イネイブラータイプが直面する問題
POINTイネイブラータイプが直面する問題は、過度な自己犠牲と共依存が特徴的です。
心理カウンセラーの寺井です。
「アダルトチルドレン」とは、子ども時代「機能不全家族」という厳しい環境を生き抜いた生存者=サバイバーとも言えます。
とくに、イネイブラータイプは「支え役」の呼び名の通り、子ども時代から、自分よりも、親をはじめとする周囲の人間たちの存在を優先し、全力で支え続けてきたため、自己犠牲をしやすく、相手との共依存関係に陥りやすい点が特徴です。
この記事は、イネブラータイプが直面する問題について説明しています。
イネイブラータイプ(支え役)が直面する問題
アダルトチルドレン:イネイブラータイプは、優しすぎるが故に「愛のムチ」が振るえず、相手の言いなりになってしまったり、相手を突き放せず、甘やかしてしまう特徴があります。
なので、家族、職場、友人、恋愛などの人間関係において、相手のために尽くしているつもりでも、結果的に、問題を大きくしてしまっている場合があります。
このように、イネイブラータイプが直面する問題のほとんどは「自らが問題を大きくしてしまっていることに、イネイブラータイプ自身が気づけていない…」という傾向があります。
イネイブラータイプが直面する問題は、以下の点があげられます。
POINT
- 依存症の悪化をかえって手伝ってしまう
- 子育てにおいて過保護になりすぎてしまう
- 親の介護で疲れ果ててしまう
- 子どもへの虐待や犯罪も見過ごしてしまう
それでは、以下に詳しく説明していきます。
問題①イネイブリング、依存症の悪化を手伝ってしまう
イネイブリングとは、アルコール依存症、買い物依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症などの依存症者が向き合うべき責任を、同情のあまり、他者が肩代わりしてしまい、依存症者が問題に直面しないで済むようにしてしまう過保護な行動のことを指します。
例えば、アルコール依存症の克服に苦しむ人に同情を感じ、アルコールを与えてしまったり、買い物依存症の克服に苦しむ人に同情を感じ、クレジットカードを与えてしまったり、相手に同情を感じるあまり、相手の依存症克服をかえって邪魔してしまう行動を「イネイブリング」と言います。
アルコール依存症者が飲み続けることを可能にする(周囲の人の)行為を「イネイブリング」、それをしてしまう人のことを「イネイブラー」と言います。
引用元:イネイブリング
イネイブラータイプは、DVを振るう夫に対して「やめてください…もう勘弁してください…」と言いつつも、暴力を許容し続けてしまったり、アルコール依存やギャンブル依存の夫に対して「本当にこれで最後にして下さい…」と言いつつも、お酒やギャンブルのお金を渡してしまったり、子どもが過ちを犯しても、子どもがかわいそうなあまり言いなりになってしまい、子どもの過ちを咎められなかったり…
一見は「深い愛情」と思われる人の行動の裏には、このようなイネイブラータイプの脆い一面が隠れている場合があります。
このように、イネイブラータイプは、依存症に苦しむ家族、友人、恋人に対し、「かわいそう…かわいそう…」と同情を強めてしまい、依存症の悪化の手伝い=イネイブリングをしてしまう場合があります。
問題②子どもに過保護になりすぎてしまう
アダルトチルドレン:イネイブラータイプの特徴として、子どもに過保護になりやすいという点があります。
これは、イネイブラータイプの母親も、かつて、子ども時代はイネイブラータイプであった場合が多いことが原因と言われており、イネイブラータイプは「自分は子ども時代に親に支えてもらったのだから、自分も親となり子どもを支えて当然だ!」という想いを強く抱いています。
よって、子どものわがままを叱れなかったり、子どもを甘やかしすぎてしまったり、過保護になりすぎるあまり、子どもが心理的に自立する機会を奪ってしまうなどの問題に直面する場合があります。
このように、イネイブラータイプが抱く「自分は親に支えてもらったのだから、自分も子どもを支えてあげたい…」という強い想いは、親から子どもへ、子どもから孫へと「世代間連鎖」しやすく、自己満足のために子どもを過保護にしてしまう場合があります。
問題③親の介護で疲れ果ててしまう
アダルトチルドレン:イネイブラータイプは、自己犠牲をすることで相手を支えようとする特徴があります。
よって、年老いた親がいると、「子どもの頃、自分は親に支えてもらったのだから、今度は私が親を支えてあげなきゃ…」と同情を感じ、自分のことは後回しにし、懸命に親を介護しようとする場合があります。
くわえて、イネイブラータイプは、自分1人で耐え続けようとしたり、周囲への協力を得ようとしないため、老老介護などの孤立に陥りやすく、親の介護のため、心身ともにボロボロになってしまうなどの問題に直面する場合があります。
このように、イネイブラータイプは「年老いた親のためなら、自分のことなんてどうなったっていい!」と、親の介護のために極限まで自己犠牲をしてしまう場合があります。
問題④子どもへの虐待や犯罪を見過ごしてしまう
また、イネイブラータイプは、見捨てられ不安の影響を受けやすく、見捨てられること、嫌われること、必要とされなくなることを極端に恐れるあまり、相手の理不尽な行動を注意できない場合があります。
例えば、夫が子どもに虐待をしていたとしても、自分が夫に捨てられることを恐れるあまり、夫による子どもへの虐待を見て向ぬふりをしてしまったり、友人や恋人に嫌われることを恐れるあまり、犯罪に手を貸してしまうなどの問題に直面する場合があります。
このように、イネイブラータイプは、虐待や犯罪などの理不尽な問題に直面しても「嫌われたくない!見捨てられたくない!どんな酷い役回りでも必要とされていたい!」と、相手に見捨てられないことを恐れるあまり、家族や友人や恋人などによる虐待や犯罪を見過ごしてしまう場合があります。
アダルトチルドレン(ac)タイプ診断
さて、アダルトチルドレンは、イネイブラータイプ(支え役)のほかにも、抱えている「インナーチャイルド」の特徴によっていくつかのタイプに分類できます。
アダルトチルドレン(ac)タイプ診断を行うことは、アダルトチルドレンの克服の第一歩です。
以下の記事は、自分が抱えているインナーチャイルドのタイプを診断することができます。
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アダルトチルドレンと「共依存」の関係
アダルトチルドレンの特徴のひとつに、親子関係や恋愛関係などの人間関係において共依存に陥りやすいという特徴があります。
とくに、アダルトチルドレンのイネイブラータイプは「支え役」の呼び名の通り、子どもの頃「機能不全家族」という厳しい環境を生き抜くために「頼りない親を懸命に支え続け、親と共依存関係を築く…」という方法で懸命に生き延びてきた人です。
アダルトチルドレンが共依存関係を築くのは、あくまで自分が生き延びるため…
親に見捨てられてしまったり、親が居なくなってしまったり、親が倒れてしまっては、子どもは死んでしまいます。
よって、機能不全家族に生まれたイネイブラータイプの子どもは、自分が生き延びるために、頼りない親を支え続け、頼りない親との共依存関係を築くことで懸命に生き延びようとします。
つまり、イネイブラータイプをはじめ、アダルトチルドレンが共依存関係を築くのは、あくまで「共依存関係を築くという方法」を用いて「自分が生き延びるという目的」を果たすためです。
よって、これらイネイブラータイプの心理的な特徴、性格上の癖は、あえて親と共依存し、あえて親と運命共同体となることで、機能不全家族という厳しい環境を生き延びようとした、イネイブラータイプの優れた生存本能によるものとも言い換えることができます。
また、イネイブラータイプを始めとする「アダルトチルドレンが生まれる理由」については、以下の記事で詳しく説明していますので、必要な方は参考にして下さい。
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アダルトチルドレンは「サバイバー」
ですので、イネイブラータイプをはじめ、アダルトチルドレンは、ある意味、厳しい環境を懸命に生き抜いてきた「サバイバー」とも言えます。
確かに、イネイブラータイプが直面する問題は、「自己犠牲がすぎる…」「相手に尽くしすぎ…」「相手の言いなりになりすぎ…」とも言えますが、反対に言えば、それだけ、相手のことをとても大切に想い、ともに生きていきたいと願っているとも言えます。
よって、イネイブラータイプが直面する問題は、病気や障害によるものなどではなく、厳しい環境を生き抜いてきたことで身に付けた優れた生存本能=サバイバーの証であり、サバイバーであるアダルトチルドレンは、子ども時代、厳しい環境を生き抜いてきたからこそ「周りの人間をとても大切に想うことができている人」であると、心理カウンセリングの現場では考えています。
なお、アダルトチルドレンを生み出す機能不全家族については、以下の「機能不全家族チェックリスト」でチェックできますので紹介します。
まとめ
さいごに、イネイブラータイプが直面する問題について重要ポイントをまとめます。
- POINTイネイブラータイプが直面する問題は、過度な自己犠牲が根本にある
- イネイブラータイプは、過保護なあまり、子どもの成長を阻害してしまう場合がある
- イネイブラータイプは、親のために、極限を超えた介護をしてしまう場合がある
- イネイブラーはタイプは、ルールやモラルに反してまで相手を支えてしまう場合がある
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
以上、「イネイブラータイプが直面する問題」という記事でした。