POINT「共依存・愛着障害」など、アダルトチルドレンが抱える心理的問題は、「機能不全家族」が行う子育ての影響によって、親から子どもへと無意識に世代間連鎖していきます。
心理カウンセラーの寺井です。
世代間連鎖によって起きる問題は、周囲の人々を巻き込んでしまう「社会的問題」と、自分の内面で起きる「心理的問題」にわけられます。
世代間連鎖によって起きる「心理的問題」とは、「アルコール依存症・共依存・依存気質・愛着障害」などがあげられ、これらの問題を抱えている人を、心理学では「アダルトチルドレン」と言います。
また、「アダルトチルドレン」は「結婚・子育て」に強い苦手意識を抱えている特徴があるため、「アダルトチルドレン」に育てられた子どもは、親と同じような問題を抱えやすくなると言えます。
このように、世代間連鎖によって起きる「心理的問題」すなわち「アダルトチルドレンが抱える問題」は、親から子へ、子から孫へと世代間連鎖している問題と言えます。
ちなみに、この記事は、「世代間連鎖によって起きる『心理的問題』についての解説」です。
「世代間連鎖によって起きる『社会的問題』についての解説」は、以下の記事で詳しく説明しています。
それでは、世代間連鎖によって起きる心理的問題について説明していきます。
世代間連鎖によって起きる心理的問題:「アダルトチルドレン」
子どもが健全に成長していくためには、「衣・食・住」などが確保されている「安全な居場所」や、自分の気持ちに無条件で共感してくれる「安全な相手」が必要となります。
本来であれば、子どもにとって「安全な居場所」とは「家庭」であり、「安全な相手」とは「親・家族」です。
ですが、「虐待・暴力・貧困」など「親・家族」が問題を抱える「家庭」に育った子どもは、安心して過ごすことができず、子どもの心は傷ついてしまいます。
このように、「子どもの頃、親・家族・家庭に問題があったことが原因で心が傷つき、大人になっても、自分の内面に問題を抱え続けている人」を「アダルトチルドレン」と呼びます。
アダルト・チルドレン(Adult Children:以下AC)とは、子どものころに、家庭内トラウマ(心的外傷)によって傷つき、そしておとなになった人たちを指します。…(中略)…ACの概念は1970年代にアメリカで提唱され始めました。
引用元:アダルト・チルドレンってなに
そして、「アダルトチルドレン」は、子どもの頃に体験した「親・家族・家庭の問題」を、頭では繰り返したくないと思っていても、気がつくと無意識に世代間連鎖してしまう特徴があります。
このとき、「アダルトチルドレンが世代間連鎖してしまう心理的問題」は、主に以下の点があげられます。
POINT
- 「アルコール依存症」
- 「機能不全家族」
- 「生きづらさ」
- 「共依存」
- 「依存心」
- 「愛着障害」
それでは、以下に詳しく説明していきます。
①アルコール依存症
「アダルトチルドレン(AC概念)」とは、1970年代、アメリカのアルコール依存症の治療現場から広がり始めた考え方です。
その後、アメリカの「国立アルコール乱用とアルコール依存症研究所(NIAAA)」による研究が進み、アルコール依存症の親を持つ子どもたちは、大人になったとき、アルコール依存症に陥りやすいことがわかってきました。
アルコール依存症家庭で育った人が「親のようにはなるまい」と決意して理想の家庭をめざし、自分は酒を飲まずギャンブルもやらずに、「いい親」となります。ところがその「いい親」のもとで育てられた子どもは、「この家は息が詰まる」と感じ、大人になってからアルコールや薬物に依存するようになっていた…。
引用元:世代連鎖を防ぐ
このように、「アルコール依存症」は、世代間連鎖によって起きる問題のひとつと言えます。
なお、「アダルトチルドレンとアルコール依存症の関係」については、以下の記事で詳しく説明していますので、必要な方は参考にしてください。
②機能不全家族
1980年代の後半に入るとさらに研究が進み、「アルコール依存症の親」に限らず、「薬物・ギャンブル・仕事などの依存症を持つ親」「拒食・過食などの嗜癖を持つ親」「暴言・暴力・虐待を行う親」「ネグレクトを行う親」「過干渉な親、過保護な親」など、「子どもが安心できない子育てをする親」の全てが、アダルトチルドレンの原因になり得ることがわかってきました。
そして、アルコール依存症の親がいる家庭も含め、「親や家族がさまざまな問題を抱えていることが原因で、子どもが安心して生活できない、緊張や不安をはらんだ家庭」のことを「機能不全家族」と呼ぶようになりました。
機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。
よって、アダルトチルドレンを生みだす家族である「機能不全家族」は、世代間連鎖によって起きる問題のひとつと言えます。
なお、「機能不全家族とは何か?」については、以下の記事で詳しく説明していますので、必要な方は参考にしてください。
③生きづらさ
また、さらに研究が進むと、「機能不全家族」で育った子どもは、「信頼・安らぎ・癒し」といった感覚を感じた経験が少ないため、大人になって「対人関係の問題」や「自己否定感」など「生きづらさ」を抱えやすいことがわかってきました。
「生きづらさ」とは、生きていくことが困難であると感じること。または、そうさせている要因そのものを指す。同じような言葉である「生きにくさ」とは違い、生きることが「つらい」という感情もそのニュアンスに含まれる。引用元:「生きづらさ」とはいったいなにか?
また、精神科医「斎藤学(さいとうさとる)」氏は、「機能不全家族で育ったアダルトチルドレンの生きづらさの特徴」として、以下のような点をあげています。
POINT
- 周囲が期待しているように振る舞おうとする
- 何もしない完璧主義者である
- 尊大で誇大的な考え(や妄想)を抱いている
- 「NO」が言えない
- しがみつきと愛情を混同する
- 被害妄想におちいりやすい
- 表情に乏しい
- 楽しめない、遊べない
- フリをする
- 環境の変化を嫌う
- 他人に承認されることを渇望し、寂しがる
- 自己処罰に嗜癖している
- 抑うつ的で無力感を訴える。その一方で心身症や嗜癖行動に走りやすい
- 離人感がともないやすい
このように、自分の内面に存在するさまざまな「生きづらさ」は、世代間連鎖によって起きる問題のひとつと言えます。
④共依存
「アダルトチルドレン」は「機能不全家族」で育ったことにより、ありのままの自分を受け入れてもらった経験が乏しいため、「どうせ自分は必要とされていない…」「どうせ自分には価値がない…」という「自己否定感」を感じやすい特徴があります。
反対に言えば、「アダルトチルドレン」は、「人に必要とされていない自分には価値がないんだ!」「だから、人の役に立ってはじめて自分に価値が生じるんだ!」と考えがちです。
よって、「アダルトチルドレン」は、自分の存在価値を感じたいと願えば願うほど、自分を犠牲にしてでも人の役に立とう、人に必要とされようとします。
このように、自分を犠牲にすることで自分の存在価値を感じようとする心理状態を「共依存」と呼びます。
共依存とは、簡単に言うと「自分を犠牲にしても他人を助けよう、支えようとしてしまい、それをする事で初めて自分に価値を感じる」という状態に陥っている人です。…(中略)…この「共依存的な特質」は親から子、子から孫へと家族の関係性の中で代々受け継がれてゆきます。所謂「世代間連鎖」によって、アダルトチルドレンが生み出されてゆく訳です。
このように「共依存」とは、アダルトチルドレンの最大の特徴とも言えます。
結果、アダルトチルドレンは、恋愛・夫婦関係においては相手に尽くしすぎてしまったり、子育てにおいては子どもの世話を焼きすぎてしまったり、自分を犠牲にすることで自分の存在価値を感じようとします。
このように、アダルトチルドレンの最大の特徴である「共依存」は、世代間連鎖によって起きる問題のひとつと言えます。
⑤依存心
また、「アダルトチルドレン」は「機能不全家族」で育ったことにより、「子どもの頃から、誰にも守ってもらえなかった、誰も頼りできなかった」と言えます。
よって、アダルトチルドレンは、自分自身になかなか自信が持てず、大人になっても「誰かに守ってもらいたい…誰かに頼りたい…」と強く願い続けている場合があります。
このように、「誰かに守ってもらいたい…誰かに頼りたい…」と強く願う気持ちを「依存心」と呼びます。
依存心とは、誰かに頼りたいと思う気持ちをいいます。…(中略)…1人で過ごしたくない、どんな時も誰かと一緒にいたいという気持ちを常に持っている人は依存心が強いといえるでしょう。また、依存体質の人は恋人や友達など自分の周りの親しい人に寄りかかりたいと思ってしまう傾向にあり、自分が取るべき責任まで周りの人に押し付けてしまうことがあります。
結果、アダルトチルドレンは、自分の意見が言いづらい大人になったり、自分の判断に自信が持てない大人になってしまい、常に誰かに依存していたいと感じやすくなります。
このように、子どもの頃、親を頼れなかったことで生じた「依存心」は、世代間連鎖によって起きる問題のひとつと言えます。
⑥愛着障害
人は、恋人・夫婦・子ども・友人など大切に想っている相手に対して、言葉・行動などで「愛情表現」をすることで、自分の愛情を相手に伝えることができ、相手との信頼関係を築くことができます。
ですが、「愛情表現」が乏しかった親に育てられた子どもは、「愛情表現」のやり方がわからないまま大人になってしまい、恋愛・結婚・子育て・人間関係において、相手との信頼関係が築き方がわからなかったり、相手との気持ちのすれ違いが生じやすくなります。
このように、恋人・夫婦・子ども・友人など大切に想っている相手に対する「愛情表現」に問題があることを「愛着障害」と呼びます。
愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。
引用元:愛着障害(アタッチメント障害)
そして、「愛着障害」を持つ親は、子どもとの愛着関係が築けず、結果、「暴言、暴力、虐待、ネグレクト、過干渉、過保護」など、「子供の人生に悪影響を及ぼす子育て」を行ってしまう場合があります。
このように、恋愛・結婚・子育て・人間関係に大きな影響を及ぼす「愛着障害」は、世代間連鎖によって起きる問題のひとつと言えます。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
- POINT「虐待・暴力・貧困」など「親・家族・家庭」に問題があったことが原因で、心理的問題を抱えている人を「アダルトチルドレン」と呼ぶ
- アメリカでの研究結果では、「アルコール依存症の親に育てられた子どもは、アルコール依存症に陥りやすい」と言われている
- 親や家族が問題を抱えていることが原因で、子どもが安心して生活できない家庭を「機能不全家族」と呼ぶ
- 「アダルトチルドレン」は、対人関係の問題・自己否定感など「生きづらさ」を抱えやすい
- 「アダルトチルドレン」は、子どもと「共依存」に陥りやすく、「親に共依存された子どもは心理的問題を抱えやすくなる」
- 「アダルトチルドレン」は「依存心」が強く自信がないため、子どもに依存しやすい、結果、「親に依存された子どもは心理的問題を抱えやすくなる」
- 「アダルトチルドレン」は「愛着障害」を抱えているため、子どもとの愛着関係が築けず、、「子供の人生に悪影響を及ぼす子育て」を行ってしまう場合がある
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以上、「世代間連鎖によって起きる心理的問題:『アダルトチルドレン』」という記事でした。