POINTヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴は、「周囲の期待に応えるために積極的に頑張り続ける」反面、「弱い自分を優秀さという仮面で懸命に隠し続ける」という点が最大の特徴です。
心理カウンセラーの寺井です。
「アダルトチルドレン」の「ヒーロータイプ」は「英雄」と呼ばれ、「機能不全家族」のなかで「親や家族の期待」に応えるために「勉強・スポーツ・習い事」を頑張ったり、「頼りない親」に代わって「家族の問題」を解決したり、「家族のリーダー(英雄的存在)」となって家族を支える子どもを指します。
ですので、ヒーロータイプは大人になって、「周囲の期待に応えることができている(周囲に期待されている)ときには安心を感じるが、周囲の期待に応えることができていない(周囲に期待されていない)ときには不安を感じる」という心理的な特徴を持つようになると考えられています。
ちなみに、この記事は「アダルトチルドレン:ヒーロー(英雄役)の『心理的な特徴』」についての解説です。
なお、「アダルトチルドレン:ヒーロー(英雄役)の『恋愛傾向』」については、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、アダルトチルドレン:ヒーロー(英雄役)の「心理的な特徴」について解説していきます。
アダルトチルドレン:ヒーロー(英雄役)の「心理的な特徴」
ヒーロータイプは、子どもの頃から「親や家族の期待」に応えるために頑張り続けてきたため、大人になっても「周囲の期待に応えるために積極的に頑張り続ける」という点が最大の特徴です。
また、ヒーロータイプは「寂しさ、悲しさ、孤独、怖さ、不安、怒り、イライラ、緊張」など「弱い自分を隠そうとする」という心理的な特徴があるため、大人になってからも「弱い自分を優秀さという仮面で懸命に隠し続ける」という特徴があります。
なお、「ヒーロータイプの心理的な特徴」は、主に以下の「9つ」があげられます。
POINT
- 努力家
- 完璧主義
- 強がり
- 責任感・正義感が強い
- 白黒思考
- 失敗や挫折を恐れる
- 失敗や挫折に弱い
- 承認欲求が強い
- 他者に厳しい・他者を見下す
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①努力家
ヒーロータイプは「機能不全家族で育った影響」により、まるで「リーダー・キャプテン・家長・保護者」のような「役割」を担いながら大人へと成長していきます。
ですので、ヒーロータイプは「スーパーチャイルド」とも呼ばれ、子どもの頃から「勉強で優秀な成績をおさめる」、「スポーツ」で優秀な成績をおさめる、「楽器・美術などの習い事」で優秀な成績をおさめるなど、「周囲の期待に応えるために頑張り続ける」ことが当然となってしまっており、子どもの頃から「親や家族の期待を一身に背負い続けてきた人」と言い換えることができます。
スーパーチャイルドとして育った子供は、家庭に内にある問題を感じて自分だけは親に迷惑を掛けないように優等生を演じていて、大人になってからもその癖が取れずに親に対しても自分の本音が言いずらい、職場でも優等生を演じて生き辛いという悩みを抱えています。
このように、ヒーロータイプは子どもの頃から親や家族の期待を一身に背負い続けてきた結果、大人になって「周囲の期待に応えることができている自分」には「存在価値」を感じるが、「周囲の期待に応えることができていない自分」には「存在価値」を感じられなくなると考えられており、ヒーロータイプは「自分の存在価値」を感じたいがために、大人になってからも「仕事・子育て・趣味・習い事・サークル活動・PTA活動・地域活動・社会活動」など「さまざまな人間関係において、周囲の期待に応えることができるよう努力を惜しまないようになる」と考えられています。
なお、ヒーロータイプのように「周囲から期待・評価されることで自分の存在価値を感じる」あるいは「周囲から期待・評価されていないと自分の存在価値を感じられない」という心理状態を「共依存」と言います。
共依存とは特定の相手との関係に依存しすぎる状態のこと。恋愛関係、友人関係、親子関係など人間関係全般に現れます。相手との関係性において自分の価値を見出すことになるため、自分自身を見失ってしまったり、危険な状況を招いたりすることも。
反対に言えば、ヒーロータイプは「周囲から期待・評価されている」ときには「精神的な安定」を感じるが、「周囲から期待・評価されていない」ときには「精神的に不安定」になると言い換えることができます。
このように、ヒーロータイプにとって「周囲から期待・評価されているか?されていないか?」は、自らの「存在価値」に関わる重要なことであるため、ヒーロータイプは「周囲から期待・評価されるチャンス」を逃さないよう、常日頃から「自分に厳しくあらゆる努力を惜しまない」という心理的な特徴があります。
以上のことから、「努力家である」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
②完璧主義
ヒーロータイプは、子どもの頃から「家族の期待に応えるという条件を満たすことで自分の存在価値を認めてもらえる」という「親子の関係性」のなかで育ってきたため、大人になっても、「周囲の期待に応えることができている自分には価値があるが、周囲の期待に応えることができていない自分には価値がない」という「強い価値観」を身に付けていると考えられています。
なお、「家族の期待に応えることで親に愛してもらえるという条件」あるいは「家族の期待に応えられないと親に愛してもらえないという条件」を、子どもに思い込ませるような「親の愛情表現」を「条件付きの愛情」と言います。
条件付きの愛とは、すなわち「◯◯する子は愛してあげる」「◯◯できない子は愛してあげない」というコントロールです。
このように、ヒーロータイプは「周囲から期待・評価をされていなければ、自分の存在価値が無くなってしまう!」という「強い危機感」を常に感じているため、自らに「非常に高い目標」を設定したり、少しのミスも許せないため「事前に綿密な計画」や「事前に万全な準備」を整えようとしたり、決められた約束を絶対に守るため「時間厳守」を徹底するなど、周囲の評価を気にするあまり、さまざまな点において「完璧」を目指して「努力」をします。
なお、ヒーロータイプのように「完璧を目指して努力をする心理的な特徴」を「完璧主義」と言います。
完璧主義とは、必要以上に高い目標を設定し、万事が整った状態を目指し努力する特徴や性格を指します。自分自身に厳しく、また他人の評価を気にする傾向にあり、定められた時間内で完璧を目指そうとします。ミスや失敗を許すことができず、頑張り過ぎてしまうので精神的なストレスをため込みがちです。
また、ヒーロータイプのような「完璧主義の人の特徴」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 他人の評価が気になる
- 事前の計画や準備を周到にする
- 無駄が嫌い、時間厳守を徹底する
- 責任感が強い、妥協は嫌い
- 上昇志向が強い、理想が高い
- 自分にも他人にも厳しい
- 自分の思い通りにいかないとイライラする
- 失敗が許せない、失敗が怖い
- 負けを許せない、負けを認められない
- 逃げることを許せない、逃げることを認められない
- 常に何かと戦ってる、常に勝つことばかり求めている
- 結果がすべて、いくら努力しても結果が出ないものは無意味と感じる
- 完璧な自分に満足感を感じる
とはいえ、「完璧主義」とは決して悪いものではなく、さまざまな点において「質の高い成果」を生み出すことができたり、「ミスが許されない作業」を丁寧に行うことができるなど、「周囲からの信頼を得られやすい」というメリットがあります。
このように、「完璧主義」とは「質の高さ・ミスの少なさ」を追求する心理状態と言えます。
ただ、ヒーロータイプは「周囲の期待に応えることができていない自分は存在価値がない!」という「危機感」が強いため、「質の高さ・ミスの少なさ」を極端に追求しすぎてしまう傾向があり、その影響で他者に頼ることや他者に任せることができず、「すべてを自分1人で進めようとする」あるいは「すべての負担を自分1人で抱え込んでしまう」場合があります。
反対に言えば、すべての負担を自分1人で抱え込んでしまう「完璧主義」とは、自らに「強い精神的負担(ストレス)」を掛け続けることにもなりますので、場合によっては「うつ病」など「精神疾患」に至ってしまう場合もあります。
以上のことから、「完璧主義である」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
③強がり
このように、ヒーロータイプは「優秀」で「失敗」が少ないため、表面的には「優等生」や「エリート」に映りますが、内面には「失敗が許されない!というプレッシャーに押しつぶされそうな不安」や「周囲の期待に応え続けなけれなならない!という責任感に煽り立てられる焦り」など「弱い自分」をひた隠している場合が多いです。
ですが、ヒーロータイプは「『弱い自分』を周囲に知られてしまっては、周囲から期待されなくなってしまい、周囲に見放され、自分の存在価値が無くなってしまう!」という「強い危機感」を持っているため、「弱い自分を隠すために強い自分を演じる」という傾向があり、「弱い自分」を隠そうとすればするほど「他者に助けを求めなくなる」あるいは「他者に弱音を吐かなくなる」という心理的な特徴があります。
なお、ヒーロータイプのように「弱い自分を隠すために強い自分を演じる」ことを「強がり」と言います。
強がりの心理には、弱い自分をさらけ出したくない気持ちが表現されています。…(中略)…誰が見ても恥ずかしくない自分になるために、弱さを強さに変えていきたいと、理想の自分を演じています。
このように、ヒーロータイプは「周囲の人たちに見せる姿(強い自分)」と「内面の本心(弱い自分)」に「大きな矛盾」を抱えている場合が多く、「寂しさ、悲しさ、孤独、怖さ、不安、怒り、イライラ、緊張」などの「ネガティブ感情(ストレス)」を無意識のうちに心に溜め込んでいると考えられています。
ですが、人の心とは「ストレスを無限に溜め込み続ける」ことができないため、いつかは「ストレスが限界」に達することになります。
そして「ストレスが限界」に達してしまった場合、ヒーロータイプは急にやる気を失ってしまったり、急に体調を大きく崩してしまうなど「燃え尽き症候群」に陥ってしまう場合があります。
燃え尽き症候群とは、物事に意欲的に取り組んでいた人が、燃え尽きたようにやる気や意欲をなくしてしまう症状のことです。プレッシャーなどのストレスを継続的に感じたり、体を酷使したりするなど心身ともに無理をした結果、極度の疲労を抱えてしまうことが原因と考えられており、うつ病の一種とも言われています。
このように、ヒーロータイプは表面的には「強い人」に見える反面、内面には「寂しさ、悲しさ、孤独、怖さ、不安、怒り、イライラ、緊張」など「弱い自分」を隠し続けており、内心は世間の評価を気にして常にビクビクと怯えているという心理的な特徴があります。
以上のことから、「強がりである」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
④責任感・正義感が強い
ヒーロータイプは「周囲の期待に応えることができていない自分は存在価値がない!」という「危機感」が強いため、「一度やるときめたことは決して諦めずにやり抜こうとする」という点が特徴的であり、あらゆる面において「責任感が強い」という特徴があります。
このように、ヒーロータイプは「責任感」が人一倍強く、他者であれば途中で諦めてしまうような困難な状況に陥っても決して諦めずに頑張り続けるという特徴があり、このようなヒーロータイプの諦めない姿勢は「周囲に勇気を与える」場合が多く、「さまざまな困難を乗り切るための原動力」となる場合が多いです。
反対に言えば、ヒーロータイプにとって「すぐに諦めようとする人」とは、「自分(ヒーロータイプ)の存在価値を下げようとする人」に感じられるため、ヒーロータイプは「すぐに諦めようとする人」を「懸命に叱咤する」など、人間関係において「強い正義感を発揮する」という特徴があります。
なお、「ヒーロータイプが感じる責任感や正義感」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 周囲からの期待には絶対に応えるべき!
- すぐに諦めようとする人はもっと努力をするべき!
- 一度やると決めたことは諦めずにやり抜くべき!
- チームワークを乱す行為は絶対にやめるべき!
- チームワークを乱す人は非難されるべき!
また、ヒーロータイプのように「○○すべき!」を優先しがちな思考を「べき思考(MUST思考)」と言います。
このMUST思考は、自分で勝手に、あらゆる物事に対して「~しなければならない・~すべき」と思い込み、様々な世間で「正」「成功」「勝ち組」と言われるものにしたがって、自分の行動を決めている状態。いわばMUSTは「理性」であり、その反対にあるのはWANT「本能・感情」。MUSTは頭で考えるものだとすれば、WANTは心で感じるものです。
このように、ヒーロータイプは「責任感」や「正義感」が強いため、そのぶん「本音・本心・気持ち」など「感情(WANT)」よりも、「正しさ・成功・勝ち」など「理性(MUST)」を優先しがちという傾向があります。
以上のことから、「責任感・正義感が強い」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑤白黒思考
ヒーロータイプは「周囲から期待・評価をされていなければ、自分の存在価値が無くなってしまう!」という「強い危機感」を常に感じているため、「家庭・職場・学校」などで「周囲の期待に応えよう!」と懸命に努力をします。
ですが、ヒーロータイプがいくら懸命に努力をかさねたとしても、さまざまな理由で「周囲の期待に応えられない」場合があります。
そうすると、ヒーロータイプは周囲の期待に応えることができない原因が「自分の努力不足」にあると思い込み、「自分は努力が足りない!」「自分はもっと努力をするべきだ!」など、自分を厳しく追い込んでしまうという特徴があります。
反対に、ヒーロータイプは周囲の期待に応えることができない原因が「他者の努力不足」にあると思い込んでしまう場合もあり、その場合、「あなたは努力が足りない!」「あなたはもっと努力すべきだ!」など、他者(配偶者・子ども・親・兄弟姉妹・上司・同僚・部下・同級生・チームメイト・友人など)を厳しく追い込んでしまう場合があります、
なお、ヒーロータイプのように、自分に対しても他者に対しても「妥協・曖昧」が許せないほどに「べき思考(MUST思考)」が強まっている思考を「白黒思考」と言います。
白黒思考とは、簡単に言うと何でもかんでも「白」か「黒」に分けてしまう、「グレー」がない思考のことです。極端に「良い/悪い」「主治医は良い人/主治医は悪い人」「私は良い子/私は悪い子」と分けてしまい、あいだがありません。
また、「白黒思考」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 物ごとに対する思考
「良い/悪い、必要/不必要、やる/やらない、できる/できない」にはっきり分ける - 他者に対する思考
「良い人/悪い人、味方/敵、好きな人/嫌いな人、できる人/できない人」にはっきり分ける - 子どもに対する思考
「良い子/悪い子、かわいい子/かわいくない子、できる子/できない子」にはっきり分ける - 結果に対する思考
「OK/NG、成功/失敗、勝ち/負け、意味がある/意味がない」にはっきり分ける
このように、ヒーロータイプの「周囲の期待に応えようとする姿勢」は「長所」である反面、「白黒思考」という「極端な思考」に陥いりやすくなるため「短所」にもなり得ると言えます。
以上のことから、「白黒思考に陥りやすい」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
なお、「白黒思考」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
⑥失敗や挫折を恐れる
このように、ヒーロータイプは「周囲の期待に何としても応えよう!」と懸命に努力をする傾向があり、「一度やるときめたことは決して諦めずにやり抜こうとする」という「諦めない姿勢」が特徴的です。
反対に言えば、ヒーロータイプは「周囲の期待に応えられないことを極端に恐れている」と言い換えることができ、ヒーロータイプはとって「周囲の期待に応えられない」ということは、「自分の存在価値が無くなり、周囲から見捨てられてしまう」ことを意味すると言えます。
このように、ヒーロータイプは「諦めない姿勢」の内面に「失敗や挫折への恐れ」を隠している場合が多いです。
なお、「自分の存在価値が無くなることへの強い恐れの感情」や「周囲から見捨てられてしまうことへの強い恐れの感情」を「見捨てられ不安」と言います。
【見捨てられ不安とは?】見捨てられること、自分から人が離れてしまうことに強い不安を感じます。見捨てられたくない相手は、恋愛相手、友人、親、職場の人間などで、人から嫌われたくないため、様々な防衛行動を起こします。
また、「見捨てられ不安」とは「何としても見捨てられないようにするための強い不安」とも言えますし、「見捨てられること・孤独になることを何としても避けようとする強い警戒心」とも言えます。
ですので、人は「見捨てられ不安」を感じると「強い精神的ストレス」に襲われるため居てもたってもいられなくなり、「見捨てられ不安」を和らげるために、衝動的にさまざまな「防御行動」をとるという特徴があります。
このように、ヒーロータイプは「見捨てられ不安(失敗や挫折への恐れ)を和らげるための防御行動」として、「周囲の期待に何としても応えようとする」と考えられています。
以上のことから、「失敗や挫折を恐れる」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑦失敗や挫折に弱い
ヒーロータイプは、子どもの頃から「見捨てられ不安(失敗や挫折への恐れ)」を和らげるための「防御行動」として、「周囲の期待に何としても応え続ける」ようになり、「周囲の期待に何としても応え続ける」ことで「自分の存在価値を守ろうとする」と考えられています。
反対に言えば、子どもの頃から「周囲の期待に何としても応え続ける」ことで「自分の存在価値」を守ってきたヒーロータイプは、「失敗や挫折」をほとんど経験しないまま大人へと成長していくと言えます。
このように、ヒーロータイプは「優秀さ」と「諦めない姿勢」によって、子どもの頃から「成功体験」は多く経験している反面、「挫折体験」を殆ど経験していないため、大人になってから「失敗や挫折に対するストレス耐性が低い」という特徴を持つと考えられています。
ストレス耐性の低い人の特徴:真面目な人は責任感が強く、何事もきちんと取り組み、コツコツと実績を積み上げることができます。しかし度を超えた生真面目な人は責任感を必要以上に溜め込み、小さなミスも許せなくなります。…(中略)…仕事上の小さな失敗を、いつまでも悩み続けてほかの仕事が手につかなかったり、一日中そのことを悔やんでいたりします。…(中略)…ひとつの失敗だけでなく、過去の出来事全般を悔やみ、自信まで無くしてしまいます。
このように、ヒーロータイプは「成功」には慣れている反面、「失敗」には慣れていない場合が多いため、大人になって「失敗」を経験したとき、「失敗した自分を許せない」という心理状態に陥りやすいと考えられています。
また、ヒーロータイプのなかには、大人になってから初めて「失敗や挫折」を経験する場合も多く、そうすると「失敗や挫折に対するストレス耐性」が全く備わっていないため、一度の「失敗や挫折」で「心のバランス」を大きく崩してしまう場合があります。
なお、ヒーロータイプが初めて「失敗や挫折」を経験したときに感じる「心の症状」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「小さな失敗」をしただけで、突然、気持ちがひどく落ち込んでしまう
- 「失敗した自分」を許せず、「自分の人生は終わりだ」「自分は生きる価値がない」など自分を責める
- 「小さな失敗」を受け入れられず、「あのとき○○しておけばよかった…」など「後悔」が続き「挫折」から立ち直ることができない
- 「自分の非」を認められず、「あの人が悪い!」と他者に責任転嫁したり当たり散らす
- 「周囲の助け」を受け入れられず、「周囲の助け」を求められず、塞ぎこみ孤立する
このように、ヒーロータイプは「優秀」である反面、「プライドが高い」ため「失敗や挫折に弱い」という特徴があり、「小さな失敗」をきっかけに「心のバランスを大きく崩してしまう」場合があります。
場合によっては、たった1度の「小さな失敗」で「自暴自棄」に陥ってしまい、その後の人生が大きく変わってしまう場合すらあります。
以上のことから、「失敗や挫折に弱い」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑧承認欲求が強い
ヒーロータイプは、子どもの頃から「親や家族の期待」に応え続けることに「自分の存在価値」を感じながら大人へと成長していきます。
ですので、ヒーロータイプは大人になってからも「親子関係・家族関係・友人関係・夫婦関係・職場関係」など、あらゆる人間関係のなかで「周囲に期待される(必要とされる)」こと、そして「周囲の期待に応えて認められたり褒められる」ことに「生きがい」を感じるようになると考えられています。
なお、ヒーロータイプのように「必要とされたい!褒められたい!認められたい!」と感じる気持ちを「承認欲求」と言います。
承認欲求とは「自分を見てほしい」「話を聞いてほしい」「誰かに褒めてほしい」といった「他者から認められたい」という欲求です。誰もが持っている自然な欲求ではあるものの、時には自分自身を苦しめたり、周囲の人を不快な気持ちにさせてしまったりと、強すぎる承認欲求には良い影響があるとはいいがたいものもあります。
このように、ヒーロータイプにとって「承認欲求を満たす」ことは「精神的な安定」を得るために「必要不可欠」なことであると言えます。
ですので、ヒーロータイプは「精神的な安定」を維持しようとすればするほど「承認欲求が強くなる」という特徴があり、ヒーロータイプが「頑張る理由」や「諦めない理由」とは、「自分の夢や希望を実現する(自己実現の)ための行動」ではなく、「他者の評価を得る(承認欲求を満たす)ための行動」である場合が多いと言えます。
以上のことから、「承認欲求が強い」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑨他者に厳しい・他者を見下す
ヒーロータイプは、子どもの頃から「失敗や挫折」をほとんど経験しないまま大人へと成長したため、「失敗や挫折をする人の気持ちが理解できない」という傾向があり、「自分にできることは他者にもできるはずだ!」という「強い思い込み」を持っているという特徴があります。
そのため、ヒーロータイプは他者に対して無意識に「自分と同程度の能力」や「自分と同程度の努力」を求めてしまうという傾向があり、その影響で無意識のうちに「他者に厳しくなってしまう」という特徴があります。
なお、「ヒーロータイプの他者への厳しさ」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 失敗や挫折をする人を見下す
- 周囲に対して「努力・能力・結果」を厳しく求める
- 周囲に厳しすぎて「挫折者」を出す
- 他者に冷たい
- 他者の言い訳を許さない
- ネガティブな発言をする人にイライラする
- 他者にしつこく説教をしてしまう
- 思い通りに進まないとキレる
このような「ヒーロータイプの厳しさ」は、他者の成長を促すための「愛のムチ」という意味合いが含まれています。
ですが、ヒーロータイプは「他者より優れている(優越感)を感じる」ことで「承認欲求」を満たそうとするという傾向があるため、場合によっては、「立場の弱い他者」に対して「モラハラ・パワハラ・ヒステリック」を繰り返すことで「自分の優位性(優越感)」を感じようとする場合があります。
なお、自分が相手より優位にあることをアピールする行為を「マウンティング(マウントをとる)」と言います。
「マウントをとる」とは、自分が相手より優位にあるとアピールする行為。自分のステータスや持ち物を自慢したり、他人を見下したりすることを指します。「マウンティング」も同じ意味です。もとは動物の行動を表す言葉ですが、人間のコミュニケーションにも使われるようになりました。
このように、ヒーロータイプは「失敗や挫折をする人の気持ちが理解できない」ために「他者に厳しい接し方」をしたり、「優越感を感じたい」ために「他者を見下す(マウンティングする)」という特徴があります。
以上のことから、「他者に厳しい・他者を見下す」という点は、「アダルトチルドレン:ヒーロータイプ(英雄役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
ちなみに、「マウンティング(マウントをとる)」という点は、「回避依存症:独裁者タイプ」の特徴と一致します。
なお、「回避依存症:独裁者タイプ」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
アダルトチルドレン:ヒーロー(英雄役)の「人間関係の特徴」
ヒーロータイプは、子どもの頃から「親や家族の期待に応え続ける」という「役割」をこなしてきたため、大人になってからも、人間関係において「周囲の期待に応えるために積極的に頑張り続ける」という点が最大の特徴です。
反対に言えば、ヒーロータイプは「周囲の期待に応えるために頑張り続けるぶんだけ、自らの心身のケアが疎かになりやすい」と言えますし、「周囲の期待に応えるために頑張り続けるぶんだけ、周囲に感謝・信頼されやすい」とも言えます。
なお、「ヒーロータイプの人間関係の特徴」は、主に以下の「8つ」があげられます。
POINT
- 周囲から期待される・頼られる
- 仕事に対する責任感が強い
- 独りよがりになる
- チームワークが苦手
- ワーカホリック(仕事中毒)になりやすい
- 家庭に問題を抱えやすい
- 自分の理想を子どもに押し付ける
- 依存心が強い人と共依存になりやすい
続きは、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「心理的な特徴」
アダルトチルドレンが、子どもの頃に身に付けた「機能不全家族での役割」を、アメリカの心理療法家「ウェイン・クリッツバーグ」は「アダルトチルドレンタイプ」としてまとめました。
そして、「ヒーロータイプ(英雄役)」とは、「ウェイン・クリッツバーグ」がまとめた「アダルトチルドレンタイプ(機能不全家族での役割)」のひとつにあたります。
なお、「ヒーロータイプ(英雄役)」以外の「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「心理的な特徴」については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「アダルトチルドレン:ヒーロー(英雄役)の心理的な特徴」としては、以下の点があげられます。
- POINT「親や家族の期待を一身に背負い続けてきた影響」で、努力家になる
- 「条件付きの愛情で育てられた影響」で、完璧主義になる
- 「弱い自分を隠そうとする」あまり、強がりになる
- 「一度やるときめたことは決して諦めずにやり抜こうとする」など、責任感・正義感が強い
- 「周囲の期待に応えようとする」あまり、白黒思考に陥る
- 「見捨てられ不安の影響」により、失敗や挫折を極端に恐れる
- 「挫折体験を殆ど経験していない」ため、失敗や挫折に極端に弱い
- 「精神的な安定」を得ようとすればするほど、承認欲求が強くなる
- 「自分の優位性(優越感)」を感じようとするあまり、他者に厳しい・他者を見下す
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
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以上、「アダルトチルドレン(AC)ヒーロー(英雄役)の『心理的な特徴』」という記事でした。