POINT
心理学における「インナーチャイルド」とは、「幼少期に負ったトラウマ(心の傷)」や「幼少期に満たされなかった気持ち」や「幼少期に身に付けた思考・行動パターン」を意味する言葉で、「トラウマケア(アダルトチルドレンの克服)」において「重要な役割」を果たしています。
心理カウンセラーの寺井です。
心理学における「インナーチャイルド」とは、「幼少期に負ったトラウマ(心の傷)」や「幼少期に満たされなかった気持ち」や「幼少期に身に付けた思考・行動パターン」を指します。
「三つ子の魂百まで」という諺があるように、心理学では「幼少期の体験は『人格形成』に多大な影響を与える」と考えられており、とくに幼少期に「心の傷(トラウマ)」を負った場合、大人になって「精神疾患、否定的自己概念、偏った人間関係、仕事・恋愛・結婚・子育てがうまくいかない」などの「生きづらさ」を感じる場合があると考えられています。
子ども時代に体験したトラウマは、…(中略)…日々の生活や仕事、恋愛など多岐に渡ってあらゆる方面に長く影響を残します。なおかつ意図せずにトラウマを経験した年齢が通常よりも若く発達段階の早期であればあるほど、人生に与える影響は広く深いものになります。
引用元:トラウマが人生に与える影響とは
このとき、「生きづらさを解消する」ために思い描く「傷ついたままの子どもの頃の自分のイメージ」を「インナーチャイルド」と言い、「インナーチャイルド」という「概念」が生まれたことで、「幼少期に負ったトラウマ(心の傷)を自分で癒し、生きづらさを自分で解消する」ことが可能になりました。
このように、「インナーチャイルド」は「トラウマケア(アダルトチルドレンの克服)」において「重要な役割」を果たしています。
この記事は、心理学における「インナーチャイルド」の意味と重要性について解説しています。
インナーチャイルドの意味
「インナーチャイルド(Innner Child)」とは、直訳すると「内なる子ども」という意味で、自分の内面に存在する「小さな子ども」を意味する言葉です。
ただ、「自分の内側に知らない子どもがいる」と直接的に考えるものではなく、子どもの頃に「親や家族との関り」のなかで負った「心の傷(幼少期のトラウマ)」を意味する言葉であり、具体的には「傷ついたまま自分の心に取り残さている子どもの頃の自分のイメージ」を意味します。
インナーチャイルドとは「心の内側の子ども」という意味で、子ども時代の記憶や心情をさします。とらえ方はいろいろとありますが、「自分の心の中に住んでいる子どもの自分」といったイメージを持ってみるとわかりやすいかもしれません。
人は、大人へと成長するにしたがって心身ともに健全に成長していきますが、「幼少期の家庭環境」に何らかの問題があった場合、インナーチャイルドは傷ついてしまい、インナーチャイルドが傷ついたままだと、大人になって「人間関係の悩み」や「自己否定感」など「生きづらさ」を感じる場合があります。
反対に言えば、「『傷ついたままのインナーチャイルド』を癒すことで『生きづらさの解消』ができる」と言い換えることができます。
このように、「インナーチャイルド」とは「『幼少期のトラウマ』によって引き起こされる『生きづらさ』を解消するために必要な考え方」を意味する言葉であり、主に「トラウマケア(アダルトチルドレンの克服)」を目的として「心理学・心理カウンセリング・心理セラピー」で用いられる言葉です。
インナーチャイルドの起源
心理学における「インナーチャイルド」という概念は、スイスの心理学者「カール・ユング」が提唱した「内なる子ども」という考え方に基づいています。
「カール・ユング」は、「『交流分析』という心理学にある『三つの心(自我)』のうちの『チャイルド』」という概念」を進化させることで、「インナーチャイルド」という概念を考え出したと言われています。
交流分析(TA)…(中略)…人には三つの心(自我)があります。社会のルールを守ろうとしたり、相手を褒めたり労ったりする親の心(P)、状況判断をする成人の心(A)、天真爛漫に振る舞ったり、頼ったりする子どもの心(C)などです。
引用元:交流分析(TA)とは
1970年代に入り、アメリカのセラピスト「ジョン・ブラッドショー」が、「インナーチャイルド-本当のあなたを取り戻す方法」という著書の中で「インナーチャイルド」という概念を使い始めたことによってアメリカでも広く知られるようになり、1980年代に入ると日本でも知られるようになりました。
「ジョン・ブラッドショー」は、著書の中で「内なる子ども」との対話や癒しの重要性を説き、「生きづらさを抱え苦しむ人たち」をはじめ、多くの人たちに影響を与えました。
「インナーチャイルド」と「アダルトチルドレン」の違い
「インナーチャイルド」と似た言葉の中に「アダルトチルドレン」という言葉があります。
「アダルトチルドレン」とは、子どもの頃に「親や家族との関り」のなかで負った「心の傷(トラウマ)」が原因で、大人になっても「生きづらさ」を感じている人を指します。
アダルトチルドレン(AC)とは、子ども時代に親や養育者との関係の中で負った心の傷が、現在の生きづらさや人格形成に影響している状態を指す概念のことです。
よって、「『インナーチャイルド』と『アダルトチルドレン』の違い」は以下のようになります。
POINT
- 「インナーチャイルド」は、「幼少期のトラウマ(アダルトチルドレンの根本原因)」を意味する
- 「アダルトチルドレン」は、「幼少期のトラウマ(傷ついたインナーチャイルド)」によって「生きづらさ」を感じている大人を意味する
このように、「インナーチャイルド」とは「アダルトチルドレンの克服(トラウマケア)」を目的に考えられた「概念」とも言え、心理学では「『傷ついたインナーチャイルド(幼少期のトラウマ)』を癒すことで『アダルトチルドレンの生きづらさ』を克服できる」と考えられています。
「インナーチャイルド」と「ワンダーチャイルド」の違い
もうひとつ「インナーチャイルド」と似た言葉の中に「ワンダーチャイルド」という言葉があります。
「ワンダーチャイルド」とは、「生まれながらの純真な子どもの心で、快活で明るく生き生きとした創造的な心」を意味し、「親子関係や家庭環境の影響」を受けていない「生まれたままの本来の自分のイメージ」のことを指します。
インナーチャイルドとは、「大人になる過程で傷ついた自分」のことを指します。反対に、「生まれたままの本来の自分」のことをワンダーチャイルドといいます。
引用元:発達障害とインナーチャイルド
よって、「『インナーチャイルド』と『ワンダーチャイルド』の違い」は以下のようになります。
POINT
- 本来、子どもはみな「ワンダーチャイルド」として生まれてくるが、「親や家族との関係」で心が傷つくと「インナーチャイルド」になる
- 傷ついた「インナーチャイルド」を癒すことで、「ワンダーチャイルド」を取り戻すことができる
このように、「ワンダーチャイルドを取り戻す」ことは「本当の自分を取り戻す」ことを意味しますので、「『インナーチャイルドを癒し、ワンダーチャイルドを取り戻す』ことは『アダルトチルドレンの生きづらさを克服する』ことを意味する」と言えます。
「インナーチャイルド」は何歳までか?
「インナーチャイルド」は「子どもの頃の自分のイメージ」を指すのですが、具体的には「幼少期(10歳くらい)までに受けた『心の傷(トラウマ)』」のことを指します。
ですので「発達心理学」に沿って考えると、「インナーチャイルド」は「『乳児期』から『児童期』のあいだに受けた『心の傷(トラウマ)』」という意味になります。
インナーチャイルドは幼少期、10歳くらいまでに受けた心の傷やトラウマのことです。
また、「心理カウンセリングの臨床実績」によると、インナーチャイルドは「『第一反抗期(イヤイヤ期)が始まった頃(3歳ごろ)』から『第二反抗期(思春期)が始まる頃(10歳ごろ)』までのあいだに受けた『心の傷(トラウマ)』」であることが多いです。
このように、心理カウンセリングでは、インナーチャイルドは「第二反抗期(思春期)以前に傷ついた気持ち」と考えることが多いです。
「インナーチャイルド」と「インナーアダルト」の違い
「インナーチャイルド:第二反抗期(思春期)以前に傷ついた気持ち」は、「アダルトチルドレンの根本原因」のひとつなのですが、「アダルトチルドレンの生きづらさ」には「第二反抗期(思春期)以降の自分の存在」も関わっている場合が多く、「第二反抗期(思春期)以降の自分のイメージ」のことを「インナーアダルト」と言います。
なお、「『インナーチャイルド』と『インナーアダルト』の違い」は以下のようになります。
POINT
- インナーチャイルド
第二反抗期(思春期)以前の自分
感情・感覚・気持ち・本音・本心・欲求・無意識・潜在意識
お腹がすいたら何かを食べたくなるなど、生まれながらに持っている領域 - インナーアダルト
第二反抗期(思春期)以降の自分
理性・知性・知識・思考・認知・理想・意識・顕在意識
学校の勉強・家族のルール・仕事のスキルなど、生まれたあとに学んでいく領域
また、「インナーアダルト」は「親の影響」を強く受けるため、「親の態度」によって以下のような違いが出る場合があります。
POINT
- 親に「肯定」されて育った場合の「インナーアダルト」
親の態度を模倣して「自分を肯定する思考」を持つようになる
自分を好きになり、ありのままの自分を表現できるようになる
自己肯定感が高くなる - 親に「否定」されて育った場合の「インナーアダルト」
親の態度を模倣して「自分を否定する思考」を持つようになる
自分を嫌いになり、ありのままの自分を隠すようになる
自己否定感が高くなる
このように、親に「否定・抑圧・放置」されて育った場合、「インナーアダルト」は、親と同じように「インナーチャイルド」を「否定・抑圧・放置」するようになります。
反対に言えば、親に「否定・抑圧・放置」されて育った場合、「インナーチャイルド」は「インナーアダルト」に絶えず傷つけられることになるため、親から物理的に離れたとしても、慢性的に「生きづらさ」を感じ続けるようになります。
「3つ」の心理学で考える「インナーチャイルド」の意味合い
このように、インナーチャイルドは「幼少期の体験(3歳~10歳ごろの体験)」を意味します。
前述の通り、「幼少期の体験(3歳~10歳ごろの体験)」は「人格形成」に多大な影響を与えるため、さまざまな心理学において重要視されており、その中には「インナーチャイルド以外の呼び方」も存在します。
なお、「心理学において『インナーチャイルド』と似た意味合いを持つ言葉」は、主に以下の「3つ」があげられます。
心理学名 | 幼少期の体験の呼び方 |
①精神分析 | 幼少期のトラウマ |
②ゲシュタルト療法 | 未完の感情 |
③交流分析 | 人生脚本 |
それでは、以下に詳しく解説していきます。
①精神分析:「幼少期のトラウマ」
「トラウマ」という言葉は、もともと古代ギリシャ語で「傷」を意味する「τραῦμα」から来ており、心理学者「フロイト」が用いたことにより一挙に広まった言葉と言われています。
「フロイト」は、ある出来事によって「心を防護する膜」が破れて心に穴が開いてしまった状態を比喩して「トラウマ(心の傷)」と表現したと言われています。
心理学用語としては、「心的外傷」または「精神的外傷」などと呼ばれ、その影響は心に長く残り、たとえ忘れ去られたように見えても、ふとしたきっかけで蘇り、「心的外傷後ストレス障害」を引き起こすと考えられています。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、トラウマになる圧倒的な出来事(外傷的出来事)を経験した後に始まる、日常生活に支障をきたす強く不快な反応です。
とくに、幼少期に「トラウマ(心の傷)」を負った場合、その後の「人格形成」に大きな影響を与えると考えられており、最新のトラウマ研究によると、トラウマになる出来事は、一般的な解釈より日常に溢れていることがわかってきており、むしろ「『トラウマ(心の傷)』を一度も負わないまま大人へと成長することの方が難しい」と考えられています。
とくに、子どもは親の影響を強く受けるため、「知らず知らずのうちに『トラウマ(心の傷)』を負っている場合が多い」と考えられています。
誰でも日常的にトラウマを抱える可能性があります。…(中略)…育った家庭での両親の不仲や離婚、親からの過干渉…(中略)…トラウマは特別なことではありません。
引用元:トラウマとは何でしょう?
とはいえ、「幼少期のトラウマ」は、「なかなか思い出しづらい『遠い昔の記憶』」であるのと同時に、「できれば思い出したくない『傷ついた記憶』」でもあるため、「対話型の心理カウンセリング(傾聴カウンセリング)」や「薬物療法」ではアクセスすることができず、一時的な対処で終わることが殆どでした。
そこで、「幼少期のトラウマ」を「インナーチャイルド」というイメージに置き換えることで「トラウマ治療」を行う、「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」という「革命的な誘導施術法」が開発され、どうすることもできなかった「幼少期のトラウマの影響を根本解消していくこと(トラウマケア)」が可能になりました。
以上のことから、「幼少期のトラウマ」とは「インナーチャイルド」と類義語であり、「トラウマの治療」とは「インナーチャイルドの癒し」と類義語である言えます。
②ゲシュタルト療法:「未完の感情」
「未完の感情」とは、「未完了の感情」や「未完了の行為」とも呼ばれ、「ゲシュタルト療法(ゲシュタルト心理学)」で用いられる言葉で、「ある時から未完結のままになっている問題」や「ある時から未完了のまま残っている感情」を意味する言葉であり、「ある時からモヤモヤ・グルグルと心に残ったままになっている気持ち」を指します。
納得がいかない思いは、行き場がなくて、心のどこかにモヤモヤしたまま残ってしまいます。いわば出口がなくて迷子になってしまった感情。これを「未完の感情」と呼びます。
なお、「幼少期に抱えやすい『未完の感情(未完了の感情)』」とは、主に以下の「具体例」があげられます。
POINT
- 子どもの頃に親や家族に言いたかったが言えなかった気持ち
- 子どもの頃に親や家族に理解してもらいたかったが理解してもらえなかった気持ち
- 子どもの頃にやりたかったがやれなかったこと
- 子どもの頃に親や家族に相談したかったが相談できなかった悩み
- 子どもの頃に我慢した「寂しさ、悲しさ、孤独、怖さ、不安、怒り、イライラ、緊張」
「未完の感情」と「未完の完結」
「ゲシュタルト療法」とは、精神分析医「フリッツ・パールズ」と心理学者「ローラ・パールズ」によって創られた心理療法です。
「ゲシュタルト療法」では、「様々な心理的問題の原因(生きづらさの原因)」は「未完の感情」にあると考え、子どもの頃に「愛されたかった、わかってほしかった、認めてほしかった、悲しかった、怖かった、寂しかった」などの「未完の感情」を抱えたまま大人になった場合、大人になってから「愛されたい気持ち、わかってもらいたい気持ち、認められたい気持ち」が強くなりすぎる、あるいは「悲しさ、怖さ、寂しさ」が強くなりすぎるなど、「様々な心理的問題の原因(生きづらさの原因)になる」と考えられており、「未完の感情」を再体験する(「未完の感情を思い出し、未完の感情を感じ切って完結する」)ことで「様々な心理的問題(生きづらさ)が解消できる」と考えられています。
ゲシュタルト療法は、未完結な問題や悩みに対して、再体験を通しての「今ここ」での「気づき」を得る心理療法です。…(中略)…ゲシュタルト療法は言葉や解釈のセラピーではなく、経験的なセラピーである。我々はクライアントに過去の記憶の中にある問題やトラウマについてただ話すだけで無駄だと考えている。話すだけでなく、「今ここ」で、現在でも未完結になっている問題やトラウマを再体験することを勧める。
なお、「未完の感情を思い出し完結すること」、すなわち「様々な心理的問題(生きづらさ)が解消すること」を、「ゲシュタルト療法」では「未完の完結」と言います。
未完の完結:ゲシュタルト療法では、「過去の未完の出来事は、ゲシュタルトとして完成されていないモヤモヤとして残っていて(「抑圧」という精神分析用語は用いられない)それを意識化させ、完結することで症状は無くなる、という。フロイトは、「抑圧した過去を知る」ことで症状がよくなると言った。
このように「ゲシュタルト療法」では、「未完の感情」は「生きづらさの原因」を意味し、「未完の完結」は「生きづらさの解消」を意味します。
「未完の完結」と「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」
ですが、「様々な心理的問題の原因(生きづらさの原因)」となる「未完の感情」は、「なかなか思い出しづらい『遠い昔の記憶』」であるのと同時に、「できれば思い出したくない『傷ついた記憶』」でもあります。
そこで、「未完の感情」を「インナーチャイルド」というイメージに置き換えることで「未完の完結を果たし、生きづらさを解消する心理療法」を、「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」と言います。
インナーチャイルド・セラピーは、まさにこの「未完の完結」作業を応用したものです。…(中略)…未完の感情をそのまま引きずるのではなく、「今ここ」で完結(終わらせ、創り直す)ことが、インナーチャイルド・セラピーです。
引用元:インナーチャイルド・セラピー
以上のことから、「未完の感情」とは「インナーチャイルド」と類義語であり、「未完の完結」とは「インナーチャイルドの癒し」と類義語である言えます。
なお、「未完の感情」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にして下さい。
関連記事
③交流分析:「人生脚本」
「人生脚本」とは、「交流分析」という心理学の中で用いられる理論で、「人間の性格形成に大きな影響を与えるもの」として重要視されており、「恋愛関係において、いつも同じような別れ方をしてしまう」「仕事に就いても、いつも同じような辞め方をしてしまう」「育児において、親と同じような子育てを繰り返してしまう」など、「無意識に繰り返している思考・行動パターン」を意味する言葉です。
「人生脚本」は、幼少期(3歳~14歳(第一反抗期~第二反抗期のあいだ))に「親に言われたメッセージ」や「親にされた行動」、すなわち「親の育児の影響」によって形成され、人はそれ以降、「人生脚本に沿って無意識に生き方を決めるようになり、大人になってからも、人生脚本に従った思考・行動を無意識に繰り返す」と考えられています。
人生脚本とは、エリック・バーンが提唱した心理学理論です。幼少期に自分自身の人生脚本を描き、その通りになるとされています。人生脚本の大部分は親からのメッセージにより決定されます。無意識のうちに生き方を決め、それに従い行動するということです。
引用元:人生脚本とは
なお、「人生脚本」とは、大きく分けて以下の2つの「否定的な価値観」で形成されていると考えられています。
POINT
- 「禁止令」…「○○してはダメだ!」など、親から何かを禁止される言葉を掛けられたことにより、大人になって「自分は○○してはダメだ!」と感じる価値観
- 「ドライバー(拮抗禁止令)」…「もっと○○しなさい!」など、親から何かを煽り立てられる言葉を掛けられたことにより、大人になって「自分はもっと○○しなくてはならない!」と感じる価値観
「人生脚本」と「人生脚本の書き換え(幼児再決断)」
「交流分析」とは、1950年代後半に、精神科医「エリック・バーン」によって提唱された心理学です。
「交流分析」では、「様々な心理的問題の原因(生きづらさの原因)」は「人生脚本」にあると考え、子どもの頃に「親から否定的な言動」を受けた場合、大人になってから「否定的な考え方」を無意識に繰り返すなど、「様々な心理的問題の原因(生きづらさの原因)になる」と考えられており、「人生脚本」を書き換える(「子どもの頃の感覚(チャイルドの自我状態)に戻った心理状態で人生脚本を選択しなおす(幼児再決断をする)」)ことで「様々な心理的問題(生きづらさ)が解消できる」と考えられています。
再決断療法は「子ども」の自我状態にアプローチすることで、腑に落ちた気づきと感情をベースに、考えや行動を変えることができます。つまり、望まない無意識の人生計画といえる人生脚本から脱却することもできるのです。
引用元:人生脚本-幼時決断と再決断療法
なお、「子どもの頃に身に付けた『人生脚本』を書き換えること」、すなわち「様々な心理的問題(生きづらさ)を解消すること」を、「交流分析」では「人生脚本の書き換え」あるいは「幼児再決断」と言います。
再決断療法とは、人生脚本、つまり幼児期に作った自分の決断に基づいて構成された人生のパターンの束縛から脱け出して、より自由で創造的な生き方をするために、チャイルドの自我状態に戻って、決断をやり直し人生脚本を書き換えて行く精神療法ということになります。
引用元:TA再決断療法とは?
このように「交流分析」では、「人生脚本」は「生きづらさの原因」を意味し、「人生脚本の書き換え(幼児再決断)」は「生きづらさの解消」を意味します。
「人生脚本」と「アダルトチルドレンタイプ(インナーチャイルドタイプ)」
アメリカの心理療法家「ウェイン・クリッツバーグ」は、大人になった「アダルトチルドレン」が、子どもの頃に身に付けた「人生脚本」を「アダルトチルドレンタイプ(インナーチャイルドタイプ)」としてまとめました。
なお、「アダルトチルドレンが持つ『人生脚本』」は、主に以下の「7つ」があげられます。
POINT
- 「ヒーロータイプ(英雄役)」
「スーパーチャイルド」とも呼ばれ、「親や家族の期待」に応えるために「勉強・スポーツ・習い事」を頑張る、「優等生」に映る反面、「挫折に弱い」一面がある - 「スケープゴート(身代り役)」
「家族のストレスのはけ口」になったり「家族の嫌われ者」になる、「厄介者」や「問題児」に映る反面、「根は優しい」一面がある - 「ロストワン(いない子)」
「自我」を抑えたり「一人で過ごす」ことで「存在感」を消す、「存在感が薄い印象」に映る反面、内面には「豊かな感受性と独創性」を持つ - 「クラウン・ピエロ(道化・おどけ役)」
「家庭の不和」を和ますために「ムードメーカー」となる、「明るい性格」に映る反面、内面には「ネガティブ感情」を抑圧している - 「ケアテイカー(世話役)」
「小さな看護師」とも呼ばれ、「親代わり」となって家族の世話を焼く、「気が利く人・面倒見が良い人」に映る反面、「過干渉・おせっかい」な一面がある - 「イネイブラー(支え役)」
「偽親(にせおや)」とも呼ばれ、「自己犠牲」によって家族を支える、「献身的な人」に映る反面、一方的に尽くしすぎて「相手の依存心を強めてしまう」 - 「プラケーター(慰め役)」
「小さなカウンセラー」とも呼ばれ、「聞き役に徹する」ことで家族を慰める、「優しく寄り添う人」に映る反面、他人の感情に振り回されて「自分のことが後回しになる」
このように、子どもの頃に「機能不全家族で育った影響」によって身に付けた「人生脚本」は、「アダルトチルドレンが抱える生きづらさの根本原因」を意味し、「人生脚本の書き換え(幼児再決断)」は「アダルトチルドレンの克服」を意味します。
なお、「アダルトチルドレンタイプ(インナーチャイルドタイプ)」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にして下さい。
「人生脚本の書き換え(幼児再決断)」と「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」
ですが、「人生脚本の書き換え(幼児再決断)」を行うためには、前述の通り「子どもの頃の感覚・感情・記憶(チャイルドの自我状態)に戻る」必要があります。
そこで、「人生脚本を書き換え(幼児再決断)」を行うために、「子どもの頃の感覚・感情・記憶(チャイルドの自我状態)に戻る」ことを「退行(たいこう)」と言い、心理カウンセラーの催眠誘導による協力を得て行う「退行」を「退行催眠」と言います。
退行とは幼児期の感覚、感情、記憶へ遡る精神状態をいいます。そして退行催眠とは、昔の過去の記憶や感覚に戻らせる催眠誘導を指します(年齢退行)。
そして、「人生脚本」を身に付けた子どもの頃の自分を「インナーチャイルド」という「イメージ」に置き換えることで「人生脚本を書き換え(幼児再決断)を行い、生きづらさを解消する心理療法」を、「インナーチャイルドセラピー(退行催眠)」と言います。
インナーチャイルド療法とは、退行療法の中の1つで、「自分の中の小さな子ども」にアクセスする療法です。潜在意識は決して忘れるということがないという特徴を持っています。また潜在意識には、時間の概念というものもありません。ですから、私たちの心の奥深くには、いまだに「傷ついたままの小さな子どもの自分」がいるのです。
以上のことから、「人生脚本」とは「インナーチャイルド」と類義語であり、「人生脚本の書き換え(幼児再決断)」とは「インナーチャイルドの癒し」と類義語である言えます。
なお、「人生脚本(禁止令・ドライバー)」については以下の記事で詳しく解説していますので、必要な方は参考にして下さい。
関連記事・関連情報
さいごに、本記事に関する関連記事を以下に紹介します。
是非、あわせてお読みください。
関連記事
- インナーチャイルドの具体的な症状と特徴
- インナーチャイルドが恋愛に与える影響
- アダルトチルドレン(ac)診断チェックリスト:『インナーチャイルドの傷つき度合』をセルフチェック!
- インナーチャイルドを引き起こす「心理的原因」の解説
- インナーチャイルドの原因となる「父親」の特徴
- インナーチャイルドの原因となる「母親」の特徴
- アダルトチルドレンを克服すると生まれる5つの変化
- アダルトチルドレン(ac)を克服した心理カウンセラーが語る「AC克服体験談」
- インナーチャイルドセラピー体験談:厳選5本のまとめ記事
- インナーチャイルドセラピーの好転反応
- 人生を楽しめない理由:「不安」を抱えたインナーチャイルド
- 子どもに優しくなれない理由:「怒り」を抱えたインナーチャイルド
- 自分に自信を持てない理由:「疑い」を抱えたインナーチャイルド
なお、本記事に関する関連情報は、以下のページでもまとめていますのであわせて紹介します。
以上、「心理学における『インナーチャイルド』の意味と重要性を理解しよう!」という記事でした。