アダルトチルドレンの歴史
アダルトチルドレンの歴史を知ることは、アダルトチルドレン克服の第一歩です。
アダルトチルドレンの歴史は、1969年にカナダで出版された本に登場したことから始まり、その後、1980年代のアメリカで本格的に使われ始めました。
そして、日本におけるアダルトチルドレンの歴史は、さらに遅れて1990年代に入ってから始まったと言われています。
このように、アダルトチルドレンの歴史は未だ浅く、まるで病気や診断名であるかのような誤解が未だ残っているのも確かです。
アダルトチルドレンの克服は、アダルトチルドレンの歴史を理解するところから始まるのかもしれません。
この記事は、アダルトチルドレンの歴史について説明しています。
アダルトチルドレンの起源
はじまりは「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス」
アダルトチルドレンという用語について最初に書かれた書籍は、カナダのマーガレット・コークが1969年に出版した「忘れられた子どもたち~アルコール依存症の親に育てられた子どもについて~(The forgotten children:a study of children with alcoholic parents)」という本です。
その後、アメリカのソーシャルワーカーだったクラウディア・ブラックが、アルコール依存症患者の親がいる家庭環境で育った成人たちと接し、考え方や言動にいくつかの共通点があることに気づき、彼らを「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス(Adult Children of Alocoholic)」と呼び始め、このことがアダルトチルドレンという用語の起源だと言われています。
アルコール依存症の親と生きづらさの関係
アダルトチルドレンという用語は「AC」と略されることがありますが、クラウディア・ブラックが呼び始めたころは、あくまで、「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス(Adult Children of Alocoholic)」という呼び方であり、最初の略称は「AC」ではなく「ACOA」と略されていました。
その後、さらに短縮され「AC」と略されるようになったと言われています。
そして、アダルトチルドレンという用語は、アルコール依存症に関わる専門家や、アルコール依存症の親がいる環境で育ち生きづらさを感じている人たちが症状の理解を深めるために活用し、急速に広まっていきました。
このように、アダルトチルドレンという用語の元々の意味は、アルコール依存症の親がいる家庭環境で育ったことが原因で考え方に偏りが生じ、成人しても生きづらさを抱えている人のことのみを指していました。
(関連:生きづらい原因とは?)
機能不全家族で育ったアダルトチルドレン
アダルトチルドレンの歴史を振り返ると、はじめは、アルコール依存症の親がいる家庭環境で育った子どもの特徴として、アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス=「ACOA」という用語を用いていました。
ですが、1980年代の後半になると、アルコール依存症ではない親に育てられた子どもにも同じような特徴が見られることが発見されます。
このような子どもをアメリカでは、「アダルトチルドレン・オブ・ディスファンクショナルファミリー(Adult Children of Dysfunctional Family)」=「機能不全家族で育ったアダルトチルドレン」と呼ぶようになり「ACOD」と略されました。
このように、アダルトチルドレンの原因は、アルコール依存症の親に限らず、不適切な養育をする親にまで対象が拡大し、アダルトチルドレンの意味合いも「ACOA」から「ACOD」へと拡大していきました。
そして、アルコール依存症の親が居る家庭も含め、親の養育に問題があり、アダルトチルドレンを生み出す原因となっている家庭のことを「機能不全家族」と呼ぶようになりました。
(関連:機能不全家族チェック|タイプと特徴と影響)
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AC概念=アダルトチルドレンという捉え方
アダルトチルドレン「AC」という用語が広がり始めると、その言葉の意味や使い方を巡って問題が生じ始めました。
アダルトチルドレン「AC」とは、その用語が示す意味合いが広いため、しばしば「何を指す用語なのか?」が議論の的となってきました。
その結果、アダルトチルドレン「AC」という用語は、人が感じる心の不調や特徴や症状のひとつの捉え方=概念のひとつとして捉えるようになり、「AC概念」と呼ばれるようになりました。
つまり、アダルトチルドレン「AC」の症状を医学用語で表現すれば、PTSD・不安障害・パーソナリティ障害・うつ病の原因などと言い換えることもできます。
(関連:アダルトチルドレンが抱える問題)
アダルトチルドレンの歴史、日本での広まり
日本でのアダルトチルドレンの歴史は、クラウディア・ブラックが1981年に出版した「私は親のようにならない(It will never happen to me)」を、1989年に斎藤學(さいとう・さとる)氏が翻訳出版したことから始まりました。
その後、アダルトチルドレンに関する書籍が多く出版され、日本にも広がりを見せましたが、反面、アダルトチルドレンという用語が、あたかも診断名や病気であるかのような誤った流布がなされてしまった部分もあり問題が生じました。
このように、アダルトチルドレン「AC」とは、そもそも概念=考え方・捉え方・呼び方のひとつであり、病気や診断名といったものではありません。
なので、今日の日本において、アダルトチルドレン「AC」と言えば、「ACOD」のこと、すなわち「機能不全家族で育ったアダルトチルドレン」のことだと捉えることが一般的です。
(関連:アダルトチルドレン(ac)チェックリスト)
(関連:アダルトチルドレンのカウンセリング:克服への“9”の重要ポイント)