POINTアダルトチルドレンが自信を持てない理由は、子どもの頃、親から受けた言動=「親からのストローク」に問題があったためと考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
カウンセリングをしていると、クライアントさまからときどき、「自分はダメな人間なんだ…」「自分はダメな人間だからなにをやっても上手くいくはずがない…」という言葉をお聞かせ頂く場合があります。
人は、なぜ?自分のことを「ダメな存在」だと思ってしまうのでしょうか?
どうして?自分のことを「素晴らしい存在」だと素直に思えないのでしょうか?
その理由は、概ね、子どもの頃に親に言われた言葉が関係しています。
この記事は、親の言動が子どもに与える影響を例え話で説明しています。
親の態度が子どもに「劣等感」を植え付ける
あるところに、1匹のメスのワンちゃんが住んでいました。
ワンちゃんの名前は「グレー」毛色が灰色のワンちゃんです。
そして、「グレー」のお腹には子どもがいました。
もうすぐ生まれてくるようです。
「グレー」はいつも思っていました。
「どうか、生まれてくる赤ちゃんが真っ白な毛色でありますように…」
しばらくして、無事に2匹のワンちゃんが生まれてきました。
生まれてきたのは、毛色が「白いワンちゃん」と毛色が「黒いワンちゃん」です。
「グレー」はそれぞれを「しろ吉」と「くろ吉」と名づけました。
しろ吉もくろ吉も、同じときに生まれ、同じものを同じだけ食べて育ちました。
でも、ひとつだけ違っていたことがあります。
それは、しろ吉とくろ吉に対する母親「グレーの態度」です。
「グレー」はいつも「しろ吉」に言いました。
「しろ吉…お前はなにをやっても素晴らしいねぇ…」
「グレー」はいつも「くろ吉」に言いました。
「くろ吉…お前はなにをやってもダメだねぇ…」
「しろ吉」と「くろ吉」が一緒に走って同じ速さであったとしても…
「しろ吉」と「くろ吉」が同じことを話しても…
「グレー」はいつも「しろ吉」に言いました。
「しろ吉…お前はなにをやっても素晴らしいねぇ…」
「グレー」はいつも「くろ吉」に言いました。
「くろ吉…お前はなにをやってもダメだねぇ…」
子ども時代の経験は成長しても大きな影響を与えている
「しろ吉」と「くろ吉」は大きくなって
母親「グレー」のもとを離れてパン屋さんに住み込みで働き始めました。
「しろ吉」はニコニコ仕事をしています。
「くろ吉」はオドオド仕事をしています。
でも、毎日出来上がるパンの出来栄えも数もまったく一緒です。
「しろ吉」はニコニコ周りの人と話をしていました。
「くろ吉」はオドオド周りの人と話をしていました。
でも、毎日出来上がるパンの出来栄えも数もまったく一緒です。
「しろ吉」も「くろ吉」も、
毎日、同じ出来栄えのパンを同じ数だけ作っているのに
「しろ吉」はいつも自信があります。
「くろ吉」はいつも自信がありません。
挑戦を楽しむ「しろ吉」、失敗を恐れる「くろ吉」
ある時、「パン屋の店主」が不思議がって2匹に聞きました。
「おい、しろ吉…」
「お前はいつもニコニコ自信を持って仕事をしているな?どうしてだい?」
「しろ吉」は答えました。
「えぇ店主さん、私はなぜか楽しいのです…」
「なぜか失敗してもイイと思えるのです…」
そして「パン屋の店主」が聞きました。
「おい、くろ吉…」
「お前はいつもオドオド自信なさそうに仕事をしているな?どうしてだい?」
くろ吉は答えました。
「えぇ店主さん、私はなぜか怖いのです…」
「なぜか失敗は許されないと思ってしまうのです…」
「パン屋の店主」は不思議そうに言いました。
「お前たちは、毎日同じ出来栄えのパンを同じ分だけ作っている…」
「お前たちは、競争をしても同じ速さで走っている…」
「しかも、同じ時に同じ場所に生まれ同じ母親に育てられたのに…」
「どうして?しろ吉は幸せそうで、くろ吉は幸せそうじゃないんだい?」
「しろ吉」も「くろ吉」も、すぐにはわかりませんでした。
そして考えました…
「自分はダメだ!」は、親の言動による「思い込み」
「パン屋の店主」の言うとおり…
毎日同じ出来栄えのパンを同じ数だけ作っているのに
かけっこをしても同じ速さで走るのに
同じ時に同じ場所に生まれて同じ母親に育てられたのに
どうして?「しろ吉」はいつもニコニコしてるのだろう?
どうして?「くろ吉」はいつもオドオドしてるのだろう?
そして「くろ吉」は言いました…
「それは、僕は毛色が黒くて、しろ吉は毛色が白いからです…」
すると「パン屋の店主」は言いました。
「おいおい…それはおかしいな?」
「くろ吉は毛色が黒いから自分に自信が持てないっていうのかい?」
「くろ吉」は答えます。
「ええそうです。僕は毛色が黒いから僕はダメな犬なんです…」
「パン屋の店主」は言いました。
「おいおい…それはおかしいな?」
「くろ吉は毛色が黒い犬は、ダメな犬だというのかい?」
「世の中には毛色が黒い犬はたくさんおるのに…」
「くろ吉は毛色が黒い犬は全部ダメな犬だというのかい?」
「くろ吉」はビクビクしながら答えました。
「くろ吉」はとても心臓がドキドキしていました。
「くろ吉」はとても焦りながら答えました。
「そっ!そうではありません!…」
「すいません…僕だけがダメなんです…」
「僕だけが黒いからダメなんです…」
「ダメな黒い色をしてるから自信が持てないんです…」
「パン屋の店主」が言いました。
「くろ吉…お前だけが、黒くてダメな犬なのかい?」
「ほかにも黒い毛色の犬はたくさんおるのに…」
「どうしてくろ吉だけがダメだと思うのだい?」
「くろ吉」は答えました…
「どうしてかはわかりません…」
「たぶん生まれた時からダメなんだと思います…」
「僕は生まれてきてはいけなかったんです…」
「生まれた時からダメなんです…」
「パン屋の店主」が言いました。
「そうか…つまりくろ吉は、世の中で唯一自分だけが黒くてダメな犬だと思っているのだね…」
「けれど、わしにはくろ吉がダメな犬には思えないが、くろ吉は自分はダメな犬だ!と強く思っているわけなんだね…」
このように、「パン屋の店主」は不思議がるばかりでした。
「自信が持てない」原因と改善方法
母親「グレー」が「しろ吉」と「くろ吉」に与えた言動による影響を、心理学では「ストローク」と言います。
交流分析の創始者であるエリック・バーンは、人の存在や価値を認める刺激(言動や働きかけ)のことをストロークと名付けました。ストロークは「心の栄養」とも呼ばれ、人が生存するためには不可欠なものとされています。
このように、子どもは、親に褒めてもらえたり、親に認めてもらうことで「自信」を感じることができます。
「しろ吉」と「くろ吉」が受けた「ストローク」の違い」
「しろ吉」と「くろ吉」の場合、「走る速さ」や「話の内容」や「仕事の速さ」はお互いに全く等しかったのですが、母親「グレー」の態度、すなわち「母親から受けたストローク」に違いがありました。
よって、「走る速さ」や「話の内容」や「仕事の速さ」が同じであったとしても、母親「グレー」に褒めてもらえた「しろ吉」は「自信」のある大人へと成長し、母親「グレー」に褒めてもらえなかった「くろ吉」は「自信」のない大人へと成長することになったのです。
「くろ吉」は、アダルトチルドレン
また、子どもの頃に親から受けた言動の影響で、「大人になっても自分に自信が持てない人」を、心理学では「アダルトチルドレン」と言います。
アダルトチルドレン(AC)とは、自分は子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことをいいます。自己認識の概念であり、医学的な診断名ではありません。
よって、「『くろ吉』は、母親『グレー』の言動の影響で、大人になっても自分に自信が持てなくなってしまった『アダルトチルドレン』である」と言い換えることができます。
なお、「アダルトチルドレンとは何か?」については、以下の記事で詳しく説明していますので、必要な方は参考にしてください。
また、「自分はアダルトチルドレンなのか?」をチェックできる「アダルトチルドレン(ac)チェックリスト」もあわせて紹介します。
アダルトチルドレンは克服することができる
「アダルトチルドレン」とは、発達障害、精神疾患など、決して障害や病気といった問題ではなく、子どもの頃に受けた親の言動の影響で身に付けた「考え方の癖」「性格上の癖」のようなものです。
ちなみに、アダルトチルドレンについては研究が進み、現在では心理カウンセリングを始め、さまざまな克服方法が確立されています。
ということは、反対に言えば、「アダルトチルドレンの克服方法に沿って、アダルトチルドレンを克服することで、『自分はダメだ!』という考え方を改善できる」と言い換えることができます。
なお、「アダルトチルドレンの克服方法に沿った心理カウンセリング」については、以下の記事で詳しく説明していますので、是非、参考にしてください。
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
以上、「アダルトチルドレンの例え話:『くろ吉』が自信を持てない理由」という記事でした。