POINTスケープゴート(身代り役)の克服には、「幼少期のトラウマ」を癒すことに加え、「身代わりの犠牲者となって周囲のストレスを受け止めることで自分の存在価値を感じよう」という「思考パターン」を書き換えることが必要です。
心理カウンセラーの寺井です。
スケープゴート(身代り役)を始めとする「アダルトチルドレンの克服方法」は、「アダルトチルドレン(AC概念)」の生みの親である「クラウディア・ブラック」によってしっかりと確立されています。
ですので、本記事で解説している「アダルトチルドレン:スケープゴートの克服方法」は、「クラウディア・ブラック」が示した「アダルトチルドレン、回復の4ステップ」を遵守した形で考えられています。
なお、スケープゴートの原因には「感情面の原因(幼少期のトラウマ)」と「思考面の原因(無意識の思考パターン)」の「2つの原因」があるため、スケープゴートの克服は「感情面のケア(幼少期のトラウマを癒す)」と「思考面のケア(思考パターンを書き換える)」の「2つの取り組み」が必要になります。
そして、「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」は、「幼少期のトラウマの癒し」と「人生脚本の書き換え」を「2つ同時」に取り組めるため、スケープゴートの克服に非常に有効です。
この記事は、インナーチャイルドセラピー(退行催眠)による「アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)」の克服方法について解説しています。
アダルトチルドレン:スケープゴート(身代り役)克服のポイント
スケープゴートは、「機能不全家族」で育った影響で「トラウマ(心の傷)」を負い、「トラウマ」の「防御行動」として「身代り役」を担うようになり、家族のなかで「身代り役」を担い続けているうちに「無意識の思考パターン(習慣)」として「潜在意識」に根付いていったと考えられています。
以上のことから、「スケープゴートの原因」は、大きく分けて以下の「2つ」があります。
POINT
- 感情面の原因…「幼少期のトラウマ」
- 思考面の原因…「無意識の思考パターン」
よって、「スケープゴートの克服」は、以下の「2つの取り組み」が必要となります。
POINT
- 感情面のケア…「幼少期のトラウマ」を癒す
- 思考面のケア…「無意識の思考パターン」を書き換える
このように、スケープゴートを始めとする「アダルトチルドレンの克服」は、「感情面」と「思考面」の「両方の取り組み」が必要です。
反対に言えば、どちらか「片方の取り組み」だけでは、一時的には症状が落ち着いたとしても、しばらくして「身代り役」の症状が再現する可能性が高いと言えます。
アダルトチルドレンの克服がうまく行かない理由
また、「ゲシュタルト心理学」や「交流分析」によると、「幼少期のトラウマを癒す作業」や「無意識の思考パターンを書き換える作業」は、子どもの頃の感情に「感情移入」できればできるほど効果が高いと考えられています。
とはいえ、「子どもの頃のトラウマ体験」や「子どもの頃の家族との記憶」は、「できれば思い出したくない『傷ついた記憶』」であるのと同時に、「なかなか思い出しづらい『遠い昔の記憶』」でもあります。
ですので、心理カウンセラーが視界に入ってしまうと集中しきれず、「アダルトチルドレンの克服」はうまく行かなくなってしまう場合が多いです。
よって、目を開けた状態で行う「対話型のカウンセリング」のみでは、「アダルトチルドレンの克服」がうまく行かない場合があると言えます。
インナーチャイルドセラピー(退行催眠)が有効な理由
このように、目を開けた状態で行う「対話型のカウンセリング」のみだと、心理カウンセラーが視界に入ってしまい、子どもの頃の感情に「感情移入」できず、「アダルトチルドレンの克服」がうまく行かない場合が多いです。
ですが、目を閉じた状態で行う「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」であれば、心理カウンセラーが視界に入らず、子どもの頃の感情に「感情移入」しやすくなり、「アダルトチルドレンの克服」が進めやすくなります。
よって、「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」は「アダルトチルドレンの克服」に非常に有効であると言えます。
以上のことから、「スケープゴートの克服」は、以下の手順で行っていきます。
POINT
- スケープゴート(身代り役)の原因を理解する
- インナーチャイルドセラピーを用いて「幼少期のトラウマ」を癒す
- インナーチャイルドセラピーを用いて「無意識の思考パターン」を書き換える
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①スケープゴート(身代り役)の原因を理解する
「人の心」は、以下のように「感情面」と「思考面」に分けて考えることができます。
POINT
- 「感情、本能、無意識、潜在意識、本音」
- 「思考、理性、意識、顕在意識、建前」
よって、「スケープゴートの原因」は、以下のように「感情面」と「思考面」の「2つの原因」があると考えられます。
POINT
- 感情面の原因…「幼少期のトラウマ(見捨てられ不安)」
- 思考面の原因…「無意識の思考パターン(人生脚本)」
それでは、「スケープゴートの原因」について、以下に詳しく解説していきます
①感情面の原因:幼少期のトラウマ(見捨てられ不安)
スケープゴートが「身代り役」を始める理由は、「機能不全家族」で育ったことにより、子どもの頃に「トラウマ(心の傷)」を負ったことが原因です。
なお、家庭において以下の「根本的な願い」が満たされなかったとき、子どもは「トラウマ」を負うと考えられています。
POINT
- だれかの期待にこたえるためではなく、ありのままの自分として大切にされる
- 親の欠損を埋め合わせるための存在ではなく、その子自身として慈しまれる
- 安全で、安定していて、温かさのある環境で、無条件に愛される
スケープゴートをはじめ、アダルトチルドレンの原因となる「機能不全家族」とは、上記の「根本的な願い」が満たされない家庭であり、子どもが「トラウマ」を負いやすい家庭と言えます。
なお、「スケープゴートが生まれ育った機能不全家族の特徴」は、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 父親が「家庭でストレスをまき散らしている」
- 母親が「家庭でストレスをまき散らしている」
- 父親が「母親に対して暴言・暴力(モラハラ・DV)」を行っている
- 母親が「父親から暴言・暴力(モラハラ・DV)」を受けても黙って耐えている
また、子どもが負う「トラウマ」のひとつに「見捨てられ不安」があり、人は「見捨てられ不安」を感じると「強い精神的ストレス」に襲われるため居てもたってもいられなくなり、「見捨てられ不安」を和らげるために、衝動的にさまざまな「防御行動」をとるという特徴があります。
【見捨てられ不安とは?】見捨てられること、自分から人が離れてしまうことに強い不安を感じます。見捨てられたくない相手は、恋愛相手、友人、親、職場の人間などで、人から嫌われたくないため、様々な防衛行動を起こします。
なお、「スケープゴートが負ったトラウマ(見捨てられ不安)」とは、主に以下の「具体例」が考えられます。
POINT
- 父親が「家庭でストレスをまき散らす」姿をみて、強い不安を感じた
- 母親が「家庭でストレスをまき散らす」姿をみて、強い不安を感じた
- 父親が「母親に対して暴言・暴力(モラハラ・DV)」を行う姿をみて、強い不安を感じた
- 母親が「父親から暴言・暴力(モラハラ・DV)」を受けても黙って耐えている姿をみて、強い不安を感じた
また、「スケープゴートが見捨てられ不安を和らげるためとり始めた『防御行動』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「両親を精神的に落ち着かせよう」と、両親から「無実の罪(冤罪)」を着せられたり「八つ当たり」をされても黙って一身に受け止めるなど、「両親のストレスのはけ口」を担うようになった
- 「父親から『暴言・暴力』を振るわれる母親を救おう」と、自分があえて「悪者」となって「父親の暴言・暴力」を母親に代わって受け止めるなど、「母親の身代り役」を担うようになった
このように、スケープゴートは「耐え難い苦しさ」である「見捨てられ不安」を少しでも和らげるための「防御行動」として、「両親から『無実の罪(冤罪)』を着せられたり『八つ当たり』をされても黙って一身に受け止める」ようになったり、「『父親の暴言・暴力』を母親に代わって受け止める」ようになるなど、家族のなかで「身代りの犠牲者(身代り役)」を担うようになったと考えられています。
以上のことから、「幼少期のトラウマ(見捨てられ不安)を癒す」ことで「身代り役」という「防御行動」を終わらせることができ、スケープゴートを克服できると言えます。
思考面の原因:「無意識の思考パターン(人生脚本)」
スケープゴートが「身代り役」を続ける理由は、「身代り役」となって「両親のストレスのはけ口」を担い続けたにもかかわらず、両親から「感謝」や「褒め」の言葉を十分に掛けてもらえなかったことにより、「身代り役」を続けることで「両親に自分の存在価値を認めてもらおう(自分の存在価値を感じよう)」という「人生脚本」を身に付けたことが原因です。
スケープゴートは「耐え難い苦しさ」である「見捨てられ不安」を少しでも和らげるための「防御行動」として、自ら進んで「身代りの犠牲者(身代り役)」を担うようになります。
ですが、スケープゴートは「両親」から「ストレスのはけ口になってほしい!」とお願いをされてから「身代り役」を始めるのではなく、「両親」から「ストレスのはけ口になってほしい!」とお願いをされる前に「身代り役」を担い始めてしまうため、「両親」から「ありがとう…」「助かった…」という「感謝」や「褒め」の言葉を掛けてもらえない場合があります。
そうすると、スケープゴートは「身代り役」となって「両親のストレスのはけ口」を担い続けたにもかかわらず、両親から「感謝」や「褒め」の言葉を十分に掛けてもらえなかったことになり、その影響で、大人になってから恋愛を始めとする人間関係全般において「他者への警戒心が強くなる」という特徴があります。
なお、親から「ストローク(心の栄養)」をもらえなかったことで、子どもが感じる「他者への警戒心」を「基本的不信感」と言います。
乳児期は、母親や母親的役割をする人の存在を認識し、安心感を覚える時期です。安心できる人から信頼感を得て、他人への基本的信頼感を学びます。乳児期に母親や母親的役割をする人から愛情・安心を得られない場合、基本的不信感となって、精神機能の発達に支障が出る可能性もあります。
また、親から「ストローク(心の栄養)」をもらえなかったことで、子どもが「自分はこうやって生きていこう!」という「生き方の方針」を決めることを「幼児決断」と言います。
幼児決断(ようじけつだん)…(中略)…母子分離を体得してゆく中で、子どもが「人はこのようなものだ」とか「こうやって生きてゆこう」という生きる方針を決める瞬間があります。この決断のことを幼児決断と言います。…(中略)…大人になってからもその人の行動を決定する物差しとして幼児決断が作用し、幼児決断がその人の行動や考え方の傾向に繋がっていることがあります。
引用元:幼児決断(よじけつだん)
このように、スケープゴートは「身代り役」となって「両親のストレスのはけ口」を担い続けたにもかかわらず、両親から「感謝」や「褒め」の言葉を十分に掛けてもらえなかったことにより、「『自分の存在価値』を『両親』に認めてもらえるまで『身代り役』として生きていこう!」という「幼児決断」をすると考えられています。
そして、家族のなかで「身代り役」を担い続けているうちに、「無意識の思考パターン(習慣)」として「潜在意識」に根付いていったと考えられます。
なお、子どもの頃に親との関りで身に付けた「無意識の思考パターン」を「人生脚本」と言います。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
このように、子どもの頃に身に付けた「人生脚本」の影響により、大人になっても、スケープゴートは無意識に「身代り役」を担い続けていると考えられます。
以上のことから、「人生脚本」を書き換えることで「身代り役」という「無意識の思考パターン」を終わらせることができ、スケープゴートを克服できると言えます。
なお、「アダルトチルドレン(AC)スケープゴートの原因」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にして下さい。
②幼少期のトラウマ(インナーチャイルド)を癒す
スケープゴートが「身代り役」を始めた理由は、「幼少期のトラウマ(見捨てられ不安)」の「耐え難い苦しさ」を和らげるための「防御行動」にあります。
このように「幼少期のトラウマ」とは、「スケープゴートの感情面の原因」を意味します。
ですので、スケープゴートを克服するためには、子どもの頃に負った「トラウマ」を癒して「防御行動」を終わらせる必要があります。
とはいえ、「幼少期のトラウマ」とは、「なかなか思い出しづらい『遠い昔の記憶』」であるのと同時に、「できれば思い出したくない『傷ついた記憶』」でもあります。
ですので、「幼少期のトラウマ」は、頭では思い出そう・話そうとするのだけれども、気持ちで「恥ずかしさ」や「恐れ」を強く感じてしまい、結果、自分の意思に反して無意識に話を反らしてしまったり、無意識に話を誤魔化してしまう場合があります。
このように、「幼少期のトラウマ」のような「辛い記憶」に向き合おうとしたとき、自分の意思に反して無意識に話を反らしてしまったり誤魔化してしまう心の働きを「防衛機制」と言います。
心が傷つくことをさけるための機能である防衛機制は、不安やストレスを軽減するための心理メカニズムであり、私たちの精神的な安定に重要な役割を持っています。…(中略)…ただし、防衛機制が働きすぎると問題を先送りするだけで根本的な解決にならないことがあります。
引用元:苦手な人に対する心理と防衛機制
このように「防衛機制」とは、「今以上、心が傷つくことを避けるための無意識の『防衛心理』」を意味します。
ですので、「防衛機制」自体は決して悪いものではないのですが、「幼少期のトラウマ」が辛い体験であればあるほど「防衛機制」が活発に働いてしまい、結果、自分の意思に反して「幼少期のトラウマ」を癒すことが難しくなってしまうという特徴があります。
以上のことから、「幼少期のトラウマ」を「安全・確実」に癒すために、以下の「手順」で取り組む必要があります。
POINT
- 「幼少期のトラウマ」を「インナーチャイルド」というイメージに置き換える
- 「催眠療法(ヒプノセラピー)」を基本にした「インナーチャイルドセラピー」によって「インナーチャイルド(幼少期トラウマ)」を癒す
それでは、以下に詳しく解説していきます。
インナーチャイルドとは?
「インナーチャイルド」とは「幼少期のトラウマ」によって抱える「負の感情」の「別称」であり、「インナーチャイルド(幼少期トラウマ)」を癒すことで「アダルトチルドレンの克服」が可能となると考えられています。
インナーチャイルドは、幼少期のトラウマによって抱えてしまう負の感情のこと。…(中略)…インナーチャイルドを癒やすことで、共依存と同じようにアダルトチルドレンの症状が緩和する可能性があります。
また、「幼少期のトラウマ」のように、ある時(過去)から未解決のまま、モヤモヤと心に残り続けている感情を、「ゲシュタルト心理学」では「未完の感情」と言い、「幼少期のトラウマを癒す」ことを「未完の完結」と言います。
そして「ゲシュタルト心理学」では、「抑圧した過去を知る」すなわち「過去のトラウマ体験を振り返り、『未完の感情』を再体験することで『未完の完結』が果たされる」と考えられています。
未完の完結:ゲシュタルト療法では、「過去の未完の出来事は、ゲシュタルトとして完成されていないモヤモヤとして残っていて(「抑圧」という精神分析用語は用いられない)それを意識化させ、完結することで症状は無くなる、という。フロイトは、「抑圧した過去を知る」ことで症状がよくなると言った。
わかりやすく言うと、「幼少期のトラウマ」を癒すためには、子ども頃の「家族の様子」や「家庭の状況」を振り返って「幼少期のトラウマ」を思い出し、「幼少期のトラウマ」をあらためて体感し直す必要があると「ゲシュタルト心理学」では考えられています。
ですので、「幼少期のトラウマ」を癒すためには、大人の自分が「子どもの頃の自分の感情」にしっかりと「感情移入」することが重要となります。
例えば、「景色」や「風景」は「言葉」や「文字」で認識するより、「写真」や「映像」という「イメージ」で認識した方が「感情移入」がしやすくなります。
それと同じように、「幼少期のトラウマ」も「言葉」や「文字」で認識するより、「インナーチャイルド」という「イメージ」で認識した方が「感情移入」しやすくなります。
このように、「インナーチャイルド」とは、「幼少期のトラウマを癒す作業(未完の完結)」を「安全・確実」に進めやすくするために、あえて思い描く「トラウマを抱えた『子どもの頃の自分のイメージ』」を指します。
インナーチャイルドセラピーとは?
「インナーチャイルド」とは、「幼少期のトラウマ」に「感情移入」をしやすくするための工夫であり、「幼少期のトラウマを癒す作業(未完の完結)」を「安全・確実」に進めやすくするための工夫です。
ですが、前述の通り、人の心には「防衛機制」という「無意識の防衛心理」が働いているため、「インナーチャイルド(子どもの頃の自分のイメージ)」を思い描こうとしても、無意識に集中が反れてしまったり、無意識に誤魔化してしまう場合があります。
このように、「インナーチャイルド(幼少期のトラウマ)を癒す」ためには「防衛機制」を和らげる必要があります。
そこで、「防衛機制」を和らげながら「インナーチャイルドを癒す(未完の完結を果たす)」ことができる方法が「インナーチャイルドセラピー」です。
インナーチャイルド・セラピーは、まさにこの「未完の完結」作業を応用したものです。…(中略)…未完の感情をそのまま引きずるのではなく、「今ここ」で完結(終わらせ、創り直す)ことが、インナーチャイルド・セラピーです。
引用元:インナーチャイルド・セラピー
「インナーチャイルドセラピー」は、目を閉じた状態で行う「催眠療法(ヒプノセラピー)」を基本に行います。
ヒプノセラピー(催眠療法)とは、ユングやフロイトの提唱した深層心理学を根源とし、催眠状態を利用して潜在意識に働きかけ、心理的な問題(=悩み)や心因的な症状を改善する心理療法です。
引用元:ヒプノセラピー基礎知識
このように、「インナーチャイルドセラピー」は目を閉じた状態で行うため、心理カウンセラーの存在や周囲の状況が視界に入らず、そのぶん「恥ずかしさ」や「恐れ」といった「防衛機制の働き」を最小限に和らげることができ、そのぶん「幼少期のトラウマ」を「安全・確実」に癒しやすくなり、そのぶん「スケープゴートの克服」を「安全・確実」に進めやすくなります。
インナーチャイルド(幼少期のトラウマ)を癒す
「インナーチャイルド(幼少期のトラウマ)を癒す作業」についてですが、前述の通り「インナーチャイルド(子どもの頃の自分のイメージ)」を思い描くだけで「感情移入」がなされますので、特に何もしなくても、目を閉じてゆっくりと「インナーチャイルド」を思い描くだけで「幼少期のトラウマの治癒」が進んでいきます。
そして必要であれば、「インナーチャイルド」が抱えている「負の感情」を、目を閉じてゆっくりと「言葉」で表現して解放することで、「インナーチャイルド(トラウマ)の癒し」をさらに進めることができます。
なお、「インナーチャイルドが抱えている負の感情」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 家庭でストレスをまき散らす父親が怖かった、本当は父親に頼りたかった…甘えたかった…
- 家庭でストレスをまき散らす母親が怖かった、本当は母親と楽しく過ごしたかった…甘えたかった…
- 母親に対して「暴言・暴力(モラハラ・DV)」を振るう父親が怖かった、父親から「暴言・暴力(モラハラ・DV)」を受けても黙って耐えている母親が心配だった、本当は両親に仲良くしてほしかった…
このように、目を閉じてゆっくりと「インナーチャイルド」をイメージしたり、「インナーチャイルドが抱える負の感情」を、目を閉じてゆっくりと「言葉」にすることで、「幼少期トラウマ(見捨てられ不安)」が癒すことができ、「身代り役」という「防御行動」を終わらせることができ、スケープゴートの克服が実現します。
とはいえ、「インナーチャイルドが抱えている負の感情」を「言語化」することは、専門知識と専門技術を必要とする難しい作業ですので、心理カウンセラーなど専門家の協力が必要です。
なお、「インナーチャイルドセラピー」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
③無意識の思考パターン(人生脚本)を書き換える
スケープゴートが「身代り役」を続ける理由は、「身代り役」となって「両親のストレスのはけ口」を担い続けたにもかかわらず、両親から「感謝」や「褒め」の言葉を十分に掛けてもらえなかったことにより、「『自分の存在価値』を『両親』に認めてもらえるまで『身代り役』として生きていこう!」という「人生脚本(無意識の思考パターン)」を身に付けたことにあります。
このように「人生脚本」とは、「スケープゴートの思考面の原因」を意味します。
ですので、スケープゴートを克服するためには、子どもの頃に身に付けた「人生脚本」を書き換える必要があり、「人生脚本」を書き換えることを、「交流分析」という心理学では「人生脚本の書き換え」あるいは「再決断療法」と言います。
再決断療法とは、人生脚本、つまり幼児期に作った自分の決断に基づいて構成された人生のパターンの束縛から脱け出して、より自由で創造的な生き方をするために、チャイルドの自我状態に戻って、決断をやり直し人生脚本を書き換えて行く精神療法ということになります。
引用元:TA再決断療法とは?
とはいえ、「交流分析」によると、「再決断療法」によって「人生脚本を書き換える」ためには、「『子ども(チャイルド)』の自我状態に戻ってアプローチする必要がある」と考えられています。
再決断療法は「子ども」の自我状態にアプローチすることで、腑に落ちた気づきと感情をベースに、考えや行動を変えることができます。つまり、望まない無意識の人生計画といえる人生脚本から脱却することもできるのです。
引用元:人生脚本-幼時決断と再決断療法
「自我状態」とは「人と関わるときの思考・行動のクセや傾向」を指しますので、「チャイルドの自我状態」とは「人生脚本を身に付けた『子どもの頃の感覚』に戻った状態」を意味します。
ですので、「人生脚本を書き換える(再決断する)」ためには、「人生脚本」を身に付けた子どもの頃の感覚(チャイルドの自我状態)に戻った状態で「人生脚本」を選択しなおす必要があると言えます。
そして、「人生脚本を書き換える(再決断する)」ために、「子どもの頃の感覚・感情・記憶(チャイルドの自我状態)に戻る」ことを「退行(たいこう)」と言い、心理カウンセラーの催眠誘導による協力を得て行う「退行」を「退行催眠」と言います。
退行とは幼児期の感覚、感情、記憶へ遡る精神状態をいいます。そして退行催眠とは、昔の過去の記憶や感覚に戻らせる催眠誘導を指します(年齢退行)。
以上のことから、「人生脚本(無意識の思考パターン)」を「安全・確実」に書き換えるために、以下の「手順」で取り組む必要があります。
POINT
- 「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」によって「チャイルドの自我状態」に戻る
- 「チャイルドの自我状態」に戻って、書き換え前の「人生脚本」を理解する
- 「チャイルドの自我状態」のまま、新しい「人生脚本」へと書き換える
それでは、以下に詳しく解説していきます。
「チャイルドの自我状態」に戻る
「チャイルドの自我状態」に戻るとは、「『人生脚本』を身に付けた子どもの頃の感覚」に「感情移入」することです。
そして、「人生脚本」を身に付けた子どもの頃の自分を「インナーチャイルド」という「イメージ」に置き換え、「子どもの頃の感覚・感情・記憶(チャイルドの自我状態)に感情移入する(退行を行う)」方法が「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」です。
インナーチャイルド療法とは、退行療法の中の1つで、「自分の中の小さな子ども」にアクセスする療法です。潜在意識は決して忘れるということがないという特徴を持っています。また潜在意識には、時間の概念というものもありません。ですから、私たちの心の奥深くには、いまだに「傷ついたままの小さな子どもの自分」がいるのです。
このように、「子どもの頃の感覚・感情・記憶(チャイルドの自我状態)」を「インナーチャイルド」という「イメージ」に置き換えることで「人生脚本を書き換える(再決断療法)」方法を「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」と言います。
書き換え前の「人生脚本」を理解する
スケープゴートは「身代り役」となって「両親のストレスのはけ口」を担い続けたにもかかわらず、両親から「感謝」や「褒め」の言葉を十分に掛けてもらえない場合が多いため、次第に「『自分の存在価値』を『両親』に認めてもらえるまで『身代り役』として生きていこう!」という「幼児決断」をするようになります。
その後、スケープゴートは「幼児決断」によって決めた「身代り役」を担い続けていきますが、「身代り役」を担い続けているうちに、徐々に「身代り役」であることが当然となってしまい、次第に家族から「身代りの犠牲者(身代り役)を担って当然だ!」と思われるようになります。
とくに、スケープゴートは「兄姉(年上のきょうだい)」が「ヒーロータイプ(英雄役)」である場合が多く、その場合、「優秀な兄姉」に比べて「厄介者の弟妹」という扱いを両親から受けたことで「スケープゴート(身代り役)」となると考えられています。
スケープゴートは、ヒーローとは正反対の行動をとるタイプです。徘徊や暴力などの問題行動を起こしたり、学校の勉強を放棄しテストで極端に悪い成績を取ったりするなど、家族での「悪者」の立場を背負うのが特徴です。悪者の立場であるスケープゴートは、家族の怒りや不満、鬱憤をすべて1人で受け止めます。
また、スケープゴートは「暴言・暴力を振るう父親」と「暴言・暴力を振るわれる母親」の元で育った場合が多く、その場合、母親をかばうために「スケープゴート(身代り役)」となると考えられています。
お母さんに暴力を振るうお父さんを見て、「自分が悪いことをすれば怒りの矛先が自分に向かうから、その間お母さんが救われる」そんな風にお母さんをかばおうと悪役になる子までいます。…(中略)…家族の中でいちばんやさしい子がスケープゴートタイプになるとも言われていて、「悪役の裏でお母さんへの深い愛を持ったひといちばい優しい子。」それが、スケープゴートの真の姿だったりするのです。
なお、「スケープゴートが『身代り役』になる様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「優秀な兄姉(英雄役)」は勉強やスポーツなどで「両親の期待」に応えているのだから、自分は「両親のストレスのはけ口(身代り役)」となって「両親の役」に立たなければならない
- 「父親の暴言・暴力」を受け止め続けて母親が倒れてしまったら家族が崩壊してしまうので、母親を救うために、自分が「母親の身代り(身代り役)」になって「父親の暴言・暴力」を受け止めなければならない
このように、スケープゴートは「両親を精神的に安定させよう、母親を救おう」と「身代りの犠牲者(身代り役)」を長く担い続けることにより、次第に以下のような「人生脚本」を身に付けていきます。
POINT
- 精神的に荒れている人のストレスを受け止めない自分はダメな人間だ!
- 精神的に荒れている人のストレスを受け止める自分はいい人間だ!
- 精神的に荒れている人のストレスを受け止めない自分には存在価値がない
- 精神的に荒れている人を落ち着かせるため、その人たちの「ストレスのはけ口(身代り役)」となることで自分には存在価値が生まれる
- だから自分が存在し続けるためには、精神的に荒れている人の「ストレスのはけ口(身代り役)」を続けなければならない!
このように、「インナーチャイルドセラピー」によって、目を閉じながらゆっくりと「チャイルドの自我状態」に戻ると、上記のような「書き換え前の「人生脚本(無意識の思考パターン)」の存在をはっきりと感じることができます。
とはいえ、「チャイルドの自我状態」に戻る作業は、専門知識と専門技術を必要とする難しい作業ですので、心理カウンセラーなど専門家の協力が必要です。
新しい「人生脚本」へと書き換える
「書き換え前の「人生脚本(無意識の思考パターン)」を感じて、自分にはどのような「生きづらい思考パターン」が存在しているのか?を理解できたら、「チャイルドの自我状態」のまま「人生脚本の書き換え」を進めていきます。
ここでは、「交流分析」の「4つの人生態度」の中から「自他肯定(自分のことも、他人のことも肯定できる人)」に沿って「人生脚本の書き換え」を進めていく「一例」を解説します。
なお、「『自他肯定』に基づく『人生脚本の書き換え』」とは、以下のようなイメージです。
書き換え前
POINT
- 精神的に荒れている人のストレスを受け止めない自分はダメな人間だ!
- 精神的に荒れている人のストレスを受け止める自分はいい人間だ!
- 精神的に荒れている人のストレスを受け止めない自分には存在価値がない
- 精神的に荒れている人を落ち着かせるため、その人たちの「ストレスのはけ口(身代り役)」となることで自分には存在価値が生まれる
- だから自分が存在し続けるためには、精神的に荒れている人の「ストレスのはけ口(身代り役)」を続けなければならない!
書き換え後
POINT
- 今までは、精神的に荒れている人をそのまま放っておくことが怖かった
- だから、精神的に荒れている人のストレスを受け止めることで安心していた自分がいた
- 同時に、今までは精神的に荒れている人のストレスを受け止めることが苦しくもあった
- だから、精神的に荒れている人のストレスを受け止めることを終わりにして安心したいと感じる自分もいた
- だとしたら、精神的に荒れている人のストレスを受け止め続けても、受け止めるのを終わりにしても、どちらも安心できるのでどちらもOK
- だからこれからは、精神的に荒れている人のストレスを受け止めてもOK、受け止めなくてもOK
- だからこれからは、精神的に荒れている人のストレスを受け止めても、受け止めなくても、自分は存在し続けてOK
このように、書き換え前の「人生脚本)」を感じつつ、新たな「人生脚本(思考パターン)」を目を閉じながら「言葉」で復唱していくと、徐々に、新たな「人生脚本(思考パターン)」へと書き換わっていきます。
とはいえ、「チャイルドの自我状態」を保つことも、新たな「人生脚本(思考パターン)」へと書き換えることも、専門知識と専門技術を必要とする難しい作業ですので、心理カウンセラーなど専門家の協力が必要です。
インナーチャイルドセラピーの効果とその後
このように「インナーチャイルドセラピー」は「アダルトチルドレンの克服」に非常に効果的です。
なお、「インナーチャイルドセラピーの効果」をまとめると、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- スケープゴート(身代り)の根本原因である「幼少期のトラウマ」を「安全・確実」に癒すことができる
インナーチャイルドセラピー後は、特に何もしなくても「幼少期のトラウマの自然治癒」が進み、スケープゴート(身代り役)の症状は自然と治まっていく - スケープゴート(身代り役)の症状が再現する原因である「人生脚本」を「安全・確実」に書き換えることができる
インナーチャイルドセラピー後は、特に何もしなくても「新しい人生脚本での生活」が続き、スケープゴート(身代り役)の症状は自然と治まっていく - 「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」は、「幼少期のトラウマの癒し」と「人生脚本の書き換え」を「2つ同時」に取り組むことができる
このように、「インナーチャイルドセラピー」が終わった後は、特に何かをしなくても、スケープゴート(身代り役)の症状は自然と治まっていきます。
そして、スケープゴート(身代り役)の症状が治まっていくと、子どもの頃に体験できなかった「楽しいこと・嬉しいこと」を新たにやってみたいと感じたり、子どもの頃に諦めてしまったことを再びやってみたいと感じたり、自分らしい人生を自然に取り戻していきます。
また、「アダルトチルドレンを克服することで生まれる変化」は、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 親からの自立
- 自己肯定感が高まる
- 適正な人間関係が築ける
- やりがい・生きがいを感じられる
- 恋愛・結婚・子育てに自信が生まれる
なお、「アダルトチルドレンを克服することで生まれる変化」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
スケープゴート(身代り役)克服のお手伝い
スケープゴートは「精神的に荒れている人を落ち着かせたい、自分がその人たちのストレスを受け止めて落ち着かせなかければ」という根は優しい性格である方が多く、子どもの頃から「大切な家族とみんな一緒に笑顔でいたい」「大切な両親と一緒に笑顔でいたい」という大切な望みがあったからこそ「身代り役」を担い続けてきました。
このように、長年、「身代りの犠牲者(身代り役)」を担い続けることで家族の崩壊を防ぎ続けてきてくれた「インナーチャイルド」を、大人になった自分が癒してあげることで、自分で自分を安心させることができ、あなたが笑顔になることで、親や家族も笑顔になっていくでしょう。
当社メンタル心理そらくもは、本記事で解説した「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)による「スケープゴート(身代り役)」の克服」を、「半日セッション(3~4時間)」もしくは「1日セッション(6~7時間)」という「解決志向(短期療法)による対面カウンセリング」でお手伝いをしています。
いつの日か、あなたがより安心して過ごせるようになっていくお手伝いをさせて頂けると嬉しいです。
なお、当社メンタル心理そらくもの「解決志向(短期療法)による対面カウンセリング」については、以下の記事で詳しく解説しています。
また、当社メンタル心理そらくもは、「インナーチャイルドセラピー後のアフターフォロー」も行っておりますので、以下にあわせて紹介します。
「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「克服方法」
アダルトチルドレンが、子どもの頃に身に付けた「機能不全家族での役割」を、アメリカの心理療法家「ウェイン・クリッツバーグ」は「アダルトチルドレンタイプ」としてまとめました。
そして、「スケープゴート(身代り役)」とは、「ウェイン・クリッツバーグ」がまとめた「アダルトチルドレンタイプ(機能不全家族での役割)」のひとつにあたります。
なお、「スケープゴート(身代り役)」以外の「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「克服方法」については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
- POINTスケープゴートの克服は、「感情面」と「思考面」の「両方の取り組み」が必要
- 目を開けて行う「対話型のカウンセリング」では、スケープゴートの克服がうまく行かない場合がある
- 目を閉じて行う「インナーチャイルドセラピー」は、スケープゴートの克服に非常に有効
- スケープゴートンの克服は、「幼少期のトラウマの癒し」と「人生脚本の書き換え」が必要
- 「インナーチャイルドの概念」を用いることで、「幼少期のトラウマの癒し」と「人生脚本の書き換え」が「安全・確実」に行える
- 「インナーチャイルドセラピー」は、「幼少期のトラウマの癒し」と「人生脚本の書き換え」を「2つ同時」に取り組むことができる
- 「インナーチャイルドセラピー」後は、特に何もしなくても、スケープゴート(身代り役)の症状は自然と治まる
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
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なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
関連情報まとめページ
以上、「スケープゴートの克服:インナーチャイルドセラピーによる克服方法」という記事でした。