POINT毒親から自分を解放するカウンセリングとは、アダルチルドレンの克服を意味します。
心理カウンセラーの寺井です。
毒親育ちの方が毒親から自分を解放する方法として、カウンセリングはとても有効であると言われています。
また、カウンセリングで毒親から自分を解放する場合、「交流分析」や「ゲシュタルト療法」などの心理学や、「アダルトチルドレン」や「インナーチャイルド」などの考え方を用いることで、より一層、直感的でわかりやすい解決が可能となります。
この記事は、毒親から自分を解放するカウンセリングの考え方について解説しています。
毒親から自分を解放するカウンセリング:基本となる「7つ」の考え方
カウンセリングで毒親から自分を解放するためには、「交流分析」や「ゲシュタルト療法」に基づき、カウンセラーとの共同作業で取り組む必要があります。
そして、毒親から自分を解放するカウンセリングとは、以下の7つの考え方が基本となっています。
POINT
- 毒親へ執着してしまう原因は「未完の感情」
- 毒親への「未完の感情を解放」すると、毒親への執着を解消できる
- 子供が訴える「未完の感情」を、毒親は絶対に認めない
- 「未完の感情」は、親に代わって自分がわかってあげる
- 「未完の感情」を解放するために、子供の頃の自分への理解を深める
- 「アダルトチルドレン」と「インナーチャイルド」を理解する
- 毒親からの解放とは「アダルトチルドレンの克服」である
- 「インナーチャイルド」が抱えている「未完の感情」を、インナーチャイルドセラピーで「未完の解決」へと導くことで、毒親から解放される
①毒親へ執着してしまう原因は「未完の感情」
毒親から解放されるために必要な対策として、「毒親と距離を置く」という対処法をよく耳にします。
ですが、いくら毒親と距離を置こうとしても、無意識に親の言動が気になってしまい、気がつくと毒親に囚われているものです。
このように、毒親と距離を置こうとすればするほど、毒親へと執着してしまう理由は、ずっと親にわかってもらいたかったのだけれど、未だにわかってもらえていない気持ち、すなわち、ゲシュタルト療法でいう「未完の感情」が心に残っていることが原因です。
納得がいかない思いは、行き場がなくて、心のどこかにモヤモヤしたまま残ってしまいます。いわば出口がなくて迷子になってしまった感情。これを「未完の感情」と呼びます。
よって、子供の頃から積りに積もった「未完の感情」が心に残っている限り、「親にわかってもらいたい!」という強い気持ちが無意識に働いて、まるで磁石のように親に引き寄せられてしまい、結果、毒親に執着し続けることになります。
②毒親への「未完の感情を解放」すると、毒親への執着を解消できる
反対に言えば、子供の頃からずっと親にわかってもらいたかった「未完の感情」を、何らかの方法でスッキリと発散解放することができると、「親にわかってもらいたい!」という気持ちが解消され、毒親への執着が終わります。
そして、「未完の感情」を何らかの方法でスッキリと発散解放することを、ゲシュタルト療法では「未完の完結」と言います。
未完の完結:ゲシュタルト療法では、「過去の未完の出来事は、ゲシュタルトとして完成されていないモヤモヤとして残っていて(「抑圧」という精神分析用語は用いられない)それを意識化させ、完結することで症状は無くなる、という。フロイトは、「抑圧した過去を知る」ことで症状がよくなると言った。
このように、ゲシュタルト療法に基づき、子供の頃からモヤモヤと残っている「未完の感情」を見つけて「未完の完結」へと導くことで、毒親への執着を解消することができます。
また、「未完の感情とは何か?」「未完の完結とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
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③子供が訴える「未完の感情」を、毒親は絶対に認めない
しかしながら、子供の頃から、ずっと親にわかってもらいたかった「未完の感情」を、年老いた親に懸命に伝えても、残念ながら、親は絶対に認めないでしょう…
なぜなら、子供が訴える「未完の感情」とは、親にとっても遠い過去の記憶であるため、はっきりと覚えていないからです。
なので、親にわかってもらおうとすればするほど親にわかってもらえず、かえって親への執着が強まってしまいます。
ときどき、「私は毒親の呪縛から逃れられない」「私は毒親に支配されている」といった言葉を耳にすることがあります。
ですが、上記の解説をお読み頂いておわかり頂けますように、カウンセリングでは、「親が子供を呪縛し支配している」とは捉えず、あくまで「子供が親に執着している」と捉えていきます。
そうすることで、自分が抱えている親への執着を解消すれば、自分は毒親から解放されるという道筋が開けます。
だからこそ、自分が抱えている親への執着を、親とは無関係に自分自身で解消できるカウンセリングは、毒親から自分を解放する有効な手段と言えるのです。
④「未完の感情」は、親に代わって自分がわかってあげる
このように、カウンセリングで毒親から自分を解放する場合は、「子供の頃から、ずっと親にわかってもらいたかった『未完の感情』を、親にわかってもらうためにはどうすればいいのか?」とは考えません。
カウンセリングとは、「親」を自分の思い通りに変えるための相談ではなく、「自分」を成長させるための相談です。
よって、カウンセリングで毒親から自分を解放する場合は、「子供の頃から、ずっと親にわかってもらいたかった『未完の感情』は、親に代わって自分自身がわかってあげよう…」と考えてきます。
このように、親に代わって自分が自分の保護者になろうとする考え方を、「精神的自立」と言います。
精神的自立とは、「自分の行動を誰かの意志に委ねていない状態」を指します。日常でも、精神的自立があるかないかで行動は大きく変わります。
引用元:自立するにはどうすればいいか?
⑤「未完の感情」を解放するために、子供の頃の自分への理解を深める
子供の頃の自分が抱え始めた「未完の感情」を、親に代わって自分がわかってあげるためには、「子供の頃の自分はどのような気持ちを感じていたか?」「子供の頃の自分は親からどのような影響を受けたのか?」など、子供の頃の自分を振り返り理解を深める必要があります。
そして、子供の頃、「親に言われた言葉」や「親にされた行動」の影響によって身に付けた「思考や行動パターンの傾向」いわゆる「性格」のことを、交流分析では「人生脚本」と言います。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
また、子供の頃、「親に言われた言葉」や「親にされた行動」の影響によって身に付けた「否定的な考え方」を、交流分析では「禁止令とドライバー」と言います。
禁止令とは心理学者エリックバーン博士によって開発された自己分析法で、文字通り「〇〇してはいけない」という「禁止」の「命令」のことです。…(中略)…幼いころに親などの養育者から否定的・禁止的な命令や態度を繰り返し受けることで、自らの思考や行動の制限を課してしまうものです。
拮抗禁止令とは、幼少期に親の役割をもつ人から与えられた「〇〇しなさい」「〇〇したほうがよい」「〇〇であるべき」という、いわゆる「〇〇しろ」というメッセージを受けて、そのよう生きていこうと「決断」することで自らに課したものです。…(中略)…ドライバーというその名の通り、その人の行動を駆り立ててしまうのです。
このように、カウンセリングで毒親から自分を解放するためには、今までの自分は「人生脚本」という人生パターンを繰り返していることに気づいたり、自分の心にある「~しちゃいけない!」という禁止令の存在や、「~しなきゃいけない!」というドライバーの存在に気づいたり、過去を振り返り、子供の頃の自分の心情への理解を深めていきます。
また、「人生脚本とはなにか?」「禁止令とは何か?」「ドライバーとは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
⑥毒親育ちは「傷ついたインナーチャイルド」を抱えた「アダルトチルドレン」
また、子供の頃、親との関係で心に「トラウマ(心的外傷)」を負ってしまい、大人になっても生きづらさを感じ続けている人を、心理学では「アダルトチルドレン」と言います。
また、親の養育に問題があり、子供が親から十分な愛情を与えてもらえない家庭を、心理学では「機能不全家族」と言います。
アダルトチルドレン(AC)とは、自分は子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことをいいます。自己認識の概念であり、医学的な診断名ではありません。
機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。
また、「親に言われた言葉」や「親にされた行動」の影響で、大人になった今でも心が傷ついたままの子供時代の自分のイメージを、心理学では「インナーチャイルド」と言います。
インナーチャイルドは、日本語で「内なる子供」と訳されています。心の中に住んでいる子供の自分……といった意味となります。諸説ありますが、「子供の頃の記憶や感情」のことをインナーチャイルドと呼びます。主にネガティブな記憶や、それに伴う感情(親に怒られた、友達にいじめられた、さみしかった、つらかった、孤独を感じた等)が中心です。
引用元:インナーチャイルドとは?
以上のことから、毒親に育てられた人は、「機能不全家族」で育った「アダルトチルドレン」と言い換えることができます。
そして、毒親に育てられた人は、「毒親との関係で傷ついたインナーチャイルド」を抱えた「アダルトチルドレン」とも言い換えることができます。
また、「アダルトチルドレンとは何か?」「インナーチャイルドとは何か?」「機能不全家族とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
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⑦アダルトチルドレンを克服すると、毒親から解放される
「毒親に育てられた人は、アダルトチルドレンである」ことが理解できると、「アダルトチルドレンを克服することで毒親から解放される」という道筋が開けます。
また、現在ではアダルトチルドレンについての研究が進み、さまざまな「アダルトチルドレンの克服方法」が確立されています。
アダルトチルドレン(AC)概念の生みの親であるクラウディア・ブラックは、ACの回復プロセスを次のような4段階で説明しています。「ステップ1=過去の喪失を探る」「ステップ2=過去と現在をつなげる」「ステップ3=取りこんだ信念に挑む」「ステップ4=新しいスキルを学ぶ」。
今回のように、カウンセリングで毒親から自分を解放する場合は、「インナーチャイルドセラピーを用いたアダルトチルドレンからの回復過程」に従い、「毒親との親子関係で子供の頃から傷ついたままの自分のインナーチャイルドを、大人になった自分が自ら癒すことで、アダルトチルドレンを克服する」ことを目指します。
このように、インナーチャイルドセラピーによってアダルトチルドレンを克服すると、毒親から自分を解放することができます。
また、「インナーチャイルドセラピーを用いたアダルトチルドレンからの回復過程」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
⑧インナーチャイルドが抱えている「未完の感情」を、インナーチャイルドセラピーで「未完の解決」へと導くことで、毒親から解放される
このとき、ずっと親にわかってもらいたいと「未完の感情」を抱え続け、長い間、心が傷ついたままの子供の頃の自分のイメージを「インナーチャイルド」に見立てます。
そして、インナーチャイルドが抱えている「未完の感情」を、毒親に代わって大人に成長した自分がわかってあげて、自分の言葉で解放し「未完の完結」を果たしていく心理療法を「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」と言います。
インナーチャイルド・セラピーは、まさにこの「未完の完結」作業を応用したものです。…(中略)…未完の感情をそのまま引きずるのではなく、「今ここ」で完結(終わらせ、創り直す)ことが、インナーチャイルド・セラピーです。
引用元:インナーチャイルド・セラピー
インナーチャイルドセラピーは、心理カウンセラーの協力のもと、たくさんの時間をかけて納得がいくまでゆっくりと進めていきます。
そうすることで、毒親の影響をまったく受けず、親への「未完の感情」を自分一人で「未完の完結」へと導くことができ、傷ついたインナーチャイルドを自分で癒し、自分一人で毒親からの解放を果たすことができます。
また、「インナーチャイルドセラピーとは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
カウンセリングで毒親から自分を解放する「6つのステップ」
ここまで、「毒親から自分を解放するカウンセリングの基本的な考え方」について解説していきました。
カウンセリングで毒親から自分を解放する方法とは、「毒親との親子関係で子供の頃から傷ついたままの自分のインナーチャイルドを、大人になった自分が自ら癒すこと」であり、「交流分析」や「ゲシュタルト療法」をベースに、「アダルトチルドレンの回復過程」に基きながら「アダルトチルドレンを克服」することです。
そして、カウンセリングで毒親から自分を解放する場合、具体的には以下の「6つのステップ」にわけて取り組んでいきます。
POINT
- 「毒親に育てられたアダルトチルドレン」であることを認める
- 「未完の感情」や「禁止令やドライバー」の存在に気づく
- 「人生脚本」の存在に気づく
- 子供の頃から抱え続けている「未完の感情を解放」する
- 親との関係を整理する
- 「自分らしい生き方」を始める
続きは、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
さいごに、毒親から自分を解放するカウンセリングの考え方について重要ポイントをまとめます。
POINT
- 子供の頃からの「未完の感情」が心に残っている限り、毒親に執着し続けてしまう
- 子供の頃からの「未完の感情」を「未完の完結」へと導くことで、毒親への執着を解消できる
- カウンセリングは、毒親から自分を解放する有効な手段
- 親に代わって自分が自分の保護者になろうとする考え方を「精神的自立」と言う
- 人の性格とは「人生脚本」と呼ばれ、「禁止令とドライバー」が影響している
- 毒親に育てられた人は、「毒親との関係で傷ついたインナーチャイルド」を抱えた「アダルトチルドレン」と言える
- 毒親から自分を解放するとは、アダルトチルドレンの克服を意味する
- インナーチャイルドセラピーは、傷ついたインナーチャイルドを自分で癒し、自分一人で毒親からの解放を果たすことができる
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
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以上、「毒親から自分を解放するカウンセリングの考え方」という記事でした。