POINT
白黒思考とは、物事を「白か黒か」など二分して捉える極端な考え方で、「自分の苦しめる、人間関係が上手くいかない、心の健康を損ねる」など「生きづらさの原因」となります。
心理カウンセラーの寺井です。
「白黒思考」とは「認知の歪み」のなかのひとつで、「物事を『白か黒か』『0か100か』など二分して捉える極端な考え方」を指します。
白黒思考そのものは決して悪いものではなく、誰にでもあるものなのですが、白黒思考が強すぎると、「自分を苦しめる、人間関係がうまく行かない、心の健康を損ねる」など「生きづらさ」を感じる場合があります。
白黒思考は、「ASD(自閉スペクトラム症)の傾向が強い人」や「幼少期に親や家族との間に何らかの問題があった人」がなりやすいと考えられていますが、あくまで生まれた後に身に付けた「考え方のクセ」であるため、専門的な取り組みをすることで改善することは可能です。
この記事は、白黒思考の特徴、問題点、原因、治し方、カウンセリングの効果について解説しています。
白黒思考とは?
「白黒思考」とは、「物事を『白か黒か』『0か100か』など二分して捉える極端な考え方」を指す言葉です。
認知行動療法の専門家である「ジュディス・ベック」は、「白黒思考」を以下のように説明しています。
状況を連続体ではなく、たった2つの極端なカテゴリーで捉えること
なお、「物事を両極端に考える」という特徴から、「白黒思考」は以下の「別名」で呼ばれる場合があります。
POINT
- スプリッティング(分裂)思考
- オール・オア・ナッシング(全か無か思考)思考
- 二分割思考
- 二極化思考
このように、白黒思考が強い人は「白と黒の中間(グレーゾーン)の考え方」をすることが苦手である場合が多く、その影響で「ひとつの考えに固執してしまい柔軟な考え方ができない、好き嫌いが両極端で対人関係がうまくいかない、曖昧な状況に耐えられず物事をすぐにはっきりしすぎる」などの特徴があり、日常的に「生きづらさ」を感じる場合があります。
白黒思考が強い人の特徴
白黒思考は「物事を両極端に考える」という点が特徴的です。
なお、「白黒思考が強い人の特徴」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
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- 理想が高い・完璧主義
- べき思考(MUST思考)が強い
- 決めつけ・思い込みが激しい
- 猜疑心が強い
- 他人の意見に影響を受けやすい
- 何事も白黒ハッキリさせる
- ネガティブ思考が強い
- 曖昧さに耐えられない
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①理想が高い・完璧主義
白黒思考が強い人は「中途半端な状態」や「曖昧な状態」を極端に嫌うという特徴があるため、「自分が納得できるまで物事を突き詰めないと気が済まない」という傾向があり、自分に対しても他人に対しても「高い理想」を持つ場合が多く、「完璧主義」である場合が多いです。
なお、「完璧主義の人の特徴」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
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- 事前の計画や準備を周到にする
- 無駄が嫌い、時間厳守を徹底する
- 責任感が強い、妥協は嫌い
- 上昇志向が強い、理想が高い
- 自分にも他人にも厳しい
- 自分の思い通りにいかないとイライラする
- 失敗が許せない、失敗が怖い
- 負けを許せない、負けを認められない
- 逃げることを許せない、逃げることを認められない
- 常に何かと戦ってる、常に勝つことばかり求めている
- 結果がすべて、いくら努力しても結果が出ないものは無意味と感じる
- 完璧な自分にのみ満足感を感じる
②べき思考(MUST思考)が強い
白黒思考が強い人は「理想が高く、完璧主義」であるため、自分に対しても他人に対しても「○○すべきだ!」あるいは「○○すべきでない!」という考え方をすることが多く、「べき思考(MUST思考)が強い」という特徴があります。
なお、「白黒思考が強い人がしがちな『べき思考』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
- 何ごとも全力で努力すべきだ
- 何ごとも弱音を吐くべきではない
- 夫は外で働き妻は家庭を守るべきだ
- 妻は夫の仕事に口を出すべきではない
- 子どもは親の言うことに従うべきだ
- 子どもは親に逆らうべきではない
③決めつけ・思い込みが激しい
白黒思考が強い人は「良いor悪い、好きor嫌い」など「感情的な判断」になりやすいため「冷静かつ客観的な判断」ができない場合が多く、「○○に違いない!」あるいは「○○に決まっている!」など「決めつけ・思い込みが激しい」という特徴があります。
なお、「白黒思考が強い人がしがちな『決めつけ・思い込み』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
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- 相手に少し冷たくされただけで「あの人は敵だ!」と決めつける
- 相手に挨拶をされなかっただけで「あの人は自分を嫌っている!」と思い込む
④猜疑心が強い
白黒思考が強い人は「決めつけが激しい」という特徴があるため、他人に対して「誤解・偏見」などを持ちやすく、人間関係において「猜疑心が強い」という特徴があります。
なお、「白黒思考が強い人が感じる『猜疑心』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
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- 相手を心から信頼することができず、疑心暗鬼になりやすい
- 人との親密な付き合いを避け、表面的な付き合いに終始する
- 人間関係のトラブルを避けるため、人と会わずに家に引きこもることが多い
- 少しの行き違いで人間関係を切ってしまう
⑤他人の意見に影響を受けやすい
白黒思考が強い人は「思い込みが激しい」という特徴があるため、自分が少しでも「正しい」と感じたことに傾倒しやすく、「他人の意見に影響を受けやすい」という特徴があります。
とくに、白黒思考が強い人は「極端でわかりやすい意見」であればあるほど影響を受けやすいため、「陰謀論、新興宗教、マルチ商法、投資詐欺」など「極端で偏った考え方」に傾倒しやすい傾向があり、多くの人が判断を迷う事柄であっても、「正しいに違いない!」と思い込んで深くのめり込んでしまうことが多く、他人に振り回されてしまったり、他人に利用されてしまう場合があります。
⑥何事も白黒ハッキリさせる
白黒思考が強い人は「中途半端な状態」や「曖昧な状態」を極端に嫌い、何ごとに対しても「白黒ハッキリさせようとする」という特徴があります。
なお、「白黒思考が強い人が『物事をハッキリさせる様子』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
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- 他愛もない遊びやゲームであっても勝ち負けにこだわる
- すでに解決した問題であっても「誰の責任で問題が起きたのか?(誰が悪いのか?)」を明確にしないと気が済まない
- 恋人やパートナーに対して「自分と仕事どちらが大事なのか?」と問い詰める
⑦ネガティブ思考が強い
白黒思考が強い人は、物事を「白か黒かどちらかハッキリした状態」で捉えようとするので、「自分にとってプラスだ!」と思い込んだことに対して「深くのめり込んでいく」反面、「自分にとってマイナスだ!」と思い込んだことに対して「強い拒絶反応を示す」傾向があり、一度でも「自分にとってマイナスだ!」と思い込んだことに対して「ネガティブ思考が非常に強くなる」という特徴があります。
なお、「白黒思考の強い人が感じる『ネガティブ思考』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
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- 自分の意見と少し食い違った意見を言われただけで「自分は否定された」と考える
- 自分の思い通りの反応を示してくれなかっただけで「自分は裏切られた」と考える
- 少し失敗をしただけで「これは意味がない」と考え、物事を投げ出してしまう
- 少しの困難で「自分はもう終わりだ!」と絶望してしまう
- 少しの病気やケガを患っただけで「自分は死んでしまうのではないか?」と考える
- 少しのミスで「うまく行くはずがない、やめた方がいい」と考え、物事を諦めてしまう
- 「絶対に失敗しない!絶対にうまく行く!」ことが事前にわからない限り、自分からはチャレンジをしない
⑧曖昧さに耐えられない
白黒思考が強い人は「白か黒かどちらかハッキリした状態」しか認められないので、「白と黒の中間である『グレーゾーン』の状態」が認められず、人間関係において「曖昧さに耐えられない」という特徴があります。
なお、「白黒思考が強い人が『曖昧さに耐えられない様子』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 子どもや初心者など経験が浅い人が困っている様子を見ると黙って見守ることができず、口を出したり手を出してしまう
- 行列や順番待ちの時間などを静かに待つことができず、「どれくらい時間が掛かるのか?」など店員に詰め寄ってしまう
- どっちつかずの態度をとっている人に対して「どっちにするのか早く決めて!」と強く当たる
- 緊急の要件であっても柔軟に対応することができず、ルール厳守で融通が利かない
- 相手の話を最後まで聞き切ることができず、相手の話を遮って自分の話をしてしまう
- 相手の助言を素直に聞き入れることができず、相手の助言を頑固に拒絶してしまう
- 例え細かいミスであっても許すことができず、いちいち指摘してしまう
白黒思考が引き起こす問題
白黒思考は「スプリッティング思考」とも呼ばれ、「スプリッティング思考」とは「自分を守ろうとする防御反応(防衛機制)」のひとつであり、「他者への警戒心」とも言えます。
ですので、白黒思考が強くなると「他者への警戒心」も強くなり、「家族関係、職場関係、友人関係、恋愛関係、夫婦関係、子育て」など、人間関係において様々な問題を引き起こす場合があります。
なお、「白黒思考が引き起こす問題」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 人間関係リセット症候群
- 被害妄想
- 強迫性障害
- 摂食障害
- 対等な関係性が築けない
- 過干渉・過保護
- うつ病・パニック障害などの精神疾患
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①人間関係リセット症候群
白黒思考が強い人は「猜疑心が強い」ため、人間関係において「イライラ・モヤモヤ」など「ストレス感」を感じやすいという特徴があります。
また、白黒思考が強い人は「曖昧さに耐えられない」という特徴があるため、「ストレスを感じる相手との関わりをもつこと」に耐えられなくなると、人間関係を一方的に断ち切ってしまう場合があります。
なお、ある日突然、話し合いをすることもなく人間関係を一方的に断ち切ってしまう行動を「人間関係リセット症候群」と言います。
常に誰かとつながっていることに疲れ、ある日突然周りの人との関係を断つ行動を「人間関係リセット症候群」と呼びます。人間関係リセット症候群は医学的な病気ではなく、人間が陥りやすい心理状態を表した造語です。
このように、白黒思考が強い人は「人間関係のストレスをスッキリと解消しよう」とするあまり、「人間関係リセット症候群」を繰り返す場合があります。
②被害妄想
人間関係においては、決して「相手を傷つける」つもりは無くても、結果的に「相手を傷つけてしまう」場合があります。
ですが、白黒思考が強い人は「決めつけ・思い込みが激しい」という特徴があるため、人間関係において「ネガティブな体験」をすると、その相手に対して「あの人は自分を故意に傷つけたに違いない!」と思い込むなど、相手の気持ちを一方的に決めつけてしまう場合があります。
なお、他者の言動に対して根拠のない不信や疑いを持つことを「被害妄想」と言います。
妄想性パーソナリティ障害は、他者の動機を敵意や有害性のあるものと解釈する、他者に対する根拠のない不信や疑いの広汎なパターンを特徴とします。
引用元:妄想性パーソナリティ障害
このように、白黒思考が強い人は「ネガティブな体験をした原因をハッキリさせよう」とするあまり、「被害妄想」を強めてしまう場合があります。
③強迫性障害
白黒思考が強い人は「曖昧さに耐えられない」ため、何ごとも「白黒ハッキリするまで気持ちが落ち着かない」という特徴があります。
このように、白黒思考が強い人は「白黒ハッキリできない状態」に「強い不安」を感じるため、「落ち着きたい…安心したい…」と思えば思うほど、そのことに対する「執着」を強めてしまう場合があります。
なお、「白黒思考が強い人が『執着を強めてしまう様子』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「手が汚れているのではないか?」が気になって落ち着かず、手洗いがやめられない(不潔恐怖)
- 「鍵が閉まっているか?」が気になって落ち着かず、玄関や窓の鍵の確認がやめられない(確認強迫)
また、自分の意思に反して「執着」を繰り返してしまうことを「強迫性障害」と言います。
強迫性障害の特徴:意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念や、特定の行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。たとえば、不潔に思い過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないなどが挙げられます。
引用元:強迫性障害
このように、白黒思考が強い人は「白黒ハッキリできないことに対して執着する」あまり、「強迫性障害」になる場合があります。
④摂食障害
白黒思考が強い人は「理想が高く、完璧主義」であるため、仕事でもプライベートでも「ストイックになりやすい」という特徴があります。
とくに、白黒思考が強い女性は「自分磨き」にストイックになる場合が多く、その影響で「過度なダイエットにのめり込んでしまう」場合があります。
摂食障害の人は白黒思考の人が多いと言われています。
引用元:摂食障害と白黒思考①
摂食障害では、必要な量の食事を食べられない、自分ではコントロールできずに食べ過ぎる、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまうなど。
引用元:摂食障害
このように、白黒思考が強い人は「勝ち組か負け組か?」あるいは「イケてるかイケてないか?」など、「自分の存在価値」を二分して考えてがちであり、同時に「体重は目標を具体的に数値で立てられる」ため、白黒思考が強い女性は「目標の達成(体重減少)」にのめり込みんでしまうあまり、結果として「摂食障害」になる場合があります。
⑤対等な関係性が築けない
白黒思考が強い人は「猜疑心が強い」ため、「恋愛関係」や「夫婦関係」において「相手(恋人・パートナー)を信じきれない」という特徴があります。
ですので、白黒思考が強い人は「相手に見捨てられたくない、相手に裏切られたくない」と思えば思うほど、「相手を強く疑ってしまい、相手を束縛・監視しようとする」あるいは「相手に強く依存してしまい、相手に過度に尽くそうとする」という特徴があります。
なお、「白黒思考が強い人が『恋人・パートナーを束縛・監視する様子』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- モラハラ・DV・ヒステリーなど、暴言や暴力で束縛する
- 交友関係を制限する、行動を逐一報告させる
- メールやLINEをチェックするなど、行動を監視する
- マウントを取るなど、自分が優位であることをアピールする
また、「白黒思考が強い人が『恋人・パートナーに過度に尽くそうとする様子』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- モラハラ・DV・ヒステリーなど、暴言や暴力を受けても黙って耐えてしまう
- 行動を制限される・行動を監視されるなど、束縛を受けても黙って従ってしまう
- 相手に必要とされたい気持ちが強く、相手のために自分を犠牲にして尽くしすぎてしまう
- 相手に認められたい気持ちが強く、相手のためなら何でもすると頑張りすぎてしまう
このように、白黒思考が強い人は「相手に見捨てられたくない、相手に裏切られたくない」と思えば思うほど、「相手(恋人・パートナー)と対等な関係性が築けなくなる」場合があります。
⑥過干渉・過保護
白黒思考の強いは「べき思考(MUST思考)が強い」ため、子育てにおいて「親としてもっと○○すべきだ!」あるいは「子どもはもっと○○すべきだ!」など「高い理想を持ちやすい」という特徴があります。
また、白黒思考が強い人は「ネガティブ思考が強い」ため、子育てにおいて「親としてこれでいいのだろうか?」あるいは「子どもは大丈夫だろうか?」など「不安に囚われやすい」という特徴があります。
ですので、白黒思考が強い人は「子どものことを思えば思うほど、子どもに対して口を出しすぎてしまったり手を出しすぎてしまう」という特徴があります。
なお、親が子どもに対して口を出しすぎてしまったり手を出しすぎてしまうことを「過干渉・過保護」と言います。
過干渉:親の理想や期待を子どもに押しつけること
過保護:親が子どもを過剰に保護すること
また、「白黒思考が強い人が『子どもに対して過干渉・過保護をする様子』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「○○しなさい!○○はダメ!」と、子どもに言い過ぎてしまう(過干渉)
- 「かわいそう…かわいそう…」と、子どもの世話を焼きすぎてしまう(過保護)
このように、白黒思考が強い人は子どものことを大切に思うあまり、子育てにおいて「過干渉・過保護になってしまう」場合があります。
⑦うつ病・パニック障害などの精神疾患
白黒思考のように「物事の捉え方・考え方」に偏りがあり、他の解釈をすることが難しくなっている状態を「認知の歪み」と言います。
認知の歪みとは、考え方の癖にとらわれて物事を解釈し、他の解釈をすることが難しくなっている状態です。
また、白黒思考を始めとする「認知の歪み」は、極端になると「ストレス」を抱え込んでしまい、心身のバランスを崩してしまう場合があります。
白黒思考の人は完璧主義であったり、うつ病やパニック障害になりやすかったりします。
このように、白黒思考が強い人は「極端な考え方に囚われる」あまり、「うつ病」や「不安障害(パニック障害)」など「精神疾患」になる場合があります。
白黒思考になる原因
「白黒思考になる原因」は幼少期にあり、人は「生まれた時にはみんな『白黒思考』」で、子どもから大人への成長する過程で「成功」と「失敗」を繰り返し経験することで、だんだんと「柔軟な思考(グレーゾーン)」を身に付けていくと考えられています。
例えば、子ども向けのアニメ番組の多くが「正義のヒーロー」と「悪役」のはっきりと二分された「勧善懲悪のストーリー」で描かれていることが多いのは、「白黒思考」である子どもたちが理解しやすくするための工夫と言えます。
生まれた時はみんな【白黒思考】なんです。それが成長過程で現実を知るにつれて《極端な思考》はバランスを取るようになります。でも、それがうまくいかないと【白黒思考】が大人になっても残ってしまいます。
引用元:脱・白黒思考のススメ
このように、人は「白黒思考」の状態で生まれ、子どもから大人への成長する過程で「柔軟な思考(グレーゾーン)」を身に付けていくのですが、「親や家庭に何らかの問題」があった場合、大人になっても「白黒思考が残ってしまう」場合があります。
なお、「白黒思考が残ってしまう原因」は、主に以下の「4点」にわけて考えることができます。
POINT
- 万能感と白黒思考
- 白黒思考が残ってしまう「親や家族の問題」
- 人生脚本(スキーマ)
- 発達障害(気質・特性)
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①万能感と白黒思考
「万能感」とは「自分は何でもできる!」という感覚を指します。
生まれたばかりの赤ちゃんが成長するためには「万能感」が必要で、「万能感」を感じるために「白黒思考」が必要になります。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分では何ひとつできませんが、「今は何もできないけれど、これからいろいろなことを学べば自分は何でもできるようになる!」という「根拠の無い絶対的な肯定感(万能感)」を感じるからこそ、赤ちゃんは大人へと成長することができます。
万能感は、「自分は、やろうと思えばなんでもできる」という感覚です。小さい子どもはみんな持っています。成長するために不可欠だからです。
例えば「魔の二歳児」と呼ばれるように、幼児期の子どもが「ぼくがやる!わたしがやる!」と何でも自分でやりたがる(何でも真似したがる)のは、この「万能感」によるものです。
ただ、「万能感」を感じ続けるためには「できている自分(成功している自分)」であり続ける必要があり、「できていない自分(失敗した自分)」になってしまうと「万能感」を感じられず、「大人へと成長できなくなってしまう!」という「恐れ」が生まれます。
ですので、子どもは「できていない自分(失敗した自分)」からは目を背け、「できている自分(成功している自分)」にばかり注目するようになり、この「偏った考え方」が「白黒思考」の始まりです。
このように、子どもは「万能感を感じ続ける(自分を成長させる原動力を得る)」ために「白黒思考」を強めていきます。
②白黒思考が残ってしまう「親や家族の問題」
このように、すべての子どもは「白黒思考」を持つことで「万能感」を高めようとし、「万能感」を感じることで「いろいろなことに挑戦できる(挑戦心を持つ)」ようになり、「好奇心旺盛、純真無垢、天真爛漫」など「子どもらしい子ども」としてすくすくと成長していきます。
ですが、いくら「白黒思考」で「万能感」を高めたとしても、すべてのことが自分の思い通りに「成功」するわけではなく、自分の思い通りにいかずに「失敗」することもあります。
とくに「白黒思考」が強すぎると、周囲の人たちから「我が強い・わがまま・自分勝手」に思われ、「親・きょうだい・友人」との間に「軋轢・摩擦・衝突」が生まれます。
このように、子どもは大人へと成長する過程の人間関係において、「成功体験」と「失敗体験」を繰り返しながら、「自分の思い通りにならないこともある、自分の努力だけではどうにもならないこともある」を受け入れることで「万能感」を手放し、だんだんと「柔軟な思考(グレーゾーン)」を身に付けていきます。
ですが、「親や家庭に何らかの問題」があったことが原因で、人間関係において「成功体験」と「失敗体験」を十分に積めない場合、子どもは「万能感」を手放すことができず、大人になっても「万能感」を持ち続けることになり、その影響で、大人になっても「白黒思考が残ってしまう」と考えられています。
白黒思考のような極端な思考は、今まで経験してきたことや育ってきた環境などから培われる考え方の土台になる部分の歪みから起こります。
なお、「白黒思考が残ってしまう『親や家庭の問題』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 児童虐待の問題…「暴言、暴力、性的虐待、ネグレクト、過干渉、過保護、ヒステリー、きょうだい差別、教育虐待」など
- 家庭環境の問題…「親の死亡、家庭内の暴力、家庭不和、父子母子家庭(ひとり親)、拡大家族、きょうだい児、ヤングケアラー、貧困、借金」など
- 両親の夫婦関係の問題…「モラハラ、DV、夫婦喧嘩、両親の不和、家庭内別居、親の不倫、両親の離婚、親の再婚」など
- 両親の精神的問題…「アルコール依存、ギャンブル依存症、薬物依存症、共依存、うつ病、自殺企図、宗教への依存」など
参考元:機能不全家族|Wikipedia
このように、「親や家庭に問題」があると、大人になっても「白黒思考が残ってしまう」場合があります。
③人生脚本(スキーマ)
このように、大人になっても「白黒思考が残ってしまう原因」には、「子ども頃に親から受けた子育ての影響」や「子どもの頃の家庭環境の影響」が密接に関わっています。
日本にも「三つ子の魂百まで」という諺がある通り、「子どもの頃に身に付けた思考・行動パターン」は、年齢を重ねても影響を与え続けます。
このように、「親や家族との関り」のなかで「子どもの頃に身に付けた思考・行動パターン」を、「交流分析」という心理学では「人生脚本」と呼び、「認知行動療法」という心理学では「スキーマ」と呼びます。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
スキーマとは幼少期に形成された「心の体質」のようなもの…(中略)…スキーマは主に幼少期や思春期の体験を通じて形成され、それ自体は誰もが持っています。…(中略)…根っこにあるその人なりの価値観や信念、深い思いをスキーマと呼んでいます。
「人生脚本(スキーマ)」は、子どもの頃に「親や家族に言われた言葉」や「親や家族にされた行動」などに基づいて形成され、人はそれ以降、「人生脚本(スキーマ)」に沿って無意識に生き方を決めるようになり、大人になってからも「人生脚本(スキーマ)に従った思考・行動を無意識に繰り返す」と考えられています。
なお、「人生脚本(スキーマ)」とは、大きく分けて以下の2つの「価値観」で形成されています。
POINT
- 「禁止令」…「○○してはダメだ!」など、親や家族から何かを禁止される言葉を掛けられたことにより、大人になって「自分は○○してはダメだ!」と感じる価値観
- 「ドライバー(拮抗禁止令)」…「もっと○○しなさい!」など、親や家族から何かを煽り立てられる言葉を掛けられたことにより、大人になって「自分はもっと○○しなくてはならない!」と感じる価値観
このように、子どもの頃に見聞きした「親や家族の言動の影響」で、大人になっても「白黒思考を無意識に繰り返す」場合があります。
なお、「人生脚本(禁止令・ドライバー)」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
④発達障害(気質・特性)
人間の性格には、遺伝の影響で生まれ持った「先天的な性格(気質や特性)」があり、子どもは生まれながらに以下のような「気質や特性」をもって生まれてくる場合があります。
POINT
- 注意が散漫になりやすい、癇癪を起しやすい、こだわりが強い、物事を理解するのに時間が掛かる、周囲に敏感、衝動的な行動をする(発達障害やHSPなど)
上記のような「気質や特性」を持った子どもに対して親はストレスを抱えやすくなり、親は以下のような「子どもの気質や特性を否定する子育て」をしてしまう場合があります。
POINT
- 子どもの行動を支配・コントロールする、子どもを激しく叱責する、子どもを叩いてしまう、子どもの気質を無理に矯正しようとする
このように、生まれ持った「気質や特性」そのものが「白黒思考の原因」というわけではないのですが、生まれ持った「気質や特性(発達障害やHSPなど)」を親に理解してもらえず、親から「否定的な扱い」されたことで、大人になっても「白黒思考が残ってしまう」場合があります。
とくに、「自閉スペクトラム症(ASD)」の特性を持つ人は「曖昧な状況を理解することが苦手」である反面、「物事を白黒ハッキリする(ひとつのことにこだわる)ことに心地やすさを感じる」という傾向があることから、「白黒思考が強くなりやすい」と考えられています。
白黒思考の治し方・改善方法
前述の通り、「白黒思考になる原因」には、子どもの頃に親から受けた子育ての影響や、子どもの頃に一緒に過ごした家族の影響など、子どもの頃の家庭環境が密接に関わっており、子どもの頃、親から受けた子育て・家族の様子・家庭環境に何らかの問題があった場合、大人になっても「白黒思考が残ってしまう」場合があります。
「白黒思考の改善」とは、アダルトチルドレンを克服すること
このとき、子どもの人生に悪影響を与えるような問題のある子育てを行う親を「毒親」と言い、子どもの人生に悪影響を与えるような問題のある家庭を「機能不全家族」と言います。
そして、機能不全家族で育った(毒親に育てられた)ことが原因で、大人になっても「白黒思考」や「幼少期トラウマ(心の傷)」など「生きづらさ」を抱えている人を「アダルトチルドレン」と言います。
「アダルトチルドレン」とは、機能不全家族で育ったことにより、「親から守られる」「適切な教育を受ける」などの正常な成長過程をたどれず、成人してからも生きにくさや心に傷を抱えている人のことをさします。
また、「白黒思考」とは、アダルトチルドレンの特徴のひとつとも言われています。
白黒思考とは、事象や人物をある一つの視点からしか見られず、グレーゾーンや複雑な事情を認めることができません。これらの傾向は、アダルトチルドレンによく見られることがあります。
このように、「白黒思考になる原因」とは、「子どもの頃、機能不全家族で育った影響」や「子どもの頃、毒親に育てられた影響」である可能性が高い、すなわち、「白黒思考になる原因」は「アダルトチルドレン」と密接な関係にあると言えます。
反対に言えば、「機能不全家族で育った(毒親に育てられた)影響」である「アダルトチルドレン」を克服することが、「白黒思考の改善」に繋がると考えることができます。
「アダルトチルドレン(白黒思考)」の治し方
そもそも「アダルトチルドレン(AC概念)」とは、1970年代、アメリカのアルコール依存症の治療現場から広がり始めた考え方で、1980年代になると、さまざまな専門家たちが「アダルトチルドレンの原因」や「アダルトチルドレンの克服方法」について研究を行い始め、今では、アメリカのソーシャルワーカー・社会心理学博士「クラウディア・ブラック」によって、「アダルトチルドレンからの回復プロセス」がしっかりと確立されています。
とはいえ、「子どもの頃の記憶」とは、「なかなか思い出しづらい『遠い昔の記憶』」であるのと同時に、「できれば思い出したくない『傷ついた記憶』」でもあります。
よって、「子どもの頃の記憶」を思い出そうと過去を振り返っても、自分1人ではなかなか思い出せなかったり、なかなか受け入れられない場合があります。
なお、「クラウディア・ブラック」は、「アダルトチルドレンからの回復」には以下の2点が重要と述べています。
POINT
- 「親・家族」に対する負の感情は「親・家族」に聞かせるのではなく、「親以外の信頼できる相手(心理カウンセラー・自助グループなど)」に聞いてもらう必要がある
- 「親・家族」に対する負の感情は「安全な場所(カウンセリングルーム・自助グループなど)」で聞いてもらう必要がある
以上のことから、「心理カウンセリングは、アダルトチルドレンの克服にとても有効である」と言われており、カウンセリングを利用して、カウンセラーの協力を得ながら「アダルトチルドレンからの回復プロセス」を進めることで「アダルトチルドレンの克服」が可能となり、アダルトチルドレンの克服をすることで「白黒思考の改善」ができると言えます。
なお、当社メンタル心理そらくもが考える「アダルトチルドレン克服カウンセリング(白黒思考の治し方)」については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連情報
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページにまとめていますので紹介します。
関連情報まとめページ
参考文献
- “コグラボ”.白黒思考とは?原因と治し方を徹底解説。認知行動療法に基づくアプリもご紹介.https://www.awarefy.com/coglabo/post/all-or-nothing-thinking,(参照2024-8-02)
- “MELON”.『白黒思考』とは?原因や特徴、治し方を詳しく解説!.https://www.the-melon.com/blog/blog/black-and-white-thinking-11190,(参照2024-8-02)
以上、「白黒思考とは?『特徴・問題点・原因・治し方』を徹底解説」という記事でした。