POINTアダルトチルドレンが感じる生きづらさは、①自己否定感・離人感、②愛着障害、③完璧主義、④承認欲求、⑤自己愛的防衛、⑥自己犠牲、などがあげられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「アダルトチルドレン」とは、子どもの頃、自分の存在を擁護してくれるはずの「親」や「家族」との間で何らかの「トラウマ(心的外傷)」を負い、大人になって「生きづらさ」を感じ悩み苦しんでいる人たちです。
「アダルトチルドレン」とは、本体であれば最も信頼できるはずの「親」や「家族」から理不尽に酷い仕打ちを受けてしまったわけですので、大人になって「人が怖い・人が信じられない」など「人間関係の悩み」を抱えやすくなります。
とはいえ、「アダルトチルドレンの生きづらさ」とは、生まれ持った「発達障害」や「病気」といったものではなく、あくまで、生まれた後、「親」や「家族」との人間関係で身に付けた「考え方の習慣」に過ぎません。
よって、「アダルトチルドレンの生きづらさ」は「習慣」である以上、「生活習慣の改善」や「食習慣の改善」と同じように、今から「新しい習慣」へと改善することは可能と言えます。
この記事は、アダルトチルドレンの生きづらさについて解説しています。
アダルトチルドレンの「生きづらさ」とは?
「アダルトチルドレン」とは、子どもの頃、親や家族との間で何らかの「トラウマ(心的外傷)」を負い、大人になって「人間関係の悩み」など「生きづらさ」を感じ悩み苦しんでいる人たちを意味します。
アダルト・チルドレン(Adult Children:以下AC)とは、子どものころに、家庭内トラウマ(心的外傷)によって傷つき、そしておとなになった人たちを指します。…(中略)…ACの概念は1970年代にアメリカで提唱され始めました。
引用元:アダルト・チルドレンってなに
また、アダルトチルドレンを生みだす家族を「機能不全家族」と呼び、機能不全家族を形成する親を「毒親」と呼ぶ場合があります。
よって、「アダルトチルドレンと生きづらさの関係」とは以下のようになります。
アダルトチルドレンと生きづらさの関係
- 子どもの頃の家庭が「機能不全家族」であったため、子どもでありながら日常的にストレスを感じ続けることになり、そのことが原因で、大人になっても「生きづらさ」を感じ続けている人を「アダルトチルドレン」と呼ぶ
- 子どもの頃、「毒親」から受けた子育ての影響で心に「トラウマ(心的外傷)」を負い、そのことが原因で、大人になっても「生きづらさ」を感じ続けている人を「アダルトチルドレン」と呼ぶ
それでは、以下に詳しく解説していきます。
生きづらさとは?
「生きづらさ」とは、以下のように、いわゆる「日常生活」を送っているだけなのに、生きていくことが困難に感じてしまう心理状態を意味します。
「生きづらさ」とは、生きていくことが困難であると感じること。または、そうさせている要因そのものを指す。同じような言葉である「生きにくさ」とは違い、生きることが「つらい」という感情もそのニュアンスに含まれる。引用元:「生きづらさ」とはいったいなにか?
このように、アダルトチルドレンとは、外面的には問題なく日常生活を送っているように見えても、内面的には「生きづらさ」を感じて悩み苦しんでいると言えます。
「アダルトチルドレンの生きづらさ」:梅岡幸子氏
「アダルトチルドレンの入門書」として知られている「生きづらさの正体はアダルトチルドレン」という本の中で、著者「梅岡幸子」氏は「アダルトチルドレンが抱える生きづらさ」として、以下のような症状をあげています。
アダルトチルドレンの生きづらさ
- 人間関係がうまくいかない
- 相手と親密になると怖くなり、仲良くなってもみずから関係を壊してしまう
- 言いたいことが言えず「いい人」を演じてしまう
- いじめの標的になりやすい
- 幸せな恋愛ができない
- ダメな人ばかりを好きになってしまう
- 愛されている自信がない
- 恋人に依存してしまう
- 完璧主義の呪いに苦しむ
- 食べ物や買い物・仕事への依存症
アダルトチルドレンが感じる生きづらさ「6つの特徴とその原因」
「アダルトチルドレンの生きづらさ」は、前述の通り、アダルトチルドレンの研究者によってそれぞれの著書の中で示されています。
これら、アダルトチルドレン研究の専門家たちが示す「アダルトチルドレンの生きづらさ」を心理学に沿ってさらに分析すると、以下の「6つの特徴とその原因」」が見えてきます。
POINT
- 「自己否定感・離人感」
- 「愛着障害」
- 「完璧主義」
- 「承認欲求」
- 「自己愛的防衛」
- 「自己犠牲」
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①自己否定感・離人感
子どもの頃、暴言・暴力・ネグレクト・過干渉・過保護などの「児童虐待」を親から受けた経験を持つ場合、子どもは「自分が嫌い」「自分はダメだ」など、自分という存在を否定的に感じやすくなり、大人になったとき「自己否定感」や「離人感」を感じやすくなります。
自己否定とは自分が自分のことを「嫌だ」と感じたり、自由に行動したり楽しんだりすることを自分自身で否定してしまうことを指します。多くの場合、自己否定の感情は低い自尊心やトラウマ、罪悪感などに起因します。
離人感の症状は、自己の身体、感情、思考、感覚などから自分の主体性が失われて、自分自身を非現実的に感じる体験とされている。
このように、アダルトチルドレンが「自己否定感」や「離人感」などの生きづらさを感じやすくなる原因は、子どもの頃、自分の感情・意見・存在・主張を親から否定されることが多かったためと考えられています。
②愛着障害
子どもの頃、家族(主に母親)が愛情を示してくれなかった場合、子どもは「人を過度に怖がる」「人を過度に疑う」などの症状を感じやすくなり、大人になったとき、友達・恋愛・結婚・仕事など他人との信頼関係がうまく築けず、人間関係において「愛着障害」を抱えやすくなります。
愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。
引用元:愛着障害(アタッチメント障害)
このように、アダルトチルドレンが「愛着障害」という生きづらさを感じやすくなる原因は、子どもの頃、母親との間で愛着が形成されなかったことにより「人への基本的信頼感」に問題が生じているためと考えられています。
基本的信頼感とは、他人からありのままを受け入れてもらえる安心感と、「自分は他人に受け入れてもらえる価値のある人間だ」と思える自分への信頼感のことで、他人と情緒的で深い人間関係を築くための基礎になるもの。乳児期のうちに、親からたくさんお世話してもらうことで、基本的信頼感が育まれる。
引用元:人々の沈黙
③完璧主義
「テストで100点を取ったらゲームを買ってあげる」「いい子にしていなかったから友達と遊んではいえません」など、子どもの頃から「親の期待」を裏切らないよう「言葉掛け」をされてきた場合、子どもは「親の評価・他人の評価」に執着しやすくなり、大人になったとき「責任感が強すぎる・妥協が許せない・理想が高すぎる」など「完璧主義」に陥りやすくなります。
完璧主義の人は、アウトプットの質の高さや責任感のある態度から、学校やバイト先で信頼を得やすいタイプです。一方で、何事にも全力で頑張りすぎるため、人一倍疲れやすいという特徴もあります。
このように、アダルトチルドレンが「完璧主義」という生きづらさを感じやすくなる原因は、「もっと○○しなさい!」「○○してはダメ!」など、子どもの頃、親から「条件付きの愛」ばかりを受けていたためと考えられています。
自分への見返りが保証されなければ愛せない。自分が望んだ条件を満たせないのであれば愛せない。それが「条件付きの愛」です。
④承認欲求
「よく頑張ったね…」「ありがとうね…」など、子どもの頃、親に認められたり褒められた経験が少なかった場合、子どもは「承認欲求」が満たされないままとなり、大人になったとき、子どもの頃、親に満たしてもらえなかった「承認欲求」を、友達・恋人・夫・妻・子ども・上司・同僚・部下・世間の人々など、親以外の他者に満たさせようとします。
承認欲求が高い人は、常に誰かに自分を褒めて欲しい、自分に注目して認めて欲しいという意識が強いという特徴を持っています。そのため自慢話をすることが多く、ステータスにこだわる人も見られ、 承認欲求が強い人の中には、常に自分の話題が中心で他人の話には耳を傾けない人もいます。
このように、アダルトチルドレンが「満たされない承認欲求」という生きづらさを感じやすくなる原因は、「親に褒めてもらえた」「親に頭をなででもらえた」など、子どもの頃、親から「ストローク(心の栄養)」を十分に与えてもらえなかったためと考えられています。
交流分析の創始者であるエリック・バーンは、人の存在や価値を認める刺激(言動や働きかけ)のことをストロークと名付けました。ストロークは「心の栄養」とも呼ばれ、人が生存するためには不可欠なものとされています。
⑤自己愛的防衛
「親の機嫌を取らなければならなかった」「親の愚痴を聞かなければならなかった」など、子どもの頃、「自己愛が強い親」に育てられた場合、子どもは親と同じように「自己愛」が強くなり、大人になったとき「自己陶酔・好き嫌いが激しい・非を認めない・言い訳が多い」など「自己愛的防衛」の傾向が強くなります。
「自己愛」とは、自分自身への独りよがりな陶酔だ。自分のことばかり気にする人や、好き嫌いの激しい人、自分の非をなかなか認めようとしない人、言い訳ばかりする人も、ある意味で自己愛が強いと言える。
このように、アダルトチルドレンが「自己愛的防衛」という生きづらさを感じやすくなる原因は、「子どもが親の欲求を満たすような躾(しつけ)や養育」をされてきたことにより、子どもの頃から「親子の役割逆転」に巻き込まれてきたためと考えられています。
「親子の役割逆転」とは通常の親子関係とは真逆の役割が成立している状態です。親は子供の甘えの欲求を満たしてあげることが自然なことですが、「親子の役割逆転」では親が子供に甘え、子供が親の欲求を満たす役割を担わされています。
⑥自己犠牲
子どもの頃、当たり前のように「自己犠牲」をする母親、当たり前のように「自己犠牲」を要求する父親に育てられた場合、子どもは「自己犠牲をしないことに罪悪感」を感じやすくなり、大人になったとき、親・子ども・恋人・夫・妻・友人・知人のために「自己犠牲」を繰り返しやすくなります。
「自己犠牲」は、ある目的や他者のために自分の時間や労力を捧げることです。
このように、アダルトチルドレンが「自己犠牲」という生きづらさを感じやすくなる原因は、「共依存を求める父親」と「共依存に応じる母親」に育てられたことにより、子どもの頃から「親子共依存」に巻き込まれてきたためと考えられています。
共依存とは、恋人や親など特定の人に合わせて自分の言動を変えてしまい、互いに依存し合う関係のこと。…(中略)…共依存の親子は意外と多く、親に縛られて自由に生きられない息苦しさを感じている人は少なくありません。「親の圧力が強い」「命令される」といった状況も、共依存の一歩手前です。
アダルトチルドレンの「生きづらさの克服」
「アダルトチルドレンの生きづらさ」とは、「発達障害」や「病気」といったものではなく、「精神医学」や「心理学」などに学術的な根拠を持つ「診断名」でもありません。
前述の通り「アダルトチルドレンの生きづらさ」とは、「幼少期の家庭環境の影響(機能不全家族で育った影響)」「幼少期に親から受けた養育の影響(毒親に育てられた影響)」によるものです。
裏を返せば、「『アダルトチルドレンの生きづらさ』とは、生まれ持った『遺伝』ではなく、あくまで、生まれた後、親との人間関係で身に付けた『考え方の習慣』に過ぎない」と言い換えることができます。
よって、「『アダルトチルドレンの生きづらさ』とは『習慣』である以上、『生活習慣』や『社会的習慣』と同じように、今から『新しい習慣』へと改善することは可能」です。
「心理カウンセリング・インナーチャイルドセラピー」が有効
「アダルトチルドレンの生きづらさ」を克服するためには、「アダルトチルドレン(AC)概念」の生みの親である「クラウディア・ブラック」が示した「アダルトチルドレン、回復の4ステップ」を遵守する必要があり、そのためには「心理カウンセリング・インナーチャイルドセラピー」を用いた「アダルトチルドレンの回復過程」が非常に有効であると言われています。
「心理カウンセリング」が有効である理由は、アダルトチルドレンの原因が「親との人間関係」にある以上、「心理カウンセラーという人間との信頼関係」を経験することで、人間関係への苦手意識が和らぎ自信が生まれるからだと考えられてます。
同じく、「インナーチャイルドセラピー」が有効である理由は、アダルトチルドレンの原因が「子どもの頃に負った『トラウマ(心的外傷)』」にある以上、子どもの頃に負った「トラウマ(心的外傷)」を「インナーチャイルド」というイメージに置き換える工夫をすることで、「防衛機制」を和らげることができるからだと考えられています。
「アダルトチルドレンの克服経験を持つ心理カウンセラー」に相談する
また、本記事を書いている「心理カウンセラー寺井啓二」は、今はアダルトチルドレン克服の専門家ですが、かつては私自身がアダルトチルドレンであり「アダルトチルドレンの克服経験を持つ心理カウンセラー」です。
なので、「アダルトチルドレンの生きづらさ」を克服していくために必要な手立てを実体験からアドバイスさせて頂くことができますし、「アダルトチルドレン克服のノウハウ」を誰よりも知っているつもりです。
このように、「アダルトチルドレンの生きづらさ」を克服するために「アダルトチルドレンの克服経験を持つ心理カウンセラーに相談をする」ことは、重要な手立てのひとつと言えます。
なお、「アダルトチルドレンの克服」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「アダルトチルドレンが感じる生きづらさの特徴」は、以下の点があげられます。
- POINT「自分はダメ・自分がわからない」など「自己否定感・離人感」を感じやすい
- 友達・恋愛・結婚・仕事など「他人との信頼関係・愛着関係」がうまく築けない
- 「責任感が強すぎる・妥協が許せない・理想が高すぎる」など「完璧主義」に陥りやすい
- 「自分を褒めてほしい・注目してほしい・認めてほしい」など「承認欲求」が強まりやすい
- 「自己陶酔・好き嫌いが激しい・非を認めない・言い訳が多い」など「自己愛的防衛」に陥りやすい
- 親・子ども・恋人・夫・妻・友人・知人のために「自己犠牲」を繰り返しやすい
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以上、「アダルトチルドレンが感じる生きづらさ『6つの特徴とその原因』」という記事でした。