POINTロストワンは「長男・長女」に少なく「末っ子」に多いという傾向がありますが、「きょうだい児」や「ヤングケアラー」など、「家庭環境」によっては「長男・長女」でもロストワンとなる場合があります。
心理カウンセラーの寺井です。
「機能不全家族」とは「子どもが日常的に『親の愛情不足』を感じている家族」を指し、機能不全家族で育った「アダルトチルドレン」とは「親の愛情が慢性的に不足している家庭で育った子ども」と言い換えることができます。
ですので、「機能不全家族」において「最初に生まれた子どもである『長男・長女』」は「不足している愛情」を少しでも補おうと、「親に対してあえて特徴的な行動をとる」ことで親の関心を引き、親の愛情を得ようとする傾向が強いため、「親に対してあえて特徴的な行動をとらない『ロストワン』になる可能性が低い」と考えられています。
ですが、「弟妹(年下のきょうだい)が病弱であったり何らかの障害を持っている」あるいは「親が体力的にも精神的にも手一杯になっている」など、「家庭環境」によっては「長男・長女」でもロストワンとなる場合があると考えられています。
この記事は、ロストワン(いない子)が「長男・長女」に少なく「末っ子」に多い理由について解説しています。
ロストワン(いない子)が「長男・長女」に少なく「末っ子」に多い理由
「アダルトチルドレン」とは「機能不全家族に育った人」を指す言葉です。
そして「機能不全家族」とは「『家庭の本来の働き』がうまく機能していない家族」を指す言葉であり、「子どもが日常的に『親の愛情不足』を感じている家族」を指します。
機能不全家族とは、家庭内に存在するはずの愛情や安全が脅かされている家庭のことです。その原因は、家庭内の虐待や愛情不足、家族構成による機能不全など様々です。
反対に言えば、「アダルトチルドレン」とは「親の愛情が慢性的に不足している家庭で育った子ども」と言い換えることができます。
ですので、「アダルトチルドレン」は「不足している愛情」を少しでも補おうと、さまざまな「役割(親の手助け)をこなすことで親の関心を引き、親の愛情を得ようとする」と考えられています。
機能不全家庭で育つ子どもがアダルトチルドレンになる理由は、「それでも、過酷な環境を生き延びる生きのびるため」。子どもは無意識のうちに家庭で役割を演じるようになります。
また、親の愛情を得ようとするために「アダルトチルドレンがこなす役割」のことを「アダルトチルドレンタイプ」と言います。
なお、本サイトにおける「アダルトチルドレンタイプ」は、以下の「7つ」を使用しています。
POINT
- 「ヒーロー(英雄役)」
「親や家族に期待・評価される」ことで親の愛情を得ようとする - 「スケープゴート(身代り役)」
「親や家族の身代わりとなって悪者になる」ことで親の愛情を得ようとする - 「ロストワン(いない子)」
「自分の存在価値を消す」ことで親の愛情を得ようとする - 「クラウン・ピエロ(道化・おどけ役)」
「親や家族のネガティブな雰囲気を和ませる」ことで親の愛情を得ようとする - 「ケアテイカー(世話役)」
「先回りして親や家族の世話をする」ことで親の愛情を得ようとする - 「イネイブラー(支え役)」
「親や家族を支え、親や家族に尽くす」ことで親の愛情を得ようとする - 「プラケーター(慰め役)」
「親や家族をなだめ、親や家族を慰める」ことで親の愛情を得ようとする
このように、ロストワン(いない子)以外の「アダルトチルドレンタイプ」は「あえて特徴的な行動をとることで親の関心を引き、親の愛情を得よう」としますが、ロストワン(いない子)だけは「あえて特徴的な行動をとらず、自分の存在価値を消し、親に迷惑を掛けないことで親の愛情を得よう」とする点が特徴的です。
それでは、「ロストワン(いない子)が『長男・長女』に少なく『末っ子』に多い理由」について、以下に詳しく解説していきます。
ロストワンが「長男・長女」に少ない理由
「機能不全家族」において「最初に生まれた子どもである『長男・長女』」は「不足している愛情」を少しでも補おうと、親に対して必死にアピールをすることで「親の関心を引き、親の愛情を得よう」とすると考えられています。
そのため、「機能不全家族に生まれた『長男・長女』」は「ヒーロー(英雄役)」や「ケアテイカー(世話役)」など、「親に対してあえて特徴的な行動をとる『アダルトチルドレンタイプ』になりやすい」と考えられています。
反対に言えば、「親に対してあえて特徴的な行動をとらない『ロストワン』」は「親に対するアピールが不足する」ことになるため、そのぶん「親の関心を引けず、親の愛情を得られない場合が多い」と考えられます。
このように、「機能不全家族に生まれた『長男・長女』」は「親に対してあえて特徴的な行動をとる『アダルトチルドレンタイプ』になる可能性が高い」と言える反面、そのぶん「親に対してあえて特徴的な行動をとらない『ロストワン』になる可能性が低い」と言えます。
ロストワンが「末っ子」に多い理由
このように、機能不全家族に生まれた子どもは「長男・長女」など「生まれ順」が早い子どもほど、「親に対してあえて特徴的な行動をとる『アダルトチルドレンタイプ』になる可能性が高い」と言えます。
反対に言えば、あとから生まれた「中間子」や「末っ子」が「兄姉(年上のきょうだい)」と同じように「あえて特徴的な行動」をとったとしても、「先に生まれた『兄姉(年上のきょうだい)』の陰に隠れてしまい、いつまでも親の愛情を得られない可能性がある」と言えます。
ですので、「中間子」や「末っ子」など「生まれ順」が遅い子どもは、あえて「兄姉(年上のきょうだい)とは違う『アダルトチルドレンタイプ』になる可能性が高い」と考えられています。
なお、「『生まれ順が遅い子ども』がロストワンになる様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
- POINT「長男」は「ヒーロータイプ(英雄役)」で勉強やスポーツなどで優秀な成績を収めており、親から期待されている
- 「次男」は優秀な「長男」に対して劣等感を感じ、その影響で「スケープゴート(身代り役)」となって荒れており、親から心配されている
- 荒れている「次男」のケアに手一杯で子育てに余裕のない親は、「末っ子」のことを「おとなしい子・手の掛からない子」として扱うため、「末っ子」は親の言葉に従って「ロストワン(いない子)」となり、親の負担を減らすことで親の関心を引き、親の愛情を得ようとする
このように、機能不全家族に生まれた「中間子」や「末っ子」は、あえて「兄姉(年上のきょうだい)とは違う『アダルトチルドレンタイプ』になる可能性が高い」と言え、とくに「一番最後に生まれた『末っ子』は、親に対してあえて特徴的な行動をとらない『ロストワン』になる可能性が高い」と言えます。
「長男・長女」が「ロストワン(いない子)」になる場合
このように、ロストワンは「『長男・長女』に少なく『末っ子』に多い」という傾向があります。
ですが、「弟妹(年下のきょうだい)が病弱であったり何らかの障害を持っている」あるいは「親が体力的にも精神的にも手一杯になっている」など、「家庭環境」によっては「長男・長女」でもロストワンとなる場合があります。
なお、「『長男・長女』がロストワンになる家庭環境」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「きょうだい児」である場合
- 「ヤングケアラー」である場合
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①「きょうだい児」である場合
ロストワンは、基本的には「『長男・長女』に少なく『末っ子』に多い」という傾向がありますが、家庭環境によっては「長男・長女」でもロストワンとなる場合があり、とくに「『弟妹(年下のきょうだい)』が『身体障害、知的障害、精神障害、発達障害』などを持つ『障害児』であった場合、『長男・長女』でもロストワンとなる可能性がある」と考えられています。
また、このような「『障害児』を兄弟姉妹に持つ子ども」を「きょうだい児」と言います。
障害のある子の兄弟姉妹のことを「きょうだい児」と呼びます。きょうだい児には、「障害のある子に手がかかるため親に甘えられない」「きょうだいのことでいじめられる」など、独特の悩みがあります。
このように「兄弟姉妹」が「障害児」であった場合、当然のことながら「親の関心」は「障害児」の方へと向いていきます。
反対に言えば、「障害児」を兄弟姉妹に持つ「きょうだい児」は「健常児」であるというだけで、「親から放置される」ことが多くなったり、「親の支え役を担わされる」ことが多くなったり、「障害児の世話役を担わされる」ことが多くなるという傾向があります。
なお、「『きょうだい児』が『健常児』というだけで親から言われる言葉」としては、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 「親が○○ちゃんのお世話で忙しい思いをしているのだから、あなたは一人でいい子にしていなさい」
- 「親が○○ちゃんのお世話で大変な思いをしているのだから、あなたも親を手伝いなさい!」
- 「あなたも家族の一員なんだから、あなたも親と同じように○○ちゃんのお世話をしなさい!」
このように、「きょうだい児」は「健常児」であるというだけで当たり前のように「親の手伝いを強要」されたり、場合によっては「障害児とのあいだで愛情の差別」を受ける場合があります。
なお、親が子どもに対して愛情の差別をすることを「きょうだい差別」と言います。
生まれた順や親子の相性、学校の成績などの違いを発端に、きょうだい間で親から受け取る愛情に差が出てしまうきょうだい差別。
このような家庭環境に育った場合、「きょうだい児」は「『自分の存在感を消す』という条件を満たすことで自分の存在価値を認めてもらえる」という「親子の関係性」のなかで育つことになり、その影響で「甘えてはいけない・わがままを言ってはいけない・不満は言ってはいけない・迷惑を掛けてはいけない」など、「『自己主張』や『感情表現』を我慢するようになる」と考えられています。
以上のことから、「『きょうだい児』(弟妹が障害児であった場合)、『長男・長女』でもロストワンとなる可能性がある」と言えます。
②「ヤングケアラー」である場合
「弟妹(年下のきょうだい)」が「障害児」ではないにしても、「弟妹(年下のきょうだい)」が「重い病気を患っている」あるいは「病弱である」という場合は、「きょうだい児」と同じように「長男・長女」でもロストワンとなる可能性があると考えられています。
また、「弟妹(年下のきょうだい)」には何ら問題がないにしても、以下のような「子どもを放置しがちな家庭環境」である場合、「長男・長女」でもロストワンとなる可能性があります。
POINT
- 三世代家族で、親が祖父母の介護に手一杯なため、祖父母の介護を手伝っていた
- 父子家庭・母子家庭で、親が精神的に手一杯なため、親に代わって弟妹の世話をしていた
- 貧困家庭で、親が仕事で手一杯なため、親に代わって家事をしていた
- アルコール・ギャンブル・薬物・ワーカーホリック・宗教など、親が何らかに強く依存していたため、親に振り回されていた
なお、上記のように、本来であれば親や大人が担うべき「負担」を背負わされた子どもを「ヤングケアラー」と言います。
ヤングケアラーは親の病気のために家事や介護を強要される子供を言います。彼らの中には、親の心配ばかりして全く甘えられず、本音を言ったら親に嫌われる不安から、親の顔色だけを見て育った人もいます。こうした人は心を病み、大人になっても自分の気持ちを抑えたり、悪いことがあると自分をせめる癖がついてしまいます。つねに緊張感や絶望感があり人生を楽しめません。このような心を病んだヤングケアラーもアダルトチルドレンと呼べるでしょう。
このように、「ヤングケアラー」は「親を心配ばかりして全く甘えられない子ども」になったり、「親に嫌われないよう自分の本音を抑え込む子ども」になる場合が多いため、その影響で「ロストワンになる可能性がある」と言えます。
なお、「『ヤングケアラー』がロストワンになる様子」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 大変そうな親の様子を見て「自分はどうなってしまうのか?」という「焦り・不安」が強まる
- 大変そうな親の様子を見て「親の負担を減らさなくては!」と「聞き分けの良い子」を演じる
- そのため、親にかまってもらえず「寂しい思い」を感じても、「我慢」をして親に言わなくなる
- あるいは、障害を持つ弟姉ばかりを優先する親の態度に「不満」を感じても、「我慢」をして親に言わなくなる
- 家庭で「ストレス(焦り・不安・寂しさ・不満・孤独)」を感じても、「我慢」をして親にも他の大人にも相談せず、黙って内面に抑え込む
このように、「ヤングケアラー」は大変そうな親の様子を見て、親の負担を減らすために「家庭でストレス(焦り・不安・寂しさ・不満・孤独)を感じても、黙って内面に抑え込むようになる」と考えられています。
以上のことから、「『ヤングケアラー』であった場合、『長男・長女』でもロストワンとなる可能性がある」と言えます。
まとめ
さいごに、本記事の重要ポイントをまとめます。
- POINT「長男・長女」は「親に対してあえて特徴的な行動をとる『アダルトチルドレンタイプ』になる可能性が高い」ため、そのぶん「親に対してあえて特徴的な行動をとらない『ロストワン』になる可能性が低い」と言える
- 「中間子」や「末っ子」は「兄姉(年上のきょうだい)とは違う『アダルトチルドレンタイプ』になる可能性が高い」ため、とくに「一番最後に生まれた『末っ子』は、親に対してあえて特徴的な行動をとらない『ロストワン』になる可能性が高い」と言える
- 「親の手伝いを強要」されたり、「障害児とのあいだで愛情の差別」を受ける「きょうだい児」であった場合、「長男・長女」でもロストワンとなる可能性がある
- 「親を心配ばかりして全く甘えられない」あるいは「親に嫌われないよう自分の本音を抑え込む」ことが多い「ヤングケアラー」であった場合、「長男・長女」でもロストワンとなる可能性がある
また、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
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以上、「ロストワン(いない子)が『長男・長女』に少なく『末っ子』に多い理由」という記事でした。