世代間連鎖とは何か?心理学で解説

2019年1月18日

世代間連鎖は、アダルトチルドレンと密接に関係しています。

世代間連鎖のイメージ、リレーでバトンパスをしているイメージ

 

世代間連鎖とは、生き方、価値観、子育て、教育などの影響が、親子間で連鎖していく仕組みのことです。

アダルトチルドレンとは、子ども時代、親から受けた子育てや教育の影響で、大人になっても生きづらさを感じている人を呼びます。

よって、世代間連鎖とアダルトチルドレンは密接な関係にあると心理学では捉えます。

アダルトチルドレンからの回復は、自分1人のみに関心を振り向けても叶わず、世代間連鎖に基づき、親の子ども時代や祖父母の世代まで関心を振り向けてはじめて進展を得られます。

この記事は、アダルトチルドレンの原因のひとつ、世代間連鎖について心理学に沿って解説しています。

世代間連鎖とは?

世代間連鎖とは、世代間伝達とも呼ばれます。

世代間連鎖とは、生き方、子育て方法、教育方針など、親から子どもへ、子どもから孫へと、様々な影響が親子間で連鎖していく仕組みのことです。

親が子どもへと伝ようとするものとしては、生き方知識・知恵価値観子育て方法教育方針喜びや楽しさを感じる成功体験苦しさや辛さを感じるトラウマ体験財産・土地・職業などがあります。

父親とキャッチボールをした楽しい体験や、母親と料理を作った嬉しい体験など、親から子どもへと世代間連鎖するものは、決してネガティブなものばかりではありませんが、自分にとっては、窮屈さ、苦しさ、重さなど、生きづらさを感じるものもあります。

 

世代間連鎖とアダルトチルドレンの関係

このように、人は、子ども時代に親から教えてもらった生き方、子育て方法、教育方法を、自分が親になってから、自分の子どもへと繰り返し伝えようとする特徴があります。

しかし、親が子どもへと伝えようとするもののなかには、受け取る側の子どもにとって、大きな負担に感じるものもあります。

 

日本での世代間連鎖、戦争の影響

例えば、日本には「跡を継ぐ」「世襲」といった概念がありますが、政治家や医者や社長など、親の職業や責任を、子どもの気持ちを無視し、無理矢理、子どもに跡を継がせようとする場合があります。

その他にも、親が辛く苦しく惨めなトラウマ体験をしていると、親は「子どもに同じ想いをさせたくない!」と想うあまり、子どもに干渉しすぎたり、子どもの面倒を見過ぎてしまい、過干渉・過保護な子育てになってしまう場合があります。

とくに日本は、昭和初期、太平洋戦争という悲惨な時代を経験しており、大人が子どもを頭ごなしに否定する印象、個人よりも国や組織を優先させようとする軍隊のように自己犠牲を促す価値観、戦争孤児の方がたに対する理不尽ないじめや仕打ちなど、元をたどると、太平洋戦争時代の軍国主義・恐怖政治の世相が、現代へと世代間連鎖し、様々な問題となって表面化していると心理学では捉えます。

このように、戦争を経験した世代である祖父母の世代が幼少期に大人から受けた、人権を軽視した理不尽なトラウマ体験が、祖父母から両親へ、両親から自分へ、自分から子どもへと世代間連鎖し、厳しい躾け差別ハラスメント過保護過干渉虐待ネグレクトいじめなどの問題となって、現代へと世代間連鎖していると心理学では捉えます。

よって、アダルトチルドレンからの回復を考えたとき、「自分自身の親が、幼少期、祖父母からどのような養育を受けていたか?」「自分自身の祖父母が、幼少期、どのような生活を送っていたか?」まで視野を広げることによって、初めて、世代間連鎖を断ち切ることが叶っていくと私は考えています。

(関連:アダルトチルドレンが抱える問題

 

アダルトチルドレンは世代間連鎖によって生まれる…

もともと、アダルトチルドレンという言葉は「アルコール依存症の親に育てられた子どもの影響」に注目することで生まれた言葉です。

その後、解釈が広がり、アルコール依存症の親に限らず、子ども時代に親から受けた子育てや教育の影響によって、大人になっても生きづらさを感じている人をアダルトチルドレンと呼ぶようになりました。

(関連:アダルトチルドレンの歴史

 

なので、アダルトチルドレンは、子ども時代、世代間連鎖によって親から受け取った生き方、子育て方法、教育方針が、自分にとってはアンマッチであり、その影響で生きづらさを感じているとも言えます。

よって、アダルトチルドレンからの回復を考えたとき、世代間連鎖とアダルトチルドレンは密接な関係にあると心理学では捉えます。

このように、心理学では、アダルトチルドレンの原因は、自分が遺伝的に持っているものではなく、生まれた後、世代間連鎖によって親にされた子育て方法=親から受け継いだ生き方の影響が大きい考えます。

 

世代間連鎖と反抗期の関係

反対に言えば、世代間連鎖によって親から受け取る生き方は、ひと世代前の生き方であり、親が示す生き方は、受け取る子どもにとって「必ず、時代遅れ」になります。よって、親が示す生き方に子どもが違和感を感じる方が自然です。

そして、親が示す生き方に子どもが違和感を感じ始める時期を「思春期・反抗期」と言い、親から受け取った生き方に感じる違和感を、自分自身で工夫し、自分で自分の生き方を育み始める時期を「自立期」と言います。

ですが、子どもが懸命に自立しようと反抗期を過ごしているとき、親が逃げてしまったり、頭ごなしに押さえつけたり否定してしまうと、子どもの自立心は萎えてしまい、心理的自立を果たせないまま、自信のない大人=アダルトチルドレンとなっていきます。

そして、自分が親になり子育てを始めたとき、自分が親にされたように、子育てから逃げてしまったり、子どもを押さえつけたり否定したりと、自分が苦しいと感じた子育てや教育を、苦しいと知りながらも、自分の子どもへと世代間連鎖してしまいます。

このように、子どもが自由な感情表現を認めてもらえなかったり、健全な成長を阻害されてしまう家族のことを、心理学では機能不全家族と呼びます。

(関連:機能不全家族チェック|タイプと特徴と影響

 

世代間連鎖の子育てへの影響

人は、生き方や子育て方法を学校で学ぶわけではありません。

人は、自分が子どものときに親から感じとった生き方や子育て方法や教育方針を、自分が親になってから、無意識に、自分の子どもへと繰り返し伝えようとします。

世代間連鎖そのものは、人として自然な心のしくみであり、多く子孫を残すことができた大切な本能です。

よって、生き方子育て方法教育方針は、世代間連鎖の影響をとくに大きく受けるものと心理学では捉えます。

 

生き方や子育て方法が世代間連鎖する理由

しばしば忘れがちですが、人も生き物のひとつです。そして、魚、鳥、犬、ネコ、植物なども含めたすべての生き物にとって「生きている…」ということ自体が素晴らしい成功体験です。

なので、生きづらさを感じていたとしても、苦しさを感じていたとしても、今、自分が「生きている…」という結果を得られているという事実は、自分が子どものときに親からしてもらえた子育て方法によって得られた成功体験であるのは確かな事実です。

よって、「自分が子どものときに親からしてもらえた子育て方法」=「自分が生き残ることができた子育て方法」を、自分が親になってからも子どもへと繰り返し伝えようとします。

このように、生き方や子育て方法や教育方針が、生きづらさを感じたり苦しさを感じながらも親子間で連鎖する理由は、「今、自分が生存できている…」=「今まで自分が生き残ることができた実績のある生き方や子育て方法」だからです。

(関連:子育てが怖いと感じる理由とは?心理学で解説

 

楽しいものも苦しいものも世代間連鎖する…

このように、人の子育て方法は、「子どもにとって、いいか?悪いか?」ではなく、「子どもが、生き残れるか?どうか?」でもって本能的に無意識に判断し親子間で連鎖している部分があります。

なので、子ども時代、親から苦しい子育てをされたとしても、今、親になった自分が生き残ることができている限り、その子育て方法を繰り返してしまうことは、人の本能であり、人として自然なことなのです。

よって、虐待、ネグレクト、厳しい躾け、折檻など、子ども時代、親にされた子育て方法が自分にとって苦しかった…繰り返したくない…と頭ではわかっているのに、「自分が親になって、無意識に自分の子どもへと繰り返してしまう…」と苦しんでおられる方がいらっしゃるかもしれません。

もしそうだと致しましても、その方が決して子どもを苦しめようと思って苦しめているのではなく、頭ではわかっているのに無意識に繰り返してしまうのは、人の生存本能=世代間連鎖によるものです。

なので、その方も、そしてその親も、その時代を懸命に生き抜いたノウハウを親子間で連鎖しているだけであり、誰も何も悪くないのだと心理学では捉えます。

(関連:あなたは何も悪くない…

 

負の世代間連鎖

さて、親子間で連鎖するものは、楽しい体験や嬉しい体験など、ポジティブなものもあります。

ただ、親の世代から連鎖したもののなかで、どうしても、ネガティブなものもあります。

最近では、書籍などで「貧困の世代間連鎖」「虐待やDVの世代間連鎖」などの表現も聞かれるようになり、一般的にも、親子で連鎖する世代間連鎖の仕組みの存在に関心が集まりつつあります。

このように、頭ではわかっていても、ネガティブな連鎖を無意識に繰り返してしまうことを、負の世代間連鎖と言います。

以下に、負の世代間連鎖の代表例をいくつか解説します。

 

愛情表現

大切に想っている気持ち」「仲良くしたい気持ち」など、親が愛情表現している姿を見せてもらえていない子どもは、成長したのち、自分の愛情表現が難しくなり、恋愛や夫婦関係や子育てにおいて、依存傾向共依存傾向になってしまう場合があります。

(関連:アダルトチルドレンの恋愛傾向

 

躾け・教育

頑張りなさい!」「我慢しなさい!」と、自分の言動を親に煽られたり制限されていた子どもは、大人になって自己否定感を感じやすくなり、休むことや人に任せることが苦手となり、うつ病の症状など、心に負担を抱えやすくなります。

(関連:交流分析:禁止令とドライバー

 

ネグレクトの連鎖

ネグレクトとは、育児放棄と略されますが、心理カウンセリングの現場では、「積極的に育児を放棄しようとしているのではなく、子育ての方法がわからなくて困っている状態である…」と、ネグレクトを捉えます。子どもの頃、親が忙しく鍵っ子であったり片親であったり、1人で過ごすことが多く、家庭の温かさを感じた経験が少ない子どもは、大人になって親になったとき、子育ての方法がわからないと感じ、子育てを保留するしかなくなり、ネグレクトの連鎖が起こります。よって、ネグレクトとは、「子育てができるのにあえて子育てをしない…」のではなく、「子育てのやり方がわからないのでやりようがない…」と、心理学では捉えます。

(関連:親に愛されてないと感じる…インナーチャイルドの誤解

 

虐待、DVの世代間での連鎖

親が子どもに虐待やDVを行うと、子どもは「虐待や暴力も愛情表現のひとつ」と認識し、体罰、いじめ、ハラスメント、虐待、DVの世代間連鎖が起こります。このように、子ども時代、虐待やDVに耐え続けた子どもを、アダルトチルドレンタイプではスケープゴートタイプ(犠牲の山羊)と呼びます。

(関連:アダルトチルドレン:スケープゴートの特徴

 

世代間でのトラウマの連鎖

苦しく辛いトラウマ体験を抱えた親は、子どもから見ると不安定な親であり、子どもは親をひどく心配し気掛かりに感じ、生きづらさを感じつつも、子どもは親を支えようとします。不安定な親は、子どもにとって大きな不安材料で心の負担となり、子どもは不安を感じやすく心配性となり、世代間でのトラウマの連鎖が起こります。

(関連:生きづらい原因とは?

 

負の世代間連鎖を断ち切る

世代間連鎖とは、確かに大きな影響を及ぼしますが、その影響を緩和することはできます。

もし、世代間連鎖が絶対的なものならば、人の生き方は前の世代の生き方を繰り返すだけとなり、まったく進化することができず、今でも原始時代の生き方を繰り返しているはずです。

ここでは、世代間連鎖で親から受け取った生き方を、自分好みにリノベーションし、誰も巻き込まず、誰にも邪魔されず、自分1人で負の世代間連鎖を断ち切る考え方を説明します。

 

生き方をリノベーションする…

前述のとおり、人は親の影響を受けやすいものではありますが、世代間連鎖によって親から受け取とった生き方は、ひと世代前の常識であり「時代遅れ」の部分もあります。

とはいえ、世代間連鎖とは、ネガティブなものばかりが連鎖するわけではなく、楽しさや嬉しさといったポジティブな影響も、親子間で連鎖しています。

同時に、親も、そのまた親から受け継いだ生き方を誠実に伝えただけです。

そこで、親を一方的に責めたり否定してしまっては、生きづらさの原因である白黒思考をかえって強めてしまいます。

よって、親から受け継いだ生き方のなかで、自分にとって心地良い部分は受け取り、自分にとって苦しい部分は自分自身で緩和し、自分が心地よいと感じる生き方へとリノベーションし、白黒思考を緩和したうえで、次の世代へと伝えていこうとする工夫が大切だと心理学では捉えます。

(関連:白黒思考の原因と改善

 

自分が自分の親となり育てなおす…

自分1人で負の世代間連鎖を断ち切るためには、「人の心は、目で見た本物も思い描いた空想も同じように認識する…」という心=脳の特徴を利用します。

人の心=脳は、映画、テレビ、ゲーム、イメージトレーニングといったように、本物ではないバーチャルにも気持ちが反応し成長することができます。

なので、「子ども時代の自分」と「大人の自分」の二つの視点で自分自身を捉えていき、負の世代間連鎖の影響を受け苦しんでいる子ども時代の自分を、大人になった自分が新しい親となって育てなおすイメージトレーニングをすることで、誰も巻き込まず、誰にも邪魔されず、自分1人で負の世代間連鎖を断ち切り、自分が心地よいと感じ生き方を次の世代へと伝えることができると心理学では考えています。

このとき、子ども時代の自分のイメージをインナーチャイルドと見立て、両親に代わって自分自身が新しい親となって、胸のうちに空想するインナーチャイルドと触れ合い育てなおすイメージトレーニングのことを、インナーチャイルドセラピーと呼びます。

(関連:インナーチャイルドセラピーの効果

 

さいごに

とはいえ、「子ども時代の自分」と「大人の自分」の二つの視点で自分自身を捉える作業や、インナーチャイルドと触れ合う作業は、1人では難しくもありますので、そのお手伝いをさせて頂くのが心理カウンセラーです。

そして、誰も巻き込まず、誰にも邪魔されず、自分1人で負の世代間連鎖を断ち切り、新しい世代間連鎖をはじめていく機会を心理カウンセリングと言います。

(関連:アダルトチルドレンの心理カウンセリングのポイント