機能不全家族とは何か?「機能不全家族の意味合い」の解説

機能不全家族とは何か?を表わすイラスト

POINT機能不全家族とは、「アダルトチルドレンの原因となる家族」であり、「家庭の働きがうまく機能していない家族」を意味します。

心理カウンセラーの寺井です。

「機能不全家族」とは、「アダルトチルドレンの研究」から生み出された言葉で、「アダルトチルドレンを生みだす家族を意味する言葉」として、1980年代のアメリカで使われはじめました。

また、「機能不全家族」という言葉には

  • 子どもが日常的にストレスを感じている家族
  • 家庭の本来の働きがうまく機能していない家族
  • 子どもが心身共に健全に成長していくために必要なものを満たすことができていない家庭
  • 子どもの健全な成長を阻害してしまう可能性がある家族

などの意味合いがあります。

この記事は、機能不全家族とは何か?機能不全家族の意味合いについて解説しています。

機能不全家族とは?

機能不全家族で起きている問題を表わすイラスト

「機能不全家族」とは、家庭内に存在する様々な問題が原因で、子どもが日常的にストレスを感じている家族の状態を指します。

機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。

引用元:機能不全家族とは?影響を受けるとアダルト・チルドレンになる?

機能不全家族で起きている問題」とは、主に以下の点があげられます。

POINT

  • 児童虐待の問題…「暴言、暴力、性的虐待、ネグレクト、過干渉、過保護、ヒステリー、きょうだい差別、教育虐待」など
  • 家庭環境の問題…「親の死亡、家庭内の暴力、家庭不和、父子母子家庭(ひとり親)、拡大家族、きょうだい児、ヤングケアラー、貧困、借金」など
  • 両親の夫婦関係の問題…「モラハラ、DV、夫婦喧嘩、両親の不和、家庭内別居、親の不倫、両親の離婚、親の再婚」など
  • 両親の精神的問題…「アルコール依存、ギャンブル依存症、薬物依存症、共依存、うつ病、自殺企図、宗教への依存」など

参考元:機能不全家族|Wikipedia

 

機能不全家族の意味合い

機能不全家族の意味合いを表わすイラスト

前述の通り、「機能不全家族」とは「問題を抱えている家族」あるいは「うまく機能していない家族」を指す言葉です。

このようなことから、「機能不全家族の意味合い」は以下のようになります。

POINT

  • 衣・食・住など「生活環境」が整っていない家庭
  • 教育・養育など「子育ての機能」がうまくいっていない家庭
  • 家族団らん・地域社会との関りなど「家庭が持つ社会的役割」が十分に果たせていない家庭

それでは、以下に詳しく解説していきます。

 

「機能不全」とは?

まず「機能不全家族」という言葉に含まれる「機能不全」とは、以下のような意味合いになります。

機能不全の意味:物事の本来の働きが不完全になること。何らかの不具合があって、全体としてうまく働かないこと。

引用元:機能不全(きのうふぜん)の意味 – goo国語辞書

よって「機能不全家族」とは、以下のような意味合いになります。

POINT

  • 家庭の本来の働きが不完全であること
  • 何らかの不具合があって、家庭がうまく機能していないこと

 

親・家族・家庭の役割とは?

また、「家庭の本来の働き」とは以下のようなに考えられます。

家庭は、子どもにとって人生最初の教育の場であり、子どもに「基本的な生活習慣や生活能力」「人に対する思いやり」「社会の一員としての倫理観や規範意識」「自立心や自制心」など、社会で生きていくための力を身につけさせる上で重要な役割を担っています。

引用元:家庭で大切にしたいこと – 新潟県ホームページ

このように、「家庭」とは「子どもが心身共に健全に成長していくための場所」と言えます。

よって、「家庭の本来の働き」すなわち「家庭が果たすべき役割」とは以下のような意味合いになります。

POINT

  • 家庭の役割とは、子どもが心身共に健全に成長していくために必要なものを満たしたり、子どもが心身共に健全に成長していけるように尽くすこと

反対に言えば、「機能不全家族」とは「子どもが心身共に健全に成長していくために必要なものを満たすことができていない家庭」という意味合いになります。

 

子どもが親・家族・家庭に求めるもの

心身共に健全な成長をしていくために、子どもが親・家族・家庭に求めるものとしては、主に以下の点があげられます。

POINT

  1. 子どもは健全に成長していくために、「衣・食・住」などが確保されている「安全な居場所」や、自分の気持ちに無条件で共感してくれる「安全な養育者」など「安全基地」となる家庭を求めている
  2. 子どもが健全に成長していくためには、周囲の人々を信頼しながら「人間関係」を築いていく必要があるため、乳幼児期に母親とのあいだで健全な「愛着形成」を求めている
  3. 子どもは「親に認めてもらえたり褒めてもらえる」ことで心身共に健全に成長することができるため、親・家族に「承認欲求」を満たしてもらうことや「自己肯定感」を高めてもらうことを求めている
  4. 子どもは心身ともに成長するにつれて様々な悩み・トラブルを抱えるようになあるため、親・家族に「悩みごとの相談」に乗ってもらうことを求めている

このように、子どもは健全に成長していくために、親・家族・家庭に対して「安全・愛着・承認・相談」を求めています。

 

機能不全家族が与える「子どもへの影響」

前述のような「安全・愛着・承認・相談」がほどほどに満たされれば、子どもは心身共に健全に成長していきます。

ですが、あまり満たされないと、子どもは様々な精神的な問題を抱えながら大人へと成長していくことになります。

このとき「健全な成長に必要なものを、親・家族・家庭に満たしてもらえないことで、子どもが抱える精神的な問題」を「生きづらさ」と呼びます。

「生きづらさ」とは、生きていくことが困難であると感じること。または、そうさせている要因そのものを指す。同じような言葉である「生きにくさ」とは違い、生きることが「つらい」という感情もそのニュアンスに含まれる。引用元:「生きづらさ」とはいったいなにか?

このように、「機能不全家族」とは「子どもの健全な成長を阻害してしまう可能性がある家族」という意味合いがあります。

 

機能不全家族は「アダルトチルドレンの原因」

そして、「子どもの頃、健全な成長に必要なものを、親・家族・家庭に満たしてもらえなかったことがで原因で心にトラウマ(心的外傷)を負い、大人になっても『生きづらさ』」を感じている人」を「アダルトチルドレン」と言います。

アダルトチルドレン(AC)とは、自分は子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことをいいます。自己認識の概念であり、医学的な診断名ではありません。

引用元:アダルトチルドレンとは?症状や、生きづらさの原因は?

また、「アダルトチルドレンが抱える生きづらさ」は、主に以下のような症状があげられます。

POINT

  • 人間関係がうまくいかない
  • 相手と親密になると怖くなり、仲良くなってもみずから関係を壊してしまう
  • 言いたいことが言えず「いい人」を演じてしまう
  • いじめの標的になりやすい
  • 幸せな恋愛ができない
  • ダメな人ばかりを好きになってしまう
  • 愛されている自信がない
  • 恋人に依存してしまう
  • 完璧主義の呪いに苦しむ
  • 食べ物や買い物・仕事への依存症

引用元:MBビジネス研究班2017「生きづらさの正体はアダルトチルドレン」(著者:梅岡幸子)

このように、「機能不全家族」とは「アダルトチルドレンの原因となる家族」という意味合いがあります。

機能不全家族と「アダルトチルドレン」の関係

機能不全家族とアダルトチルドレンの関係を表わすイラスト

アダルトチルドレン」とは、子どもの頃の家庭環境において、親や家族との間で何らかの「トラウマ(心的外傷)」を負ったことが原因で、大人になって「対人関係の悩み」や「自己否定感」など、「生きづらさ」を感じ悩み苦しんでいる人たちを意味する言葉です。

アダルト・チルドレン(Adult Children:以下AC)とは、子どものころに、家庭内トラウマ(心的外傷)によって傷つき、そしておとなになった人たちを指します。…(中略)…ACの概念は1970年代にアメリカで提唱され始めました。

引用元:アダルト・チルドレンってなに

そして、「機能不全家族」という言葉は「アダルトチルドレン」という言葉と密接に関係しています。

 

アダルトチルドレンと「アルコール依存症」の関係

1974年、アメリカの「国立アルコール乱用とアルコール依存症研究所(NIAAA)」により、アルコール依存症の親を持つ子どもたちの研究が開始され、アルコール依存症の親を持つ子どもたちは、大人になったとき「対人関係の問題」や「自己否定感」などの「生きづらさ」を抱えやすいということがわかってきました。

このような経緯から、アルコール依存症の親を持ち、「対人関係の問題」や「自己否定感」などの「生きづらさ」に悩み苦しんでいる人たちを、「アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス(Adult Children of Alcoholics)」=「アルコール中毒者に育てられたアダルトチルドレン『ACOA』」と呼ぶようになりました。

 

「機能不全家族で育ったアダルトチルドレン」

前述の通り、当初、アダルトチルドレンの原因は「アルコール依存症の親」に限られて考えられていました。

ですが、1980年代の後半に入るとさらに研究が進み、「アルコール依存症の親」に限らず、薬物・ギャンブル・仕事などの依存症を持つ親、拒食・過食などの嗜癖を持つ親、暴言・暴力・虐待を行う親、ネグレクトを行う親、過干渉な親、過保護な親など、「子どもが日常的にストレスを感じる子育てをする親」の全てが、アダルトチルドレンの原因になり得ることがわかってきました。

このとき、「子どもが日常的にストレスを感じる家庭で育ったことが原因で、『ACOA』と同じように、『対人関係の問題』や『自己否定感』などの『生きづらさ』に悩み苦しんでいる人たち」を、「アダルトチルドレン・オブ・ディスファンクショナルファミリー(Adult Children of Dysfunctional Family)」=「機能不全家族で育ったアダルトチルドレン『ACOD』」と呼ぶようになりました。

このように、「機能不全家族」という言葉は「アダルトチルドレンを生みだす家族を意味する言葉」として、1980年代のアメリカで使われはじめました。

 

なお、「機能不全家族とアダルトチルドレンの関係」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。

 

まとめ

さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。

  • POINT機能不全家族とは「アダルトチルドレン」と密接に関係しており、「アダルトチルドレンを生みだす家族を意味する言葉」として、1980年代のアメリカで使われはじめた
  • 機能不全家族とは「子どもが日常的にストレスを感じている家族」「家庭の本来の働きがうまく機能していない家族」「子どもが心身共に健全に成長していくために必要なものを満たすことができていない家庭」「子どもの健全な成長を阻害してしまう可能性がある家族」などの意味合いがある

また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。

是非、あわせてお読みください。

なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。

以上、「機能不全家族とは何か?『機能不全家族の意味合い』の解説」という記事でした。

この記事を書いた人
寺井 啓二

「うつ、アダルトチルドレンの克服経験」を持つ「心理カウンセラー・心理セラピスト」。
自らの克服経験を世の中のために役立てたいと考え、2013年に「メンタル心理そらくも」を設立、代表を務める。
10年以上のカウンセリング臨床実績があり、「アダルトチルドレン、インナーチャイルド、うつ病、パニック障害、人間関係の生きづらさ、親子関係の悩み(毒親)、子育ての悩み、恋愛・結婚の悩み、中学生・高校生の悩み」などの相談を得意としている。

◆カウンセリング実績
・臨床実績:過去2000回以上
・男女比:男性40%、女性60%
・年齢層:中学生から60歳代
・来訪元:静岡県内、愛知など東海圏
     東京、神奈川など首都圏
     大阪、兵庫など関西圏
     海外在住の方

◆保有資格
・上級心理カウンセラー
・メンタル心理カウンセラー
・うつ病アドバイザー
・チャイルドカウンセラー
・家族療法カウンセラー
・セルフ・アクセプタンスカウンセラー
・EFT-Japan Level 1
・EFT-Japan プラクティショナー

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