
POINT
機能不全家族とは、家庭の本来の働きが十分に機能していない状態を指します。
ただし、「機能不全家族=悪い家族」という意味ではありません。
さまざまな事情によって家庭の機能が十分に働かず、その影響を子どもが受けることがあります。
「機能不全家族」という言葉を聞くと、「親に問題があった家族」「愛情のない家族」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、機能不全家族という言葉は、単純に「良い家族」「悪い家族」と判断するためのものではありません。
家庭には、子どもが安心して生活し、成長していくためのさまざまな役割があります。
親自身が抱えている問題、夫婦関係、家庭環境、経済的な問題など、さまざまな事情によって、それらの機能が十分に働かなくなることがあります。
この記事では、「機能不全家族」とは何なのか、家庭には本来どのような働きがあるのか、そして子どもにどのような影響を与えることがあるのかを整理します。
機能不全家族とは?

機能不全家族とは、家庭のさまざまな問題によって、子どもが安心して成長するために必要な家庭の機能が十分に働いていない状態を指します。
たとえば、次のような状態が考えられます。
POINT
- 親子関係に大きな問題がある
- 夫婦関係が不安定である
- 家庭内に暴力や強い対立がある
- 子どもが過度に我慢することを求められる
- 子どもが十分な関心や愛情を受けられない
- 親自身が精神的・身体的・経済的な問題を抱えている
ただし、ここで大切なのは、機能不全家族を「親が悪い」と単純に考えないことです。
家庭の機能が十分に働かなくなる背景には、それぞれの家庭が抱えているさまざまな事情があります。
そのため、「誰が悪いのか」を探すことよりも、
「その家庭では、子どもが安心して成長するために必要なものが十分に得られていたのか」
という視点から考えることが大切です。
「機能不全」とはどういう意味?

家庭には本来どのような働きがあるのか?
「機能」とは、あるものが本来の役割を果たすことを意味します。
家庭にも、単に衣食住を提供するだけではなく、子どもが安心して成長していくためのさまざまな役割があります。
たとえば、次のような働きです。
POINT
- 安全に生活できる場所を提供する
- 食事や住居など、生活を支える
- 子どもの成長を支える
- 子どもの気持ちを受け止める
- 子どもの存在を認める
- 困ったときに相談できる相手になる
こうした家庭の働きが十分に機能することで、子どもは「ここにいて大丈夫」「困ったときには助けてもらえる」という安心感を持ちながら成長していくことができます。
反対に、こうした働きが十分に機能しない状態が続くと、子どもは家庭の中で安心して過ごすことが難しくなる場合があります。
子どもが家庭に求める「4つ」の大切なもの

子どもが健やかに成長していくためには、生活面だけでなく、心理的な土台も重要になります。
ここでは、子どもが家庭に求めるものを、「安全・愛着・承認・相談」の4つに整理します。
① 安全
子どもにとって家庭は、本来、安心して過ごせる場所です。
暴力や強い怒り、激しい夫婦喧嘩などにさらされ続けると、「家にいても安心できない」という状態になることがあります。
安心して過ごせる場所があることは、子どもが成長していくための重要な土台になります。
② 愛着
子どもは、身近な大人との安定した関係の中で、「自分は大切にされている」「困ったときには頼っていい」という感覚を身につけていきます。
こうした人とのつながりが十分に得られないと、人との関係に不安を感じたり、自分から甘えることを我慢したりすることがあります。
③ 承認
子どもにとって、
「あなたは大切な存在だよ」
「あなたがいてくれてうれしい」
と感じられる経験も重要です。
失敗したときや、うまくできないときであっても、自分の存在そのものを否定されない経験が、自分を大切にする感覚につながっていきます。
④ 相談
子どもは、自分だけでは解決できない問題に何度も直面します。
そのときに、「困ったら相談していい」「助けを求めてもいい」と感じられることも、家庭の重要な役割です。
反対に、「親に相談しても怒られる」「迷惑をかけてはいけない」と感じる環境では、困っていても一人で抱え込むことがあります。
子どもにとって大切なのは、「安全・愛着・承認・相談」が十分に感じられる家庭環境です。
家庭の機能が十分に働かないと、子どもに何が起こるのか?

家庭の中で、安全・愛着・承認・相談などが十分に得られない状態が続くと、子どもはその環境の中で生きていくために、さまざまな工夫をすることがあります。
たとえば、
POINT
- 怒られないようにする
- 親を困らせないようにする
- 我慢する
- 自分より相手を優先する
- 家族の問題を自分が何とかしようとする
など、自分を守るための考え方や行動が身につくことがあります。
これは、その環境の中で生きていくために、そのときの自分なりに必要だった反応なのかもしれません。
しかし、子どもの頃には役に立っていた反応が、大人になって環境が変わった後も続くことで、次のような「生きづらさ」につながる場合があります。
POINT
- 自分の気持ちが分からない
- 人に頼ることが苦手
- 断ることができない
- 必要以上に我慢してしまう
- 周囲の顔色が気になる
- 自分を責めてしまう
そのため、現在の自分の反応だけを見るのではなく、
「なぜ自分は、このように考えたり行動したりするようになったのだろう?」
と、その背景を理解することが大切です。
機能不全家族には、どのような状態があるのか?
機能不全家族と一言でいっても、その状態は一つではありません。
たとえば、次のような状態が考えられます。
POINT
- 子どもへの暴力や暴言
- ネグレクト
- 過干渉や過度なコントロール
- 過保護
- 親子関係の強い緊張
- 夫婦間の争い
- 家庭内のDV
- 親の依存症
- 親自身の精神的な問題
- 経済的な問題
- 家族内での役割の偏り
ただし、こうした出来事を一つ経験したからといって、直ちに「機能不全家族」と判断できるものではありません。
家庭の状況や、それが子どもにどのような影響を与えていたのかを含めて考える必要があります。
機能不全家族の具体的な特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事
また、機能不全家族が生じる背景や原因については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事
機能不全家族とアダルトチルドレンの関係

機能不全家族で育った経験は、すべての人に同じ影響を与えるわけではありません。
一方で、子どもの頃に家庭の中で安心・愛着・承認などが十分に得られなかった経験が、大人になってからの人間関係や自己肯定感、感情の扱い方などに影響する場合があります。
こうした背景を理解するうえで、「アダルトチルドレン」という考え方があります。
アダルトチルドレンとは、もともとはアルコール依存症の親を持つ子どもを表す言葉として生まれ、その後、機能不全家族の中で育った経験を持つ人についても使われるようになった概念です。
大切なのは、
「自分に問題があるから生きづらい」
と考えるのではなく、
「これまでの家庭環境の中で、どのような影響を受けてきたのだろう」
と自分自身を理解する視点です。
また、機能不全家族で育った大人に見られる具体的な特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
機能不全家族で育ったことを、自分のせいにしなくていい

もし、これまでの人生の中で、
POINT
- どうして自分はこんなに生きづらいのだろう
- 自分の性格に問題があるのではないか
- もっと頑張らなければいけない
と感じてきたとしても、すぐに自分自身を責める必要はありません。
子どもの頃のあなたは、そのときの家庭環境の中で、自分なりに生きていく方法を身につけてきたのかもしれません。
我慢することも、周囲に合わせることも、親の顔色を見ることも、その当時の自分にとっては必要なことだった可能性があります。
「自分が悪い」のではなく、「その環境の中で傷ついてきたのかもしれない」
このような視点を持つことで、自分を責めるのではなく、自分自身を理解することができます。
人は本来、自然に成長し、自然に回復する力を持っています。
これまで身につけてきた考え方や反応を理解することは、自分を責めるためではありません。
本来の自分や、本来持っている力を取り戻していくための第一歩にもなります。
自分は機能不全家族で育ったのか確認したい方へ
ここまで読んで、
「もしかすると、自分も機能不全家族で育ったのでは?」
と感じた方もいるかもしれません。
ただ、この記事を読んだだけで、自分の家庭について判断する必要はありません。
まずは子どもの頃の家庭環境を振り返り、
「自分はどのような環境で育ったのか」
「どのようなことを感じていたのか」
を整理してみることから始めてみてください。
機能不全家族チェックリスト「自分は機能不全家族で育ったのか?」をセルフチェックできます。
まとめ
機能不全家族とは、家庭の本来の働きが十分に機能していない状態を指します。
家庭には、子どもが安心して成長するために、
POINT
- 安全
- 愛着
- 承認
- 相談
などを支える役割があります。
こうしたものが十分に得られない状態が続くと、子どもはその環境の中で生きていくために、さまざまな考え方や行動を身につけることがあります。
そして、そのときに身につけた反応が、大人になってからの生きづらさにつながる場合があります。
しかし、それは必ずしも「自分が弱いから」「自分に問題があるから」ということではありません。
自分を責めるのではなく、
「自分はどのような環境の中で、どのように生きてきたのか」
を理解することが、自己理解や回復への第一歩になります。
まずは、自分の家庭環境を振り返るところから始めてみてください。
機能不全家族チェックリスト「自分は機能不全家族で育ったのか?」をセルフチェックできます。
