POINT自己否定の正体は、幼少期の思い込み、禁止令とドライバーです。
心理カウンセラーの寺井です。
自己否定とは、「うつ病」によくみられる症状です。
私自身も、うつ病を患ったことで強い自己否定感を感じていた時期がありました。
自分で自分を苦しめていることは、頭ではわかっていても、気が付くと無意識に自己否定をしまい、情けなくなったり、絶望したものです。
でもある時、自分自身から目を背けず向き合ったことで、「自己否定の正体」や「うつ病の原因」に気づくことができ、克服することができました。
この記事は、自らの自己否定感と向き合い克服した分析レポートです。
自己否定は、やりたくてやっているわけではない
まずはじめに、うつ病を患って苦しんでいるときに、私が周囲の人から言われて一番辛かったことは、「自分を否定しても何の意味もないよ…自分を否定するのは止めたら…」と言われたことです。
もちろん、自分を否定したところで何の意味もない事は、私自身も理解していました。
けれど、頭ではわかっていても、気が付くと、無意識に自己否定が始まってしまいました。
自己否定をしている自分をさらに否定する自分が次々と現れる
反対に言えば、「自分を否定しても何の意味もないよ…自分を否定するのは止めたら…」と周囲の人から言われると、「自分を否定しても意味がないのに、なんで自分は自己否定なんてしているんだ!」という、自己否定をしている自分をさらに否定する自分が現れてしまい、とても辛くなっていたのです。
人は、自分で気づいていることを指摘されると、とても悔しいものです。
なので、自己否定の無意味さを周りの人に指摘されればされるほど、とても悔しくなり、自己否定している自分をさらに否定する自分が次々と現れ、自己否定の渦のようになっていきました。
自己否定はわざとやっているわけではない
このように、自己否定とは自分でやろうと思ってやっているのではなく、無意識に始まってしまう心理状態と言えます。
である以上、自己否定とは、自分がわざとやっているわけではないとも言えますので、その点に気づけたことで、私は少し楽になるのと同時に、なぜ?自己否定は無意識に始まってしまうのか?に興味を感じました。
そして、自己否定とは頑張ったり我慢をしてなんとかしようとできるものではなく、腰を据えて向き合っていく必要があるなと、私は感じました。
自己否定をしている自分の気持ちを、フォーカシングで分析
私は、自己否定を終わりにするには、腰を据えて向き合っていく必要があるなと考え、 「自己否定をしている自分の気持ち」を「フォーカシング」という心理療法を用いて分析しました。
フォーカシングとは、まだ言葉にならないような、からだで感じられる微妙な感覚に注意を向け、そこから言葉を出していく作業です。
引用元:フォーカシングについて
ある時から、苦しさを我慢して頑張り続けている自分の存在に気づきました
まず、自分の内面に意識を集中して、感じた気持ちを言葉にしてノートに書き留めていきました。
しばらく、感じた気持ちを淡々と書き留めていくと、「自己否定をしている自分」を、新しい視点で捉えられるようになっていきました。
続けて、自分の内面に意識を集中していくと、理由はわかりませんが、今まで「自己否定をしている…」と感じていた自分のことが、不思議なことに、「苦しさを我慢して必死に頑張り続けている自分」のように感じられるようになってきました。
このように、自分の内面で起きていることから目を背けず、しっかりと向き合い、自分自身を俯瞰して客観的に捉えることができたことで、不思議と気持ちが少し楽になりました。
苦しいけど、我慢して頑張り続けるしかない…
自己否定をしている自分を分析した時、ノートに書き留めた言葉を以下に紹介します。
~以下、メモをしたノートより~
「気がつけば、僕はずっと裸足でつま先立ちを続けている…」
「こうやって、苦しさを我慢して頑張り続けることを、一体、いつから始めたのだろうか?」
「それは、はるかずーっと前からのような気がする…」
「では、なぜ?自分は苦しさを我慢して頑張り続けているのだろうか?」
「それは、いつか誰かに「我慢しろ!頑張れ!」と言われたような気がするから…」
「なぜかはわからないのだけれど、苦しさを我慢して頑張り続けることを止めてしまうと、僕は価値がなくなってしまって、僕の存在を認めてもらえないような気がする…」
「でも、なぜ?苦しいと感じているのに我慢して頑張り続けなければいけないのだろうか?」
「それは、普通の頑張りじゃ、僕は認めてもらえないから…」
「だから、僕が僕の存在価値を保つためは、無条件で苦しさを我慢して頑張り続けるしかないんだ…」
「本当は僕だって、つま先立ちを止めて、かかとを着いて、ほっと安心をしたいのだけれど…」
「かかとを着いてしまったら、僕は存在価値が無くなって見捨てられてしまうので、苦しいけど、我慢して頑張り続けるしかない…」
~以上、メモをしたノートより~
自己否定とは、我慢したり頑張ったりすること
このように、「自己否定をしている自分」を分析した結果、自己否定とは、「ありのままの自分では価値がない!」という思い込みによるものだということがわかってきました。
つまり、自己否定とは「ありのままではダメだ!」という思い込みから生まれる心理状態で、我慢したり頑張ったりと、ありのままの自分を否定することであることがわかってきました。
そして、自分がそう思い込んだ理由について分析していくと、子供の頃、自分は寂しさを感じていて、「自分が寂しいのは自分が愛されていないからだ!」「自分が愛されないのは自分の頑張りが足りないからだ!」と思い込んでしまった自分がいたことに気づきました。
それ以来、「周りの人が自分を褒めてくれたり認めてくれないのは、自分の我慢や頑張りが足りないからだ!」という思い込みを強めていったんだと気づきました。
人生脚本と禁止令やドライバーの影響
このように、幼少期の体験がもとで、「自分はこういう人間なんだ…」と思い込んでしまうことを、「交流分析」という心理学では「人生脚本」と言います。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
上記のように、人生脚本とは、幼少期(おおよそ6歳頃まで)に「親に言われた言葉」や「親にとられた態度」などに応じて形成されます。
人は、それ以降、人生脚本に沿って無意識に生き方を決めるようになり、人生脚本に従った思考・行動を無意識に繰り返すようになります。
うつ病を患ってしまった理由に気づけた
私は、交流分析の基本理論である「人生脚本」について理解を深めたうえで、自分の内面にさらに関心を向けていくと、私の場合、ある日あるときから、「自分は苦しくても我慢して頑張らなければならない…」という人生脚本に沿って生きてきたことに気づきました。
そう気づけたことで、なにか、自分が抱えている苦しさの理由に納得がいった気がしました。
例えば、職場においては、自分も仕事量が多くて苦しいのに、誰かに手助けを求められると断れず、仕事を引き受けてしまい、さらに苦しい想いをすることになってしまったり…
例えば、私生活においては、趣味やお洒落にお金をかけることや、外食や新しい家電に買い替えることを、無意識に我慢をしてしまい、楽しめなくなってしまったり…
なにか、今までの自分が、「自分は苦しくても我慢して頑張らなければならない…」という思考・行動パターンを無意識に繰り返してきたことに気づきました。
そして、「嫌なことを断れず頑張ってしまう…」「楽しむことを避けて我慢してしまう…」このよう思考・行動パターンを無意識に繰り返してきたことによって、慢性的にストレスを抱えることになり、結果、うつ病を患うことになったのだと、私は気づくことができました。
自己否定の正体は、禁止令とドライバー
また、幼少期の体験によって私が身に付けた「自分は苦しくても我慢して頑張らなければならない…」という思い込みのことを、交流分析では「禁止令とドライバー」と言います。
禁止令とは、幼少期、親に言われた言葉のうち、「~するな!」「~しちゃダメ!」「~しないほうがいい」など、何かを禁止する指示・命令のことです。
禁止令とは心理学者エリックバーン博士によって開発された自己分析法で、文字通り「〇〇してはいけない」という「禁止」の「命令」のことです。…(中略)…幼いころに親などの養育者から否定的・禁止的な命令や態度を繰り返し受けることで、自らの思考や行動の制限を課してしまうものです。
このように、禁止令とは、何かを「我慢」したり「抑圧」するパターンとなって人生に影響を与え続けます。
ドライバーとは、拮抗禁止令とも呼ばれ、幼少期、親に言われた言葉のうち、「~しろ!」「~しなさい!」「~したほうがいい!」など、何かを煽り立てられる指示・命令のことです。
拮抗禁止令とは、幼少期に親の役割をもつ人から与えられた「〇〇しなさい」「〇〇したほうがよい」「〇〇であるべき」という、いわゆる「〇〇しろ」というメッセージを受けて、そのよう生きていこうと「決断」することで自らに課したものです。…(中略)…ドライバーというその名の通り、その人の行動を駆り立ててしまうのです。
このように、ドライバーとは、「頑張る」「焦る」というパターンとなって人生に影響を与え続けます。
つまり、自己否定の正体とは、禁止令とドライバーそのものだったのです。
うつ病の原因
前述の通り、禁止令やドライバーとは、ある出来事に遭遇したとき、「自分は絶対に○○してはいけない!」と自分の感情を抑圧してしまったり、「自分はもっと○○しなければいけない!」と自分を焦らせてしまったり、人間関係において、自分の存在を否定的に捉えてしまう思考パターンです。
なので、禁止令やドライバーが影響すると、少しの失敗で自分を激しく責めるようになったり、少しのトラブルでとても慌てるようになったりなど、家族、職場、学校、友人、知人、恋愛などの人間関係において、ストレスを抱えやすくなります。
また、禁止令やドライバーは、自分の感情を極端に抑圧したり、自分を極端に焦燥させるため、「うつ病」「パニック障害」「対人緊張」など、心の病気・心の悩みの根本原因にもなります。
このように、「うつ病の原因は、幼少期の私が思い込んだ『禁止令やドライバー』だった…」ということに、私は深く納得がいきました。
また、「人生脚本とは何か?」「禁止令とドライバーとは何か?」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
人生脚本、禁止令、ドライバーを書き換えて、うつ病を克服しました
自己否定に隠されたメッセージや、禁止令やドライバーという自己否定の正体、うつ病の原因などに納得を感じることができたことで、私はとても穏やかな気持ちになりました。
そして、幼少期から無意識に繰り返してきた「人生脚本」を、自分自身で書き換えることで、自己否定を和らげ、うつ病を克服していきました。
幼少期の自分を「インナーチャイルド」に見立てる
心理学には「インナーチャイルド」という考え方があります。
インナーチャイルドとは、幼少期の自分の感情を捉えやすくする工夫です。
私は、目を閉じながら、「自分は苦しくても我慢して頑張らなければならない…」と思い込んでしまった幼少期の自分、すなわち、自分のインナーチャイルドをイメージしました。
そして、「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」によって、インナーチャイルドをイメージすることで、幼少期の自分がとても寂しかったことや、怖かったこと、でも、寂しさや怖さをなかなか言い出せなかったことに気づいていきました。
幼少期の寂しさや怖さ=ストレスを解放する
私は、幼少期の自分が寂しかったことや怖かったことを素直に認め、涙や言葉で感情を解放していきました。
「僕は本当は寂しかった…僕は本当はもっと甘えたかった…」
「僕は本当は怖かった…僕は本当は助けてもらいたかった…」
このように、幼少期からずっと我慢をし続けてきた寂しさや怖さといったストレスを、涙と言葉で存分に解放することができて、私はとてもスッキリとして、心の底の方がホッと落ち着いていくのを感じました。
インナーチャイルドに新しい価値観を許すことで人生脚本を書き換える
そして、私は、自分のインナーチャイルドに対して、今後、新しい価値観に沿って生きていくことを許していきました。
「今まで、懸命に我慢をしたり頑張ってくれてありがとう…」
「おかげで、自分は大人に成長することができたよ…」
「これから、苦しいときがあったら、今まで通り、我慢したり頑張ってもOKだけど、我慢しなくても頑張らなくてもどちらでもOKだよ…自分の納得のいく方を選んでほしい…」
このように、自分が心地よく生きられそうな新しい価値観を、自分のインナーチャイルドに語り掛けることで、自分自身で新たな人生脚本へと書き換えていきました。
そうすることで、「苦しいときは我慢せずに助けを求めてもOK…」「苦しいときは頑張りすぎずに休んでもOK…」と想えるようになり、気が付くと、自己否定やうつ病も克服することができていました。
また、「人生脚本を書き換える方法」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
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なお、本記事に関する関連情報は、以下のページにまとめていますので紹介します。
関連情報まとめページ
以上、「自己否定の正体は、禁止令とドライバー」という記事でした。