POINT世代間連鎖を断ち切る方法は、「①アダルトチルドレンの克服」「②毒親の影響からの解放」「③人生脚本の書き換え」の3つの方法が考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「子どもは親の背中を見て育つ」という言葉があるように、毎日の家庭生活の中で、子どもは無意識に、親から様々なことを吸収しながら成長していきます。
そして大人になったとき、自分が子どもの頃に親から吸収した「人間関係のやり方・異性との関り方(愛着スタイル)・子育てのやり方・教育方針など」を、自分の子どもへと繰り返していきます。
反対に言えば、「世代間連鎖」は「遺伝」によって引き起こされているものではなく、あくまで生まれた後、子どもの頃に親から吸収した「習慣」によって引き起こされているということになります。
なので、「世代間連鎖」は「習慣」によって引き起こされている以上、子どもの頃に親から吸収した「習慣」を書き換えることで、世代間連鎖を断ち切ることができると心理学では考えます。
この記事は、世代間連鎖を断ち切る方法について説明しています。
子どもが親に求めるもの
生まれたばかりの子どもは一人では生きていけません。子どもが心身共に健全な成長をしていくためには、親から「子育て・教育」などの支援を受けることが不可欠です。
このとき、心身共に健全な成長をしていくために、子どもが親に求めるものとしては、以下の点があげられます。
POINT
- 子どもは親に「安全」を確保してもらいたい
- 子どもは親に「愛着」をもって接してもらいたい
- 子どもは親に「肯定・承認」をしてもらいたい
- 子どもは親に「相談」に乗ってもらいたい
それでは、以下に詳しく説明していきます。
①安全基地
まず、子どもが健全に成長していくためには、「衣・食・住」などが確保されている「安全な居場所」や、自分の気持ちに無条件で共感してくれる「安全な相手」が必要となります。
このように、子どもが心身共に健全に成長していくために必要な「安全な居場所」「安全な相手」のことを、心理学では「安全基地」と言います。
安全基地とは、アメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した人間の愛着行動に関する概念である。子供は親との信頼関係によって育まれる『心の安全基地』の存在によって外の世界を探索でき、戻ってきたときには喜んで迎えられると確信することで帰還することができる。
引用元:安全基地
②愛着形成
子どもが成長していくためには、周囲の人々を信頼しながら「人間関係」を築いていく必要があります。
そして、子どもは乳幼児期に母親とのあいだで健全な「愛着形成」ができると、そのぶん「周囲の人間への基本的な信頼感」が高まり、そのぶん「人間関係を問題なく築ける」ようになります。
愛着の形成は、子どもの人間に対する基本的信頼感をはぐくみ、その後の心の発達、人間関係に大きく影響します。乳幼児期に愛着に基づいた人間関係が存在することが、その後の子どもの社会性の発達には重要な役割を持ちます。
引用元:愛着の形成
③承認・肯定
子どもは、「親に認めてもらえたり褒めてもらえる」ことで心身共に健全に成長することができます。
このように、子どもが「親に認めてもらいたい!褒めてもらいたい!と感じる気持ち」を、心理学では「承認欲求」と言い、子どもが「親に認めてもらえたり褒めてもらえることで高まる気持ち」を、心理学では「自己肯定感」と言います。
自己肯定感は自信や承認欲求などの気持ちと関連性が強いといわれています。承認欲求とは、他人(親や先生、友だち)から認められたい、という気持ちです。自信のなさの反面、他人から良い評価を受けたいという気持ちが強くなりすぎてしまう、ということです。
④相談・支援
子どもは心身ともに成長するにつれて様々な悩みを抱えるようになり、特に中学生・高校生になると、学校において友達や先生とのあいだでトラブルが起きやすくなります。
このとき、子どもは表向きは問題無いように振舞っていても、内心では「親の方から言葉をかけてもらいたい…」「人生経験の豊富な親に相談に乗ってほしい…」「親には愛情をもって悩みに寄り添ってほしい」という気持ちを感じています。
「こども」から「おとな」への過渡期ともいえる思春期の子どもたちは、毎日がハラハラ、ドキドキの生活です。児童期とは異なり、身体的、心理的にその安定性が崩れる年頃でもあり、社会的な役割をもった一人の人間として、いかに「個」の確立を成しとげたらいいのかと悩みだします。…(中略)…大人と子どもが向き合うことによって、子どもたちは自我を成長させていくものなのです。
子どもが親に満たしてもらえないことで起きる問題
「安全・愛着・承認・相談」など、子どもが親に求めるものがほどほどに満たされれば、子どもは心身共に健全に成長していきます。
ですが、あまり満たされないと様々な問題へと発展していく可能性があります。
そして、「子どもが親に満たしてもらえないことで起きる問題」は、主に以下のような点があげられます。
POINT
- 「教育格差・貧困」の連鎖
- 「虐待・暴力・DV」の連鎖
- 「アダルトチルドレン・毒親・機能不全家族」
- 「人間関係の生きづらさ」
- 「自己否定・自己犠牲・自傷行為」
- 「アルコールなどへの依存症」
- 「共依存」
- 「愛着障害」
続きは、以下の記事で詳しく説明しています。
心理学で考える「世代間連鎖の原因」
「世代間連鎖」とは、生き方、子育て方法、教育方針などが、親から子どもへ、子どもから孫へと、親子間で連鎖していくことです。
なので、「世代間連鎖」は「遺伝」によって起きていると考えられがちですが、心理学に沿って考えると、「世代間連鎖の原因」は生まれ持った「遺伝」によるものではなく、あくまで、生まれた後に身に付けた「習慣」によるものということになります。
そして、心理学で考える「世代間連鎖の原因」は、主に以下のような点があげられます。
POINT
- 「機能不全家族・アダルトチルドレン」
- 「毒親」
- 「人生脚本」
原因①「機能不全家族・アダルトチルドレン」
子どもへの「子育て・教育」は、主に「家庭」で行われます。
そして「世代間連鎖」とは、「子育て・教育」などによって生じる様々な問題が、親から子へ、子から孫へと連鎖している状態を指します。
このように、様々な問題が生じてしまう「子育て・教育」が行われている「家庭」とは、「子どもが安心して過ごすことができない家庭」と言い換えることができ、「子どもが安心して過ごすことができない家庭」のことを、心理学では「機能不全家族」と言います。
機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。
また、子どもの頃、「機能不全家族」で育ったことが原因で心に様々な問題を抱えている大人を、心理学では「アダルトチルドレン」と言います。
アダルトチルドレン(AC)とは、自分は子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことをいいます。自己認識の概念であり、医学的な診断名ではありません。
そして、「アダルトチルドレン」は、子どもの頃、親から受けた「子育て・教育」を、大人になって自分の子どもへと繰り返すという特徴があります。
よって、心理学に沿って考えると、「アダルトチルドレン」は、様々な問題が世代間連鎖する原因のひとつと考えることができます。
原因②「毒親」
「毒親」という言葉は、「まるで毒のような悪影響を子供に及ぼす親」「まるで毒のように厄介な存在に感じる親」の様子を表わす概念として、アメリカの専門家「スーザン・フォワード」が作った言葉です。
毒親(どくおや、英: toxic parents)は、毒になる親の略で、毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親、子どもが厄介と感じるような親を指す俗的概念である。1989年にスーザン・フォワード(英: Susan Forward)が作った言葉である。学術用語ではない。
引用元:毒親
つまり「毒親」とは、「過干渉、過保護、暴言、暴力、ネグレクト」など「子どもの人生に悪影響を及ぼす子育て」すなわち「問題のある子育て・教育を繰り返す親」のことを表す言葉です。
よって、心理学に沿って考えると、「毒親」とは、様々な問題が世代間連鎖する原因のひとつと考えることができます。
原因③「人生脚本」
「人生脚本」とは、「交流分析」という心理療法の中で用いられる理論で、頭ではわかっているのだけれど、気がつくと、同じようなことを無意識に繰り返してしまう思考・行動などのパターンを意味します。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
「人生脚本」は、幼少期(おおよそ6歳頃まで)に「親に言われた言葉」や「親にされた行動」などに基づいて形成され、人はそれ以降、「人生脚本」に沿って無意識に生き方を決めるようになり、「人生脚本」に従った思考・行動を無意識に繰り返すようになると考えられています。
よって、人間の性格形成に大きな影響を与える「人生脚本」とは、心理学に沿って考えると、様々な問題が世代間連鎖する原因のひとつと考えることができます。
なお、「世代間連鎖が起きる原因」については、以下の記事でさらに詳しく説明していますので、必要な方は参考にしてください。
心理学で考える「世代間連鎖を断ち切る方法」
前述の通り、心理学で考える「世代間連鎖の原因」とは、以下の3つが考えられます。
POINT
- 「機能不全家族・アダルトチルドレン」
- 「毒親」
- 「人生脚本」
よって、心理学で考える「世代間連鎖を断ち切る方法」とは、以下の3つの方法が考えられます。
POINT
- 「アダルトチルドレンを克服する」ことで「世代間連鎖を断ち切る」
- 「毒親の影響から自分を解放する」ことで「世代間連鎖を断ち切る」
- 「人生脚本を書き換える」ことで「世代間連鎖を断ち切る」
それでは、以下に詳しく説明していきます。
方法①「アダルトチルドレンを克服する」
「アダルトチルドレン」は、子どもの頃、親から受けた問題のある「子育て・教育」を、大人になって自分の子どもへと繰り返してしまう場合があります。
ですので、「アダルトチルドレンを克服する」ことで、親から受けた「子育て・教育」の影響によって生じている問題を克服することが可能となります。
よって、「アダルトチルドレンの克服する」ことは、心理学に沿って考えると、世代間連鎖を断ち切る方法のひとつと言えます。
なお、世代間連鎖を断ち切る方法のひとつである「アダルトチルドレンの克服」については、以下の記事で詳しく説明しています。
方法②「毒親の影響から解放される」
「毒親」とは、「子どもの人生に悪影響を及ぼす子育て」すなわち「問題のある子育て・教育を繰り返す親」のことを表す言葉であり、「毒親」に育てられた影響をそのままにしておくと、大人になって自分の子どもへと繰り返してしまう可能性があります。
ですので、「毒親の影響から解放される」ことは、親から受けた「子育て・教育」の影響によって生じている問題から解放されることになります。
よって、「毒親の影響から自分を解放する」ことは、心理学に沿って考えると、世代間連鎖を断ち切る方法のひとつと言えます。
なお、世代間連鎖を断ち切る方法のひとつである「毒親から解放される方法」については、以下の記事で詳しく説明しています。
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方法③「人生脚本を書き換える」
「人生脚本」は、幼少期(おおよそ6歳頃まで)に「親に言われた言葉」や「親にされた行動」などに基づいて形成され、人はそれ以降、「人生脚本」に従った思考・行動を無意識に繰り返すようになります。
なので、「人生脚本」をそのままにしておくと、子どもの頃に親から受けた「子育て・教育」を、大人になって自分の子どもへと繰り返してしまう可能性があります。
反対に言えば、「人生脚本を書き換える」ことは、親から受けた「人間関係のやり方・異性との関わり方・子育てのやり方・教育方針」など「人生の価値観」を書き換えることになります。
よって、「人生脚本を書き換える」ことは、心理学に沿って考えると、世代間連鎖を断ち切る方法のひとつと言えます。
なお、世代間連鎖を断ち切る方法のひとつである「人生脚本を書き換える方法」については、以下の記事で詳しく説明していますので、必要な方は参考にしてください。
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まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
- POINT心身共に健全に成長していくために、子どもは親に対して「安全・愛着・承認・相談」を求めている
- 「安全・愛着・承認・相談」を親に満たしてもらえなかった場合、子どもは様々な問題を抱える可能性がある
- 世代間連鎖の原因は、「①機能不全家族・アダルトチルドレン」「②毒親」「③人生脚本」の3つが考えられる
- 世代間連鎖を断ち切る方法は、「①アダルトチルドレンを克服する」「②毒親の影響から解放される」「③人生脚本を書き換える」の3つが考えられる
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以上、「世代間連鎖を断ち切る方法」という記事でした。