POINT機能不全家族の原因は、親の幼少期の体験が影響しており、「①毒親」「②禁止令・ドライバー」「③負の世代間連鎖」の3つが考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
そもそも「家庭」とは「両親」や「祖父母」など「大人」が中心となって営むものですので、機能不全家族の原因は「子ども」にあるのではなく、「両親」や「祖父母」といった「大人」にあると言えます。
とくに、機能不全家族の原因となる「親」は、「相手の話を聞かない」あるいは「家庭の問題を改善しようとしない」など「状況の変化を恐れる」という特徴があります。
反対に言えば、機能不全家族の原因となる「親」は、「頑なに現状を維持しようとする」あるいは「挑戦すること・成長することを極端に恐れる」などの特徴があると言い換えることができます。
確かに、相手の話に耳を貸さず、家庭に問題があることを認めることすらせず、このような「頑固な態度」を取られ続けては、「親はおかしい!」「親が悪い!」と考えたくなるのも無理のないことです。
くわえて、最近では「発達障害」や「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」という言葉も認知され始め、あたかも、機能不全家族の原因は「『親』が生まれ持った『気質(遺伝的要素)』にすべての原因がある」と誤解して考えている方もいるようです。
ですが、心理学に沿って考えると、機能不全家族とは、決して「親が親1人の意思で意図的に引き起こしている問題」ではなく、「親自身が子どもの頃、親の親(祖父母)から受けた子育てのやり方を、大人になって無意識に模倣していることが原因で起きている」と考えられています。
この記事は、機能不全家族を引き起こす「3つ」の原因について解説しています。
機能不全家族を引き起こす「3つ」の原因
「機能不全家族」とは、もともと「アダルトチルドレンの研究」から生み出された言葉で、家庭内に存在する様々な問題が原因で、子どもが身体的または精神的なダメージを日常的に受けたり、子どもが日常的にストレスを感じている家族の状態を指します。
機能不全家族とは、家庭内で弱い立場にある人に対して、身体的または精神的ダメージを与える機会が日常的に存在している家族状態のことをいいます。…(中略)…機能不全家族においてダメージを受ける存在は、家庭内で弱い立場になりやすい高齢者や子どもである場合がほとんどです。…(中略)…その原因は子どもの保護者が招いている場合がほとんどです。
また、「アダルトチルドレンの研究」によると、以下のように「機能不全家族とは、アダルトチルドレンの原因となる家族」として定義されています。
「アダルトチルドレン」とは、機能不全家族で育ったことにより、「親から守られる」「適切な教育を受ける」などの正常な成長過程をたどれず、成人してからも生きにくさや心に傷を抱えている人のことをさします。
以上のことから、「機能不全家族を引き起こす原因」とは「『家庭を営む立場』にある『親の幼少期の体験』が影響している」と考えられます。
それでは、「機能不全家族を引き起こす原因」について、以下に詳しく解説していきます。
心理学で考える「機能不全家族『3つ』の原因」
アダルトチルドレン研究の専門家たちは、著書の中で「機能不全家族には共通する『傾向』や、共通する『行動・思考パターン』が存在する」と述べています。
このような「アダルトチルドレン研究の専門家たちの指摘」を根拠に考えると、「機能不全家族を引き起こす原因」とは、大きく分けて以下「3つ」が考えられます。
機能不全家族「3つ」の原因
- 「毒親」
- 「禁止令とドライバー」
- 「世代間連鎖」
なお、「アダルトチルドレン研究の専門家たちが著書の中で示している『機能不全家族の特徴』」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
それでは、心理学で考える「機能不全家族『3つ』の原因」について、以下にさらに詳しく解説していきます。
機能不全家族の原因①:「毒親」
前述の通り、「機能不全家族」とは「家庭が果たすべき役割がうまく機能していない家庭」を指す言葉であり、「家庭が果たすべき役割をうまく果たせない親」を「毒親」と言います。
よって、「毒親」とは「機能不全家族の原因になる親」と言い換えることができます。
また、機能不全家族の原因である「毒親」は、毒親自身が機能不全家族で育った経験を持つ場合が多く、そのため、子どもの頃、自らの両親(祖父母)との親子関係で負った「家庭内トラウマ」を抱えたままの大人「アダルトチルドレン」である場合が多いです。
反対に言えば、機能不全家族の原因である「毒親」は、「健全な子育てをしてもらえないまま大人になっている」あるいは「健全な家庭の築き方を知らないまま大人になっている」と言い換えることができ、そのぶん、機能不全家族の原因である「毒親」の内心には、「子育てに対する自信のなさ」「家庭を築くことへの自信のなさ」が隠れていると言い換えることができます。
また、「毒親」という言葉の生みの親である「スーザン・フォワード」の考え方によると、「毒親」という言葉の意味合いは以下のようになります。
POINT
- 子どもの人生に「毒になる子育て」を行う親
- 子どもにとって「毒になるような悪影響」を与える親
このように、「毒親」とは「家庭が果たすべき役割をうまく果たせない親」という意味合いがあります。
それでは、「『毒親』が機能不全家族を引き起こす原因である理由」について、以下に詳しく解説していきます。
「ダン・ニューハース」が示す「機能不全家族の原因となる親の兆候」
「不幸にする親・人生を奪われる子供」の著者である、アメリカの臨床心理学博士「ダン・ニューハース」は、「機能不全家族の要因となる親の兆候」として以下の点をあげています。
このような「兆候」を持つ親が子育てを行った場合、子どもは家庭にいながら日常的にストレスを感じ続ける可能性があります。
よって、「上記のような兆候を持つ子育てを行う親」すなわち「機能不全家族を引き起こす親」とは、「子どもの健全な成長に悪影響を及ぼす可能性がある親」と言い換えることができます。
「スーザン・フォワード」が示す「毒になる親の特徴」
また、アメリカの専門家「スーザン・フォワード」は、上記のような「機能不全家族の原因となる親」を、著書の中で「toxic parents(毒になる親)」と表現し、これが日本における「毒親(どくおや)」という言葉の語源となりました。
毒親(どくおや、英: toxic parents)は、毒になる親の略で、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親、子どもが厄介と感じるような親を指す俗的概念である。1989年にスーザン・フォワード(英: Susan Forward)が作った言葉である。学術用語ではない。
引用元:毒親
そして、「スーザン・フォワード」は「毒になる親:一生苦しむ子供」という著書の中で、「機能不全家族の原因となる親(毒親)の特徴」として以下の点をあげています。
毒親の特徴
- 子どもが従わないと罰を与え続ける「神様」のような親
- 「あなたのため」と言いながら子どもを支配する親
- 大人の役を子どもに押しつける無責任な親
- 脈絡のない怒りを爆発させるアル中の親
このような「毒親」が営む「家庭」とは、「本来、家庭が果たすべき役割がうまく機能せず、機能不全状態に陥りやすい家庭」と言い換えることができます。
よって、「毒親」とは「機能不全家族の原因になる親」と言い換えることができます。
機能不全家族の原因:「毒親が行う子育ての特徴」
このように、子どもの人生に悪影響を及ぼす子育てを行う「毒親」とは、「機能不全家族の原因」のひとつと考えることができます。
そして、「毒親が行う子育ての特徴」を詳しく分析していくと、大きく分けて以下の「4つのタイプ」にわけることができます。
POINT
- 「子どもを否定する毒親」
- 「子どもを放置する毒親」
- 「過干渉な毒親」
- 「過保護な毒親」
また、「機能不全家族の原因となる『父親』の特徴」としては、主に以下の6点があげられます。
POINT
- 家庭に不在がち
- 世間体を重視する
- 暴言・モラハラ
- 暴力(DV)
- 家族と不仲
- 男尊女卑・きょうだい差別
さらに、「機能不全家族の原因となる『母親』の特徴」としては、主に以下の6点があげられます。
POINT
- 親子の役割逆転
- 被害者意識
- 親子共依存(母娘共依存)
- 二重拘束(ダブルバインド)
- 過保護
- ネグレクト
なお、「機能不全家族の原因」である「毒親の子育ての特徴」については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、是非、続きをお読み下さい。
機能不全家族の原因②:「禁止令・ドライバー」
前述の通り「家族の役割」とは、子どもが安心して生活ができる場所であること、すなわち、子どもにとって「心の安全基地」であることです。
安全基地とは、アメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した人間の愛着行動に関する概念である。子供は親との信頼関係によって育まれる『心の安全基地』の存在によって外の世界を探索でき、戻ってきたときには喜んで迎えられると確信することで帰還することができる。
引用元:安全基地
このように「家庭」や「家族」とは、子どもが以下のことを期待する場所といえます。
POINT
- 「学校・友達の悩みごと」を気兼ねなく相談することができる
- 「さまざまな気持ち」を否定されることなく無条件に理解してもらる
- 人間関係など「さまざまな問題の解決策」を一緒に考えてもらえる
- 「さまざまな病気・ケガ」を安心して回復できる
- 子どもが将来へ期待を感じながら「勉強」に打ち込むことができる
このように、子どもにとって「家庭」や「家族」とは、「子どもが社会で生きた行くための力(精神的自立)を身に付ける場所」「子どもが疲れた心と体を安心して回復できる場所」と言えます。
ですが、機能不全家族を引き起こす「親」は、上記のような子どもの期待に応えるどころか、反対に「親から子どもへとさまざまな要求を突きつける」という特徴があります。
このように、機能不全家族を引き起こす「親」が「子どもへと突きつける要求」を「交流分析」という心理学では「禁止令とドライバー」と言います。
反対に言えば、「禁止令とドライバー」とは「機能不全家族を引き起こす原因」と言い換えることができます。
それでは、「『禁止令とドライバー』が機能不全家族を引き起こす原因である理由」について、以下に詳しく解説していきます。
「クラウディア・ブラック」が示す「機能不全家族の暗黙のルール」
「もちきれない荷物をかかえたあなたへ 」の著者であり、「アダルトチルドレン『AC概念』」の生みの親である、アメリカのソーシャルワーカー・社会心理学博士「クラウディア・ブラック」は、「機能不全家族に存在する暗黙のルール」として以下の点をあげています。
機能不全家族の暗黙のルール
- <話すな>
家族の中に問題があるのに、それを話し合わない。
むしろ、問題に直面するのを避けて否認し、人に知られまいとする。
問題があるのを恥じる。
問題について話し合うのはよくない。 - <感じるな>
家族みんなが感情を抑え、表現しない。
こう感じるべきではないと自分の感情を無視する。
あるいは怒りの感情に圧倒されていて、ほかの感情を感じられない。 - <信頼するな>
状況の予測がつかない。
気分によって言動が左右されるため、一貫性がない。
実行されない約束や脅し、嘘が言いわけが多く、言葉の信頼性がなくなる。
引用元:機能不全家族、独自の3つのルール
このような「機能不全家族の暗黙のルール」とは、「親が子どもをコントロールするためのルール」と言い換えることができます。
そして、「機能不全家族の暗黙のルール」のように、子どもの自由を制限したり、子どもを思い通りにコントロールするような親の言動を「交流分析」という心理学では「禁止令・ドライバー」と言います。
禁止令
「禁止令」とは、親が子どもへと突きつける要求のなかで、「~するな!」「~しちゃダメ!」「~しないほうがいい」など、何かを禁止する指示・命令のことを指します。
そして、子どもは、親から「禁止令」を要求されればされるほど、性格形成において何かを「我慢」したり「抑圧」する傾向が強くなります。
禁止令とは心理学者エリックバーン博士によって開発された自己分析法で、文字通り「〇〇してはいけない」という「禁止」の「命令」のことです。…(中略)…幼いころに親などの養育者から否定的・禁止的な命令や態度を繰り返し受けることで、自らの思考や行動の制限を課してしまうものです。
なお、「禁止令」とは、主に以下の12種類があります。
「12」の禁止令
- 存在するな
- 成長するな
- 成功するな
- 重要であるな
- 感情を感じるな
- 健康であるな・正気であるな
- 仲間になるな
- 実行するな
- 子供であるな
- 信用するな・愛するな
- 男であるな・女であるな
- 考えるな
このように「禁止令」とは、「親が親自身のために子どもの自由を奪い利用するためのメッセージ」と言い換えることができます。
ドライバー(拮抗禁止令)
「ドライバー」とは「拮抗禁止令」とも呼ばれ、親が子どもへと突きつける要求のなかで、「~しろ!」「~しなさい!」「~したほうがいい!」など、何かを煽り立てる指示・命令のことを指します。
そして、子どもは、親から「ドライバー」を要求されればされるほど、性格形成において「頑張る」「焦る」という傾向が強くなります。
拮抗禁止令とは、幼少期に親の役割をもつ人から与えられた「〇〇しなさい」「〇〇したほうがよい」「〇〇であるべき」という、いわゆる「〇〇しろ」というメッセージを受けて、そのよう生きていこうと「決断」することで自らに課したものです。…(中略)…ドライバーというその名の通り、その人の行動を駆り立ててしまうのです。
なお、「ドライバー」とは、主に以下の5種類があります。
「5つ」のドライバー
- 完璧でなければ!
- もっと努力しなければ!
- 人を喜ばせなければ!
- もっと急がなければ!
- 強くあらねば!
このように「ドライバー」とは、「親が親自身のために子どもを扇動して利用するためのメッセージ」と言い換えることができます。
機能不全家族の原因:「禁止令・ドライバー」
このように、子どもの自由を制限したり、子どもを思い通りにコントロールするような親の言動「禁止令・ドライバー」とは、「機能不全家族の原因」のひとつと考えることができます。
そして、日本にも「三つ子の魂百まで」という諺がある通り、子どもの頃に身に付けた「禁止令・ドライバー」は、年齢を重ねても影響を与え続けます。
「三つ子の魂百まで」とは「幼い頃に体得した性格はいくら年をとっても変わるものではない」「幼い頃に出来上がった性質は一生変わらない」という意味のあることわざです。
引用元:「三つ子の魂百まで」の意味とは?
このように、人間にとって、子どもの頃に「親から言われたこと」や「親にされたこと」の影響は非常に大きく、人間の性格は「おおよそ6~10歳頃までに親から要求された『禁止令・ドライバー』によって形成される」とも言われています。
そして、「おおよそ6~10歳頃までに親から要求された『禁止令・ドライバー』によって形成される性格パターン」のことを、「交流分析」では「人生脚本」と言います。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
このように、「禁止令・ドライバー」とは、子どもの性格形成に大きな影響を与えます。
なお、「機能不全家族の原因」である「禁止令・ドライバー」については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、是非、続きをお読み下さい。
機能不全家族の原因③:「負の世代間連鎖」
前述の通り、人間にとって、子どもの頃の体験は「人生脚本」とも呼ばれ、その後の人生に大きな影響を与えます。
とくに、「家庭の築き方・子育てのやり方・仕事への取組み方・お金に対する価値観・恋愛結婚に対する考え方・相手の気持ちを察する姿勢・他人との関り方…」など、「『人間関係の構築の仕方』については、人は、自分が子どもの頃に自分の親が行っていたやり方を、大人になって無意識に模倣し繰り返す」という特徴があります。
このように、「家庭の築き方・子育てのやり方」など、親から子へ、子から孫へと、様々な影響が親子間で連鎖していくしくみのことを「世代間連鎖」と言います。
世代間連鎖とは、親から子へ世代を超えて伝わるもののこと。わかりやすいものでいえば、虐待や貧困などの問題である。しかし、実際はそういった大きな問題だけではなく、親から子への愛情のかけ方や接し方も、連鎖する。
引用元:世代間連鎖を止めるの、やめた
以上のことから、機能不全家族の原因となる「親」は、親自身が機能不全家族で育った「アダルトチルドレン」であり、「子どもの頃、機能不全家族で受けた子育てのやり方を『世代間連鎖』によって自分の子どもへと無意識に繰り返している」と言い換えることができます。
よって、「世代間連鎖」とは「機能不全家族を引き起こす原因」と言い換えることができます。
それでは、「『世代間連鎖』が機能不全家族を引き起こす原因である理由」について、以下に詳しく解説していきます。
アダルトチルドレン研究の専門家たちが示す「機能不全家族の主要原因」
前述の通り「機能不全家族」とは、もともと「アダルトチルドレンの研究」から生み出された言葉です。
そして、アダルトチルドレン研究の専門家たちは「機能不全家族の主要原因」として、主に以下の症状をあげています。
機能不全家族の主要原因
- 児童虐待の問題…「暴言、暴力、性的虐待、ネグレクト、過干渉、過保護、ヒステリー、きょうだい差別、教育虐待」など
- 家庭環境の問題…「親の死亡、家庭内の暴力、家庭不和、父子母子家庭(ひとり親)、拡大家族、きょうだい児、ヤングケアラー、貧困、借金」など
- 両親の夫婦関係の問題…「モラハラ、DV、夫婦喧嘩、両親の不和、家庭内別居、親の不倫、両親の離婚、親の再婚」など
- 両親の精神的問題…「アルコール依存、ギャンブル依存症、薬物依存症、共依存、うつ病、自殺企図、宗教への依存」など
参考元:機能不全家族|Wikipedia
このような「問題」が起きている家庭では、子どもは身体的にも精神的にも日常的にダメージを受け続ける可能性があります。
負の世代間連鎖
また、アダルトチルドレン研究の専門家たちは「機能不全家族の原因」について、以下の特徴を指摘しています。
機能不全的な家庭となっている場合は、その家庭を構成する親、または祖父母などが、機能不全家族で育った可能性もある。
引用元:機能不全家族|Wikipedia
以上のことから、「機能不全家族の原因」には、以下のような特徴があると言えます。
機能不全家族の連鎖
- 家庭が「機能不全状態」である場合、機能不全家族の原因である「親」自身が、子どもの頃に「機能不全家族」で育った可能性が高い
- また、「親」の「親(祖父母)」も、子どもの頃に「機能不全家族」で育った可能性が高い
このように、人は「子どもの頃、親にしてもらった子育て方法を、自分が親になったとき、自分の子どもに繰り返す(世代間連鎖)」という特徴があり、子どもの頃、自分が親にされて辛く苦しかった「子育てによる負の影響」を、大人になって、自分の子どもへと無意識に繰り返してしまうことを、心理学では「負の世代間連鎖」と言います。
負の世代間連鎖とは、「親(又は親から上の世代)から引き継いだ負の人生プログラム及び認知の歪みの連鎖」を指します。世の中の親子問題を抱えている人の多くが、「親を介してこの負の人生プログラム及び認知の歪みの連鎖」に巻き込まれたことによって、様々な問題を抱えてしまうようになったことを知ることはとても大切なことです。
引用元:親子の問題①(世代間連鎖)
このように「負の世代間連鎖」とは、決して「親が意図的に起こしている問題」ではなく、曾祖父母から祖父母へ、祖父母から父母へと「世代を超えて連鎖している問題」と言えます。
機能不全家族の原因:「負の世代間連鎖」
このように「問題ある子育て方法」を親から子へ、子から孫へと連鎖してしまう「負の世代間連鎖」とは、「機能不全家族の原因」のひとつと考えることができます。
とくに、日本は、昭和初期に「第二次世界大戦(太平洋戦争)」という「悲惨な社会状況」を経験しており、この「戦争」が「家庭環境」に与えた悪影響はすさまじく、「戦争という社会状況下では殆どの家庭が機能不全状態だった」と言え、戦中・戦後に生まれ育った「焼け跡世代」や「団塊の世代」と呼ばれる人たちは、図らずも、殆どの人たちが「機能不全家族で育った人」であると言えます。
焼け跡世代(やけあとせだい)とは、幼少期と少年期を第二次世界大戦中に過ごした世代と言われている。…(中略)…都市部の焼け跡世代の人々は、第二次世界大戦中に幼少期と少年期を防空壕と焼け跡の中で過ごし、飢餓や経済的困窮、放射性被害など戦争による被害に苦しんだ。…(中略)…父親を戦死や戦災で亡くし、母子家庭での生活を強いられた者も少なくない。…(中略)…太平洋戦争中に小学校に入り、小学時代には国民学校における軍国主義教育と、敗戦後の墨塗り教科書・民主主義教育(6・3制など)の両方を経験したため、第二次大戦の記憶を持つ最後の世代である。
引用元:焼け跡世代
1947~1951年に生まれている団塊世代は、戦前からの「古い価値観」を引きずっています。ただ、彼らが「戦前世代」と異なる点は、「古い価値観」を引きずっていると同時に、戦後の「新しい価値観」も併せ持っているということです。…(中略)…しかし、「戦争の呪縛」から解き放たれても、「思想の呪縛」からは自由になり切れなかった、それが団塊世代の特徴です。
そして「焼け跡世代」や「団塊の世代」と呼ばれる人たちは、「戦中・戦後の厳しい社会情勢下で『親から受けた厳しい子育て方法』」を、大人になって、自分の子どもへと無意識に繰り返していったことになります。
このように、日本では、結果として「戦争」や「軍国主義」の影響が、親から子へ、子から孫へと「負の世代間連鎖」を繰り返し、今現在に至っても、様々な社会問題の原因となっていると心理学では考えられています。
なお、「機能不全家族の原因」である「負の世代間連鎖」については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、是非、続きをお読み下さい。
また、「機能不全家族が連鎖する理由」についての詳しい解説もあわせて紹介します。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
- POINT機能不全家族の原因には「親の幼少期の体験」が影響している
- 心理学で考える「機能不全家族の原因」は、「毒親」「禁止令・ドライバー」「負の世代間連鎖」の3つが考えられる
- 「毒親」は「家庭が果たすべき役割をうまく果たせない親」
- 「禁止令・ドライバー」は「親が子どもを思い通りにコントロールするためのメッセージ」
- 「負の世代間連鎖」は「昭和初期の『戦争・軍国主義』の影響を受けた『厳しい子育て方法』が、曾祖父母から祖父母へ、祖父母から父母へ、父母から子へと、世代を超えて無意識に連鎖している問題」
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
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以上、「機能不全家族を引き起こす『3つ』の原因」でした。