POINT心理学で考えるインナーチャイルドセラピーとは、「未完の感情」を「未完の完結」へと導き、本来の自分の人生を取り戻す方法です。
心理カウンセラーの寺井です。
インナーチャイルドセラピーとは、子ども時代の自分が心に押し込め、大人になっても抱え続けてきたネガティブ感情(怒り、悲しみ、寂しさ、恐怖、不安、罪悪感、恥ずかしさ、悔しさなど)を、心理カウンセラーやインナーチャイルドセラピストの協力によって安全に解放することで生きづらさを解消し、本来の自分の人生を取り戻していく心理療法です。
この記事は、インナーチャイルドセラピーとは何か?について心理学に沿って説明しています。
心理学で捉えるインナーチャイルドセラピーのポイント
インナーチャイルドセラピーを心理学で簡潔に説明すると「ネガティブ感情の解放を安全に行うための工夫」という表現になります。
よって、心理学で考えるインナーチャイルドセラピーとは、自分のネガティブ感情は、あくまで自分の内面に存在する「自分の持ち物」であると認め、自分のネガティブ感情は責任をもって自分で解放し、本当の自分の人生を取り戻していく方法ということになります。
インナーチャイルドセラピーの心理学でのポイントは、以下の点があげられます。
POINT
- 催眠療法(ヒプノセラピー)を基本に「目を閉じて」行う
- 「未完の完結」を果たし、子ども時代の感情を「統合」する作業
- インナーチャイルドセラピーとは、アダルトチルドレンの克服方法
- インナーチャイルドセラピーは、自宅で1人で続けることもできる
- インナーチャイルドセラピーは、「パペットセラピー」の応用
- インナーチャイルドセラピーの事前準備として、必ず「心理カウンセリング」を行う必要がある
それでは、以下に詳しく説明していきます。
①ヒプノセラピーを用い、目を閉じて行う
インナーチャイルドセラピーとは、心理カウンセラーやインナーチャイルドセラピストの協力のもと、怒り、悲しみ、寂しさ、恐怖、不安、罪悪感、恥ずかしさ、悔しさなど、潜在意識の奥深くにある、子ども時代から傷ついたままのネガティブ感情を言葉や涙で安全に解放していく心理療法です。
ですが、子ども時代から傷ついたままのネガティブ感情を解放することは、強い抵抗感を感じるのもです。
このように、自分の感情に意識を向け解放しようとしても、気が付くと無意識に逸れていってしまう強い抵抗感を、心理学では「防衛機制」と呼びます。
防衛機制(ぼうえいきせい、英: defence mechanism)とは、受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。
引用元:防衛機制
なので、インナーチャイルドセラピーを目を開けたまま行うと「防衛機制」による恥ずかしさや不安によって意識が逸れ集中しづらくなってしまい、インナーチャイルドセラピーが頓挫してしまいます。
よって、インナーチャイルドセラピーは「防衛機制」による恥ずかしさや不安を和らげ集中しやすくするため、「催眠療法(ヒプノセラピー)」を基本に目を閉じて行う必要があります。
ヒプノセラピー(催眠療法)とは、ユングやフロイトの提唱した深層心理学を根源とし、催眠状態を利用して潜在意識に働きかけ、心理的な問題(=悩み)や心因的な症状を改善する心理療法です。
引用元:ヒプノセラピー基礎知識
②インナーチャイルドセラピーは「未完の完結」を果たし、自分の感情を「統合」する作業
子ども時代から抱え続けてきた傷ついたネガティブ感情、つまり過去に生まれ、今でもソワソワ&モヤモヤ&グルグルと続いたままの感情を、心理学では「未完の感情」と呼び、「未完の感情」を解放しスッキリと完結することを、心理学では「未完の完結」と呼びます。
納得がいかない思いは、行き場がなくて、心のどこかにモヤモヤしたまま残ってしまいます。いわば出口がなくて迷子になってしまった感情。これを「未完の感情」と呼びます。
未完の完結:ゲシュタルト療法では、「過去の未完の出来事は、ゲシュタルトとして完成されていないモヤモヤとして残っていて(「抑圧」という精神分析用語は用いられない)それを意識化させ、完結することで症状は無くなる、という。フロイトは、「抑圧した過去を知る」ことで症状がよくなると言った。
そして、「未完の感情」を「未完の完結」へと導き、子ども時代の感情と大人の感情が自然と混ざり合い、落ち着きや自信を取り戻すこと=本来の自分の人生を取り戻すことを、心理学では「統合」と呼びます。
専門用語ではカウンセリングのゴールは「統合」と呼ばれています。意味合いとしては、クライアント(相談者)の方が納得できるゴールを見つける・達することです。
引用元:カウンセリングのゴール、統合とは
よって、インナーチャイルドセラピーとは、「未完の完結」を果たすことによって、子ども時代の記憶と感情を大人の自分が自然と受け入れ、自分自身の「統合」を果たし、本来の自分の人生を取り戻してく作業であると心理学では捉えます。
インナーチャイルド・セラピーは、まさにこの「未完の完結」作業を応用したものです。…(中略)…未完の感情をそのまま引きずるのではなく、「今ここ」で完結(終わらせ、創り直す)ことが、インナーチャイルド・セラピーです。
引用元:インナーチャイルド・セラピー
なお、「未完の感情とは何か?」「未完の完結とは何か?」については、以下の記事で詳しく説明していますので、興味のある方は参考にしてください。
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③インナーチャイルドセラピーは、アダルトチルドレンを克服する方法
また、子ども時代から傷ついたままのネガティブ感情=「未完の感情」を抱え続けている人を、心理学では「アダルトチルドレン」と呼び、「未完の感情は、アダルトチルドレンの原因となる…」と心理学では捉えます。
よって、前述の通り、子ども時代から傷ついたままのネガティブ感情=「未完の感情」を解放することによって「未完の完結」を果たすことが、アダルトチルドレンの克服を意味します。
ですが、「未完の完結」とは理屈では理解できていても、肝心の「未完の感情」=子ども時代から傷ついたままのネガティブ感情は、防衛機制の働きによって思い出そうにも思い出しづらく、なかなか進みません。
よって、「催眠療法(ヒプノセラピー)」を基本に目を閉じることによって、防衛機制による恥ずかしさや不安を和げつつ集中力を高め、大人になっても傷ついたままの子ども時代の自分のイメージを「インナーチャイルド」と見立てて空想することで、大人の自分が、自分のインナーチャイルド=子どもの自分の感情に共感しやすくしたり感情移入しやすくした工夫が、インナーチャイルドセラピーです。
このように、アダルトチルドレンの原因である「未完の感情」を「インナーチャイルド」というイメージに見立て安全に解放し、「未完の完結」を果たすことでアダルトチルドレンの克服を実現することが、インナーチャイルドセラピーの目的であると心理学では捉えます。
④帰宅後、自分1人でも続けることができる
このように、子ども時代から傷ついたままのネガティブ感情=「未完の感情」を見つけ、且つ、解放していく作業は、防衛機制の働きによって、自分1人では混乱を感じやすく、やみくもに行うと危険を伴います。
よって、自分1人では難しいと感じるところまでは、一人ではなく、心理カウンセラーやインナーチャイルドセラピストの協力のもと安全に行う必要があります。
例えば、自転車の乗り始めも、最初は誰かに後ろを押してもらうことで自分1人でも乗りこなせるようになります。
それと同じように、インナーチャイルドセラピーも「最初の一歩」は心理カウンセラーやインナーチャイルドセラピストの協力を得ることによって、帰宅後は自分1人でも安全に続けることができます。
⑤インナーチャイルドセラピーは、「パペットセラピー」の応用
ただ、「自分の子ども時代の感情を『インナーチャイルド』というイメージ見立てる…」という考え方に対しては、正直、訝しさを感じる方も少なくありません。
確かに、「インナーチャイルド」という概念は、心理学に限らず、スピリチュアル系の方たちも用いられる用語ですので、場合によっては違和感を覚える方もいらっしゃるかと思います。
ですが、心理学における「インナーチャイルド」や「インナーチャイルドセラピー」とは、あくまで心のケアをもたらす工夫のひとつです。
そして、「インナーチャイルド」や「インナーチャイルドセラピー」の概念は、「パペットセラピー(パペット療法)」の概念に近いものがあります。
パペットセラピーとは発話機能をもたせたパペット(腹話術人形)を介在させて人にかかわり、コミュニケーションをとることにより、心身への好ましい効果をもたらす活動を指します。…(中略)…これまで、発達障害児、不登校の子どもの心理ケアや、PTSDへの対応、…(中略)…入院治療のストレス下にある子どもへの心理ケアなどによい効果が得られることが実証されてきました。またパペットと自身との対話によるセルフカウンセリングにも使用しています。
引用元:日本パペットセラピー学会
このように、「パペットセラピー」とは、「本物の人間との対話」ではなく、人形やぬいぐるみなど「本物の人間以外の存在」との対話をかさねることで心身に好ましい効果をもたらす心理療法です。
そして、インナーチャイルドセラピーは、人形やぬいぐるみの代わりに「インナーチャイルドというイメージ」との対話をかさねることで心身に好ましい効果をもたらす心理療法です。
よって、インナーチャイルドセラピーとは、「パペットセラピー」と同じく「本物の人間以外の存在との対話」をかさねることで心身に好ましい効果をもたらす心理療法であり、「パペットセラピー」の応用であると言い換えることができます。
また、「本物の人間以外の存在との対話」=すなわち「動物たちとの触れ合い」によって心身に好ましい効果をもたらす「アニマルセラピー」の概念も、「インナーチャイルドセラピー」の概念に近いものがあります。
アニマルセラピーとは、動物とのふれあいによって人の心に癒しを与えることです。ストレス解消になるだけではなく、認知症やうつ病などの症状改善も期待できるとして、医療や福祉などさまざまな分野で取り入れられています。
⑥インナーチャイルドセラピーの事前準備として、心理カウンセリングが必要
さて、ここまでインナーチャイルドセラピーについて説明してきましたが、そもそも、インナーチャイルドセラピーは、目を閉じて子ども時代の感情を解放していく作業です。
なので、心理カウンセラーやインナーチャイルドセラピストがいくら専門家だからと言って、はじめて会った人に対して、自分の子ども時代の感情をすぐに解放し始めることには強い抵抗感を感じるものです。
このように、自分の感情に意識を向けようとしても、気が付くと無意識に逸れていってしまう強い抵抗感を、心理学では「防衛機制」と呼びます。
そして、ある意味、防衛機制とは「インナーチャイルドの警戒心」と言い換えることができます。
よって、会ってすぐに目を閉じたり、会ってすぐにやみくもに感情を引き出そうとしても、防衛機制がかえって強まり、インナーチャイルドに対してより一層の強い抵抗感を与えることになってしまいます。
なので、まずは事前準備として、目を開けて対話=心理カウンセリングを行うことで信頼関係を築き、防衛機制を和らげる=インナーチャイルドの警戒心を和らげる必要があります。
そもそも…心理学でのインナーチャイルドって何?
さて、インナーチャイルドセラピーとひと言で言っても、やみくもに取り組めば何とかなるわけではなく、人の心のしくみ=心理学を理解したうえで安全に取り組む必要があります。
また、インナーチャイルドセラピーを行うためには、その前に、インナーチャイルドについて理解を深めておく必要があります。
以下に、「心理学で考えるインナーチャイルド」について詳しく説明します。
心理学でのインナーチャイルドとは?
前述の通り、心理学でのインナーチャイルドとは、子ども時代、自由な感情表現ができなかったことで傷ついた子どものことを指します。
とくに、子ども時代、怒り、悲しみ、寂しさ、恐怖、不安、罪悪感、恥ずかしさ、悔しさなどのネガティブ感情を自由に表現できなかった子どもは、大人になってもネガティブ感情を表現できず、ストレスを抱えがちとなり、さまざまな生きづらさを感じ続けることになります。
そして、生きづらさを感じることになってしまった原因は、虐待やネグレクトなど、確かに目立った家庭環境にもありますが、両親の不仲、過干渉、過保護などの影響によって、子どもがいい子を演じたり、頑張りすぎたり我慢しすぎたりなど、安心できない家庭環境で育った子どものことも、心理学では総じてインナーチャイルドと考えます。
このように、大人の目線では目だった問題はないと感じる家庭環境であっても、子どもの目線では自由な感情表現がしずらかったと感じる家庭を、心理学では「機能不全家族」と呼びます。
「心理学でのインナーチャイルドの考え方」については、以下の記事で詳しく紹介しています。
インナーチャイルドの診断
なにはともあれ、生きづらさを解消するためには、インナーチャイルドを見つける必要があります。
そして、心理学におけるインナーチャイルドの診断は、「自分は傷ついたインナーチャイルドを抱えていないか?」をチェックするために行います。
また、傷ついたインナーチャイルドを抱えているということは、アダルトチルドレンの症状を抱えていると心理学では考えます。
よって、心理カウンセリングの現場では、以下の「アダルトチルドレン(ac)チェックリスト」を実行することで、「インナーチャイルドがどのくらい傷ついているのか?」をチェックしていきます。
また、インナーチャイルドにはさまざまなタイプがあり、以下の「アダルトチルドレン(ac)タイプ診断」を行うことで、さらに詳細なインナーチャイルドの診断を行うことができますので合わせて紹介します。
まとめ
さいごに、心理学で考えるインナーチャイルドセラピーについて重要ポイントをまとめます。
- POINTインナーチャイルドセラピーを行うためには「防衛機制」を和らげる必要があるため、「催眠療法(ヒプノセラピー)」を基本に目を閉じて行う必要がある
- インナーチャイルドセラピーは、「未完の感情」を「未完の完結」へと導き、過去の自分の感情と今の自分の感情を「統合」し、落ち着きや自信を取り戻す方法
- インナーチャイルドセラピーは、「心の癒し」「自己肯定感」「自分同士の共感」を生み出しやすくするための工夫
- インナーチャイルドセラピーは、自分1人では難しい部分だけ専門家に協力してもらえば、あとは自分1人でも安全に続けることができる
- インナーチャイルドセラピーを行うためには「防衛機制」を和らげる必要があるため、事前準備として、目を開けて対話する「心理カウンセリング」が必要
このように、インナーチャイルドセラピーは、人の心のしくみ=心理学を理解した上で取り組む必要があります。
もし、あなたお1人で難しいと感じた場合は、是非、お手伝いをさせて頂けると幸いです。
また、インナーチャイルドセラピーに関する関連記事を以下に紹介します。
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以上、「心理学で考えるインナーチャイルドセラピーとは?」という記事でした。