
POINT
「夫婦仲が悪い=機能不全家族」ではありません。
夫婦の間で、対立・支配・我慢などの関係パターンが繰り返され、それが家庭全体の安心感や子どもに影響している場合、機能不全家族につながることがあります。
心理カウンセラーの寺井です。
人は本来、自然に成長し、自然に回復する力を持っています。
しかし、家庭の中で夫婦の対立や支配、我慢などが繰り返されていると、子どもはその環境に適応するために、さまざまな「心の反応」を身につけることがあります。
その反応が何度も繰り返されると、やがて「心の習慣」となり、大人になってからの人間関係や生きづらさにつながる場合もあります。
そのため、機能不全家族について考えるときには、「誰が悪かったのか」だけを見るのではなく、家庭の中でどのような関係が繰り返されていたのかを見ることが大切です。
この記事では、機能不全家族について、特に「夫婦関係」という視点から、代表的な7つの特徴を心理学的に解説します。
なお、機能不全家族そのものの意味や特徴、原因、克服方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
機能不全家族とは?夫婦関係から見た特徴
機能不全家族について考えるとき、家庭全体の雰囲気だけでなく、「夫婦関係」という視点から見ることもできます。
夫婦の間に繰り返される対立や支配、我慢などの関係パターンがあると、それは夫婦二人だけの問題にとどまらず、家庭全体の安心感や子どもにも影響する場合があります。
夫婦関係が家族全体に与える影響
子どもは、親が考えている以上に家庭の雰囲気を感じ取っています。
たとえば、
POINT
- 親同士がいつも言い争っている
- 一方の親がもう一方を支配している
- 家庭内で誰かがいつも我慢している
- 親同士が本音を話せない
- 子どもが親の顔色をうかがっている
といった状態が繰り返されると、子どもは「この家庭で安心して過ごすにはどうすればいいのか」を無意識に考えるようになります。
そして、その環境に適応するための心の反応が生まれることがあります。
「夫婦仲が悪い=機能不全家族」ではない
夫婦で意見が違ったり、喧嘩をしたりすること自体が、機能不全家族を意味するわけではありません。
どの夫婦にも意見の違いや感情の衝突はあります。
重要なのは、問題が起きたときに話し合ったり、相手の気持ちを理解したり、関係を調整したりできるかどうかです。
一時的な意見の衝突ではなく、同じ関係パターンが繰り返され、夫婦自身だけでなく家族全体の安心感まで失われている場合に、機能不全家族という視点が重要になります。
機能不全家族の特徴:夫婦関係からわかる「7つ」の特徴

ここからは、夫婦関係から見た機能不全家族の代表的な7つの特徴を解説します。
機能不全家族の夫婦関係には、次のような特徴が見られることがあります。
POINT
- 夫婦の対立や争いが慢性化している
- 夫婦の一方が、もう一方を支配・コントロールしている
- 夫婦がお互いの気持ちを受け止められない
- 夫婦の役割や負担が一方に偏っている
- 夫婦の問題に子どもを巻き込んでいる
- 夫婦の間に「安心して過ごせる関係」がない
- 夫婦間の関係パターンが固定化し、家族全体に影響している
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 夫婦の対立や争いが慢性化している
夫婦の意見が違うことは自然なことです。
しかし、何度話し合っても同じことで争い、仲直りしても再び対立するという状態が続いている場合には注意が必要です。
たとえば、
POINT
- いつも同じことで喧嘩になる
- 相手を責めることが多い
- 過去の不満を何度も蒸し返す
- 話し合いが解決ではなく勝ち負けになる
- 家庭内に常に緊張感がある
といった状態です。
このような関係では、夫婦それぞれが自分を守るための心の反応を繰り返していることがあります。
「また責められるかもしれない」
「自分が負けてはいけない」
「自分の気持ちを分かってもらわなければならない」
などの反応が繰り返されることで、夫婦の間に一定のパターンができていきます。
子どもはその緊張を感じ取り、「喧嘩をさせないようにしよう」「親の機嫌を損ねないようにしよう」と、自分なりに家庭へ適応しようとすることがあります。
② 夫婦の一方が、もう一方を支配・コントロールしている
夫婦のどちらか一方が、相手の考えや行動を自分の思いどおりにしようとする状態も、機能不全家族につながる特徴の一つです。
たとえば、
POINT
- 相手の行動を細かく制限する
- 自分の意見に従わせようとする
- 相手の意見を認めない
- 相手の交友関係などを制限する
- 相手が反論すると怒る
などです。
支配する側を単純に「悪い人」と考えるだけでは、関係の背景を十分に理解できないことがあります。
人が相手をコントロールしようとするとき、その背景には、不安や恐れ、「自分の思いどおりにならなければ安心できない」という心の反応が隠れている場合があります。
一方、支配される側も、
「自分が我慢すればいい」
「逆らわないほうが家庭が平和になる」
と考え、我慢することが習慣になっていく場合があります。
このように、支配する側と我慢する側の関係が固定化すると、夫婦関係だけでなく家族全体にも影響することがあります。
③ 夫婦がお互いの気持ちを受け止められない
夫婦の間で「正しいか、間違っているか」という話ばかりになり、お互いの気持ちを受け止められなくなっている状態です。
たとえば、
「そんなことで怒るのはおかしい」
「あなたの考え方が間違っている」
「自分はこれだけやっているのだから文句を言うな」
など、相手の気持ちを理解する前に、自分の正しさを証明しようとする状態です。
私は、人の心を「知・情・意」という3つの側面から考えます。
POINT
- 「知」は、こうしなければならないというMUST。
- 「情」は、実際にどう感じているのかというFEEL。
- 「意」は、本当はどうしたいのかというWANT。
夫婦関係では、相手が「どう考えるべきか」だけではなく、「本当はどう感じているのか」を理解することも重要です。
気持ちを受け止めてもらえない状態が続くと、夫婦それぞれが自分の気持ちを守るために反応し、さらに相手を理解できなくなるという循環が生まれることがあります。
④ 夫婦の役割や負担が一方に偏っている
家事、育児、仕事、経済的な負担などが、一方の人に大きく偏っている状態です。
ただし、夫婦の役割が完全に50対50でなければいけないという意味ではありません。
夫婦にはそれぞれ仕事や体調、得意不得意などの違いがあります。
問題になるのは、負担の偏りそのものよりも、
POINT
- いつも同じ人が我慢している
- 負担について話し合うことができない
- 一方だけが当然のように頑張り続けている
という状態が固定化している場合です。
背景には、
「自分が頑張らなければならない」
「自分が我慢すれば丸く収まる」
という強いMUSTが存在することがあります。
最初は家族を守るためだった頑張りや我慢が、繰り返されることで「我慢することが当たり前」という心の習慣になってしまうこともあります。
⑤ 夫婦の問題に子どもを巻き込んでいる

夫婦の問題を、子どもに解決させようとする状態です。
たとえば、
POINT
- 子どもを夫婦喧嘩の仲裁役にする
- 子どもに配偶者の不満を聞かせる
- 「お父さんとお母さん、どっちが正しい?」と子どもに判断させる
- 子どもに配偶者への伝言をさせる
- 子どもに夫婦関係を何とかしてもらおうとする
などです。
子どもにとって、親は生活を支えてくれる大切な存在です。
その親同士が対立していると、子どもは「どちらの味方をすればいいのか」「どうすれば家庭が壊れないのか」と悩むことがあります。
そして、
「自分が何とかしなければ」
「親を怒らせないようにしなければ」
「自分がいい子でいれば家庭がうまくいく」
という心の反応を身につけることがあります。
これは子どもが弱いからではありません。
その家庭の中で生きていくために、子どもなりに身につけた適応の方法だった可能性があります。
⑥ 夫婦の間に「安心して過ごせる関係」がない
機能不全家族を考えるうえで、特に重要なのが「安心」という視点です。
夫婦の間に、
POINT
- 本音を言うと怒られる
- 相手の顔色を常にうかがう
- 相手を怖れている
- 家にいても緊張している
- 相手に気を遣い続けている
といった状態が続いていると、夫婦の間に安心して過ごせる関係がなくなっている可能性があります。
人は本来、
「相手と仲良く安心して過ごしたい」
「みんなで仲良く安心して過ごしたい」
というWANTを持っています。
そのため、安心できない状態が続くと、人はその環境に適応するためにさまざまな心の反応を身につけます。
「怒らせないようにする」
「我慢する」
「相手に合わせる」
「自分の気持ちを隠す」
などです。
夫婦関係において大切なのは、「一度も喧嘩をしないこと」ではありません。
意見が違っても、安心して気持ちを伝え、関係を調整できることが重要です。
⑦ 夫婦間の関係パターンが固定化し、家族全体に影響している

7つ目は、これまでの特徴が繰り返されることで、夫婦の関係パターンそのものが固定化している状態です。
たとえば、
POINT
- 支配する
↓ - 相手が我慢する
↓ - 不満がたまる
↓ - 対立する
↓ - 子どもが家庭の緊張を感じる
↓ - 子どもが親の顔色をうかがう
という関係が繰り返されることがあります。
このような状態になると、夫婦のどちらか一人だけに問題があるというよりも、「関係そのものに一定のパターンができている」と考えることができます。
同じ反応を何度も繰り返すことで、それが「心の習慣」となっていくことがあります。
そして、その心の習慣が夫婦関係の中で繰り返されると、家庭全体の雰囲気にも影響する場合があります。
なぜ夫婦関係が機能不全家族につながるのか?
ここまで見てきた7つの特徴には、単なる夫婦喧嘩や性格の問題だけでは説明できない部分があります。
その背景には、一人ひとりが抱えている心の反応や、これまでの人生の中で身につけた心の習慣が関係していることがあります。
夫婦それぞれが抱えている「心の反応」
人は、安心できない状況に置かれると、自分を守るために反応します。
POINT
- 怒る
- 黙る
- 我慢する
- 相手に合わせる
- 相手をコントロールする
- 距離を取る
こうした反応は、本人にとっては、そのときの環境を生きるために必要だったものかもしれません。
そのため、夫婦の問題を考えるときにも、「なぜこの人はこんなことをするのか」と責めるだけではなく、「この人は何を感じ、何を守ろうとしているのだろう」と考えることが大切です。
繰り返されることで「心の習慣」になる
その反応が何度も繰り返されると、やがて本人にとって当たり前の反応になっていくことがあります。
これが「心の習慣」です。
たとえば、
POINT
- 我慢すればいい
- 自分が頑張ればいい
- 相手に嫌われないようにしなければ
- 相手をコントロールしなければ安心できない
といった反応が、本人にとって自然なものになっていくことがあります。
そして、その心の習慣が夫婦関係の中で繰り返されることで、夫婦の関係パターンも固定化していきます。
夫婦の関係パターンが子どもにも影響する
子どもは、家庭の中で起きていることを見ながら、自分なりに「どうすれば安心して過ごせるのか」を学んでいきます。
そのため、夫婦間の関係パターンが慢性的に続いていると、子どももその環境に適応するための心の反応を身につけることがあります。
それが大人になってからも続き、人間関係や恋愛、仕事などの場面で生きづらさとして表れる場合があります。
機能不全家族で育った子どもに起こること
機能不全家族の中で育った子どもは、必ず問題を抱えるようになるわけではありません。
しかし、家庭の中で安心して過ごすことが難しい状態が続くと、その環境に適応するための心の反応を身につけることがあります。
たとえば、
POINT
- 親の顔色をうかがう
- 自分の気持ちを後回しにする
- 人の期待に応えようとする
- 争いを避けようとする
- 「自分が何とかしなければ」と考える
といった反応です。
子どもの頃には、その反応が家庭で生きていくために役立っていたのかもしれません。
しかし、大人になって環境が変わった後も同じ反応を続けていると、本人にとっては「なぜか生きづらい」という状態になることがあります。
機能不全家族で育った大人やアダルトチルドレンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
「自分の家庭も機能不全家族だったのでは?」と思った方へ

ここまで読んで、
「自分の家庭にも当てはまるかもしれない」
「親の夫婦関係を思い出して、なぜ自分が生きづらいのか少し分かった気がする」
という方もいるかもしれません。
そのような場合は、まず自分の家庭で何が起きていたのかを整理してみることが大切です。
機能不全家族だったかどうかを考えるとき、一つの特徴だけで判断する必要はありません。
家庭環境、親子関係、夫婦関係など、いくつかの視点から振り返ってみることで、自分の育った環境をより整理しやすくなります。
もし「自分が育った家庭は、機能不全家族だったのだろうか?」と感じているなら、まずはチェックリストで家庭環境を振り返ってみてください。
セルフチェック自分は機能不全家族で育ったのか、セルフチェックしてみる
チェックを通して、現在の自分を責めるのではなく、
「自分はどのような家庭環境の中で育ってきたのか」
「その環境の中で、どのような心の反応を身につけたのか」
を振り返ってみてください。
機能不全家族の特徴を3つの視点から見る
機能不全家族は、一つの視点だけではなく、家庭全体をさまざまな角度から見ることで理解しやすくなります。
家庭環境から見る
家庭の雰囲気やルール、安心感などから機能不全家族の特徴を考えたい方はこちらをご覧ください。
親子関係から見る
親と子どもの関係や、子どもが家庭の中でどのような役割を担っていたのかを考えたい方はこちらをご覧ください。
夫婦関係から見る
この記事では、夫婦関係という横の関係から見た機能不全家族の特徴を解説しました。
機能不全家族は「壊れた家族」ではなく、関係の中で傷つきが積み重なった状態

機能不全家族について考えるとき、「父親が悪かった」「母親が悪かった」「自分が弱かった」と、誰かを責める方向に考えてしまうことがあります。
しかし、大切なのは「誰が悪かったのか」だけではありません。
POINT
- 家庭の中で、どのようなことが繰り返されていたのか
- そのとき、自分は何を感じていたのか
- その環境の中で、どのように自分を守っていたのか
という視点から、自分の過去を理解していくことです。
あなたが悪いのではなく、傷ついているのかもしれません。
子どもの頃に身につけた心の反応も、その家庭で生きていくために必要だったものなのかもしれません。
そして、本来のあなたがなくなったわけではありません。
人は本来、自然に成長し、自然に回復する力を持っています。
過去に身につけた心の習慣を理解していくことで、少しずつ本来の自分・本来の力を取り戻していくこともできます。
まとめ
機能不全家族を夫婦関係という視点から見ると、次の7つの特徴が考えられます。
POINT
- 夫婦の対立や争いが慢性化している
- 夫婦の一方が、もう一方を支配・コントロールしている
- 夫婦がお互いの気持ちを受け止められない
- 夫婦の役割や負担が一方に偏っている
- 夫婦の問題に子どもを巻き込んでいる
- 夫婦の間に「安心して過ごせる関係」がない
- 夫婦間の関係パターンが固定化し、家族全体に影響している
ただし、夫婦喧嘩をすることや、役割分担が完全に均等ではないことだけで、機能不全家族と判断する必要はありません。
重要なのは、夫婦の間でどのような関係パターンが繰り返され、それが家庭全体の安心感や子どもの心の反応にどのような影響を与えていたのかを見ることです。
もし「自分の家庭も機能不全家族だったのではないか」と感じた方は、まず自分の家庭を振り返り、整理するところから始めてみてください。
セルフチェック自分は機能不全家族で育ったのか、セルフチェックしてみる
以上、「機能不全家族の特徴:夫婦関係からわかる『7つ』の特徴」という記事でした。
