
POINT
機能不全家族が親から子へ連鎖する背景には、
- 世代間連鎖
- 禁止令・ドライバー
- 幼少期のトラウマ
- 共依存
という4つの心理的な仕組みが関わっていると考えられます。
ただし、機能不全家族で育ったからといって、必ず同じ問題を繰り返すわけではありません。
機能不全家族チェックリスト
「自分は機能不全家族で育ったのか?」と感じている方は、65項目のチェックリストで子どもの頃の家庭環境や親子関係を振り返ることができます。
なお、このチェックリストは医学的・心理学的な診断を行うものではありません。
心理カウンセラーの寺井です。
- 自分は親と同じ子育てをしたくないと思っていたのに、気づけば親と同じような言葉を子どもにかけている
- 子どもの頃、親にされて嫌だったことを、今度は自分が子どもにしてしまう
このように、子どもの頃の家庭環境が、大人になってからの子育てや家族関係に影響する場合があります。
その背景のひとつに、親から子へ、子から孫へと、家族の中で身につけた考え方や行動の仕方が受け継がれる「世代間連鎖」という仕組みがあります。
機能不全家族で育った人は、幼少期の家庭環境に適応するために、
- 自分の気持ちを我慢する
- 親の期待に応えようとする
- 相手の機嫌を優先する
などの心の習慣を身につけることがあります。
こうした心の習慣は、子どもの頃には自分を守るために必要だった反応であっても、大人になってからの夫婦関係や子育てに影響する場合があります。
ただし、幼少期に身につけた心の習慣は、必ずしも一生変わらないものではありません。
自分がどのような家庭環境で育ち、どのような心の習慣を身につけてきたのかを理解することは、同じ問題を繰り返さないための第一歩になります。
この記事では、機能不全家族が連鎖する4つの理由について、その心理的な仕組みを詳しく解説します。
機能不全家族は、身近に存在する問題

「機能不全家族」とは、家庭の中で本来必要とされる安心感や情緒的な支えなどが十分に得られず、家族としての機能がうまく働いていない状態を指す言葉です。
アダルトチルドレンの研究や支援の中でも用いられてきた概念であり、子どもの頃の家庭環境が大人になってからの生きづらさに影響することを理解するうえで、重要な視点のひとつです。
日本でアダルトチルドレンの概念を広めた専門家のひとりである西尾和美氏は、1999年の著書『機能不全家族-「親」になりきれない親たち』の中で、日本の家族の多くが機能不全を抱えているという問題を指摘しています。
同書では「日本の家族の80%が機能不全を起こしている」と述べられていますが、これは著者による問題提起であり、現在の日本の全家庭を対象に調査した統計結果として解釈することはできません。
大切なのは、特定の割合ではなく、外からは問題がないように見える家庭でも、子どもが安心して自分の気持ちを表現できない場合があるという点です。
なお、機能不全家族で育った経験があっても、その影響の現れ方は一人ひとり異なります。
気づかぬまま、機能不全家族の中で育った人もいる
機能不全家族という言葉に、なじみのない方もいらっしゃるかもしれません。
例えば、子どもの頃に以下のような家庭環境で育った場合、大人になってからも、その影響を受けていることがあります。
POINT
- 親の顔色をうかがい、自分の気持ちを我慢することが多かった
- 親の期待に応えることを優先し、失敗することを強く恐れていた
- 家庭内で暴言や暴力、過度な干渉などが繰り返されていた
- 親の精神的な支え役となり、子どもらしく甘えられなかった
- 家庭内で安心して悩みや気持ちを話すことが難しかった
もちろん、これらの経験があるからといって、必ず機能不全家族で育ったと判断できるわけではありません。
重要なのは、家庭環境の中で、子どもがどのような気持ちを抱き、どのような心の習慣を身につけてきたのかという点です。
子どもの頃には「これが普通の家庭だ」と思っていても、大人になってから、自分の生きづらさと家庭環境とのつながりに気づく場合があります。
そして、こうした心の習慣が次の世代の家族関係に影響することが、機能不全家族の連鎖を理解するうえで重要になります。
なお、機能不全家族の意味合いや特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
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機能不全家族が連鎖する「4つ」の理由

機能不全家族が次の世代へと連鎖する背景には、子どもの頃の家庭環境で身につけた考え方や感情への対処方法、人間関係の築き方などが関わっていると考えられます。
例えば、親自身が幼少期に厳しい子育てを受けていた場合、大人になって自分の子どもに対しても、同じような接し方をしてしまうことがあります。
しかし、機能不全家族で育った人が、必ず機能不全家族をつくるわけではありません。
また、連鎖はひとつの原因だけで起こるのではなく、複数の心理的な仕組みが重なり合うことで生じる場合があります。
この記事では、機能不全家族が連鎖する背景として、次の4つを取り上げます。
POINT
- 世代間連鎖
親から子へ、考え方や行動の仕方が受け継がれる - 禁止令・ドライバー
幼少期に身につけた「してはいけない」「しなければならない」という心のルールが影響する - 幼少期のトラウマ
過去のつらい経験による心の反応が、現在の家族関係に影響する - 共依存
自分と相手の気持ちや責任の境界が曖昧な関係が繰り返される
これらの仕組みを理解することは、親を一方的に責めたり、反対に親の言動を正当化したりするためではありません。
自分がどのような心の習慣を身につけてきたのかを理解し、次の世代へ同じ問題を繰り返さないためです。
なお、機能不全家族が生まれる背景や原因については、以下の記事で詳しく解説しています。
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それでは、4つの理由を順番に解説していきます。
理由①:「世代間連鎖」

人は、子育ての仕方や家庭の築き方、人との関わり方、感情の表現方法などについて、子どもの頃に親や家族から見聞きしたことを参考にする場合があります。
例えば、
- 困ったときには家族で話し合う
- 相手の気持ちを尊重する
といった関わり方を身近に経験していれば、大人になってからも、その関わり方を自然に取り入れることがあります。
反対に、
- 失敗すると厳しく叱られる
- 自分の気持ちより親の期待を優先する
といった環境で育った場合には、その考え方や行動の仕方が、大人になってからの人間関係や子育てに影響することがあります。
このように、親から子へ、子から孫へと、家族の中で身につけた考え方や行動の仕方が受け継がれていくことを「世代間連鎖」と言います。
ただし、世代間連鎖は、親の言動をそのまま模倣することだけを意味するものではありません。
親とは反対の行動を選んでいても、幼少期に身につけた不安や緊張への対処方法などが、現在の家族関係に影響している場合があります。
負の世代間連鎖
世代間連鎖には、親から受け継ぐ望ましい影響もあれば、本人や周囲を苦しめる影響もあります。
例えば、子どもの頃に親から厳しく叱られて育った人が、大人になって自分の子どもに対しても、同じように厳しく接してしまう場合があります。
また、自分は親と同じことをしたくないと思っていても、子どもが思い通りに行動しない場面で、強い不安や怒りが湧き上がり、結果として親と似た対応をしてしまうこともあります。
このように、子どもの頃の家庭環境で身につけた考え方や行動の仕方が、次の世代にも望ましくない影響を及ぼすことを「負の世代間連鎖」と言います。
ただし、機能不全家族で育った人が、必ず同じ問題を繰り返すわけではありません。
幼少期の経験が大人になってからの行動に影響することはあっても、その影響の現れ方は一人ひとり異なります。
幼少期に身につけた「心の習慣」が影響する
ここで重要なのが、子どもの頃の家庭環境に適応するために身につけた「心の習慣」です。
例えば、怒りやすい親のもとで育った子どもは、親を怒らせないために、自分の気持ちを我慢したり、親の機嫌を敏感に察したりすることがあります。
また、親から大きな期待をかけられて育った子どもは、「もっと頑張らなければならない」「失敗してはいけない」という考え方を身につける場合があります。
こうした反応は、子どもの頃には、家庭の中で自分を守り、安心を得るために必要だったものかもしれません。
しかし、大人になってからも同じ心の習慣が続くと、自分自身を必要以上に追い込んだり、家族に対して過度な期待を抱いたりする場合があります。
心理カウンセラー寺井は、こうした状態を理解する際に、
- 本当はどうしたいのか(WANT)
- どのように感じているのか(FEEL)
- どうしなければならないと思っているのか(MUST)
という3つの視点を大切にしています。
例えば、本当は子どもと穏やかに過ごしたい(WANT)と思っている親でも、子どもの行動に不安や焦りを感じ(FEEL)、その不安や焦りから「きちんとしつけなければならない」(MUST)という思いが強くなり、子どもに対して必要以上に厳しく接してしまう場合があります。
これは、親の厳しい言動を正当化するための説明ではありません。
自分の中で何が起きているのかを理解し、これまでとは異なる関わり方を選べるようになるための視点です。
親は「親自身の問題」に気づきづらい場合がある
機能不全家族で育った親の中には、子どもの頃から慣れ親しんだ家庭のあり方を「普通のこと」と考えている人もいます。
例えば、自分が親から厳しく育てられた経験があると、自分の子どもに対しても「厳しく育てることが愛情だ」と考える場合があります。
また、自分が親の期待に応えることを優先して育った場合には、子どもにも同じように期待に応えることを求めてしまうことがあります。
このように、自分にとって当たり前だった子育ての仕方が、子どもにどのような影響を与えているのかに気づきにくい場合があります。
ただし、親自身が機能不全家族で育ったことは、子どもへの暴言や暴力、過度な支配などを正当化する理由にはなりません。
連鎖の背景を理解することと、現在の親子関係における問題を改善することは、どちらも大切です。
世代間連鎖は、必ずしも繰り返されるものではない
機能不全家族で育った経験があっても、子どもの頃に身につけた心の習慣を理解し、新しい関わり方を身につけていくことは可能です。
例えば、子どもに対して強い怒りを感じたとき、「なぜ自分はこれほど怒っているのだろう」と、自分の心の反応に目を向けることが、その第一歩になる場合があります。
そして、自分が本当はどうしたかったのか、何を不安に感じていたのか、何をしなければならないと思い込んでいたのかを整理することで、これまでとは異なる対応を考えやすくなります。
機能不全家族の世代間連鎖は、過去の経験による影響を理解し、現在の行動や関わり方を見直すことで、変えていける可能性があります。
なお、「世代間連鎖」の仕組みや、連鎖を断ち切るための考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
理由②:「禁止令・ドライバー」

機能不全家族が連鎖する背景には、子どもの頃に親から受け取った言葉や態度が、大人になってからも自分の考え方や行動に影響することがあります。
例えば、幼少期から
- 失敗してはいけない
- もっと頑張りなさい
- 人に迷惑をかけてはいけない
と繰り返し言われて育った人は、大人になってからも、自分に厳しいルールを課してしまう場合があります。
また、自分が親になったとき、同じようなルールを子どもにも求めてしまうことがあります。
このような心の仕組みを理解する際に参考になるのが、心理学の「交流分析」で用いられる「禁止令・ドライバー」という概念です。
禁止令とは?「○○してはいけない」という心のルール
交流分析における「禁止令」とは、子どもが養育者などから受け取った言葉や態度を通して、自分の存在や感情、行動などを制限するようになるメッセージを指します。
例えば、次のようなものがあります。
禁止令の例
- 自分の気持ちを表現してはいけない
- 人に甘えてはいけない
- 自分で決めてはいけない
- 幸せになってはいけない
これらは、必ずしも親が直接その言葉を口にしたという意味ではありません。
親の表情や態度、家庭内の雰囲気などから、子ども自身が「こうしてはいけない」と受け取る場合もあります。
例えば、悲しい気持ちを表現すると親に叱られる家庭では、子どもが「悲しんではいけない」と感じ、自分の感情を抑えるようになることがあります。
このように、子どもの頃に身につけた心のルールが、大人になってからの感情表現や人間関係に影響する場合があります。
ドライバーとは?「○○しなければならない」という心のルール
一方、「ドライバー」とは、自分を一定の行動へと駆り立てる心のルールを指します。
交流分析では、代表的なドライバーとして、次の5つが知られています。
5つのドライバー
- 完璧であれ
何事も完璧にしなければならない - 他人を喜ばせよ
相手の期待に応えなければならない - 強くあれ
弱音を吐かず、強くいなければならない - 努力せよ
常に頑張り続けなければならない - 急げ
何事も急いで行動しなければならない
例えば、「他人を喜ばせよ」というドライバーが強い人は、自分の気持ちよりも相手の期待を優先してしまう場合があります。
また、「完璧であれ」というドライバーが強い人は、失敗することを必要以上に恐れ、自分にも他人にも厳しくなってしまうことがあります。
ドライバーは、努力や責任感につながる場合もありますが、過度に強くなると、自分を追い込む原因になることがあります。
禁止令・ドライバーが「人生脚本」に影響する
交流分析には、「人生脚本」という考え方があります。
人生脚本とは、幼少期の経験や親から受け取ったメッセージなどをもとに形成される、生き方に関する無意識的なパターンを理解するための概念です。
例えば、子どもの頃から「人に迷惑をかけてはいけない」と感じて育った人は、大人になってからも、人に助けを求めることが苦手になる場合があります。
また、「いつも完璧でなければならない」と考えている人は、自分の子どもに対しても、必要以上に高い基準を求めてしまうことがあります。
このように、幼少期に身につけた心のルールが、大人になってからの子育てや家族関係にも影響することがあります。
ただし、人生脚本は、その人の将来を決定するものではありません。
自分の考え方や行動のパターンに気づき、見直していくことは可能です。
心理カウンセラー寺井が注目する「MUST」の影響
心理カウンセラー寺井は、人の心を理解する際に、次の3つの視点を大切にしています。
心を理解する3つの視点
- WANT(意)
本当はどうしたいのか - FEEL(情)
どのように感じているのか - MUST(知)
どうするべきか、どうしなければならないと考えているのか
例えば、子どもと穏やかに過ごしたい(WANT)と思っている親でも、子どもが失敗することに不安を感じ(FEEL)、その失敗を防ごうとするあまり、「親として厳しくしつけなければならない」(MUST)という思いが強くなる場合があります。
すると、本当は子どもと良い関係を築きたいと思っているにもかかわらず、厳しく叱ったり、子どもの行動を必要以上に制限したりしてしまうことがあります。
MUSTは、本来、物事を考え、判断し、適切に行動するために必要な働きです。
しかし、「こうしなければならない」という思いが強くなりすぎると、自分の気持ち(FEEL)や本来の願い(WANT)を後回しにしてしまう場合があります。
交流分析のドライバーと、心理カウンセラー寺井が注目するMUSTは、同じ概念ではありません。
しかし、どちらも「こうしなければならない」という思いが強くなり、自分を追い込んでしまう心理状態を理解するうえで、参考になる視点です。
禁止令・ドライバーによる連鎖を繰り返さないために
子どもの頃に身につけた禁止令やドライバーは、大人になってからも自分の考え方や行動に影響する場合があります。
しかし、それらは必ずしも一生変わらないものではありません。
例えば、子どもに対して「もっと頑張りなさい!」と言いたくなったとき、「なぜ自分は、子どもに頑張ることを求めているのだろう」と考えてみることができます。
そして、自分自身も子どもの頃から「頑張らなければ認めてもらえない」と感じていたことに気づく場合があります。
このように、幼少期に身につけた心のルールを理解し、自分や子どもにとって必要な考え方を選び直していくことが、連鎖を繰り返さないための第一歩になります。
なお、禁止令・ドライバーや人生脚本については、以下の記事で詳しく解説しています。
理由③:「幼少期のトラウマ」

子どもの頃に経験したつらい出来事が、大人になってからの感情や人間関係、子育てに影響することがあります。
例えば、親から繰り返し怒鳴られたり、暴力を受けたり、気持ちを否定されたりする環境で育った場合、大人になってからも、似た状況に強い不安や恐怖を感じることがあります。
こうした過去の体験による心理的な影響を理解するうえで重要なのが、「幼少期のトラウマ」です。
ただし、つらい経験をした人が、必ずトラウマによる長期的な影響を受けるわけではありません。
また、幼少期のトラウマがあるからといって、必ず機能不全家族を次の世代へ連鎖させるわけでもありません。
幼少期のトラウマとは?
トラウマとは、強い恐怖や無力感などを伴う体験によって、心身に影響が残ることを指す言葉です。
幼少期には、虐待や暴力、深刻な家庭内の争いなどが、子どもの安心感や心の発達に影響する場合があります。
また、子どもにとっては、周囲の大人が深刻に受け止めていない出来事であっても、強い不安や孤独を感じることがあります。
ただし、すべてのつらい経験を医学的な意味でのトラウマ体験と同一視することはできません。
大切なのは、出来事の名称だけで判断するのではなく、その人が何を経験し、どのような気持ちを抱き、その後の生活にどのような影響が生じているのかを理解することです。
トラウマとPTSDは同じものではない
幼少期のトラウマについて考える際には、「トラウマ」と「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を区別する必要があります。
PTSDは、生命や身体の安全が脅かされるような出来事などを経験した後に、侵入症状、回避、認知や気分の変化、過覚醒などが持続し、日常生活に支障が生じる精神疾患です。
一方、つらい経験による心理的な影響があっても、PTSDの診断基準を満たすとは限りません。
また、PTSDを発症した人が、必ず自分の子どもに同じような体験をさせるわけでもありません。
PTSDの有無と、機能不全家族の世代間連鎖は、区別して考える必要があります。
なお、強いフラッシュバックや不眠、日常生活に支障をきたす症状などが続いている場合には、医療機関などの専門的な支援を受けることも大切です。
幼少期のトラウマが大人になってからの子育てに影響する仕組み
幼少期のつらい経験は、大人になってからの感情や行動に影響する場合があります。
例えば、子どもの頃に親から激しく怒鳴られて育った人は、大人になってからも、相手の怒った表情や大きな声に強い緊張を感じることがあります。
また、幼少期に失敗を厳しく責められた経験がある人は、自分の子どもが失敗しそうになると、必要以上に不安を感じる場合があります。
その結果、子どもを失敗から守ろうとして、過度に干渉したり、厳しく注意したりしてしまうことがあります。
ただし、こうした反応がすべて幼少期のトラウマによって生じるわけではありません。現在の生活環境やストレスなど、さまざまな要因も関係します。
重要なのは、過去の体験によって身につけた心の反応が、現在の家族関係にも影響している場合があるという点です。
心理カウンセラー寺井が注目する「心の習慣」の影響
心理カウンセラー寺井は、幼少期のつらい経験が大人になってからの生きづらさにつながる仕組みを理解する際に、「心の習慣」という視点を大切にしています。
例えば、子どもの頃に親の機嫌をうかがいながら生活していた人は、相手の表情や態度に敏感になり、自分の気持ちを我慢する習慣を身につけることがあります。
また、親から失敗を厳しく責められていた人は、「失敗してはいけない」「いつも正しく行動しなければならない」という心の習慣を身につける場合があります。
こうした反応は、子どもの頃には自分を守るために必要だったものかもしれません。
しかし、大人になってからも同じ反応が続くと、自分自身を追い込んだり、家族との関係に影響したりする場合があります。
例えば、本当は子どもに自由に成長してほしい(WANT)と思っている親でも、子どもが失敗することに強い不安を感じ(FEEL)、その不安を解消しようとするあまり、「失敗させないように、親がきちんと管理しなければならない」(MUST)という思いが強くなる場合があります。
すると、子どものためを思っているにもかかわらず、子どもの行動を必要以上に制限してしまうことがあります。
このように、幼少期に身につけた心の習慣によって、本来の願い(WANT)とは異なる行動をとってしまう場合があります。
ただし、WANT・FEEL・MUSTは、心理カウンセラー寺井が心の働きを理解するために用いている視点であり、PTSDの診断や医学的な説明に代わるものではありません。
幼少期のトラウマによる連鎖を繰り返さないために
幼少期につらい経験をしたとしても、その経験が将来の子育てや家族関係を決定するわけではありません。
自分がどのような家庭環境で育ち、どのような場面で不安や怒りを感じやすいのかを理解することは、現在の行動を見直すきっかけになります。
例えば、子どもの失敗に強い不安を感じたとき、「子どもが失敗することの何が怖いのだろう」と、自分の気持ちに目を向けてみることができます。
そのうえで、子どもの行動を必要以上に制限するのではなく、失敗したときにも安心して相談できる関係を築くなど、これまでとは異なる関わり方を考えることができます。
ただし、トラウマに関連する強い反応がある場合には、無理に過去の体験を思い出したり、一人で解決しようとしたりする必要はありません。
必要に応じて専門的な支援を受けながら、安全な環境の中で少しずつ取り組むことも大切です。
幼少期の経験による影響を理解し、現在の心の反応や関わり方を見直していくことは、機能不全家族の連鎖を繰り返さないための大切な一歩になります。
理由④:「共依存」

機能不全家族が連鎖する背景には、家族の中で身につけた「共依存的な人間関係」が影響する場合があります。
共依存とは、相手の感情や問題、行動などに過度に関わり、自分自身の気持ちや生活を後回しにしてしまうような関係性を理解するために用いられる言葉です。
例えば、相手に嫌われることを恐れて、自分の気持ちを我慢し続けたり、相手の問題を自分が解決しなければならないと感じたりする場合があります。
こうした関係性は、親子関係だけでなく、夫婦関係や恋愛関係などにも見られることがあります。
ただし、相手を思いやることや、家族で助け合うこと自体が共依存なのではありません。
問題になるのは、相手との関係を維持するために、自分の気持ちや意思、生活などを過度に犠牲にしてしまう状態です。
親子関係の中で共依存的な心の習慣が身につく
子どもは、家庭の中で親との関わり方を通して、人間関係の築き方を学んでいきます。
例えば、親の機嫌が悪くなると家庭内の雰囲気も悪くなるような家庭では、子どもが親の顔色をうかがい、親を怒らせないように行動することがあります。
また、親が自分の悩みや不満を子どもに繰り返し打ち明ける家庭では、子どもが親の相談相手や精神的な支え役になる場合があります。
このように、本来は大人が担うべき感情面の役割を子どもが引き受ける状態は、「情緒的な親子の役割逆転」として理解されることがあります。
こうした家庭環境で育った子どもは、次のような心の習慣を身につける場合があります。
心の習慣の例
- 自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先する
- 相手が不機嫌になると、自分に原因があると感じる
- 相手の問題を自分が解決しなければならないと思う
- 人に頼ったり、自分の希望を伝えたりすることが苦手になる
- 相手に必要とされることで、自分の価値を感じようとする
こうした反応は、子どもの頃には家庭内の関係を保つために必要だったものかもしれません。
しかし、大人になってからも同じ心の習慣が続くと、夫婦関係や子育てに影響する場合があります。
共依存的な関係が夫婦関係や子育てに影響する
共依存的な心の習慣を身につけた人は、大人になってからも、相手の気持ちや行動に過度な責任を感じることがあります。
例えば、夫婦関係において、相手の問題をすべて自分が解決しようとしたり、相手の機嫌を損ねないために自分の気持ちを我慢し続けたりする場合があります。
また、相手を支えることが自分の役割だと考え、無理をしていても、その関係を見直すことが難しくなる場合があります。
こうした関係性が家庭の中で続くと、子どもも親の気持ちや家庭内の雰囲気に敏感になり、自分の気持ちを後回しにすることがあります。
その結果、親が子どもの頃に身につけた共依存的な人間関係のパターンが、次の世代の子どもにも影響する場合があります。
ただし、共依存的な傾向のある人同士が必ず結婚するわけでも、共依存的な関係がある家庭で必ず子どもに問題が生じるわけでもありません。
人間関係には、個人の経験だけでなく、現在の生活環境や相手との関係性など、さまざまな要因が関わっています。
心理カウンセラー寺井が注目する「WANT・FEEL・MUST」の影響
心理カウンセラー寺井は、共依存的な人間関係を理解する際にも、「WANT・FEEL・MUST」という3つの視点を大切にしています。
例えば、本当は自分の気持ちを大切にしながら、相手と対等な関係を築きたい(WANT)と思っていても、相手に嫌われたり、見捨てられたりすることに不安を感じる(FEEL)場合があります。
すると、その不安を解消しようとするあまり、「相手の期待に応えなければならない」「自分が相手を支えなければならない」(MUST)という思いが強くなることがあります。
その結果、本当は無理をしたくないと思っていても、自分の気持ちを我慢して、相手のために頑張り続けてしまう場合があります。
このように、相手との関係を失うことへの不安(FEEL)から、過度な義務感(MUST)が強くなり、本来の願い(WANT)を後回しにしてしまうことがあります。
ただし、WANT・FEEL・MUSTは、心理カウンセラー寺井が人の心を理解するために用いている視点であり、共依存を医学的に診断するための基準ではありません。
共依存的な関係の連鎖を繰り返さないために
共依存的な人間関係を見直すうえで大切なのは、自分と相手の気持ちや責任を区別することです。
例えば、相手が不機嫌になったとき、
- 相手を怒らせた自分が悪い
- 自分が何とかしなければならない
と考えることがあるかもしれません。
しかし、相手の気持ちを理解しようとすることと、相手の感情や行動のすべてに責任を負うことは、同じではありません。
また、相手を大切にすることと、自分の気持ちを我慢し続けることも、同じではありません。
自分が本当はどうしたいのか、どのような気持ちを抱いているのか、何をしなければならないと思い込んでいるのかを整理することで、これまでとは異なる関わり方を考えやすくなります。
自分の気持ちを大切にしながら、相手の気持ちも尊重する関係を築いていくことが、共依存的な関係の連鎖を見直すための大切な一歩になります。
なお、共依存的な人間関係については、アダルトチルドレンの特徴や、幼少期の家庭環境による影響とあわせて理解することも大切です。
まとめ:機能不全家族の連鎖は変えていける
機能不全家族が親から子へ、子から孫へと連鎖する背景には、幼少期の家庭環境で身につけた考え方や行動の仕方、感情への対処方法、人間関係の築き方などが関わっていると考えられます。
この記事では、機能不全家族が連鎖する理由として、次の4つを解説しました。
POINT
- 世代間連鎖
親から子へ、家庭の中で身につけた考え方や行動の仕方が受け継がれる - 禁止令・ドライバー
幼少期に身につけた心のルールが、大人になってからの子育てや家族関係に影響する - 幼少期のトラウマ
過去のつらい経験による心の反応が、現在の感情や行動に影響する - 共依存
家庭の中で身につけた共依存的な人間関係のパターンが、次の世代にも影響する
ただし、これらは機能不全家族の連鎖を理解するための視点であり、すべての家庭に同じように当てはまるわけではありません。
また、機能不全家族で育ったからといって、必ず自分も同じ問題を繰り返すわけではありません。
子どもの頃に身につけた心の習慣は、当時の家庭環境の中で、自分を守るために必要だったものかもしれません。
しかし、大人になった現在では、その心の習慣によって、自分自身を苦しめたり、大切な人との関係に悩んだりする場合があります。
心理カウンセラー寺井は、こうした生きづらさを理解する際に、
- 本当はどうしたいのか(WANT)
- どのように感じているのか(FEEL)
- どうしなければならないと思っているのか(MUST)
という視点を大切にしています。
自分がどのような心の習慣を身につけてきたのかを理解し、現在の気持ちや行動を見直していくことは、これまでとは異なる関わり方を選ぶための第一歩になります。
機能不全家族の連鎖は、過去の経験による影響を理解し、新しい関わり方を身につけていくことで、変えていける可能性があります。
自分の育った家庭環境を振り返りたい方へ
- 自分が育った家庭も、機能不全家族だったのだろうか
- 子どもの頃の家庭環境が、今の生きづらさに関係しているのだろうか
そのように感じている方は、まず自分の家庭環境を振り返ってみることも、自己理解のきっかけになります。
セルフチェック
「自分は機能不全家族で育ったのか?」について、65項目のチェックリストで子どもの頃の家庭環境や親子関係を振り返ることができます。
なお、このチェックリストは医学的・心理学的な診断を行うものではありません。
機能不全家族の原因や世代間連鎖について詳しく知りたい方へ
機能不全家族が生まれる原因や、親から子へ問題が受け継がれる仕組み、育った人への影響については、以下の記事で詳しく解説しています。
一人で抱え込まずに相談するという選択肢
子どもの頃の家庭環境が、大人になってからの人間関係や子育てに影響していると感じても、自分だけでその仕組みを理解することが難しい場合があります。
また、親との関係や過去の経験について、無理に思い出したり、すぐに答えを出したりする必要はありません。
心理カウンセリングでは、現在抱えている悩みや生きづらさを整理しながら、自分の気持ちや心の習慣を理解していくことができます。
カウンセリングで相談できる内容については、以下のガイドでご案内しています。
カウンセリングのご案内
機能不全家族について総合的に知りたい方へ
機能不全家族の意味合い・特徴・原因・影響・回復について、全体像を知りたい方は、以下の総合解説をご覧ください。
機能不全家族の背景にあるアダルトチルドレンの問題や、子育てへの影響について、さらに知りたい方は以下の記事一覧もご覧ください。
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