POINTスケープゴート(身代り役)の心理的な特徴は、あえて「悪者・嫌われ者」になることで「周囲の和のバランスを保とうとする」反面、「自傷行為・自暴自棄を起こしやすい」という点が最大の特徴です。
心理カウンセラーの寺井です。
「アダルトチルドレン」の「スケープゴートタイプ」は「身代り役」と呼ばれ、「機能不全家族」のなかで、「自分が家族のストレスのはけ口になる(身代りの犠牲者になる)」ことによって家族の崩壊を防ごうとする子どもを指します。
ですので、スケープゴートは大人になって「『自己否定感・無価値感』を強く感じる」という心理的な特徴を持つようになり、その影響で「『自傷行為・自暴自棄』を起こしやすくなる」と考えられています。
ちなみに、この記事は「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の『心理的な特徴』」についての解説です。
なお、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の『恋愛傾向』」については、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の「心理的な特徴」について解説していきます。
アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の「心理的な特徴」
スケープゴートは、子どもの頃から「自分が家族のストレスのはけ口になる(身代りの犠牲者になる)」ことによって家族の崩壊を防ぎ続けてきたため、大人になっても「謂れのない『冤罪・差別・いじめ』を黙って受け止めてしまう」あるいは「あえて『悪者・嫌われ者』になろうとする」という点が最大の特徴です。
また、スケープゴートは「自分はダメな人間だ!自分には何の価値もない!」など「『自己否定感』や『無価値感』を強く感じる」という心理的な特徴があるため、大人になってから「『自傷行為』や『自暴自棄』を起こしやすい」という特徴があります。
なお、「スケープゴートの心理的な特徴」は、主に以下の「9つ」があげられます。
POINT
- 「冤罪・差別・いじめ」を黙って我慢する
- 自傷行為を行う
- 「自己否定感・無価値感」が強い
- 自暴自棄になる
- 問題行動を起こす
- 病弱になる
- 他者を信用できない
- 素直になれない・反抗心が強い
- 「疎外感・被害者意識」が強い
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①「冤罪・差別・いじめ」を黙って我慢する
スケープゴートは「身代り役」と呼ばれ、親や家族から「無実の罪(冤罪)」を着せられたり「八つ当たり」をされても黙って一身に受け止め、「家族のストレスのはけ口」のような「役割」を担いながら大人へと成長していきます。
また、スケープゴートは「親や家族の鬱積した『負の感情(不満・憎しみ・怒り)』を黙って一身に受け止める」という特徴があるため、「家族のごみ箱」あるいは「家族のサンドバッグ」と呼ばれる場合すらあります。
スケープゴートは親から否定され、八つ当たりされ、叩かれても、「きっと自分に悪いところがあるのだろう」「きっと家族がもっとよくなる方法があるはずだ」と小さな身体で我慢を重ねます。よくスケープゴートは「家族のゴミ箱」にたとえられますが、家族の鬱積する不満や憎しみ、怒りを一身に請け負うのです。
このように、スケープゴートは「自分があえて『家族のストレスのはけ口(身代りの犠牲者)』となって『親や家族の鬱積した負の感情(不満・憎しみ・怒り)』を黙って一身に受け止めることで、家族の精神的安定を図る」という点が特徴的です。
ですので、スケープゴートは大人になってからも、「家族や集団の和のバランスを保つために自分を身代わりの犠牲者にする」という傾向があり、「家庭・学校・職場」などの人間関係において「謂れのない『冤罪・差別・いじめ』」を受けても、「きっと自分に悪いところがあるのだろう」「きっと自分さえ我慢すれば丸く収まるはずだ」と考えやすく、その影響で「『冤罪・差別・いじめ』を受けても黙って我慢することが多い」と考えられています。
なお、「スケープゴートが『冤罪・差別・いじめ』を黙って我慢する様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「無実の罪(冤罪)」を着せられたとき、自分に落ち度はないのに謝ってしまう
- 「八つ当たり」をされても、不満を訴えることなく黙って我慢してしまう
- 「差別」をされても、不服を訴えることなく黙って我慢してしまう
- 「いじめ」を受けても、反発することなく黙って我慢してしまう
- 「誹謗中傷」を受けても、反論することなく黙って我慢してしまう
このように、スケープゴートは「子どもの頃に親や家族から『冤罪・差別・いじめ』を受けたとき、親や家族に反発・反論するより、親や家族の気の済むように受け入れて早々に謝ってしまったほうが被害を最小限に抑えることができた」という「成功体験」を積んでいるため、大人になって「『冤罪・差別・いじめ』を受けても黙って我慢する」という傾向があります。
以上のことから、「『冤罪・差別・いじめ』を黙って我慢する」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
②自傷行為を行う
このように、スケープゴートは「親や家族にストレスを押し付けられても黙って抱え込んでしまう」という特徴があり、その影響で「自らの悩みを親や家族に相談できず、ストレスを溜め込んでしまう」と考えられています。
反対に言えば、スケープゴートは子どもの頃から常に「ストレスフルな苦しい状態」にあると言え、かといって「親や家族にストレスを吐き出すこともできない状況」でもあると言えます。
ですので、スケープゴートは「ストレスフルな苦しい状態」を少しでも緩和するために、「『自傷行為』を行うことでストレスを軽減する」という特徴があります。
自傷行為とは、ネガティブな気分を軽減する、人間関係のトラブルを解決する、ポジティブな気分になるといったことを期待して自分の体を意図的に傷つける行為です。…(中略)…誰かに助けてもらいたいのにそれができずに一人で解決しようとしているのが自傷行為であると考えられています。
なお、「スケープゴートがストレスを軽減するために行う『自傷行為』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 過食、拒食、リストカット、髪の毛を抜く、鉛筆や針を腕に刺す、やけどをつくる、自分を叩く、自分を引っ掻く、自分をつねる、頭を壁にぶつける、薬を過剰に飲む、治りかけた傷口を引っ掻く…など
このような「自傷行為」は、一般的には「構ってもらいために誰かの気を引くために行う」と考えられる場合がありますが、スケープゴートの場合は「親や家族に押し付けられたストレスを自分1人でなんとか軽減しよう」という意図で行うと考えられており、「痛みを感じることで生きていることを確認する、身体的苦痛を感じることで精神的苦痛を和らげる、自分を罰することで精神的バランスをとる」などの意味合いがあります。
以上のことから、「自傷行為を行う」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
③「自己否定感・無価値感」が強い
スケープゴートは、子どもの頃から「親や家族からストレスのはけ口になる(親や家族に存在を否定される)」ことが多かったため、大人になって「自己肯定感が低くなり、自己否定感が強くなる」という特徴があります。
自己否定とは自分が自分のことを「嫌だ」と感じたり、自由に行動したり楽しんだりすることを自分自身で否定してしまうことを指します。多くの場合、自己否定の感情は低い自尊心やトラウマ、罪悪感などに起因します。
また、スケープゴートは「自己否定感が強い」ため、その影響で「どうせ自分なんて価値がない」という「無価値感」を感じやすくなるとも考えられています。
無価値感(むかちかん):「自分になんか価値がない」「自分はどうせ駄目なんだ」というように、自分の能力を過小評価したり、存在意義を否定したりする感情。
引用元:無価値感
なお、「スケープゴートが感じる『自己否定感・無価値感』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「自分はダメ人間だ!ポンコツだ!役立たず!」と自分を貶す気持ちを感じる
- 「どうせ自分は最終的には嫌われ捨てられる」と心の奥底で強く感じる
- 「どうせ自分は何をやってもうまくいかない!」と無意識に思うことがある
- 「自分は生まれてきてはいけなかった」と罪悪感を感じる
- 「自分は楽しむことが許されない人間だ!」と禁止令を感じる
また、スケープゴートは実際に母親から「あなたを産まなければよかった!」などの「八つ当たり」をされてしまう場合が多く、その影響で、大人になってから「『自己否定感が強い、自分の存在価値がわからない』など『生きづらさ』を感じやすくなる」と考えられています。
以上のことから、「『自己否定感・無価値感』が強い」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
④自暴自棄になる
このように、スケープゴートは「自己否定感」や「無価値感」を強く感じるぶんだけ「自尊感情(自己肯定感)が低くなる」と考えられており、その影響で「自暴自棄になりやすい」と考えられています。
自己肯定感が低い人は、自暴自棄になることがある。…(中略)…過去に経験したトラウマや失敗が、現在の自暴自棄につながる場合がある。
【自暴自棄】: 物事が思いどおりにならないために、自分で自分の身を粗末に扱い、なげやりな行動をして将来の希望を捨てること。やけくそになること。
なお、「スケープゴートが『自暴自棄』になる様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- アルコール・薬物・ギャンブル依存症に陥る
- 暴走行為に傾倒する
- 暴力事件を起こす
- 窃盗事件を起こす
- 犯罪に手を貸す
- 若年妊娠に巻き込まれる
- 不登校になる
- 引きこもりになる
- 家出をする
スケープゴートがこれらの問題行動を起こす原因は、あくまで「機能不全家族」という「厳しい環境」で育った影響であり、決してスケープゴート自身に責任があるわけではないのですが、スケープゴートは「自尊感情(自己肯定感)の低さ」が原因で「自暴自棄になりやすい」と考えられています。
以上のことから、「自暴自棄になる」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑤問題行動を起こす
スケープゴートは、「自分があえて『家族のストレスのはけ口になる』ことで家族の精神的安定を図る」という特徴があります。
ですが、それでも「家族が不安定な状態のまま」であった場合、スケープゴートは自ら進んで問題を起こし、「自分があえて『悪者』となって家族に嫌われることで、家族の負の感情(不満・憎しみ・怒り)を自分に集中させ、家族をひとつにまとめようとする」という特徴があります。
なお、このような「自ら進んで問題を起こすタイプ」を「自発型スケープゴート」と言い、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 非行行為・不良行為を行う「問題児」
- ケンカ・揉め事が耐えない「トラブルメーカー」
- 暴言・暴力・意地悪を行う「いじめっ子」
自発型スケープゴートは「敵の敵は味方」という言葉にあるように、「自ら進んで問題を起こして『自分が家族全員の嫌われ者になる』ことで、家族が一致団結するように仕向ける」という点が特徴的です。
スケープゴートは自ら【家族の問題児】を演じ、向き合うべき真の問題から家族の目を反らす。スケープゴートの起こしたトラブルに対応し、スケープゴートを叱りつけている間は、安定的に家族はひとつにまとまっている。
ですので、自発型のスケープゴートは大人になってからも、「家庭・学校・職場」などの人間関係において自ら進んで問題を起こすことが多く、「『自分が嫌われ者』になることで『集団の和のバランスを保とうとする』」という特徴があります。
なお、「自発型のスケープゴートが集団の和のバランスを保とうとする様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 家庭で「両親が不仲」である場合、家庭で問題を起こし、両親の怒りを自分に向けさせることで「両親の夫婦仲」を繋ぎとめようとする
- 学校で「いじめの問題」がある場合、学校で問題を起こし、教師の関心を自分に向けさせることで「いじめの問題」に気づかせようとする
- 職場で「問題ある上司」がいる場合、職場で問題を起こし、会社全体の関心を自分に向けさせることで「問題ある上司の存在」に気づかせようとする
このように、自発型スケープゴートは自ら進んで問題を起こしやすいため、周囲からは「短気・怒りっぽい・気が強い・頑固・喧嘩っ早い」などの印象に映る場合がありますが、実際には「自分を身代わりの犠牲者にして集団の和のバランスを保つ」という意図が隠されている場合があります。
以上のことから、「問題行動を起こす」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑥病弱になる
スケープゴートは「機能不全家族」において「親や家族から虐げられる存在」と言えます。
ですが、親や家族のなかには、スケープゴートが「健康の状態」のときには厳しく接するが、スケープゴートが「病気やケガを負った状態」のときには優しく接するという場合があり、スケープゴートが「病気やケガを負った」ことにより、それまで不仲だった親や家族が一致団結するという場合があります。
そうすると、スケープゴートは「自分が『健康の状態』だと親や家族に虐げられる」が「自分が『病気やケガを負った状態』だと親や家族に優しくしてもらえる」あるいは「自分が『健康の状態』だと親や家族は不仲」だが、「自分が『病気やケガを負った状態』だと親や家族は団結する」と考えるようになり、あえて「病気やケガを長引かせることで親や家族に優しくしてもらおう、親や家族を団結させよう」と考えるようになります。
なお、「病気やケガを負っている」ことを条件に「安心」を感じようとする心理状態を「疾病利得」と言います。
例えば、うつ病やパニック障害など精神疾患を発症したがゆえに家族や周囲の方々が心配して、優しく接してくれると、病気を患っていることによって偶然の幸せを体験できることがあり、これを「疾病利得」と呼んでいます。
このように、スケープゴートは「疾病利得」を得るために「病気やケガを長引かせる」という傾向があり、それを長く繰り返しているうちに「習慣」として根付いてしまい、本当に「病弱」になってしまう場合があります。
以上のことから、「病弱になる」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑦他者を信用できない
本来であれば、子どもにとって「親や家族」とは「最も信頼したい擁護者」であるはずなのですが、スケープゴートは最も信頼したい存在である「親や家族」から「暴力や暴言による虐待」を受けるなど理不尽な扱いを受けてきたため、その影響で、大人になってから「他者に対する警戒心が非常に強くなる」と考えられています。
反対に言えば、スケープゴートは他者への警戒心が強いぶんだけ、他者へと本音をさらけだすことができず、「小さな嘘をついて自分の本音を隠したり、小さな嘘をついて相手の本音を探ったりする」傾向があります。
このように、スケープゴートは最も信頼したい存在である「親や家族」から一方的に理不尽な扱いを受けてきたことで「トラウマ(心の傷)」を負い、大人になっても「幼少期に負ったトラウマの影響を受け続けている人」と言えます。
なお、「幼少期に負ったトラウマ」のことを「発達性トラウマ」と呼ぶ場合があります。
「発達性トラウマ(Developmental Trauma)」とは、複雑性PTSDの原因となる、子ども時代に負ったトラウマのことです。家庭や学校などで負った慢性的な(反復性)ストレスがトラウマを生み、複雑性PTSDの原因となることがとても多いのです。
また、子どもの頃に「発達性トラウマ」を負ったことが原因で、大人になってから対人関係において様々な支障が出ることを、精神医学では「複雑性PTSD」と診断する場合があります。
複雑性PTSDとは、幼少期からの虐待経験やいじめなど長期的かつ反復的に逃れがたい状況や体験をし、身体的・精神的症状が生じることを指します。PTSDの症状に加えて、感情的なコントロールの困難さから慢性的に対人関係に支障が出ると言われています。
そして、「スケープゴートが『幼少期トラウマ(発達性トラウマ)』の影響を受けている様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 他者から理不尽な扱いを少しでも受けるとたちまち怒りが湧きあがり、激しく怒りだす
- 他者から謂れもない疑いを少しでも掛けられるとたちまち怒りが湧きあがり、激しく怒りだす
このように、スケープゴートは「幼少期トラウマの影響」により、他者から「理不尽な扱いを受ける」あるいは「謂れもない疑いを掛けられる」ことに対して「激しい怒り(複雑性PTSDの症状)」を感じやすく、いわゆる「短気でキレやすい」という特徴があります。
以上のことから、「他者を信用できない」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑧素直になれない・反抗心が強い
このように、スケープゴートは「他者への警戒心が強く、他者を信用できない」という特徴があるため、対人関係において「『不信感』や『反抗心』を抱きやすい」と考えられています。
ですので、スケープゴートは「周りの人が救いの手を差し伸べてくれたとしても頑固に強がり、決して他者の助けを借りない」あるいは「周りの人が親切に間違いを教えてくれたとしても『自分は否定された!』と勘違いをし、親切に教えてくれた人に対して怒りをぶつける」など、少しのことで「他者との関りを拒絶してしまう」という特徴があります。
なお、少しのことで「他者との関りを拒絶してしまう」など、極端な防衛心理を「白黒思考(スプリッティング)」と言います。
防衛機制の中でも、特に不健康な防衛機制であるスプリッティングをご紹介します。スプリッティングというのは物事をゼロか100か、あるいは善か悪か、といった見方で見ることです。…(中略)…このスプリッティングしてる時のものの見方を、白黒思考という時もあります。…(中略)…例えば、あの人はいい人だと思っていても、その人の悪いところを一つでも見つけてしまうと、あの人は悪い人だに変わっちゃうわけです。
引用元:対人関係を不安定にさせる白黒思考
また、スケープゴートは「他者との関り」を持てたとしても、「他者への警戒心の強さ」から「他者に対して素直になれない」という特徴があり、その影響で「対人関係を維持・発展させることが難しい場合がある」と考えられています。
なお、「スケープゴートが他者に対して素直になれない様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 自分の非を認めない
- 素直に謝らない
- 何かを言われたら何かを言い返す
- 言い訳が多い
- 他人のせいにする(他責グセ)
とくにスケープゴートは、子どもの頃から「親・兄姉・教師など『目上の存在』」から「謂れもない罪」を押し付けられたり、「理不尽な扱い」を受けることが多かったため、大人になってから「『年長者(親・上司・先輩など)』や『権威ある人(教師・医師・社長など)』に対して『反抗心』を抱きやすい」と考えられています。
なお、「スケープゴートが『年長者』や『権威ある人』に反抗する様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 言われたとおりにやらない
職場で仕事を頼まれたとき、最初は「はい、わかりました」と素直に従うが、次第に「でも…しかし…だって…」と従わない姿勢になり、最終的には「頼まれた仕事を言われたとおりにやらない」 - 勝手に我流にアレンジする
職場で仕事のやり方を教えられたとき、最初は「はい、わかりました」と素直に従うが、次第に「でも…しかし…だって…」と従わない姿勢になり、最終的には「仕事のやり方を勝手に我流にアレンジして変えてしまう」
このように、スケープゴートは「年長者」や「権威ある人」に対して「やみくもに反抗する」のではなく、一度は「はい、わかりました」と素直に従うのですが、次第に「反抗心」を抱いて「でも…しかし…だって…」と従わなくなるという点が特徴的です。
なお、一度は「はい」と従っておきながら、その後に「しかし」と否定する言葉を続けるなど、「会話がなかなか噛み合わない状態」を、「交流分析」という心理学では「イエスバットのゲーム(無意識な自己防衛)」と言います。
イエスバットのゲームは、その名の通り「Yes But」という意味で、相手の意見や問いかけに「そうですね…(Yes)」と答えていながら、直後に「でも…(But)」と否定の言葉を続けることで、会話がなかなか終わらない状態になってしまうものを言います。
このように、スケープゴートは対人関係において「『不信感』や『反抗心』を抱きやすい」ため、「コミュニケーションに問題が生じやすい」と考えられています。
以上のことから、「素直になれない・反抗心が強い」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
⑨「疎外感・被害者意識」が強い
スケープゴートは、子どもの頃から「謂れのない虐め」を受けることが多かったため、その影響で、大人になってから「自分は嫌われている、自分は避けられている」など「疎外感を感じやすくなる」と考えられています。
「疎外感」とは、通常、「人から疎外されている」と感じた人が感じる感覚のことです。何らかの要因で「嫌われている」「避けられている」と感じるのです。
また、スケープゴートは、子どもの頃から「罪もないのに悪者にされる」ことが多かったため、その影響で、大人になってから「自分は傷つけられた、自分はこれから傷つけられる」など「被害者意識が強くなる」と考えられています。
「被害者意識」とは、「実際に被害や悪影響を受けたわけではないのに、被害を受けていると思い込むこと」。自分の主観で相手の気持ちや行動を決めつけてしまう傾向のある人は、「被害者意識が強い」と言われてしまうこともあるでしょう。
このように、スケープゴートは子どもの頃から「身代り役」として様々な被害を受け続けてきたため、大人になってから「自分は嫌われている、自分は避けられている、自分は傷つけられた、自分はこれから傷つけられる」などの「思い込み」が強くなりやすく、その影響で「相手の気持ちや行動を自分の思い込みで一方的に決めつけてしまう」という傾向があります。
以上のことから、「『疎外感・被害者意識』が強い」という点は、「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」のひとつと言えます。
アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の「人間関係の特徴」
スケープゴートは、子どもの頃から「家族のストレスのはけ口」のような「役割」をこなしてきたため、大人になってからも、人間関係において「周囲の人たちのために犠牲(身代りの犠牲者)になろうとする」という点が最大の特徴です。
反対に言えば、スケープゴートは「周囲の人たちのために犠牲(身代りの犠牲者)になろうとするぶんだけ、自分を苦しめてしまう」と言えますし、「周囲の人たちのために犠牲(身代りの犠牲者)になろうとするぶんだけ、根は優しい性格である」とも言えます。
なお、「スケープゴートの人間関係の特徴」は、主に以下の「8つ」があげられます。
POINT
- 「いじめ・嫌がらせ」を受けやすい
- 「犯罪・詐欺」に巻き込まれやすい
- 問題児として扱われる
- 人間関係が長続きしない
- 周囲の人たちから距離を置かれる
- 「年長者」や「権威ある人」に反抗する
- 仕事が長続きしない
- 弱者に優しい
続きは、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「心理的な特徴」
アダルトチルドレンが、子どもの頃に身に付けた「機能不全家族での役割」を、アメリカの心理療法家「ウェイン・クリッツバーグ」は「アダルトチルドレンタイプ」としてまとめました。
そして、「スケープゴート(身代り役)」とは、「ウェイン・クリッツバーグ」がまとめた「アダルトチルドレンタイプ(機能不全家族での役割)」のひとつにあたります。
なお、「スケープゴート(身代り役)」以外の「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「心理的な特徴」については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)の心理的な特徴」としては、以下の点があげられます。
- POINT「家族のストレスのはけ口を担ってきた」ため、冤罪・差別・いじめを黙って我慢してしまう
- 「自分1人でなんとかストレスを軽減しようとする」あまり、自傷行為を行う
- 「親や家族に存在を否定される」ことが多かったため、自己否定感・無価値感が強い
- 「自尊感情(自己肯定感)が低い」ため、自暴自棄になりやすい
- 「自分が悪者になることで集団の結束を高めようとする」あまり、問題行動を起こしやすい
- 「病気やケガと引き換えに優しくしてもらおうとする」あまり、病弱になる
- 「親や家族から一方的に理不尽な扱いを受けてきた」ため、他者を信用できない
- 「他者への警戒心が強すぎる」あまり、素直になれない・反抗心が強い
- 「罪もないのに悪者にされる」ことが多かったため、疎外感・被害者意識が強い
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
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以上、「アダルトチルドレン(AC)スケープゴート(身代り役)の『心理的な特徴』」という記事でした。