アダルトチルドレンが生まれる理由

アダルトチルドレンの願いを表しているイラスト

POINTアダルトチルドレンが生まれる理由には、「『親』という『養育者』」の存在と「『家族』という『安全基地』」の存在が密接に関わっており、アダルトチルドレンの願いは、「毒親」と「機能不全家族」を健全化することです。

心理カウンセラーの寺井です。

アダルトチルドレンとは、「子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったことで、成人しても生きづらさを感じ続けている人」を指す言葉です。

ということは、アダルトチルドレンとは、「子ども時代、温かな家庭の雰囲気を感じられなかった人」とも言い換えることができ、「子ども時代、両親の笑顔や家庭の温かさなど、健全な家族の雰囲気を求め続けた人」とも言い換えることができます。

このように、アダルトチルドレンにも生まれてきた理由があり、アダルトチルドレンの願いとは、「お父さんを助けたい!」「お母さんを守りたい!」「家族で仲良くしたい!」といった優しい願いである場合が殆どです。

そして、アダルトチルドレンが生まれる理由に気づき、その願いを叶えることで、アダルトチルドレンの克服が達成できます。

この記事は、アダルトチルドレンが生まれる理由について解説しています。

アダルトチルドレンが生まれる理由

アダルトチルドレンが生まれる理由を表しているイラスト

そもそも、「アダルトチルドレンが生まれる理由」はどこにあるのでしょうか?

それは、子どもが「家族」という自分の居場所を懸命に守ろうとする「生存本能」に基づいています。

 

集団に属していたい願い「所属欲求」

唐突ですが、私たち人間は哺乳類です。

哺乳類は、「群れ」という集団を作り、群れの構成員がお互いに協力し合うことで「生命の安全」を確保しようとします。

その反面、「群れ」という集団が崩壊してしまうと自分の居場所がなくなってしまい、「生命が危険」にさらされることになります。

このとき、集団に属すことで生命の安全を確保しようとする心の働きを、心理学では「所属欲求」と言います。

所属欲求(しょぞくよっきゅう)とは、その人物が、その集団に所属して生活したい欲求を指す。アイデンティティーとも呼ぶ。所属先は、世代であったり、血縁集団であったり、国家であったり、民族であったり、多種多様である。

引用元:所属欲求

 

安心安全を感じられる居場所「安全基地」

人間も哺乳類ですので、「家族」という居場所を作り、家族の構成員がお互いに協力し合うことで「生命の安全」を確保しようとします。

なので、「家族」が崩壊してしまうと自分の居場所がなくなってしまい、「生命が危険」にさらされることになります。

このとき、例えば「家族」のように、自分が安心安全を感じられる「集団」や「居場所」のことを、心理学では「安全基地」と言います。

安全基地とは、アメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した人間の愛着行動に関する概念である。子供は親との信頼関係によって育まれる『心の安全基地』の存在によって外の世界を探索でき、戻ってきたときには喜んで迎えられると確信することで帰還することができる。

引用元:安全基地

 

「安全基地」が無くなることへの不安「見捨てられ不安」

よって、人間は「家族」という居場所が穏やかに安定していると、安心安全を感じてのびのびと過ごせます。

ですが、「家族」という居場所が問題を抱えていると安心安全を感じられず、強い不安を感じます。

とくに、子どもは「家族」が問題を抱えていると、自らの「安全基地」が危険にさらされていると感じます。

そして、「自分の居場所が無くなってしまうのではないか?」「自分は一人ぼっちになってしまうのではないか?」と大きな不安を感じます。

このとき、「家族」が問題を抱えていることで子どもが感じる大きな不安を、心理学では「見捨てられ不安」と言います。

見捨てられ不安:人から見捨てられること(実際のものも、想像上のものも、どちらも)に敏感なため、そうなりそうな状況をなりふりかまわず避けようとします。相手の感情に敏感で、相手と離れることに強い不安や恐怖、怒りを覚えます。見捨てられ不安とは、一人でいること、孤独になることへの耐え難さとも言えます。

引用元:酒田駅前メンタルクリニック

 

アダルトチルドレンが生まれる理由は「安全基地」を守ろうとする「生存本能」

子どもは、人生経験が不足しているため、自立して大人になるまでは、「『親』という『養育者』」の存在と「『家族』という『安全基地』」の存在が必要不可欠です。

裏を返せば、親に見捨てられてしまったり、家族が崩壊してしまうことは、「養育者」と「安全基地」を失うことになり、子どもにとっては「死」を意味します。

なので、アダルトチルドレンが生まれる理由は、子どもが「『親』という『養育者』」の存在と「『家族』という『安全基地』」の存在を失わないようにする本能=自らの生命を守ろうとする「生存本能」にあるとも言えます。

 

アダルトチルドレンが生まれる理由がわかる「例え話」

また、「アダルトチルドレンが生まれる理由」がわかる「例え話」を以下に紹介します。

ワンちゃんの親子関係」や「みにくいアヒルの子」など、「例え話」を用いてわかりやすく解説していますので、興味のある方は参考にして下さい。

 

アダルトチルドレンの願いは「機能不全家族の健全化」

アダルトチルドレンの願いは「毒親」と「機能不全家族」の健全化であることを表しているイラスト

このように、アダルトチルドレンが生まれる理由には、「『親』という『養育者』」の存在と「『家族』という『安全基地』」の存在が密接に関わっています。

そして、アダルトチルドレンの願いとは、「『親』という『養育者』に自分の存在意義を認めてもいたい!という願い」であり、「『家族』という『安全基地』を健全な状態にしたい!という願い」でもあります。

すなわち「自分の居場所を懸命に守ろうとする生存本能」こそが、アダルトチルドレンが生まれる理由と言えます。

 

子どもが健全に育つためには?

例えば、美しい花を咲かせる植物も、「土・水・日光」という「栄養」と「植木鉢」という「居場所」が無ければ、成長して花を咲かせることはできません。

それと同じように、子どもも、「親の愛情」という「栄養」と「家族」という「居場所」が無ければ、成長して花を咲かせることができません。

「子どもは親を選べない」という言葉がありますが、いくら子どもが素晴らしい素質を持って生まれてきても、「親の養育」や「家族の状態」に問題があれば、子どもは健全に育つことができません。

 

「毒親」と「機能不全家族」

このとき、子どもが安心して過ごすことができないような、問題のある養育をする親を「毒親」と呼びます。

毒親(どくおや、英: toxic parents)は、毒になる親の略で、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親、子どもが厄介と感じるような親を指す俗的概念である。1989年にスーザン・フォワード(英: Susan Forward)が作った言葉である。学術用語ではない。

引用元:毒親

また、子どもが安心して過ごすことができないような、問題のある家族を「機能不全家族」と言います。

機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。

引用元:機能不全家族とは?影響を受けるとアダルト・チルドレンになる?

 

アダルトチルドレンの願い「家族みんなで穏やかに過ごしていたい!」

そして、子どもは「家族」という「自分の居場所」を少しでも居心地をよくしたいという願いから、父親や母親の顔色を伺い、機能不全家族を健全化しようと細心の注意を払います。

このとき生まれる「機能不全家族を健全化しようとする心理」こそが、アダルトチルドレンの始まりです。

よって、「機能不全家族を健全化しようとする心理」=「家族みんなで穏やかに過ごしていたい!」という優しい願いこそが、アダルトチルドレンが生まれる理由と言えます。

アダルトチルドレンの願いが叶わない限り、生きづらさは続いてしまう

ただ、アダルトチルドレンがどんなに頑張っても、どんなに我慢しても、家族の問題がいつまでも解決されず、家族がいつまでも機能不全状態のままである場合があります。

そうすると、「機能不全家族を健全化しようとする心理」=「家族みんなで穏やかに過ごしていたい!」と、子どもの頃に願い始めたアダルトチルドレンの願いは、大人になっても叶わないままになってしまい、結果、アダルトチルドレンは、大人になっても「生きづらさ」を感じ続けることになってしまいます。

 

アダルトチルドレンの生きづらさ「愛着障害」

このように、「親子関係」や「家庭環境」に問題があり、子ども時代を安心して過ごせなかったことが原因で感じる「生きづらさ」を「愛着障害」と言います。

愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。

引用元:愛着障害(アタッチメント障害)

なので、アダルトチルドレンとは「愛着障害を抱えた人」と言い換えることができます。

 

なお、「自分は毒親に育てられたのか?」については、以下の「毒親育ちチェックリスト」でチェックすることができますので、興味のある方は参考にしてください。

また、「自分は機能不全家族で育ったのか?」をチェックできる「機能不全家族チェックリスト」もあわせて紹介します。

 

アダルトチルドレンの役割「7つ」のタイプ

アダルトチルドレン「7つ」のタイプを表すイラスト

前述の通り、子どもの頃、家族が重苦しい雰囲気であったり、父親と母親の関係が冷め切っていたり、子どもへの躾けや教育が厳しいと、子どもは「愛着障害」を抱えることになり、心身の健全な成長が脅かされてしまいます。

そうすると、子どもは、ニコニコと笑顔を振りまく「いい子」を演じたり、努力に努力を重ねる「できる子」を演じるなど、さまざまな「役割」を演じることで父親や母親を安心させ、機能不全家族を健全化しようとします。

 

アダルトチルドレンが演じる「7つ」の役割

このとき、機能不全家族を健全化しようと、アダルトチルドレンが演じる役割を「アダルトチルドレンタイプ」と言います。

なお、アダルトチルドレンの役割:「アダルトチルドレンタイプ」は、以下の「7タイプ(7つの役割)」があります。

POINT

  1. ヒーロータイプ(英雄役)
    「勉強・スポーツ」などで活躍を示すなど、「優秀な人間(英雄的存在)」となることで家族を支える
  2. スケープゴート(身代り役)
    家族からの「八つ当たり」を黙って一身に受けとめるなど、「家族のストレスのはけ口(身代りの犠牲者)」となることで家族を崩壊から防ぐ
  3. ロストワン(いない子)
    自我を抑え込んだり一人で過ごすなど、「自分の存在感を消す(いない子になる)」ことで家族の負担を減らす
  4. ピエロタイプ(おどけ役)
    「家族のストレスや緊張」を和らげるため、おどけたり笑顔を振りまくなど、「ムードメーカー(おどけ役)」となって家族の雰囲気を和ませる
  5. ケアテイカー(世話役)
    「病気の家族の看病」をしたり「幼い弟妹の面倒」を見るなど、「父親代わり・母親代わり(世話役)」となって家族の世話をする
  6. イネイブラー(支え役)
    「苦労する母親」を支えたり「不甲斐ない父親」を支えるなど、「自己犠牲」によって家族を支える
  7. プラケーター(慰め役)
    「落ち込んでいる家族」や「悩んでいる家族」に優しく寄り添うなど、「聞き役に徹する」ことで家族を慰める

このように、アダルトチルドレンは、兄弟姉妹などのあいだで役割を分担し演じ分け、チームワークによって機能不全家族を健全化しようとします。

 

なお、「アダルトチルドレンタイプ」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にして下さい。

 

アダルトチルドレンが生まれる理由「インナーチャイルドの気持ち」

このように、一見、自分にとってマイナスに感じる「アダルトチルドレンの生きづらさ」にも、子ども時代の自分「インナーチャイルド」の気持ちが隠されています。

とくに、アダルトチルドレンの克服を目的とした心理カウンセリングでは、「お父さんを助けたい!」「お母さんを守りたい!」「家族で仲良くしたい!」という、アダルトチルドレンの願い=「傷ついたインナーチャイルドの気持ち」に気づくことで大きな進展が生まれます。

なので、アダルトチルドレンの克服を目的とした心理カウンセリングの現場では、アダルトチルドレンを「親や家族に傷つけられた『被害者』」ではなく「親や家族を健全化しようとした『救済者』」であると尊敬の念で捉えます。

 

なお、「アダルトチルドレンの克服方法を目的とした心理カウンセリング」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にして下さい。

また、アダルトチルドレンが生まれる理由である「インナーチャイルドの気持ちを表したエッセイ」を紹介します。

『不安』を抱えたインナーチャイルド」や「『疑い』を抱えたインナーチャイルド」や「『怒り』を抱えたインナーチャイルド」など、わかりやすく解説していますので、興味のある方は参考にして下さい。

 

まとめ

さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。

POINT

  • アダルトチルドレンが生まれる理由には、「家族」という「安全基地」に属すことで生命の安全を確保しようとする本能「所属欲求」と「見捨てられ不安」が密接に関係している
  • 子どもが安心して過ごせない養育を行う親を「毒親」と言い、子どもが安心して過ごせない家族を「機能不全家族」と言う
  • アダルトチルドレンが生まれる理由は、「『毒親』や『機能不全家族』を健全化しようとする心理
  • 「毒親」や「機能不全家族」の影響で抱える「生きづらさ」を「愛着障害」と言う
  • アダルトチルドレンの願いは、「アダルトチルドレンタイプ」という7つの役割に分かれる
  • アダルトチルドレンの克服を目的とした心理カウンセリングでは、アダルトチルドレンは「親や家族に傷つけられた『被害者』」ではなく「親や家族を健全化しようとした『救済者』」であると捉える

ちなみに、私=心理カウンセラー寺井啓二は、アダルトチルドレンの克服経験を持つ心理カウンセラーです。

前述の通り、アダルトチルドレンとは、「家族みんなで穏やかに過ごしていたい!」という優しい願いを、子どもの頃からずっと諦めずに感じ続けてくれている人なのだと私は考えています。

以下に「私=寺井啓二のアダルトチルドレン克服体験談」を紹介します。

なお、本記事に関する関連情報は、以下のページにまとめていますのであわせて紹介します。

以上、「アダルトチルドレンが生まれる理由」という記事でした。

この記事を書いた人
寺井 啓二

「うつ、アダルトチルドレンの克服経験」を持つ「心理カウンセラー・心理セラピスト」。
自らの克服経験を世の中のために役立てたいと考え、2013年に「メンタル心理そらくも」を設立、代表を務める。
10年以上のカウンセリング臨床実績があり、「アダルトチルドレン、インナーチャイルド、うつ病、パニック障害、人間関係の生きづらさ、親子関係の悩み(毒親)、子育ての悩み、恋愛・結婚の悩み、中学生・高校生の悩み」などの相談を得意としている。

◆カウンセリング実績
・臨床実績:過去2000回以上
・男女比:男性40%、女性60%
・年齢層:中学生から60歳代
・来訪元:静岡県内、愛知など東海圏
     東京、神奈川など首都圏
     大阪、兵庫など関西圏
     海外在住の方

◆保有資格
・上級心理カウンセラー
・メンタル心理カウンセラー
・うつ病アドバイザー
・チャイルドカウンセラー
・家族療法カウンセラー
・セルフ・アクセプタンスカウンセラー
・EFT-Japan Level 1
・EFT-Japan プラクティショナー

“代表:寺井啓二の詳しいプロフィール”

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