POINT毒親になる原因を心理学で考えると、①アダルトチルドレン、②インナーチャイルド、③認知の歪み、④未完の感情、⑤返報性の原理、⑥機能不全家族などが考えられます。
心理カウンセラーの寺井です。
「毒親」とは、そもそも「精神医学」や「心理学」などを出展元とする学術用語ではなく、学術的な根拠がない言葉です。
学術的な根拠に沿って考えない限り、毒親になる原因は理解できません。また、物事はひとつの視点だけではなく、いくつかの違った視点で考えることで理解を深めることができます。
よって、毒親になる原因をしっかりと理解するためには、学術的な根拠を持つ「心理学」と「精神医学」の2つの違った視点で考える必要があります。
ちなみに、この記事は「毒親になる原因について『心理学』を根拠に解説した記事」です。
『精神医学』での解説をご希望の方は、先に以下の記事をお読みください。
それでは、毒親になる原因を「心理学」を根拠に解説していきます。
心理学で考える、毒親になる「6つ」の原因
毒親になる原因を「心理学」を根拠に考えると、大きく分けて以下の6つの原因にわけることができます。
POINT
- 「アダルトチルドレン」
- 「傷ついたインナーチャイルド」
- 「禁止令とドライバー」及び「白黒思考」
- 「未完の感情」及び「防衛機制」
- 「返報性の原理」と「世代間連鎖」
- 「機能不全家族」
それでは、以下に「心理学で考える、毒親になる『6つ』の原因」について詳しく解説していきます。
原因①:アダルトチルドレン
子供の頃、親子関係で心が傷ついたことが原因で、親子・家族・学校・仕事・友人・知人・恋愛・結婚など「人間関係への苦手意識」を感じやすい人を、心理学では「アダルトチルドレン」と言います。
アダルトチルドレン(AC)とは、自分は子ども時代に親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことをいいます。自己認識の概念であり、医学的な診断名ではありません。
アダルトチルドレンは「愛着障害」を抱える人
つまり「アダルトチルドレン」とは、子供の頃、親から「不安定な愛着スタイル」を受けて育ったことによって「愛着障害」を抱えている人の別称です。
愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。
引用元:愛着障害(アタッチメント障害)
アダルトチルドレンは「愛情表現」が苦手
このように、人との関りに苦手意識を感じやすい「アダルトチルドレン」は、子育てにも苦手意識を感じやすく、「不安定な愛着スタイル」になりやすい特徴があるため、子供にうまく愛情表現ができないなど、子育てに問題が生じる可能性があります。
よって、「アダルトチルドレン」であることは、毒親になる原因のひとつと言えます。
また、「アダルトチルドレンとは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
原因②:傷ついたインナーチャイルド
子供の頃、親子関係で傷ついた気持ちや、学校のいじめなどで傷ついた気持ちなど、「子供の頃から大人になっても満たされないままの怒り・イライラ・悲しみ・寂しさ・不安・恐怖などのネガティブ感情」を、心理学では「インナーチャイルド」と言います。
インナーチャイルドは、日本語で「内なる子供」と訳されています。心の中に住んでいる子供の自分……といった意味となります。諸説ありますが、「子供の頃の記憶や感情」のことをインナーチャイルドと呼びます。主にネガティブな記憶や、それに伴う感情(親に怒られた、友達にいじめられた、さみしかった、つらかった、孤独を感じた等)が中心です。
引用元:インナーチャイルドとは?
インナーチャイルドは「心の傷」の象徴
つまり「インナーチャイルド」とは、子供の頃、親子関係で心に負った心の傷「トラウマ(心的外傷)」の別称です。
また、「インナーチャイルド」とは、「アダルトチルドレン」が抱える心の傷「トラウマ(心的外傷)」を、言葉による表現ではなく、イメージで表現したものと言い換えることができます。
トラウマとはいわゆる「心の傷」と言われるものです。身体が傷つくことと同じように同じように心も傷ついてしまいます。
傷ついたインナーチャイルドは「心の病気」の原因
また、「トラウマ(心的外傷)」は癒されないまま心に残っていると頻繁にフラッシバックし、「うつ病」「依存症」「躁うつ病」「適応障害」「パニック障害・不安障害」「PTSD」などの「心の病気」を引き起こします。
心の病気とは、ストレスなどが原因となって起こる病気。精神疾患を指して使われる通称です。体と心の両方に症状が現れ、治療が長期にわたる場合も多く、治していくための環境を整えることが重要です。
引用元:心の病気とは?
このように、「トラウマ(心的外傷)」を抱える親は「心の病気」を抱えやすい特徴があるため、子育てに劣等感を感じやすい、子育てに悩みやすい、依存傾向になりやすいなど、子育てに問題が生じる可能性があります。
よって、「傷ついたインナーチャイルド」は、毒親になる原因のひとつと言えます。
また、「インナーチャイルドとは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
原因③:「禁止令とドライバー」及び「白黒思考」
子供の頃、親子関係で身に付けた考え方の中で、「自分は絶対に○○してはいけない!」と自分の感情を抑圧したり、「自分はもっと○○しなければいけない!」と自分を焦らせてしまう考え方を、心理学では「禁止令とドライバー」と言います。
禁止令とは心理学者エリックバーン博士によって開発された自己分析法で、文字通り「〇〇してはいけない」という「禁止」の「命令」のことです。…(中略)…幼いころに親などの養育者から否定的・禁止的な命令や態度を繰り返し受けることで、自らの思考や行動の制限を課してしまうものです。
拮抗禁止令とは、幼少期に親の役割をもつ人から与えられた「〇〇しなさい」「〇〇したほうがよい」「〇〇であるべき」という、いわゆる「〇〇しろ」というメッセージを受けて、そのよう生きていこうと「決断」することで自らに課したものです。…(中略)…ドライバーというその名の通り、その人の行動を駆り立ててしまうのです。
禁止令とドライバーとは「認知の歪み」
つまり「禁止令とドライバー」とは、極端で否定的な考え方である「認知の歪み」の別称です。
認知の歪みとは、誇張的で非合理的な思考パターンである。これらは精神病理状態(とりわけ抑うつや不安)を永続化させうるとされている。
引用元:認知の歪み
極端すぎる認知の歪み「白黒思考」
また、「認知の歪み」のなかでも、「良い or 悪い」「白 or 黒」「0 or 100」「全 or 無」「敵 or 味方」など、すべてを二者択一で考えるかのような、極端な「認知の歪み」を、心理学では「白黒思考(二極思考)」と言います。
白黒思考は「全か無かの思考」「二分法的思考」とも呼ばれるもので、物事を白か黒か、善か悪か、といった極端な立場でしか捉えることが出来ない思考のことを言います。
引用元:白黒思考
認知の歪みは「厳しい子育て」の原因
このように、「認知の歪み」を抱える親は、子供に対して極端に厳しくなったり、極端に甘くなる特徴があるため、「過干渉」「過保護」など、子育てに問題が生じる可能性があります。
よって、「『禁止令とドライバー』および『白黒思考』」は、毒親になる原因のひとつと言えます。
また、「禁止令とドライバーとは何か?」「白黒思考とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
原因④:「未完の感情」及び「防衛機制」
「ストレス」「未練」「気がかり」「後悔」「恨み・憎しみ」「警戒」など、納得がいっていない過去の事柄や、納得がいっていない過去の感情のことを、心理学では「未完の感情」と言います。
納得がいかない思いは、行き場がなくて、心のどこかにモヤモヤしたまま残ってしまいます。いわば出口がなくて迷子になってしまった感情。これを「未完の感情」と呼びます。
未完の感情とは「納得がいっていない気持ち」
「未完の感情」とは、「もっと遊びたかったが10代で妊娠し出産をした…」「追いかけていた夢を諦めて結婚した…」「恋愛相手との結婚を望んだが親に許してもらえず、親が決めた相手と無理に結婚した…」など、「親になる心構えができないまま親となってしまった…」あるいは「納得がいかないまま結婚をしてしまった…」といった「未練・後悔・自責の念」などの別称です。
人への警戒心「防衛機制」
また、「未完の感情」を抱えている人は、「どうせ自分なんて…」と過去の人生に失望を感じている場合が多く、夫婦関係や親子関係において不信感・警戒心が高まりやすい特徴があります。
このように、例え身近な家族に対してであっても、人間関係において二度と傷つかないよう無意識に働く警戒心を、心理学では「防衛機制」と言います。
防衛機制(ぼうえいきせい、英: defence mechanism)とは、受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。
引用元:防衛機制
未完の感情は「投げやりな子育て」の原因
このように、「未完の感情」を抱える親は、子育てが始まっても、結婚・出産したという現実を受け入れられず、子育てに対して投げやりになる特徴があるため、「児童虐待」「ネグレクト(育児放棄)」など、子育てに問題が生じる可能性があります。
また、「防衛機制」が高まっている親は、自らの子供に対しても警戒心を感じやすく、子供に対して疑い深くなる特徴があるため、子供を信用しない、子供に嘘をつく、子供に隠し事をするなど、子育てに問題が生じる可能性があります。
よって、「『未完の感情』および『防衛機制』」は、毒親になる原因のひとつと言えます。
また、「未完の感情とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
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原因⑤:「返報性の原理」と「世代間連鎖」
「お返し」あるいは「仕返し」など、人から何かしらの施しを受けたとき、「お返しをしなくては申し訳ない」あるいは「仕返しをしないと気が済まない」という気持ちになることを、心理学では「返報性の原理」と言います。
「返報性の法則(返報性の原理)」とは、相手から受けた好意などに対し「お返し」をしたいと感じる心理のこと。たとえば、友人や同僚にピンチを救われたら、「次は自分が助けてあげたい」と思うでしょう。一方で、嫌なことをされたら、仕返しをしたい気持ちになることもあります。
返報性の原理とは「親子共依存」の原因
「無償の愛」という言葉があるように、子育てにおいて、親が子供に「愛情」を注ぐことは、本来、親が子供に見返りを求めて行ってるわけではありません。
ですが、毒親と呼ばれる人たちのなかには、「親は子供を育ててあげているのだから、子供は親の言うことを聞いて当然だ!」と、子供に対して「返報性の原理」を求める親がいます。
子供は一人では生きていけません。よって、子供も親に対して、「親に育ててもらっているのだから、お返しをしなくては申し訳ない…」という「返報性の原理」を感じ、親の言う通りに従い続ける場合があります。
こうなると、親は子供を束縛し続けることになり、子供は親に従い続けることになり、親と子は「共依存関係」に陥ってしまいます。
共依存とは、自分自身に焦点があたっていない状態のことです。たとえば、自分の価値を周囲の基準だけを頼りに判断する。自分がどうしたいかではなく、周囲の期待に応えることだけに必死など、他の人の問題を解決することに、いつも一生けん命であること。
引用元:共依存とは
つまり「返報性の原理」とは「親子共依存の原因」になると言えます。
返報性の原理は「世代間連鎖」する
また、人は子育て方法を生まれながらに遺伝では継承せず、生まれた後、子供の頃に親にしてもらった子育て方法を、自分が親になって子供へと繰り返していきます。
このように、親から子へ、子から孫へと、子育て方法を無意識に連鎖してくことを、心理学では「世代間連鎖」と言います。
世代間連鎖とは、親から子へ世代を超えて伝わるもののこと。わかりやすいものでいえば、虐待や貧困などの問題である。しかし、実際はそういった大きな問題だけではなく、親から子への愛情のかけ方や接し方も、連鎖する。
引用元:世代間連鎖を止めるの、やめた
よって、例えば、親が子供の頃、親の親から暴力を受けた経験があると、「自分は子供の頃に親から暴力を受けて耐えてきたのだから、今度は自分が子供に暴力を振るう番だ!だから自分の子供は暴力を受けて当然なんだ!」と「返報性の原理」によって「児童虐待」を繰り返す特徴があります。
世代間連鎖は「毒になる子育て」を連鎖させる原因
このように、「返報性の原理」および「世代間連鎖」は、「子供にとって毒になる子育て方法」を、親から子へ、子から孫へと「負の世代間連鎖」をさせてしまう可能性があります。
よって、「『返報性の原理』および『世代間連鎖』」は、毒親になる原因のひとつと言えます。
また、「世代間連鎖とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
原因⑥:機能不全家族
「夫婦喧嘩」や「口喧嘩」が絶えない家族であったり、「母子家庭」や「父子家庭」など片親のみの家族であったり、子育てや生活がうまく機能しておらず、子供が日常的にストレスを感じている家庭を、心理学では「機能不全家族」と言います。
機能不全家族とは、ストレスが日常的に存在している家族状態のことです。主に親から子どもへの虐待・ネグレクト(育児放棄)・子どもに対する過剰な期待などの様々な要因が家庭内にあり、子育てや生活などの家庭の機能がうまくいっていない状態です。
機能不全家族とは「子供の安全基地として機能していない家族」
「安全基地」とは「心の拠り所」などと呼ばれる通り、子供にとって安心して過ごせる人や場所を意味します。
安全基地とは、アメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した人間の愛着行動に関する概念である。子供は親との信頼関係によって育まれる『心の安全基地』の存在によって外の世界を探索でき、戻ってきたときには喜んで迎えられると確信することで帰還することができる。
引用元:安全基地
子供は親との愛着関係を形成し、「親との愛着関係を安全基地とする」ことで世界を広げることができ、人間として成長することができます。
ですが、機能不全家族とは、子供の成長に欠かせない愛着関係の形成に問題がある家族であり、子供の安全基地として機能していない家族と言えます。
意外な機能不全家族「拡大家族」
「拡大家族」とは、祖父・祖母・叔父・叔母など、子供から見て父親・母親以外の大人が同居している家族のことを指し、「核家族」の反対を意味します。
世帯主夫婦以外の夫婦が同居するものを拡大家族と言う。現代の日本においては、親夫婦、子の夫婦(1組)、孫で構成する大家族がほとんど。
引用元:大家族
「核家族」の場合、両親は自らの体力・気力・愛情を子供にのみ向けられますが、「拡大家族」の場合、父親は「婿・息子」という立場も併せ持ったり、母親は「嫁・息子の妻」という立場を併せ持つことになり、両親は自らの体力・気力・愛情を、祖父・祖母などの子供以外の家族にも向けなければなりません。
そうすると、両親は子供に向ける体力・気力・愛情を奪われてしまったり、子供と触れ合う機会が減ってしまい、結果的に、子供は放置されて寂しい想いをしたり、両親に代わって子供が子供の面倒を見たりと、子供が安心して過ごせない場合があります。
とくに、母親が「嫁」という立場である場合、子育てについて「舅・姑」から干渉されやすく、子育てに自信を失い委縮してしまったり、「舅・姑」の世話で忙しく、子育てがおろそかになってしまう場合があります。
このように、「拡大家族」は、「子供と両親との愛着関係の形成」を、祖父・祖母・叔父・叔母などに邪魔されやすい家族と言えます。
機能不全家族は「アダルトチルドレン」の原因
前述の通り、「アダルトチルドレン」とは、子供の頃の親子関係に問題があったことで「愛着障害」を抱えている人の別称です。
一方、「機能不全家族」とは、「親子関係に問題がある家族」とも言えます。
なので、「機能不全家族」とは、「アダルトチルドレンを生む家族」と言い換えることができ、且つ、毒親になる原因のひとつと言えます。
また、「機能不全家族とは何か?」については、以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
毒親から自分を解放するカウンセリング
さて、ここまで毒親になる原因について解説していきました。
毒親になる原因について、みなさんは理解が深まりましたか?
毒親になる原因について理解を深めることができると、毒親の影響から自分を解放することが可能となります。
毒親育ちの方が毒親から自分を解放する方法として、カウンセリングはとても有効であると言われています。
毒親から受ける悪影響とは、「①毒親との関係で『傷ついた感情』」と「②毒親の子育ての影響で身に付けた『否定的な考え方』」のふたつです。
よって、毒親から解放される方法は、カウンセリングを利用することで、毒親との関係で傷ついた感情を癒しつつ、否定的な考え方を緩め、毒親から精神的に自立することを意味します。
「毒親から自分を解放するカウンセリング」については、以下の記事で詳しく解説していますので、是非、お読みください。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
- POINT「アダルトチルドレン」である親は、愛情表現がうまくでない
- 「傷ついたインナーチャイルド」を抱えている親は、子育てに自信が持てない
- 「禁止令とドライバー」及び「白黒思考」は、極端な子育ての原因になる
- 「未完の感情」及び「防衛機制」を抱える親は、親子の信頼関係を築きにくい
- 「返報性の原理」と「世代間連鎖」は、親子共依存の原因になる
- 「機能不全家族」は、子供の健全な成長を妨げる家族
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以上、「毒親になる原因の解説:『心理学的6つ』の原因」という記事でした。