホ・テレビ・パソコンなどの影響で、夜更かしが多かったり、朝起きるのが苦手である場合が多く、そのぶん朝日・日光を浴びる機会が少なくなっていると言えます。
朝日・日光を浴びる機会が少なくなると、そのぶんセロトニンも不足し、自律神経の働きが乱れ、落ち込みやすくなる原因となります。
日光に当たると人間はセロトニンを分泌します。セロトニンは人間の精神面に大きな影響を与えるホルモンです。不足すると、気分の落ち込みや意欲の低下、怒りっぽくなる、食欲が増加して過食気味になるなどの症状が出ます。
引用元:日照時間と健康との関係
原因②-2:運動不足
現代人は、電車・自動車などの交通手段の発達や、座り仕事の増加などの影響で、動きまわる機会、歩きまわる機会が減り、そのぶん運動不足になっていると言えます。
とくに、セロトニンの分泌には、歩くことなどを始め、一定のリズムを刻む運動=「リズム運動」が不可欠なのですが、生活習慣の変化によって歩くことが不足していると、便利になった反面、セロトニンが不足がちとなっており、心と体に不調をきたす原因となります。
運動をして気持ちのよい汗を流すと、気分がさっぱりとするものです。もしもあなたがストレスを感じやすくなっているのなら、その原因の一つは、運動不足かもしれません。
引用元:運動とメンタルヘルス
原因②-3:食生活の乱れ
現代人は、「飽食」と呼ばれる豊かな食生活を送る反面、朝食を食べない・偏食・暴飲暴食・過度なダイエットなど、食生活が乱れていると言えます。
セロトニンを始め、ドーパミン、ノルアドレナリンなど、心のバランスに深い関りを持つ神経伝達物質は、たんぱく質からつくられます。
なので、食生活が乱れ、たんぱく質が不足するとセロトニンが不足することになり、脳の働きが低下して考えがまとまりづらくなるなど、悩みやすくなる原因となります。
ストレスには、人間関係や環境など、さまざまな要因が絡んでいますが、食生活の乱れも無関係ではありません。なぜなら、私たちはストレスを脳で感じますが、その脳を働かせているのは他でもない食べ物だからです。
引用元:食生活とメンタルヘルス
原因②-4:スマホ・パソコン・テレビの見すぎによる脳疲労
情報機器の発達により、現代人は、一日に多くの情報を収集できるようになりました。
ユニークな例えでは、「現代人が一日に獲得する情報量は、江戸時代の人の一年分、平安時代の人の一生分に匹敵する」などと言われることもあります。
このように、現代人が圧倒的な情報量を獲得できるようになったことは、メリットである反面、デメリットもあります。
現代人の情報収集手段は、スマホ・パソコン・テレビなどが殆どですが、スマホ・パソコン・テレビなどを見すぎると「脳疲労」に陥ります。
脳疲労に陥るということは、セロトニンが不足していることを意味しますので、自律神経の働きが乱れ、悩みやすくなる原因となります。
スマホ依存は「脳疲労」を引き寄せ、悪化すると体の不調にまでつながってしまうのです。脳疲労に陥ると前頭前野の情報処理機能全体が低下するため、今までやってきたことができなくなったり、実際の生活のパフォーマンスが落ちたりします。
まとめ
さいごに、落ち込みやすい性格の原因について重要ポイントをまとめます。
POINT
- 落ち込みやすい性格の原因は、「心理面の原因」と「行動面の原因」の2つがある
- 落ち込みやすい性格の原因は、「過去の体験の影響で自己肯定感が低くなっている」などの心理面の原因が考えられる
- 落ち込みやすい性格の原因は、「生活習慣の乱れの影響でセロトニンが不足している」などの行動面の原因が考えられる
- 自己肯定感の低さには、親から否定された経験や、いじめなどの辛い体験が関係している
- セロトニン不足には、ストレス社会を生きる現代人の生活習慣が関係している
また、落ち込みやすい性格の原因に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
以上、「落ち込みやすい性格の原因」という記事でした。