POINT新聞・ニュースなどで「社会問題」として認識されている「機能不全家族の特徴」は、①児童虐待、②教育虐待、③モンスターペアレント、④不登校、⑤引きこもり・ニート、⑥8050問題、⑦きょうだい児、⑧ヤングケアラー、⑨教育格差、などがあげられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「機能不全家族」とは、もともと「アダルトチルドレンの研究」から生み出された言葉で、「家庭内に存在する様々な問題が原因で、子どもが日常的にストレスを感じている家族の状態」を指します。
「機能不全家族」とは、限られた人たちにのみ起きている「縁遠い問題」と考えられがちですが、「機能不全家族の特徴」は、しばしば、新聞・ニュースなどで扱われる「社会問題」の原因となっている場合があります。
なので、本記事は「解決困難と見られがちな『社会問題』の原因を知り、解決の糸口となり得る情報」と言えます。
ちなみに、この記事は「社会問題として認識されている『機能不全家族の特徴』」についての解説です。
「アダルトチルドレン研究の専門家たちが著書の中で示している『機能不全家族の特徴』」「アダルトチルドレンの克服に携わるカウンセラーが考える『機能不全家族の特徴』」については、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、社会問題として認識されている「機能不全家族の特徴」について解説していきます。
社会問題として認識されている「機能不全家族の特徴」
「機能不全家族」とは「アダルトチルドレン」の研究と密接に関係しており、家庭内に存在する様々な問題が原因で、子どもが日常的にストレスを感じている家族の状態を指します。
機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。
また、「機能不全家族で起きる問題」とは、限られた人たちにのみ起こる「縁遠い問題」というわけではなく、新聞・ニュースなどで「社会問題」として扱われている場合も多く、誰にでも起こり得る身近な問題と言えます。
ここでは、社会問題として認識されている「機能不全家族の特徴」について、以下の9つを紹介します。
POINT
- 児童虐待
- 教育虐待
- モンスターペアレント・ヘリコプターペアレント
- 不登校
- 引きこもり・ニート
- 8050問題
- きょうだい児
- ヤングケアラー
- 貧困による教育格差
それでは、以下に詳しく説明していきます。
①児童虐待
「児童虐待」とは、「暴言、暴力、ネグレクト」など「子どもの人生に悪影響を及ぼす子育て」を指します。
児童虐待とは、保護者(親または親にかわる養育者)が、子どもの心や身体を傷つけ、子どもの健やかな発育や発達に悪い影響を与えることを指します。法律では次の4種類に分類されています。…(中略)…身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待、性的虐待
引用元:児童虐待ってなんだろう?
「児童虐待」は、大きくわけて以下の4つの種類があります。
POINT
- 身体的虐待
- 性的虐待
- ネグレクト(育児放棄・育児怠慢)
- 心理的虐待
「1.身体的虐待」とは、殴る・蹴る・叩く・突き落とす・火傷を負わせる・溺れさせるなど、親が子どもに対してケガを負わせる・生命の危険に晒す・病気にさせるなどの行為を指します。
「2.性的虐待」とは、親が子どもに対して性的行為を行う・性的行為を見せつける・ポルノの被写体にするなどの行為を指します。
「3.ネグレクト」とは「育児放棄・育児怠慢」とも呼ばれ、親が子どもに対して食事・入浴・着替えなどの養育を怠る・家に閉じ込める・学校に行かせない・病気でも病院に行かせない・家や自動車に置き去りにする・同居人による虐待を知りながら放置するなどの行為を指します。
「4.心理的虐待」とは、親が子どもに対して「産まなければよかった…」などの悪口・暴言を浴びせる・「言うことを聞かないと痛い目に合わせるよ!」などの脅迫をする・「あんたは気に入らない!」など子どもの存在を無視したり拒否する・子どもの身体的特徴(背丈や容姿)をあげつらう・他のきょうだいと著しく差別をするなどの行為を指します。
また、親が子どもの前で他の家族に暴力を振るう(DV)・きょうだいに虐待行為を行う・激しい夫婦喧嘩を行うなどの行為も「心理的虐待」に当たります。
このように「児童虐待」とは、「社会問題」としても認識されている通り「子どもの生活基盤を脅かしている状態」であり、子どもに多大なストレスを与えたり、子どもの心にトラウマ(心的外傷)を負わせたり、子どもの健やかな発育や発達に著しい悪い影響を与えます。
よって「児童虐待」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
なお、「児童虐待を行う親の特徴」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
関連記事
②教育虐待
「教育虐待」とは、学業の成績・スポーツの試合の結果・習い事の上達などについて「親が子どもに過剰な期待を寄せること」を指します。
教育虐待とは、教育を理由に子どもに無理難題を押しつける心理的虐待のこと。教育虐待は、子どもに度を超えた勉強をさせる行為だけではありません。子どもが望んでいないのにもかかわらず、親が習い事を強要することなども教育虐待にあたります。
このような「教育虐待」の背景には「過干渉(子どもを意のままに操ろうとする親の意図)」が隠れていると言え、近年、社会問題となっています。
当然のことながら、「教育虐待」を受けた子どもは「自分が幸せになるための努力」ではなく、「親を幸せにするための努力」を強要され続けることになり、子どもの自我・自主性の発達に悪影響を及ぼします。
よって「教育虐待」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
③モンスターペアレント・ヘリコプターペアレント
「モンスターペアレント」とは、学校の先生・塾の先生・子どもの友人やその親などに対して「子どもの代理人になって無理難題を押し付ける親」を指します。
「ヘリコプターペアレント」とは、子どもが辛い思いをしないように「子どもの気持ちを無視して先回りして手助けしすぎてしまう親」を指します。
モンスターペアレントは、学校や塾の先生などに理不尽な要求をしたり無理難題を押し付けたりする親を指します。…(中略)…どちらも「自分の子供が大切」という意識が根本にありますが、ヘリコプターペアレントは、そんな子供が辛い思いをしないように先回りをしたり、親が過剰に手助けしてしまうという特徴があります。
このように「モンスターペアレント」は先生や学校に対してアクションを起こすのに対し、「ヘリコプターペアレント」は子ども自身に対してアクション起こすため、性質は少し異なります。
とはいえ、どちらにしても「子どもの気持ちを無視した行き過ぎた行動」であり、その背景には「過保護(子どもに対して過剰な同情を示す心理的傾向)」が隠れていると言え、学校・習い事の現場における社会問題となっています。
「過保護」をする親は、一見、「優しい親」に見えますし本人もそう信じて止まないのですが、親が子どもを「過保護」にし過ぎてしまうことは、子どもが大人へと成長する機会を奪ってしまうことにもなり、子どもの精神的自立を阻害してしまう可能性があります。
よって「モンスターペアレント・ヘリコプターペアレント」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
④不登校
「不登校(登校拒否)」とは、小学生・中学生・高校生など、生徒が「学校に登校していない状態」あるいは「登校したくてもできない状態」を指します。
「不登校」という状態について、文部科学省は「年度間に連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒」のうち「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある者(ただし、『病気』や『経済的理由』による者を除く)」と定義しています。
「不登校」は、大きくわけて以下の5つのタイプがあります。
POINT
- 人間関係タイプ
- 遊び・非行タイプ
- 無気力タイプ
- 不安タイプ
- その他、複合タイプ
「1.人間関係タイプ」とは、いじめ・クラスの友人関係・部活動・教職員との関係など、学校生活において人間関係のトラブルを抱えているか、あるいは、人間関係のトラブルを極度に恐れていることが原因で不登校となっているタイプです。
「2.遊び・非行タイプ」とは、親・教職員への不信不満から、家庭にも学校にも居場所が得られず、遊びでストレスを解消しようとしたり、非行グループの中に自分の居場所を求めているタイプです。
「3.無気力タイプ」とは、「自己肯定感が低い」あるいは「自己否定感が強い」ことが原因で無気力感を感じやすく、「学校に行くことの意味」が感じられずに不登校になっているタイプです。
「4.不安タイプ」とは、「幼少期の家庭内トラウマ」あるいは「学校でのいじめによるトラウマ」などが原因で「 PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を抱えており、情緒不安定な状態にあることで不登校になっているタイプです。
「5.その他、複合タイプ」とは、上記のタイプの特徴を複数あわせ持っている場合がこれに当たります。また、「発達障害」あるいは「HSP」など「生まれ持った個性」の影響によって不登校となっている場合もあります。
このように、「不登校」とは「学校生活」と「家庭環境」の両方に原因がある場合が多く、とくに「人間関係が苦手・自信がない・不安を感じやすい」といった心理的特徴は、「機能不全家族で育った人の特徴(アダルトチルドレン)」と一致します。
よって「不登校」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
⑤引きこもり・ニート
「引きこもり」とは、「長期間、他人との交流が非常に狭い範囲に限られている状態」を指します。
「ニート」とは、「働くこと以外においては他人との交流はあるものの、働く意思がない状態」を指します。
「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」を「ひきこもり」と呼んでいます。
15~34歳で、非労働力人口のうち家事も通学もしていない方を、いわゆるニートとして定義しています。
引用元:厚生労働省
このように、「引きこもり」とは引きこもっている状態を指すのではなく「社会参加の有無」を指します。
ですので、家では部屋に引きこもりがちであっても、趣味・仕事・地域活動などで外出をして社会参加をしていれば「引きこもり」とは言えません。
また、「ニート」とは働いていない状態を指すのではなく「働く意思の有無」を指します。
ですので、学生は「働く準備のために学業を積んでいる」、主婦は「家事という仕事をこなしている」ということになり「ニート」とは言えません。
とはいえ、どちらにしても「自分は他人からどう思われているか?」を極端に気にする傾向があり、その背景には、子どもの頃、親にあまり褒めてもらえなかったことによる「自己肯定感の低さ」が隠れていると考えられています。
よって「引きこもり・ニート」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
⑥8050問題
「8050問題」とは「『50代の子ども』を『80代の親』が支える形で生活が成り立っている状態」を指します。
「8050問題」という言葉をご存知でしょうか。「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支えるという問題です。背景にあるのは子どもの「ひきこもり」です。…中略…こうした親子が社会的に孤立し、生活が立ち行かなくなる深刻なケースが目立ちはじめています。
このように「8050問題」とは、子どもは「50代」であっても「引きこもり」あるいは「ニート」である場合が多く無収入であるため、「80代」の親の年金などを頼りに細々と暮らしている状態です。
そして年月を重ねるごとに親の力も衰えていき、徐々に生活が立ちいかなくなり、社会から孤立してしまうなど社会問題となっています。
「8050問題」とは、一見、「自立しきれない子ども」と「その子どもを懸命に支える親」のペアのように見えますが、その背景には「親子共依存(“親離れできない子ども”と“子離れできない親”の共依存関係)」が隠れている場合があり、決して子どものみに責任があるとは言い切れない部分があります。
よって「8050問題」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
⑦きょうだい児
「きょうだい児」とは、兄弟姉妹がなんらかの「障害児」であるため、親の関心が「障害児」の世話ばかりに向いてしまい、結果、親に甘えられなかった「健常児」を指します。
「きょうだい児」とは、障害のある子どもの兄弟姉妹のこと。…(中略)…障害のある子の兄弟姉妹のことを「きょうだい児」と呼びます。きょうだい児には、「障害のある子に手がかかるため親に甘えられない」「きょうだいのことでいじめられる」など、独特の悩みがあります。
このように「きょうだい児」とは、「障害を持っていない」という理由で親に甘えられず「寂しい気持ち」を抱えることになったり、「障害児を兄弟姉妹に持つ」という理由で学校でいじめられ「辛い気持ち」を抱えることになり、結果、自分ではどうにもできない「理不尽な理由」でストレスを抱え続けることになります。
ですが、「きょうだい児」は「障害」を抱える兄弟姉妹の世話をする親の大変な姿を間近に見ているため、心に溜め込んだ「寂しい気持ち」や「辛い気持ち」を「親・家族・家庭」に吐き出すこともできず、大きなストレスを抱えたまま大人へと成長していくことになります。
このように、障害児を持つ親は「きょうだい児」のことを「わがままを言わずに親を助けてくれる優しい子ども」と一方的に思い込みやすい傾向があり、その背景には「きょうだい差別(親から受け取る愛情にきょうだい間で差が生まれている状態)」が隠れている場合が多く、周囲から見落とされがちな社会問題となっています。
よって「きょうだい児」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
⑧ヤングケアラー
「ヤングケアラー」とは「通学や仕事をしながら、障害・病気を持つ祖父母・親の介護や世話もしたり、年下のきょうだいなどの介護や世話もしている子ども」を指します。
ヤングケアラー(英語: young carer)とは、通学や仕事のかたわら、障害や病気のある親や祖父母、年下のきょうだいなどの介護や世話をしている18歳未満の子どもを指す。家族の病気や障害のために、長期のサポートや介護、見守りを必要とし、それを支える人手が十分にない時には、子どもであってもその役割を引き受けて、家族の世話をする状況が生じる。介護のために学業に遅れが出たり、進学や就職を諦めたりするケースもあるといい、実態の把握が急がれている。
引用元:ヤングケアラー
特に、日本の子育て・教育では、「世のため…人のため…」といった「自己犠牲」が親・先生から褒められる傾向にあるため、「ヤングケアラー」は「親孝行・家族想い」とされがちです。
ですが、反対に言えば「ヤングケアラー」とは、「本人が望むと望まざるとに関わらず、本来、父親・母親が果たすべき役割を押し付けられてしまっている子ども」と言い換えることができます。
このように、「ヤングケアラー」の背景には「父親・母親の役割が十分に果たされていない」という事実が隠れている場合が多く、親が背負うべき負担を子どもに背負わせることは、子どもの進学・就職に悪影響を及ぼすことになります。
よって「ヤングケアラー」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
⑨貧困による教育格差
「貧困による教育格差」とは「『家庭に貧困の問題があり、塾や習い事など学校外の教育を受けられなかった子ども』と『家庭に貧困の問題がなく、塾や習い事など学校外の教育を問題なく受けられた子ども』とのあいだに生じる教育の格差」のことを指します。
貧困による教育格差は特に深刻です。現在は学校だけでなく、塾や習い事など学校外での教育を受ける機会が多くなっています。…(中略)…実際に子どもの貧困対策に取り組む団体が行ったアンケートによると、経済的な理由で塾や習い事を諦めた家庭は68.8%にものぼります。…(中略)…この影響は教育格差の上ではかなり深刻です。
このように、親が経済的に困窮していることで十分な「教育費」が確保できないと、子どもが勉強をする機会を失ってしまい、そのことが「子どもの進学・就職に不利」に働いてしまう場合があります。
もちろん「貧困」の原因は「家庭」にばかりあるのではなく、「社会状況」や「経済情勢」など様々な「外的要因」もかさなったうえで起きる問題です。
ですが、「家庭の役割」とは、あくまで「子どもが心身共に健全な成長していくために必要なものを満たすこと」にある以上、「家庭の役割」を十分に満たすことができないことで起きる「貧困による教育格差」という社会問題は、機能不全家族の特徴のひとつと言えます。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「社会問題を引き起こす機能不全家族の特徴」は、以下の点があげられます。
- POINT「子どもの発育を脅かす」ような言動をする
- 「親を幸せにする努力」を子どもに強要する
- 「子どもの精神的自立」を阻害する
- 「子どもの苦しみ」に気づくことができない
- 「子どもの自己肯定感」を傷つける
- 「子離れ」できない
- 「子どもは苦労している親を助けて当然だ」と思い込んでいる
- 「親の苦労」を子どもに押し付ける
- 経済的な困窮を理由に「子どもの将来」を制限する
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
関連記事
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
関連情報まとめページ
以上、「機能不全家族の特徴③:機能不全家族が引き起こす社会問題」という記事でした。