POINT「未完の感情」とは、納得がいくまで表現しきれなかった過去の感情を指し、「未完の完結」とは、長年、無意識に抱え続けてきた未完の感情を、スッキリと終わらせることです。
心理カウンセラーの寺井です。
「未完の感情」とは、「悩んでいる心理状態」を指し、「ストレス」「未練」「気がかり」「後悔」「トラウマ」など、モヤモヤ・グルグルとした重い気持ちを意味します。
一方、「未完の完結」とは、「悩みが解決した状態」を指し、モヤモヤ・グルグルとした未完の感情がスッキリと終わった心地よい気持ちを意味します。
この記事は、「未完の感情とは何か?」「未完の完結とは何か?」について説明しています。
未完の感情とは?
未完の感情とは、納得がいくまでやり遂げることができなかった過去の事柄や、納得がいくまで表現しきれなかった過去の感情のことを指します。
納得がいかない思いは、行き場がなくて、心のどこかにモヤモヤしたまま残ってしまいます。いわば出口がなくて迷子になってしまった感情。これを「未完の感情」と呼びます。
未完の感情を、新しい視点で言い換えると?
このように、未完の感情とは、ある時から満たされていないままになっている感情、あるいは、ある時から終わっていないままになっている感情などと言い換えることができます。
そして、未完の感情を、日常生活で用いられる言葉に置き換えると、以下のように言い換えることができます。
POINT
- 言いたいこと・やりたいことを我慢しているときに感じる「ストレス」
- 大切な人への想いを伝えきれなかったときに感じる「未練」
- 心配ごとを抱えているときに感じる「気がかり」
- 過去の出来事に納得がいかないときに感じる「後悔」
- 過去の辛い体験の記憶が蘇っているときに感じる「トラウマ」
このように、未完の感情とは、スッキリした心地よい気持ちというより、スッキリしない、モヤモヤ・グルグルとした重い気持ちを意味します。
未完の完結とは?
未完の完結とは、「ストレス」「未練」「気がかり」「後悔」「トラウマ」などの「未完の感情」を、受け入れたり吐き出すことでスッキリと終わらせていくことを指します。
「未完の完結」によってもたらさせる「悩みの解決」を、心理カウンセリングでは「統合」と言います
また、未完の完結を果たすことで、「心の悩み」や「心の問題」が解決に至ることを、心理カウンセリングでは「統合」と言います。
専門用語ではカウンセリングのゴールは「統合」と呼ばれています。意味合いとしては、クライアント(相談者)の方が納得できるゴールを見つける・達することです。
引用元:カウンセリングのゴール、統合とは
未完の完結は、未完の感情を満たして終わりにすること
このように、未完の完結とは、ある時から満たされていないままになっていた感情、あるいは、ある時から終わっていないままになっていた感情を満たして終わりにすることです。
そして、未完の完結を、日常生活で用いられる言葉に置き換えると、以下のように言い換えることができます。
POINT
- 言いたいことを言い、やりたいことをやり、「ストレスを発散」すること
- 大切な人へ伝えたかった気持ちをしっかりと伝え「想いを告白」すること
- 気がかりとなっている問題に向き合い、対策を立てたり話し合うことで「気がかりを解消」すること
- 納得のいかない過去の失敗を素直に認め「自分の失敗を受け入れる」こと
- 過去の辛いトラウマ体験を振り返り、怒り・イライラ・悲しみ・寂しさ・不安・恐怖など、未完結のネガティブ感情を開放することで「トラウマを克服」すること
このように、未完の完結とは、長年、無意識に抱え続けてきた未完の感情を、スッキリと終わらせることを意味します。
そして、未完の完結を果たすことができると、そのぶん、安心・落ち着き・穏やかさ・嬉しさ・清々しさ・自由・納得感・心地よさなどの「幸せ感」を感じられるようになります。
未完の感情と「心の問題」
前述の通り、未完の感情とは、怒り・イライラ・悲しみ・寂しさ・不安・恐怖などの「ネガティブ感情」が、処理されないまま心に残っていることを意味します。
ネガティブ感情は、できれば感じたくはない「嫌な感覚」です。
そして、「嫌な感覚」であるネガティブ感情が心に残っていると、「これ以上、嫌な想いをしたくない!」という恐れが強くなり、ネガティブ感情から目を背けてしまい、いつまでも未完の完結が果たせず、グルグルと何度も「嫌な感覚」を思い返してしまいます。
このように、怒り・イライラ・悲しみ・寂しさ・不安・恐怖などのネガティブ感情が、未完の感情として心に残っていると、いつまでも「嫌な感覚」を感じ続けることになってしまい、さまざまな心の問題の原因となります。
未完の感情と「ゲシュタルト療法」
未完の感情とは、「ゲシュタルト療法」という心理療法でよく用いられる考え方です。
ゲシュタルト療法では、未完の感情のことを「未完の問題」と表す場合もあり、捉え方によっては、「未解決の感情」「未処理の感情」などと表現することもできます。
ゲシュタルト療法は、未完結な問題や悩みに対して、再体験を通しての「今ここ」での「気づき」を得る心理療法です。ドイツ出身で後にアメリカで活躍した精神分析医フリッツ・パールズとゲシュタルト心理学者ローラ・パールズによって創られました。ゲシュタルトとは、ドイツ語で「かたち」「全体性」という意味です。そして、ゲシュタルト心理学では、人間は外部の世界をバラバラな寄せ集めではなく、意味のある一つの「まとまった全体像」として認識すると考えます。
このように、ゲシュタルト療法とは、過去の記憶を振り返り、ある時から満たされていないままになっている感情、すなわち、「未完の感情」や「未完の問題」を抱えていることに気づいていくことで、今現在の自分は、過去の記憶・過去の体験の影響を大きく受けていることに納得を深めていく心理療法です。
未完の感情と「トラウマ」
前述の通り、今現在の自分が抱えている心の問題は、未完の感情の影響を大きく受けていると、ゲシュタルト療法では捉えます。
とくに、怒り・イライラ・悲しみ・寂しさ・不安・恐怖などのネガティブ感情が、未完の感情として心に残っていると、「うつ病」「パニック障害」「対人緊張」など、さまざまな心の問題の原因になると、心理カウンセリングの現場では考えています。
そして、子ども時代に親から受けた「虐待の影響」や「いじめの影響」など、心の問題の原因になるような大きな影響力を持つ未完の感情を、心理学では「トラウマ」と言います。
トラウマ(trauma)とは、元々は「外傷(ケガ、またはケガによって出来た傷のこと)」を指すギリシア語でしたが、フロイトの『精神分析入門』などで、「強い衝撃的な出来事が精神的にショックを与え、後遺症のように心の傷を残す」という状態を「トラウマ」と表現するようになります。以降、トラウマという言葉は「心的外傷」という意味で広く用いられるようになりました。
未完の感情と「アダルトチルドレン」
また、子ども時代、「毒親」に育てられた影響や、「機能不全家族」で育った影響により、大人になっても生きづらさを抱えている人を、心理学では「アダルトチルドレン」と言います。
アダルトチルドレン(AC)とは、自分は子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことをいいます。自己認識の概念であり、医学的な診断名ではありません。
よって、アダルトチルドレンは、子ども時代、親との関係において自分の感情を満たせなかった経験を持つ人であり、子ども時代から満たされていないままになっている未完の感情を、大人になっても抱え続けている人と言えます。
未完の感情と「インナーチャイルド」
また、アダルトチルドレンが抱えている未完の感情を、心理学では「インナーチャイルド」という概念を用いて捉える場合があります。
インナーチャイルドは、日本語で「内なる子供」と訳されています。心の中に住んでいる子供の自分……といった意味となります。諸説ありますが、「子供の頃の記憶や感情」のことをインナーチャイルドと呼びます。主にネガティブな記憶や、それに伴う感情(親に怒られた、友達にいじめられた、さみしかった、つらかった、孤独を感じた等)が中心です。
引用元:インナーチャイルドとは?
よって、インナーチャイルドとは、子ども時代から傷ついたままの感情や、子ども時代から満たされてままの感情など、アダルトチルドレンが抱える未完の感情を捉えやすくするための工夫と言えます。
また、「アダルトチルドレン」と「インナーチャイルド」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
未完の感情と「未完の完結」
反対に言えば、どのような心の問題であっても、どれだけ昔の感情であったとしても、自分が抱えている未完の感情に気づき、未完の感情を解放することによって、今からでも、人は心の問題を解決できると、ゲシュタルト療法では捉えます。
そして、未完の感情に気づき、未完の感情を解放することによって、心の問題を解決に導くことを、ゲシュタルト療法では「未完の完結」と言います。
未完の完結:ゲシュタルト療法では、「過去の未完の出来事は、ゲシュタルトとして完成されていないモヤモヤとして残っていて(「抑圧」という精神分析用語は用いられない)それを意識化させ、完結することで症状は無くなる、という。フロイトは、「抑圧した過去を知る」ことで症状がよくなると言った。
未完の感情と「心理カウンセリング」「インナーチャイルドセラピー」
ただ、未完の感情とは、文字通り、遠い過去の感情である場合が多いため、例え、自分のことであっても、自分一人では気づきづらい場合があります。
そんなとき、未完の感情に気づいていくお手伝いをしてくれる人を「心理カウンセラー」と言い、心理カウンセラーの協力を得ながら、未完の感情に気づいていく作業を「心理カウンセリング」と言います。
また、未完の感情を「インナーチャイルド」というイメージに見立るなど、心理カウンセラーとの共同作業により、未完の完結を無理なく果たしていく作業を、「インナーチャイルドセラピー」と言います。
インナーチャイルド・セラピーは、まさにこの「未完の完結」作業を応用したものです。…(中略)…未完の感情をそのまま引きずるのではなく、「今ここ」で完結(終わらせ、創り直す)ことが、インナーチャイルド・セラピーです。
引用元:インナーチャイルド・セラピー
このように、「心理カウンセリング」や「インナーチャイルドセラピー」は、自分の人生に大きな影響を及ぼしている未完の感情を、心理カウンセラーとの共同作業で未完の完結へと導き、心の問題を根本解決に取り組む作業です。
「心理カウンセリング」と「インナーチャイルドセラピー」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
また、「インナーチャイルドセラピーによって生まれる具体的な効果」についても以下にあわせて紹介します。
「未完の感情」を「未完の完結」へと導く流れ
前述の通り、「心理カウンセリング」や「インナーチャイルドセラピー」は、長年、自分の人生に大きな影響を及ぼしていた未完の感情を、未完の完結へと導く有効な手段です。
「心理カウンセリング」や「インナーチャイルドセラピー」を用いて「『未完の感情』を『未完の完結』へと導く流れ」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
まとめ
さいごに、「未完の感情」と「未完の完結」について重要ポイントをまとめます。
POINT
- 「未完の感情」とは、ある時から満たされていないまま心に残っている感情
- 「未完の完結」とは、未完の感情を吐き出し終わらせること
- 未完の完結を果たすことで心の問題が解決に至ることを「統合」と言う
- 未完の感情が心に残っていると「心の問題」の原因になる
- 子ども時代に傷ついた未完の感情を持っている人を「アダルトチルドレン」と言う
- 未完の感情を抱えたまま、傷ついたままの子ども時代の自分のイメージを「インナーチャイルド」と言う
- 心理カウンセラーの協力を得ながら、未完の感情に気づいていく作業を「心理カウンセリング」と言う
- 心理カウンセラーとの共同作業により「未完の完結」を無理なく果たしていく作業を「インナーチャイルドセラピー」と言う
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
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以上、「『未完の感情』と『未完の完結』の説明」という記事でした。