POINTイネイブラータイプ(支え役)の恋愛傾向は、①恋人の支え役になる、②対等な恋愛関係が築けない、③依存心が強い人との共依存恋愛、④イネイブリングを行う、⑤ダメンズウォーカー、⑥苦しい恋愛に陥る、⑥恋愛・結婚が遅れる、⑦親代わり恋愛、などがあげられます。
心理カウンセラーの寺井です。
恋愛をはじめとする「人間関係の築き方」には人それぞれの特徴があり、心理学では「愛着スタイル」と言います。
とくに「恋愛関係の築き方の特徴」は「恋愛思考パターン」とも呼ばれ、子どもの頃の「両親との関係性」が大きく影響していると考えられています。
イネイブラーは、子どもの頃から「機能不全家族における『支え役』」として「両親」や「家族」を支えてきたため、大人になっても「他者の手助け」を率先して行うという点が最大の特徴です。
ですので、イネイブラーは「恋愛関係」においても、「『依存心の強い人』や『依存症を持つ人』を献身的に支える」という傾向があり、子どもの頃と同じように「恋人の支え役」になりやすいという傾向があります。
ちなみに、この記事は「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の『恋愛傾向』」についての解説です。
なお、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の『心理的特徴』と『人間関係の特徴』」については、以下の記事で詳しく解説しています。
それでは、アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の「恋愛傾向」について解説していきます。
アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の「恋愛傾向」
前述の通り、イネイブラーの「恋愛思考パターン(愛着スタイル)」は、子どもの頃の「両親との関係性」が大きく影響しています。
また、イネイブラーは子どもの頃から「機能不全家族における『支え役』」として、「苦労する母親」に代わって幼い弟妹の面倒を見たり、「不甲斐ない父親」に代わって母親を支えたり、「自己犠牲」によって家族を支えてきました。
ですので、イネイブラーは「機能不全家族」で育った影響により、大人になって「他者の手助けを率先して行う」という特徴があり、「恋愛関係」においても「『依存心の強い人』や『依存症を持つ人』を献身的に支える」という傾向があります。
よって、イネイブラーは大人になってからの「恋愛関係」においても、子どもの頃と同じように「恋人の支え役」になりやすいという傾向があります。
なお、イネイブラーは「男性」より「女性」の方が多いと考えられていることから、本記事では「イネイブラーの『女性』の恋愛傾向」を「軸」に解説していきます。
また、「イネイブラーの恋愛傾向」は、主に以下の「8つ」があげられます。
POINT
- 恋人の「支え役」になりやすい
- 「対等な恋愛関係」が築けない
- 依存心が強い人との「共依存恋愛」になりやすい
- 「イネイブリング」を行う
- 依存心が強い人との「出会い」と「別れ」を繰り返す
- 「苦しい恋愛」に陥りやすい
- 「恋愛」や「結婚」が遅れてしまう
- 「親代わり恋愛」になりやすい
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①恋人の「支え役」になりやすい
イネイブラーは「支え役」の呼び名の通り、子どもの頃から「母親に代わって幼い弟妹の面倒を見る」ことや「父親に代わって母親を支える」ことに「責任感」や「使命感」を感じつつ、「家族の支え役」であることに「生きがい」を感じながら大人へと成長していきます。
ですので、イネイブラーは大人になったとき、「『誰かを支える・誰かに尽くす』ことができて、初めて『自分の存在価値』を感じることができる」あるいは「『誰かを支える・誰かに尽くす』こどができないと『自分の存在価値』を感じることができない」という心理状態になりやすく、恋愛においても「恋人の支え役」であることに「生きがい」を感じようとする傾向があります。
ですが、もし恋人が「支える必要のない人(精神的・経済的に自立したしっかりと人)」であった場合、イネイブラーは「恋人の支え役」を担うことができないため、恋愛において「自分の存在価値」を感じることができないことを意味します。
よって、イネイブラーは恋愛において「自分の存在価値」を感じるために、無意識に「支える必要のある人(苦しんでいる人)」を恋人に選びやすいと考えられており、とくに「依存心が強い人」や「依存症に苦しむ人」を恋人に選び、「恋人の支え役」になろうとするという傾向があります。
依存心が強い人は自己肯定感が低く、いつも誰かを頼ってしまい、何事も自分で決めることができません。そのため、すべての判断を自分以外の誰かに任せてしまいたいという気持ちから依存に発展してしまいます。
依存症になりやすい人はどんな人ですか?:精神的な問題がある人、意志が弱くて自分を持っていない人、コミュニケーション能力が低い人が陥りやすいと考える人も多いのではないでしょうか。…(中略)…実は依存症に陥ってしまう患者さんの多くは責任感が強く、真面目で自己認識力の高い方なのです。
このようなイネイブラーの恋愛傾向には、「苦労する母親を手助けしたら、母親に感謝と愛情をもらえて幸せだった」という、「子どもの頃の母親との関係性」で身に付けた「恋愛思考パターン」が影響していると考えられています。
このようにイネイブラーは、子どもの頃に「母親との関係性の影響」で身に付けた「恋愛思考パターン」の影響によって、無意識に「苦しんでいる人」を恋人に選びやすいという傾向があります。
以上のことから、「恋人の『支え役』になりやすい」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
②「対等な恋愛関係」が築けない
このように、イネイブラーは「恋人の支え役」であることで「自分の存在価値」を感じることができ、「恋人の支え役」であることで「精神的な安定」を維持するという傾向があります。
反対に言えば、イネイブラーが「精神的な安定」を維持するためには「恋人の支え役」であることが「必要不可欠」となってしまうと言い換えることができます。
また、イネイブラーには「苦しんでいる人を支える『支え役』」に加えて、「苦しめられてもその人を見捨てず救おうとする『救済者』」という側面もあります。
ですので、イネイブラーは「依存症に苦しんでいる人」や「暴力・モラハラ・ギャンブル・浮気をする人(自分を苦しめてくる人)」に惹かれやすいという傾向があり、「依存症に苦しんでいる人」や「暴力・モラハラ・ギャンブル・浮気をする人(自分を苦しめてくる人)」に対して、「この人を救えるのは自分しかいない!」という強い「責任感」や「使命感」を感じやすいという傾向があります。
よって、イネイブラーは「依存症に苦しむ恋人に一方的に尽くして支える」あるいは「暴力・モラハラ・ギャンブル・浮気など、自分を苦しめてくる恋人に一方的に従って耐える」など、恋愛において「対等な恋愛関係」ではなく「上下の恋愛関係」になりやすいという傾向があります。
現代も対等な関係ではないカップルは多い、というよりむしろ多数派なのではないでしょうか?
- 彼氏が彼女をバカにする
- 長々と説教をする
- 強すぎる束縛をする
- 嫌なことをやめてくれない
- NOということができない
- 浮気をしても開き直られる、などなど
このようなイネイブラーの恋愛傾向には、「父親を支える母親」と「母親に支えられる父親」あるいは「父親に苦しめられる母親」と「母親を苦しめる父親」という、「子どもの頃の両親の関係性の影響」で身に付けた「恋愛思考パターン」が影響していると考えられています。
このようにイネイブラーは、子どもの頃に「両親の関係性の影響」で身に付けた「恋愛思考パターン」の影響によって、無意識に「恋人を支えながら一方的に尽くす関係性」あるいは「恋人に苦しめられながら一方的に従う関係性」のどちらかになりやすいという傾向があります。
以上のことから、「『対等な恋愛関係』が築けない」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
③依存心が強い人との「共依存恋愛」になりやすい
恋愛における「恋人との関係性の築き方の特徴」を「愛着スタイル」と言い、一般的には「恋愛思考パターン」とも呼ばれ、子どもの頃の「両親との関係性」が大きく影響していると考えられています。
また「恋愛思考パターン」について、「男性は母親に似た女性に惹かれやすい」あるいは「女性は父親に似た男性に惹かれやすい」と言われることがありますが、反対に「母親みたいな人とは付き合いたくないと感じる男性」や「父親みたいな人とは付き合いたくないと感じる女性」が多くいらっしゃるのも事実です。
これは、子どもの頃、「異性の親(男児の母・女児の父)」に「否定的な反応」をされた場合は、「父親・母親のような異性とは付き合いたくない」と感じるようになり、「異性の親(男児の母・女児の父)」の「情緒的な支持(優しい一面)」に触れることができた場合は、「父親・母親のような異性に惹かれやすくなる」と考えられています。
例えば、苦しんでいる母親を支え続けてきたイネイブラーの女性にとって、父親は「母親に苦労をかける依存心の強い男性」である場合が多く、「暴言・暴力・放置・指図・命令・モラハラ・浮気・不倫」など「問題行動を起こす男性」である場合が多いです。
このような父親であった場合、子どもは父親の「情緒的な支持」を受けられなかったことになり、本来であれば(イネイブラーでなければ)、大人になって父親のような男性との付き合いを避けるようになると考えることができます。
ですが、イネイブラーの女性は「父親に献身的に尽くす母親の姿」に「尊敬」に近い感情を抱きやすいため、「尊敬」の対象である「母親の価値観」をそのまま真似しやすく、どのような父親であったにせよ、「母親が愛した男性(父親)と同じような人」に惹かれやすくなると考えられています。
なお、イネイブラーのように「他者の価値観」をそのまま真似して自分に取り込むことを、心理学では「取り入れ」と言います。
「取り入れ」は、他者の内にある考え方、価値観、感情などを自分の内に取り入れ、自分のものとする心の働きです。他者の一部を取り入れて真似るもので、発達過程においては、親や周囲の人間の好ましく感じる部分を取り入れることが多いため、道徳心や良心の形成に役立つものでもあります。
また、イネイブラーの女性にとって父親は、「尊敬する母親に苦労をかける存在」ではあるのですが、反対に言えば、母親に苦労をかける父親とは「自分に『母親の支え役』を与えてくれる人」あるいは「自分に『存在価値を与えてくれる人』」と言い換えることができます。
ですので、イネイブラーの女性は、子どもの頃に父親から「情緒的な支持」を受けられなかったとしても、「父親に献身的に尽くす母親の姿」に「尊敬」を抱き続けてきた影響により、大人になって無意識に「母親が愛した男性(父親)と同じような依存心の強い人に愛されたい」という「恋愛思考パターン」を身に付けている場合が多く、そのぶん「父親に似た依存心の強い男性に惹かれやすい」という傾向があります。
なお、イネイブラーの恋愛傾向のように、「恋人に必要とされること(恋人の支え役であること)で自分の存在価値を感じようとする心理状態」を「共依存恋愛」と言います。
共依存恋愛とは、自分をかえりみずに相手のために必死になっている人と、そうした相手に依存している人の恋愛関係を指します。男性が女性に依存する場合もあれば、女性が男性に依存する場合もありますし、同性愛の場合も共依存関係は成立します。
このように、イネイブラーは「子どもの頃の父親との関係性の影響」で身に付けた「恋愛思考パターン」の影響によって、無意識に「父親に似た依存心の強い人」との「共依存恋愛」になりやすいという傾向があります。
以上のことから、「依存心の強い人との『共依存恋愛』になりやすい」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
なお、「共依存恋愛をする女性の特徴」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
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④「イネイブリング」を行う
イネイブラーは「機能不全家族で育った影響」により、「支える必要のある依存心の強い人」を恋人に選び、「恋人の支え役」をこなすことで「安心」や「自信」を感じようとします。
ですので、イネイブラーは「安心」や「自信」を感じようとすればするほど恋人に尽くしすぎてしまい、かえって恋人の「依存心」を助長してしまうという特徴があります。
反対に言えば、イネイブラーとは、一見「苦しんでいる恋人を支える献身的な人」に映りますが、反面「恋人を信じて見守ることができず、恋人の世話を焼きすぎてしまう人」あるいは「自分の存在価値を感じるために恋人の世話を焼きすぎてしまい、恋人の精神的自立を阻害してしまう人」と言い換えることができます。
よって、恋人が何らかの「依存症」を抱えている場合、イネイブラーは恋人の世話を焼きすぎてしまい、かえって恋人の「依存症」を「悪化」させてしまう場合すらあります。
なお、恋人の世話を焼きすぎるあまり、かえって恋人の問題(恋人の依存症)を悪化させてしまう行動を「イネイブリング」と言います。
イネイブリングとは「良かれと思って本人を助けようとする行動が、結果的に相手の問題・症状を助長してしまう行動」のことを指します。
また、「イネイブラーが行うイネイブリング」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「アルコール依存症」や「薬物依存症」の「禁断症状」に苦しむ恋人に対して、「かわいそう…」とお酒・薬物を渡してしまう
- 「買い物依存症」の「禁断症状」に苦しむ恋人に対して、「しょうがない…」とクレジットカードを渡してしまう
- 「ギャンブル依存症」の恋人に「お金の無心」をされると、「これで最後だよ…」とお金を渡してしまう
- 「回避依存症:独裁者タイプ」の恋人から「暴力・暴言」を振るわれると、「ごめんなさい…」と耐え続けてしまう
- 「回避依存症:搾取者タイプ」の恋人から「お金・体の関係・身の回りの世話」などを要求されると、「どうしよう…」と迷いながらも応じてしまう
- 「回避依存症:ナルシストタイプ」の恋人から「指図・命令・モラハラ」を受けると、「わかりました…」と言いなりになってしまう
このように、イネイブラーは恋人に尽くしすぎるあまり、「恋人の問題(恋人の依存症)」をかえって「悪化」させてしまうという特徴があります。
以上のことから、「恋人の依存症を悪化させてしまう(イネイブリングを行う)」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
⑤依存心の強い人との「出会い」と「別れ」を繰り返す
イネイブラーは「恋人の支え役」をできているときは「自分の存在価値」を感じることができ「自己肯定感」が高まるのですが、「恋人の支え役」をできてないときには「自分の存在価値」を感じることができず、「自己肯定感」は低くなり「自分に自信が持てない」という心理状態となります。
ですので、イネイブラーの女性の場合、自分に自信を持つためには「彼氏の支え役」を続ける必要があり、「彼氏の支え役」を続けるためには「支える必要のある男性(依存心の強い男性)との恋愛」を続ける必要があると言えます。
反対に言えば、イネイブラーの女性は「依存心の強い男性」である彼氏に「しっかりした男」になってもらいたいわけではなく、むしろ、彼氏が「しっかりした男」になってしまうと「恋人の支え役」を続けられなくなってしまい、「自分の存在価値」を感じられなくなってしまいます。
ですので、イネイブラーの女性は、あくまで彼氏には「依存心の強い男性」のままでいてほしいため、「依存心の強い男性」である彼氏が「しっかりした男」にならない程度に「恋人の支え役」を続けるという傾向があります。
なお、「自分の存在価値」を感じたいがために、「依存心が強い男性」を生み出してしまう女性を「ダメンズメーカー」と呼ぶ場合があります。
同じ環境で育ってもみんなが「共依存」になるわけではありません。誰かに必要とされたいがために、逆にダメンズを作ってしまうという、ダメンズウォーカーならぬ「ダメンズメーカー」だと私は思っています。
それでも、彼氏が「しっかりした男」なってしまった場合、イネイブラーの女性は「支え役」を続けられないことから彼氏への興味を急激に失って別れてしまい、新たな「依存心の強い男性」へと興味を移していきます。
なお、「自分の存在価値」を感じたいがために、「依存心の強い男性」との恋愛を繰り返す女性を「ダメンズウォーカー」と呼ぶ場合があります。
ダメンズウォーカーとは、なぜかダメな男ばかりに惹かれて、ダメ男とばかり恋愛を繰り返してしまう女性のことです。
以上のことから、「依存心の強い人との『出会い』と『別れ』を繰り返す」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
⑥「苦しい恋愛」に陥りやすい
とはいえ、イネイブラーは「問題行動を起こす恋人」に対して全く何も感じないというわけではなく、内心では「不安」や「不満」を感じてはいます。
ですが、イネイブラーは「問題行動を起こす恋人」に対して「No」と言えず、「不安」や「不満」を溜め込んでしまうという傾向があります。
くわえて、例え「問題行動を起こす恋人」であったとしても、「恋人」を失ってしまっては、そもそも「恋人の支え役」や「恋人の救済役」ができなくなってしまい、イネイブラーは「自分の存在価値」を感じられなくなってしまいます。
ですので、イネイブラーは「一緒にいるのも苦しいが、別れるも苦しい…」など、「本心からくる感情」と「依存心からくる感情」が心の中で激しく対立してしまい、非常に「苦しい恋愛」に陥りやすい傾向があります。
このとき、さまざまな感情が心で入交り、グルグルと苦しくなっている心理状態を「コンフリクト(葛藤)」と言います。
コンフリクトとは、2つ以上の欲求を持っていて、どれを満たすのか迷う状態のことをいいます。そして、うまくいきそうな恋愛がダメになるのは、コンフリクトが関係しているのです。
また、イネイブラーは子どもの頃から自分の感情を抑圧して「家族の支え役」であることを優先してきた影響で、大人になっても「自分の感情を表現する」ことが苦手であり、そのぶん「恋人との意思疎通」がうまく行かず、ストレスを溜め込みやすいという傾向があります。
このように、イネイブラーは「自分の感情を表現する」ことが少ないぶんだけ「無表情」である場合が多いため、内心では「苦しい葛藤」や「傷ついた感情」を抱えていたとしても恋人に気づいてもらえない場合が多く、そのぶん「苦しい恋愛」に陥りやすいという特徴があります。
以上のことから、「苦しい恋愛に陥りやすい」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
⑦「恋愛」や「結婚」が遅れてしまう
イネイブラーは、子どもの頃から「家族が穏やか」であることを願い続つつ、「苦しんでいる家族」を優しく支え続けながら大人へと成長してきました。
とくに、イネイブラーの女性は、子どもの頃から苦労する「母親」を常に気に掛けて優しく支えながら、いつの日か「母親」と一緒に笑って穏やかに過ごせることを願い続けてきたと言えます。
ですが、大人になっても「母親」が「気がかり」状態であると、イネイブラーの女性は「自分のことより、まずは『母親』を笑顔にしてあげなきゃ!」という「責任感」や「使命感」を引き続き感じ続けることになり、大人になっても「母親」を献身的に支え続けるという特徴があります。
とはいえ、「イネイブラーの母親」は「共依存症者」である場合が多く、「共依存症者」は「見捨てられ不安」が強く一人ぼっちになることを極端に恐れます。
ですので、「イネイブラーの母親」は、子どもが精神的な自立を果たして自分の手元から離れて行ってしまうことを極端に恐れるあまり、無意識に「病弱」を演じたり、無意識に「苦労する様子」を演じることで、子どもを「束縛」して自分の手元に居させようとするという傾向があります。
ちなみに、「病弱」や「苦労する様子」を演じることで「娘」を「束縛」するという点は、「毒親である母親の特徴」のひとつです。
そうすると、イネイブラー女性は「苦労する母親」や「苦しんでいる父親」や「不憫な兄弟姉妹」への「気がかり」が強まってしまい、家族のなかで自分だけが幸せになることへの「罪悪感」を感じるようになります。
なお、「イネイブラーの女性が感じる幸せになることへの罪悪感」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 苦労する「母親」を放っておいて、自分だけ幸せになるわけにはいかない
- 苦しんでいる「父親」を放っておいて、自分だけ幸せになるわけにはいかない
- 「兄弟姉妹」の将来を考えると、自分だけ幸せになるわけにはいかない
このように、イネイブラーの女性は「父親・母親・兄弟姉妹(家族)」への「気がかり」を子どもの頃から強く感じ続けているため、そのぶん「父親・母親・兄弟姉妹(家族)」を差し置いて自分だけ幸せになることに対する「強い抵抗感」を感じやすいという傾向があります。
なお、イネイブラーの女性のように、「幸せになるのが怖い」という恐れや、「幸せになってはいけない」という罪悪感を感じることを「幸せ恐怖症」と呼ぶ場合があります。
幸せ恐怖症は一般的に「幸せに対する、もしくは幸せになることに対する不合理な強い恐怖感」と言われているよ。たとえば「自分は幸せになる資格はない」とか「幸せは不幸の前触れのように感じる」など想像してしまい、幸せになる状況を回避しようとする状態を指すんだ
このように、イネイブラーの女性は「幸せになることへの罪悪感」を感じやすいため、「恋愛」や「結婚」が遅れてしまうという傾向があります。
以上のことから、「『恋愛』や『結婚』が遅れてしまう」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
⑧「親代わり恋愛」になりやすい
イネイブラーは「機能不全家族に生まれた影響」により、子どもの頃から母親を手助けし、父親を支え、家族を優しく支えてきました。
ですが、例え、献身的で優しいイネイブラーと言えども、「機能不全家族」ではなく「健全な家族」に生まれていれば、母親に甘え、父親に褒められ、家族と楽しみながら健やかに大人へと成長できていたかもしれません。
ですので、イネイブラーに限らず、アダルトチルドレンの心の奥底には、「健全な家族」に生まれていれば無条件で満たされるはずだった「甘え欲求(親に甘えたかった気持ち)」や「承認欲求(親に褒められたかった気持ち)」が、大人になっても満たされないまま心に残り続けており、恋愛をはじめ、人間関係全般にさまざまな影響を及ぼしていると考えられています。
そして、アダルトチルドレンは、子どもの頃、両親に満たしてもらえなかった「甘え欲求」や「承認欲求」を、大人になって「恋愛関係」で満たそうとすると考えられています。
なお、アダルトチルドレンのように、子どもの頃、両親に満たしてもらえなかった「甘え欲求」や「承認欲求」を、大人になって「恋愛関係」で満たそうとすることを「親代わり恋愛」と言います。
親から得たかった愛情が得られなかった時、恋人を親代わりにして得られなかった愛情を得ようとすることがあります。それは実際の親から愛情をもらうのが困難な時、代理的に親代わりになってもらうのです。
また、イネイブラーの女性は、子どもの頃から「母親」に献身的に支えてきたことで、「母親」から「ありがとうね…」「助かったわ…」という「感謝」や「褒め」の言葉を掛けてもらえていることが多く、ある程度「母親の愛情」は得られている場合が多いです。
ですが、イネイブラーの女性は、子どもの頃に「父親」の「優しい一面」に多少触れることはあったとしても、「父親に存分に甘えられた・父親に助けてもらった・父親を頼って安心できた・父親に褒めてもらって嬉しかった」という経験が極めて少ないため、恋愛において「父親代わり」を求めるという傾向があります。
そして、イネイブラーの女性の場合、「父親ほど年上の男性」との「親代わり恋愛」であれば、相手の健康面を支えたり相手を献身的な優しさで手助けすることができ、お互いに心が満たされて豊かな恋愛関係となる場合がありますが、「同世代の男性」との「親代わり恋愛」であると、相手に一方的に尽くしたり、相手に一方的に従うなど、「対等ではない恋愛関係」となってしまい「共依存恋愛」に陥ってしまう場合があります。
このように、イネイブラーの女性は「父親の愛情不足の影響」により、恋愛において「父親代わりを求める」という傾向があります。
以上のことから、「親代わり恋愛になりやすい」という点は、「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」のひとつと言えます。
なお、「親代わり恋愛」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にしてください。
アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の「恋愛思考パターン」
アダルトチルドレンに限らず、恋愛をはじめとする「人間関係の築き方」には、人それぞれの特徴があります。
なお、恋愛をはじめ「親子・家族・友人・夫婦・職場」などの「人間関係の築き方」の人それぞれの特徴を、心理学では「愛着スタイル」と言い、とくに「恋愛関係の築き方の特徴」は「恋愛思考パターン」とも呼ばれ、子どもの頃の「両親との関係性」が大きく影響していると考えられています。
「愛着スタイル」とは、恋愛を含む人間関係において、人とどんな結びつきを持ちたいのか、どのような関係が心地よく感じるのかを表す傾向を指します。…(中略)…この傾向は、幼少期の保護者との関係が大きく影響している。
以上のことから、イネイブラーを始めとする「アダルトチルドレンの恋愛傾向」には、「機能不全家族」で育った影響が密接に関わっていると言えます。
とくに、イネイブラーは「苦労する『母親』を懸命に支える『娘』」という場合が多く、子どもの頃から苦労する母親を心配し、母親の手助けをすることが多かったため、大人になって「献身的で優しい性格の女性」になる場合が多いです。
そのため「イネイブラーの女性」は、恋愛において「依存心の強い男性」あるいは「依存症を持つ男性」を献身的に支えてしまうなど、知らず知らずのうちに、さまざまな問題に巻き込まれてしまうという点が特徴的と言えます。
そして、恋愛においてイネイブラーがさまざまな問題に巻き込まれてしまう根本原因には、子どもの頃に「機能不全家族で育った影響」が密接に関わっており、子どもの頃の「両親との関係性」が大きく影響していると考えられています。
なお、イネイブラーは「男性」より「女性」の方が多いと考えられていることから、本記事では「イネイブラーの『女性』の恋愛思考パターン」を「軸」に解説していきます。
また、「イネイブラーの『女性』の恋愛思考パターン」は、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 母親との関係性の影響
「苦労する母親を支えてきた」という「母親との関係性」から、大人になって、苦しんでいる人を支えることで愛されようとする - 両親の関係性の影響
「依存心の強い父親」と「依存心の強い父親を献身的に支える母親」という「両親の関係性」から、大人になって、依存心の強い人を献身的に支えることで愛されようとする - 父親との関係性の影響
「依存心の強い男性に献身的に尽くす」という「母親の価値観を取り入れた影響」から、母親が愛した男性(父親)と同じような依存心の強い人に愛されようとする
続きは、以下の記事でさらに詳しく解説しています。
「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「恋愛傾向」
アダルトチルドレンが、子どもの頃に身に付けた「機能不全家族での役割」を、アメリカの心理療法家「ウェイン・クリッツバーグ」は「アダルトチルドレンタイプ」としてまとめました。
そして、「イネイブラー(支え役)」とは、「ウェイン・クリッツバーグ」がまとめた「アダルトチルドレンタイプ(機能不全家族での役割)」のひとつにあたります。
なお、「イネイブラー(支え役)」以外の「アダルトチルドレンタイプ」それぞれの「恋愛傾向」については、以下の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
「アダルトチルドレン:イネイブラー(支え役)の恋愛傾向」としては、以下の点があげられます。
- POINT依存心が強い人・依存症に苦しむ人を恋人に選びやすく、恋人の「支え役」になりやすい
- 恋愛において、一方的に尽くす・一方的に従うなどの関係になりやすく、「対等な恋愛関係」が築けない
- 父親のような依存心の強い人に惹かれやすく、依存心の強い人との「共依存恋愛」になりやすい
- 恋人に尽くしすぎるあまり、恋人の依存症を悪化させてしまう(イネイブリングを行う)
- 自分の存在価値を感じたいがために、依存心の強い人との「出会い」と「別れ」を繰り返す
- 「苦しい葛藤」や「傷ついた感情」を抱えていても、恋人に気づいてもらえず「苦しい恋愛」に陥りやすい
- 「幸せになることへの罪悪感」を感じやすく、「恋愛」や「結婚」が遅れてしまう
- 子どもの頃の「親の愛情不足」の影響で、「親代わり恋愛」になりやすい
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
関連情報まとめページ
以上、「アダルトチルドレン(AC)イネイブラー(支え役)の『恋愛傾向』」という記事でした。