POINT機能不全家族の定義は、研究者によって違いがあるため明確ではありませんが、アダルトチルドレン研究の専門家たちは、それぞれの著書の中で「機能不全家族の特徴」を示しています。
心理カウンセラーの寺井です。
「機能不全家族」とは、もともと「アダルトチルドレンの研究」から生み出された言葉で、「家庭内に存在する様々な問題が原因で、子どもが日常的にストレスを感じている家族の状態」を指します。
とはいえ、「機能不全家族」とは「精神医学」や「心理学」などに基づく「明確な定義」が存在するわけではなく、その「定義」は研究者によって多少の違いがあり明確ではありません。
ですが、アダルトチルドレン研究の専門家たちは、それぞれの著書の中で「機能不全家族の特徴」を示しています。
なので、本記事は「『機能不全家族の定義』として学術的根拠に近い情報」と言えます。
ちなみに、この記事は「アダルトチルドレン研究の専門家たちが著書の中で示している『機能不全家族の特徴』」についての解説です。
「アダルトチルドレンの克服に携わるカウンセラーが考える『機能不全家族の特徴』」「社会問題として認識されている『機能不全家族の特徴』」については、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、アダルトチルドレン研究の専門家たちが著書の中で示している「機能不全家族の特徴」について解説していきます。
アダルトチルドレン研究の専門家たちが示す「機能不全家族の特徴」
「機能不全家族」という考え方は、「アダルトチルドレン」の研究と密接に関係しています。
「アダルトチルドレン」とは、機能不全家族で育ったことにより、「親から守られる」「適切な教育を受ける」などの正常な成長過程をたどれず、成人してからも生きにくさや心に傷を抱えている人のことをさします。
このように「アダルトチルドレン」の研究によると、「機能不全家族とは、アダルトチルドレンの原因となる家族」として定義されています。
「アダルトチルドレン」の研究は、1970年代にアメリカで始まり、今までに多くの専門家たちによってさまざまな「アダルトチルドレンに関する書籍」が出版されています。
そして、アダルトチルドレン研究の専門家たちは、著書の中で「機能不全家族には共通する『傾向』や、共通する『行動・思考パターン』がある」と述べています。
ここでは、アダルトチルドレン研究の専門家たちが著書の中で示している「機能不全家族の特徴」について、以下の8つを紹介します。
POINT
- 「スティーブン・ファーマー」が示す「機能不全家族に見られる兆候」
- 「ダン・ニューハース」が示す「機能不全家族の原因となる親の兆候」
- 「ダン・ニューハース」が示す「機能不全家族を引き起こす親の思考・行動パターン」
- 「ウェイン・クリッツバーグ」が示す「機能不全家族の特徴」
- 「ジョン・C・フリエル」が示す「機能不全家族の特徴」
- 「クラウディア・ブラック」が示す「機能不全家族の暗黙のルール」
- 「西尾和美」氏が示す「機能不全家族の特徴」
- 「スーザン・フォワード」が示す「毒になる親の特徴」
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①「機能不全家族に見られる兆候」:スティーブン・ファーマー
「ほんとうの『私』のみつけかた-虐待する親のもとで育ったアダルトチルドレンのための自己成長プログラム」の著者であり、ソウルヒーラーとして知られる「スティーブン・ファーマー」は、「機能不全家族に見られる兆候」として以下の点をあげています。
②「機能不全家族の原因となる親の兆候」:ダン・ニューハース
「不幸にする親・人生を奪われる子供」の著者である、アメリカの臨床心理学博士「ダン・ニューハース」は、「機能不全家族の要因となる親の兆候」として以下の点をあげています。
③「機能不全家族を引き起こす親の思考・行動パターン」:ダン・ニューハース
また、「ダン・ニューハース」は、「機能不全家庭を引き起こす親の思考・行動パターン」として以下の点をあげています。
④「機能不全家族の特徴」:ウェイン・クリッツバーグ
「アダルトチルドレン・シンドローム-自己発見と回復のためのステップ」の著者である、アメリカの心理療法家「ウェイン・クリッツバーグ」は、「機能不全家族の特徴」として以下の点をあげています。
POINT
- 強固なルールでの生活を強制する
- 家族構成員に強固な役割がある
- 社会に対して、家族で共有されている秘密がある
- 家族の中に他人が入り込むことへの抵抗が大きい
- 家族間のプライバシーがなく、境界があいまいである
- 家族への忠誠が強いられていて、家族から去ることが許されていない
- 家族間の葛藤は否定されて無視されている
- 家族のあり方の変化に抵抗する
- 家族としてのまとまりは分断され、統一性がない
⑤「機能不全家族の特徴」:ジョン・C・フリエル
「アダルトチルドレン-機能不全家族の秘密」の著者である、アメリカのカウンセラー「ジョン・C・フリエル」は、「機能不全家族の特徴」として以下の点をあげています。
POINT
- 身体的虐待、感情的虐待、性的虐待、無視、その他の虐待
- 完璧主義
- 融通性のない家族ルール、生活スタイル、信念スタイル
- 「話すな」のルールと、家族の秘密を守る事
- 自分の感情を見極めたり、表現したりする力のなさ
- 家族の他のメンバーを介してのコミュニケーション
- 二重メッセージ、二重拘束
- 遊んだり、楽しんだり、自然に振る舞う事のできなさ
- 不適切な行動や痛みに対する耐性がありすぎること
- 境界が不鮮明な網状家族
引用元:機能不全家庭
⑥「機能不全家族の暗黙のルール」:クラウディア・ブラック
「もちきれない荷物をかかえたあなたへ 」の著者であり、「アダルトチルドレン『AC概念』」の生みの親である、アメリカのソーシャルワーカー・社会心理学博士「クラウディア・ブラック」は、「機能不全家族に存在する暗黙のルール」として以下の点をあげています。
POINT
- <話すな>
家族の中に問題があるのに、それを話し合わない。
むしろ、問題に直面するのを避けて否認し、人に知られまいとする。
問題があるのを恥じる。
問題について話し合うのはよくない。 - <感じるな>
家族みんなが感情を抑え、表現しない。
こう感じるべきではないと自分の感情を無視する。
あるいは怒りの感情に圧倒されていて、ほかの感情を感じられない。 - <信頼するな>
状況の予測がつかない。
気分によって言動が左右されるため、一貫性がない。
実行されない約束や脅し、嘘が言いわけが多く、言葉の信頼性がなくなる。
引用元:機能不全家族、独自の3つのルール
なお、「アダルトチルドレン『AC概念』とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
⑦「機能不全家族の特徴」:西尾和美氏
「アダルト・チルドレンと癒し―本当の自分を取りもどす」など、日本において数多くのアダルトチルドレン関連書籍を出版している「西尾和美」氏は、「機能不全家族の特徴」として以下の点をあげています。
POINT
- 身体的・性的・精神的虐待の起こっている家族
- 仲が(夫婦間や嫁姑間)悪い家族
- 怒りの爆発する家族
- 愛のない冷たい家族
- 親の期待が大き過ぎる(なかなか期待に添えない)家族
- お金・仕事・学歴だけが重視される家族
- 他人の目を気にする、表面だけがよい家族
- 秘密があまりにも多い家族
- 親と子どもの関係が逆転している家族
- 子どもを過度に甘やかし溺愛する家族
- アディクション(依存症)のある家族
- 他人(兄弟姉妹も含む)と比較される家族
- 親が病気がち、留守がちな家族
- 情緒不安定な親のいる家族
引用元:機能不全家族
⑧「毒になる親」:スーザン・フォワード
また、「毒になる親:一生苦しむ子供」の著者である、アメリカの専門家「スーザン・フォワード」は、上記のような「機能不全家族を形成する親」を「toxic parents(毒になる親)」と表現し、これが日本における「毒親」という言葉の語源となりました。
「スーザン・フォワード」は、「機能不全家族を形成する『毒親』の特徴」として以下の点をあげています。
POINT
- 子供が従わないと罰を与え続ける「神様」のような親
- 「あなたのため」と言いながら子供を支配する親
- 大人の役を子供に押しつける無責任な親
- 脈絡のない怒りを爆発させるアル中の親
なお、「毒親の特徴」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
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機能不全家族は身近な問題
このように、アダルトチルドレン研究の専門家たちが示している「機能不全家族の特徴」を見ていくと、「機能不全家族」とは「家庭の本来の働きが不完全な状態」と言えます。
反対に言えば、「機能不全家族」とは「子どもが心身共に健全に成長していくために必要なものを満たすことができていない家庭」と言い換えることができます。
子どもが親・家族・家庭に求めるもの:レイモンド・M・ ジャミオロスキー
「わたしの家族はどこかへん?-機能不全家族で育つ・暮らす」の著者「レイモンド・M・ ジャミオロスキー」は、「子どもが心身共に健全に成長していくためには、心理学者『アブラハム・マズロー』があげた以下の点が満たされることが大切である」と解説しています。
POINT
- 生存(生きること)
- 安全と安心
- 愛情と帰属感(家族の一員であるという落ち着いた気持ち)
- 自尊心
- 成長
- 自立して生活するためのスキル(技術)を身につけること
子どもが親・家族・家庭に求めるもの「4つ」の具体例
上記「レイモンド・M・ジャミオロスキー」の指摘をさらに具体的に解説すると、「子どもが心身共に健全に成長していくために、親・家族・家庭に求めているものの具体例」として以下の4つがあげられます。
POINT
- 子どもは健全に成長していくために、「衣・食・住」などが確保されている「安全な居場所」や、自分の気持ちに無条件で共感してくれる「安全な養育者」など「安全基地」となる家庭を求めている
- 子どもが健全に成長していくためには、周囲の人々を信頼しながら「人間関係」を築いていく必要があるため、乳幼児期に母親とのあいだで健全な「愛着形成」を求めている
- 子どもは「親に認めてもらえたり褒めてもらえる」ことで心身共に健全に成長することができるため、親・家族に「承認欲求」を満たしてもらうことや、「自己肯定感」を高めてもらうことを求めている
- 子どもは心身ともに成長するにつれて様々な悩み・トラブルを抱えるようになあるため、親・家族に「悩みごとの相談」に乗ってもらうことを求めている
このように、子どもは健全に成長していくために、親・家族・家庭に対して「安全・愛着・承認・相談」を求めていると言えます。
機能不全家族は身近な問題
「レイモンド・M・ ジャミオロスキー」の指摘をそのまま受け取れば、子どもが上記の要素をひとつでも満たせなかった場合、その家族は「機能不全状態」ということになります。
反対に言えば、「機能不全家族」とは少しのことで誰にでも起こり得る問題と言い換えることができます。
とくに、日本は、昭和初期に「第二次世界大戦(太平洋戦争)」という「悲惨な社会状況」を経験しており、この「戦争」が「家庭環境」に与えた悪影響はすさまじく、この「戦争」の影響が、親から子へ、子から孫へと「世代間連鎖」を続け、今現在に至っても「機能不全家族」や「アダルトチルドレン」の原因となっていると考えられており、「日本の家族の8割以上が機能不全を起こしている」とも言われています。
日本の家族の80%が機能不全を起こしている。その原因は、父親業・母親業の仕方にあるとする著者が、機能する家族とはどんな家族か、そういう家族を築くにはどうしたらいいかを説く。
このように、「機能不全家族」とは限られた人たちにのみ起こる縁遠い問題ではなく、誰にでも起こり得る身近な問題と捉えることが重要です。
なお、「機能不全家族の意味合い」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
まとめ
さいごに、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
関連情報まとめページ
以上、「機能不全家族の特徴①:アダルトチルドレン研究の専門家たちの指摘」という記事でした。